インフルエンス・ワールド

風浦らの

文字の大きさ
上 下
27 / 43
第一章【光と闇・そして崩壊】

influence world!

しおりを挟む

    息を切らせながらも、ようやく燕、徳、パティークがこの場に到着した。

    拘束された煌光のカラクター達。
    それを数で上回る煌闇のカラクター。
    向かい合う光と闇のブライテスト・ストーンと、その間で動けぬほどの重症を負ったコチトラ──────

    一目見た瞬間、ただ事ではないことが分かる。
    燕は真っ先にコチトラの元へと駆け寄った。

    「─────ッコチトラ!    どうしたの!?   大丈夫?   酷い火傷…………」
     「痛っ…………まぁ。死んじゃいねぇみてぇだな。燕こそ、こんな所に来ちゃ危ねぇぜ?    仲良く彼氏とデートでもしてきな」

    コチトラは徳を見て冗談を飛ばした。

    「それだけ言えるなら大丈夫そうね。安心した。コチトラに何かあったら私…………」
   
    立ち上がる気力も失いっているコチトラは、仰向けになりながらも燕と会話した。

    「メグが助けてくれたんだぜ……?    な?    アイツは、悪いやつじゃねぇって言っただろ……?」
    「そうね。あとでメグにお礼を言わなきゃね」
    
    メグワーグは燕達が到着するより先に、また姿を消していた。

    「ああ……ちょっとしんどいから、少しだけ休ませてくれ…………」

   限界が来たのか、コチトラはそっと目閉じた。
     燕は湧き上がってくる感情をグッと堪え、この場で一番立場が上であろうヴィーアに今の状況を尋ねたが、ヴィーアよりも先に、見知らぬカラクターがそれに答えた。

    「その質問には私が答えましょう。そうそう。自己紹介が先でしたね。初めましてマスター。地下町『リヴダル』を納めているココラージュよ。以後、お見知りおきを────」
    「…………ココラージュ…………」

    話には聞いていたココラージュを初めて見た燕だったが、不思議と恐怖は無く、寧ろ、自分に近い何かを感じ取った。

    「私たち煌闇のカラクターは、先日煌光のカラクターに対して宣戦布告を行ったのは知ってる?    つまりは戦争を始めましょうという事よね。だからリーヤ村を落として、次はこのプラムベリーの住人を制圧しようって話なの。どう?    ワクワクするでしょ?」
    「これのどこがワクワクするのよ!?    冗談じゃないよ!    」

    ココラージュの言動に燕は怒りを顕にした。当然である────

    「なにをそんなに怒ってるのか、私には分からないのだけど?」
    「他人の町に押し入って、人質まで取って、いたぶって…………こんなのどう見たって…………」

    燕は悔しそうに唇を噛んだが、ココラージュにはそんな感情は生まれていない様子だった。それどころか更にこう続けてきた────

    「それは失礼。てっきりマスターは喜んでいるものだと?」
    「私が!?   バカな事、言わないでよ──ッ!!」
    「バカな事?    そんな事はないわ。もしかしたら、自分で気づいていないだけなんじゃない?」
    「どういう意味────」
    「この世界のカラクターは、それぞれ唯一無二のストーンを持ち合わせて生まれてくるわ。ストーンの煌めきは光と闇に分かれ、その煌めきで性質が異なるの」
    「そ……それがどうしたのよ…………」
    「煌度はマスターである貴女の心に強く影響されるわ。貴方が強く願えば、思えば、興味を持てば、意識すれば、する程、ストーンは輝くの。そして今の私のストーンは煌度17。今あるストーンの中で最上位の煌めきを誇っているわ。マスターは私のストーンが何色で、どんな感情に影響を受けているか知っている?」
    「…………………………………………。」
    「教えてあげる。私のストーンは【墨色】でその性質は【秘密】と【孤独】。私のストーンが煌めいているという事は、それ即ちマスターは秘密を隠していて、孤独を望んでいる、という事かしら?」
    「そんな事───ッ!    私は皆と仲良くしたいし、隠し事だって────」

    「そう?    例えば、そこに居るリーチアリス。彼女のストーンは【ターコイズ】で【叙情性】感情を表す力ね。見た通り煌めきも無い小さな子供。今のあなたは、本当の感情を表に出さないわ。もしくは知らない────か。対してここにいるコルコーラのストーンは【セルリアンブルー】は【不誠実】そしてこのジェノンに至っては【弁柄色】で【陰気】と【破壊】。見ての通り、二人とも煌度が高いわよね?    つまりはそういう事なのよ。あなたは秘密を隠し、孤独を望み、陰気に感情を隠しながらも心の奥底では破壊を望んでいる────」

