インフルエンス・ワールド

風浦らの

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第一章【光と闇・そして崩壊】

influence world!

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    息を切らせながらも、ようやく燕、徳、パティークがこの場に到着した。

    拘束された煌光のカラクター達。
    それを数で上回る煌闇のカラクター。
    向かい合う光と闇のブライテスト・ストーンと、その間で動けぬほどの重症を負ったコチトラ──────

    一目見た瞬間、ただ事ではないことが分かる。
    燕は真っ先にコチトラの元へと駆け寄った。

    「─────ッコチトラ!    どうしたの!?   大丈夫?   酷い火傷…………」
     「痛っ…………まぁ。死んじゃいねぇみてぇだな。燕こそ、こんな所に来ちゃ危ねぇぜ?    仲良く彼氏とデートでもしてきな」

    コチトラは徳を見て冗談を飛ばした。

    「それだけ言えるなら大丈夫そうね。安心した。コチトラに何かあったら私…………」
   
    立ち上がる気力も失いっているコチトラは、仰向けになりながらも燕と会話した。

    「メグが助けてくれたんだぜ……?    な?    アイツは、悪いやつじゃねぇって言っただろ……?」
    「そうね。あとでメグにお礼を言わなきゃね」
    
    メグワーグは燕達が到着するより先に、また姿を消していた。

    「ああ……ちょっとしんどいから、少しだけ休ませてくれ…………」

   限界が来たのか、コチトラはそっと目閉じた。
     燕は湧き上がってくる感情をグッと堪え、この場で一番立場が上であろうヴィーアに今の状況を尋ねたが、ヴィーアよりも先に、見知らぬカラクターがそれに答えた。

    「その質問には私が答えましょう。そうそう。自己紹介が先でしたね。初めましてマスター。地下町『リヴダル』を納めているココラージュよ。以後、お見知りおきを────」
    「…………ココラージュ…………」

    話には聞いていたココラージュを初めて見た燕だったが、不思議と恐怖は無く、寧ろ、自分に近い何かを感じ取った。

    「私たち煌闇のカラクターは、先日煌光のカラクターに対して宣戦布告を行ったのは知ってる?    つまりは戦争を始めましょうという事よね。だからリーヤ村を落として、次はこのプラムベリーの住人を制圧しようって話なの。どう?    ワクワクするでしょ?」
    「これのどこがワクワクするのよ!?    冗談じゃないよ!    」

    ココラージュの言動に燕は怒りを顕にした。当然である────

    「なにをそんなに怒ってるのか、私には分からないのだけど?」
    「他人の町に押し入って、人質まで取って、いたぶって…………こんなのどう見たって…………」

    燕は悔しそうに唇を噛んだが、ココラージュにはそんな感情は生まれていない様子だった。それどころか更にこう続けてきた────

    「それは失礼。てっきりマスターは喜んでいるものだと?」
    「私が!?   バカな事、言わないでよ──ッ!!」
    「バカな事?    そんな事はないわ。もしかしたら、自分で気づいていないだけなんじゃない?」
    「どういう意味────」
    「この世界のカラクターは、それぞれ唯一無二のストーンを持ち合わせて生まれてくるわ。ストーンの煌めきは光と闇に分かれ、その煌めきで性質が異なるの」
    「そ……それがどうしたのよ…………」
    「煌度はマスターである貴女の心に強く影響されるわ。貴方が強く願えば、思えば、興味を持てば、意識すれば、する程、ストーンは輝くの。そして今の私のストーンは煌度17。今あるストーンの中で最上位の煌めきを誇っているわ。マスターは私のストーンが何色で、どんな感情に影響を受けているか知っている?」
    「…………………………………………。」
    「教えてあげる。私のストーンは【墨色】でその性質は【秘密】と【孤独】。私のストーンが煌めいているという事は、それ即ちマスターは秘密を隠していて、孤独を望んでいる、という事かしら?」
    「そんな事───ッ!    私は皆と仲良くしたいし、隠し事だって────」

