インフルエンス・ワールド

風浦らの

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第二章【闇の中の光】

永遠の夜

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    ────遠く遠く離れた辺境の地【アマンランド】

    ヴィーアをはじめとした煌光のカラクター達はこの地に隠れるように身を寄せていた。

    いつの時代、誰が住んでいたかも分からない家に住み、痩せ細った大地で野菜をとり、森から木の実や果実を採取して暮らす日々。

    煌闇のカラクターが敵と表明した今、無闇矢鱈に出歩く事は出来ない。
    それでも日々の中で、彼らは少しづつ平穏を取り戻し笑顔も増えていった。

    「おらぁ!    飯の準備が出来たぞー!   ガキ共集まれー!」

    給仕担当は料理の得意なグリード。少ない食材と器具でも、グリードの作る料理の腕は格別だ。
    グリードの持つカフェオレのストーンは、あんな事が起きながらもその煌度を落とすことは無かった。その為、周りのカラクター達よりも体が大きく、兄貴分的な役割を担っていた。

    「アリスはガキじゃないもん!」
 
    一番に食卓に着いたのはリーチアリス。フライング気味にスプーンを手にし、カンカンとテーブルを叩くその姿は三歳児。

    「煌度が高かろうが低かろうが、お前は変わんねぇな…………」
    「ん?」

    少しして子供達が集まってくる中、ヴィーアもやって来た。手には赤ちゃんを抱いており、まるで忙しくするママのようだ。
    そしてこの抱っこされている赤ちゃんはオプティ。
    今やオプティの煌度はたったの1。現実主義の特性を持つチェリーレッドのストーンである為、燕が現実から逃げ出した今、こうなってしまうのも当然と言えばそうだろう。識煌変化を起こしていないのが不思議なくらいだ。

    他には変わらず煌度11を保っているノイ、煌度3にまで落ちすっかり子供になったパティーク。そしてこの世界唯一の人間、徳。
    結局この地に辿り着いた煌光のカラクターは全部で12人だけだった。

    彼等は毎日家族のように食卓を囲んだ。それぞれの変わりようや、個性に着いての話に花が咲く。

   「ねえねえ、アリス明日はお外で遊びたーい」
    「危ないからダメに決まってんだろ!    大体、あの日以来『夜』が続いて外は寒い、おまけに真っ暗で殆どなにも見えやしないんだ。外に出て迷子になっても知らねえぞ?   俺っちは助けてやんねえからな」
    「ぶー!!」

    グリードが子供を脅かすようにリーチアリスの意見を却下した。
    楽しそうにこそしているが、不安なのは皆同じ。

    「それにしても、いつまで夜が続くんだろうね…………もう何日になるかな」
    「もう二週間ってところです。太陽が恋しいですね」

    明けない夜は無いと言うものの、流石に二週間もの間夜が続くとなると、カラクター達の間にも不安は募る。

    このままではいけないと言うのも分かるが、現状は八方塞がりで、今の彼等にはどうする事も出来なかった。

    食事を終えると、この日は自由時間だ。それぞれ割り振られた家に帰る者、子供達で手遊びをする者、本を読む者等様々。

    そんな中、この頃徳は一人外に出て考え事をするようになっていた。
    村を取り囲む低い石段に座り、ぼんやりと物思いにふけっている。

    「マスター燕のことを考えているんだろ?」

    暗闇の中、声をかけてきたのは徳と共に旅をしてきたパティークだった。
    三歳児までに体を縮めたが、その喋りとふてぶてしさは相変わらずだ。

    「やっぱりわかる?」
    「当たり前だ。皆、口には出さないが気持ちは同じだからな」
    「今頃何をしてるんだろうね……」
    「さあな。だがこの永遠の夜だ、気持ちを察するには容易い」
    「────あのさ、パティ子。俺、燕を探しに行こうと思うんだ」
    「正気か!?    外には煌闇のカラクターが溢れているんだぞ?    ましてや、いつあけるとも分からないこの長い夜。無謀にも程があるだろう」

    パティークの否定的な意見にも、徳に動じる様子はなかった。

    「無謀なのもわかってる。でもさ、見えるんだよ。こんな暗闇でも─────、小さく輝く星達が」
    「──────、そうか。なるほどな。こんな永遠に思われる暗闇の中でも輝いてる、か。
    ──────よし、ならば私も付き合おう」

    徳の膝の上にパティークがぴょこんと飛び乗った。

    「え?」
    「一緒に行ってやると言ってるんだ」
    「そんな!    危険だって……」
    「お前一人行かせる方がよっぽど危険だ。お前はゼルプストの事やカラクターに対しての知識が無さすぎるからな。それに────」
    「それに?」
    「私のストーンは【薄緑色】だ。『希望』なら誰よりも持ってる」
    「パティ子……」
    「早速明日みんなに話をしよう」
    「うん!」

    再び星を見上げた徳とパティーク。
    こんな夜でも星は輝いている。それはまるで希望の光のよう─────


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