    饒舌なココラージュの話を燕は思わず聞き入っていたが、それをよく思わないノイが叫んだ。

    「聞いちゃダメだよ!    それはあまりにも極端な話だ!    煌光のカラクターにも煌度の高いカラクターはまだまだ居るの!    ココラージュはそうやって燕の心を揺さぶり操ろうとしているんだよ!    だから信じちゃダメッ!」

    その言葉にココラージュは不快感を示した。

    「ふん。ならばもっと踏み込んだ話をしてあげるわ──────、これまで出会ったカラクター達は、マスターに真実を話してくれた?    その全てを教えてくれたのかしら?」
    「────────えっ?」
    「そうよね。でも。私なら教えてあげられる。どう?    知りたいでしょ?   自分がを───────」

    聞く耳を持つなというノイの助言が飛び交う中、燕はココラージュの言葉に対し、静かにうなづいた………………

    自分が何者なのか?
    この世界はなんなのか?
    なぜこの世界に来てしまったのか?
    マスターとはなんなのか?

    知りたい。例えどんな事になろうとも、この知りたいという欲求を抑えられなかった。

    ココラージュは「でわ」と話し始めるのを、ノイは必死に止めたが、『いつかは知ることになる』『話さなければならない』という気持ちを少しでも持っていた他のもの達は、それを止める事が出来なかった───────

    「それではマスターに聞くわ。何故、天候やカラクター達はマスターの心に影響を受けるのだと思う?」
    「え…………?」
    「見覚えのある景色や見覚えのある物が、この世界に溢れていると思った事は?」
    「………………ある………………」
    「何故、皆が真実を教えたがらないか、わかる────?」
    「………………わかんない……………………」
    「その全ての答えは、この一言に集約されるわ────────、」

    燕は目を大きく開けどんな些細な音も聞き逃すまいと、ココラージュの次に発する言葉に、その口元に集中した。


    「この世界が、赤羽燕、【】だからよ」
    「───────。私の…………心の中の世界……………………?」

    その言葉に燕は困惑した。
    確かに思い当たる節はこれまでいくつもあった。そう考えたこともあった。ただ、それは受け入れ難い真実だった─────

    「そう。ここは貴女の全てが全てのものに影響を及ぼす、影響する世界!!インフルエンスワールド!!そして貴女はこの世界の創造主ッ!マスターなどという言葉は失礼なくらいの偉大な存在ッ!    言ってしまえば、貴女はこの世界における『神』なのよ─────ッ」
    「私が─────、神…………?」

    ココラージュは両腕を広げ、どんどんと興奮気味に話を進めていった。

    「そうッ!   神ッ!   マスターがその気になればなんだって出来る!    全てが思いのままに世界は動くッ!  
    煌度なんか目じゃない位の、言葉通りのよ─────ッ!
    未来は全て貴女の手の内にある。
    ここは─────、ゼルプストは貴女そのものなのだから──────ッ。
    ──────、だからこそ…………だからこそ私は貴女を殺さなければならない…………!」
    「…………どうして…………!?」

    ココラージュは興奮した自分に気づいたのか、少し間を起き両腕を下におろした。そして燕顔をみた。それは今までにない表情だった。

    「少しだけ、昔話をしましょう──────。自分の非に気づきもせず死ぬなんて、ぬる過ぎるもの──────」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

鋼なるドラーガ・ノート ~S級パーティーから超絶無能の烙印を押されて追放される賢者、今更やめてくれと言われてももう遅い~

月江堂
ファンタジー
― 後から俺の実力に気付いたところでもう遅い。絶対に辞めないからな ―  “賢者”ドラーガ・ノート。鋼の二つ名で知られる彼がSランク冒険者パーティー、メッツァトルに加入した時、誰もが彼の活躍を期待していた。  だが蓋を開けてみれば彼は無能の極致。強い魔法は使えず、運動神経は鈍くて小動物にすら勝てない。無能なだけならばまだしも味方の足を引っ張って仲間を危機に陥れる始末。  当然パーティーのリーダー“勇者”アルグスは彼に「無能」の烙印を押し、パーティーから追放する非情な決断をするのだが、しかしそこには彼を追い出すことのできない如何ともしがたい事情が存在するのだった。  ドラーガを追放できない理由とは一体何なのか!?  そしてこの賢者はなぜこんなにも無能なのに常に偉そうなのか!?  彼の秘められた実力とは一体何なのか? そもそもそんなもの実在するのか!?  力こそが全てであり、鋼の教えと闇を司る魔が支配する世界。ムカフ島と呼ばれる火山のダンジョンの攻略を通して彼らはやがて大きな陰謀に巻き込まれてゆく。

セレナの居場所 ~下賜された側妃~

緑谷めい
恋愛
 後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

王が気づいたのはあれから十年後

基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。 妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。 仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。 側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。 王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。 王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。 新たな国王の誕生だった。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...