    「そう?    例えば、そこに居るリーチアリス。彼女のストーンは【ターコイズ】で【叙情性】感情を表す力ね。見た通り煌めきも無い小さな子供。今のあなたは、本当の感情を表に出さないわ。もしくは知らない────か。対してここにいるコルコーラのストーンは【セルリアンブルー】は【不誠実】そしてこのジェノンに至っては【弁柄色】で【陰気】と【破壊】。見ての通り、二人とも煌度が高いわよね?    つまりはそういう事なのよ。あなたは秘密を隠し、孤独を望み、陰気に感情を隠しながらも心の奥底では破壊を望んでいる────」

    饒舌なココラージュの話を燕は思わず聞き入っていたが、それをよく思わないノイが叫んだ。

    「聞いちゃダメだよ!    それはあまりにも極端な話だ!    煌光のカラクターにも煌度の高いカラクターはまだまだ居るの!    ココラージュはそうやって燕の心を揺さぶり操ろうとしているんだよ!    だから信じちゃダメッ!」

    その言葉にココラージュは不快感を示した。

    「ふん。ならばもっと踏み込んだ話をしてあげるわ──────、これまで出会ったカラクター達は、マスターに真実を話してくれた?    その全てを教えてくれたのかしら?」
    「────────えっ?」
    「そうよね。でも。私なら教えてあげられる。どう?    知りたいでしょ?   自分がを───────」

    聞く耳を持つなというノイの助言が飛び交う中、燕はココラージュの言葉に対し、静かにうなづいた………………

    自分が何者なのか?
    この世界はなんなのか?
    なぜこの世界に来てしまったのか?
    マスターとはなんなのか?

    知りたい。例えどんな事になろうとも、この知りたいという欲求を抑えられなかった。

    ココラージュは「でわ」と話し始めるのを、ノイは必死に止めたが、『いつかは知ることになる』『話さなければならない』という気持ちを少しでも持っていた他のもの達は、それを止める事が出来なかった───────

    「それではマスターに聞くわ。何故、天候やカラクター達はマスターの心に影響を受けるのだと思う?」
    「え…………?」
    「見覚えのある景色や見覚えのある物が、この世界に溢れていると思った事は?」
    「………………ある………………」
    「何故、皆が真実を教えたがらないか、わかる────?」
    「………………わかんない……………………」
    「その全ての答えは、この一言に集約されるわ────────、」

    燕は目を大きく開けどんな些細な音も聞き逃すまいと、ココラージュの次に発する言葉に、その口元に集中した。


    「この世界が、赤羽燕、【】だからよ」
    「───────。私の…………心の中の世界……………………?」

    その言葉に燕は困惑した。
    確かに思い当たる節はこれまでいくつもあった。そう考えたこともあった。ただ、それは受け入れ難い真実だった─────

    「そう。ここは貴女の全てが全てのものに影響を及ぼす、影響する世界!!インフルエンスワールド!!そして貴女はこの世界の創造主ッ!マスターなどという言葉は失礼なくらいの偉大な存在ッ!    言ってしまえば、貴女はこの世界における『神』なのよ─────ッ」
    「私が─────、神…………?」

    ココラージュは両腕を広げ、どんどんと興奮気味に話を進めていった。

    「そうッ!   神ッ!   マスターがその気になればなんだって出来る!    全てが思いのままに世界は動くッ!  
    煌度なんか目じゃない位の、言葉通りのよ─────ッ!
    未来は全て貴女の手の内にある。
    ここは─────、ゼルプストは貴女そのものなのだから──────ッ。
    ──────、だからこそ…………だからこそ私は貴女を殺さなければならない…………!」
    「…………どうして…………!?」

    ココラージュは興奮した自分に気づいたのか、少し間を起き両腕を下におろした。そして燕顔をみた。それは今までにない表情だった。

    「少しだけ、昔話をしましょう──────。自分の非に気づきもせず死ぬなんて、ぬる過ぎるもの──────」
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