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第一章【光と闇・そして崩壊】

闇に侵食される町

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    ■■■■■■■■■■■


    燕達が急いでいる頃。
    こちらプラムベリーはゼルプスト始まって以来の大混乱に陥っていた。

    十数分前、ゼルプスト周辺に大勢の煌闇のカラクター達が押し寄せた。
    突如として、どこからともなく現れた煌闇のカラクター達に、プラムベリーの住人達は驚いた。

    煌闇のカラクターはその数の多さと嵐の如き勢いで、煌度の低い者を中心に次々と襲撃すると、町は瞬く間にパニックに陥り、力の無い幼い子らはあっという間に煌闇のカラクター達の手に落ちた。

    「あ、あんまり傷つけないでね。この子達には利用価値があるんだから」

    この軍勢の陣頭指揮を執っていたのがヌーであった。
    その姿はまた一段と大人に近づいた様にも見え、勇ましささえ伺える。

    「ヌー、こっちはあらかた捉えたよ」
    「よし、じゃあヌー達もココラージュ達の所へ向かおうか」

    ヌーを先頭にして、両手を縛られた煌光のカラクター達は列を成してそれに続き歩き始めた。

    このプラムベリーはゼルプストでも大きな町だが、見えている数だけなら今は煌闇のストーンの方が多いだろう。それだけ彼等の襲撃は凄まじい規模だった───────


    この時、プラムベリーの中央神殿の広間で行われていたが【煌光クラス特別会議】だ。
    先立って宣戦布告された事に対し、居合わせた光度の高いカラクター達が、急遽話し合いの場を設けていたのだ。

    「じゃあ張り切ってー、会議を始めようー!  おおー!」

    このヒラヒラのドレスに身を包み、いかにもお姫様といった見た目の『リーチアリス』【ターコイズ】のストーンを持ち、現在の光度は9。その人気の高さから、多くのカラクター達が集まりこのプラムベリーが出来たと言われる程の逸材。だが今はご覧の通り、小さな子供。でもこの町のリーダー。

    「それはいいんだけど、なんで俺っちもここに呼ばれたの?」
    
    この椅子を一人だけ後ろに倒しながら落ち着きの無い、男の子型のカラクターは『グリード』光度は14。【カフェオレ】のストーンを持ち、料理が得意。彼の作る料理は美味いと、ゼルプストでも評判。

    「グリード、君のストーンはその特性上、光度の変化が起きにくくとても安定している。つまり、それがそのまま信頼に繋がるという事だよ。それに君は独創性もあり、頭も切れる」

   そんなグリードに対し意見を述べたのが『ノイ』光度は11。【大水仙】のストーンを持つ。現在は能力を発揮する事は出来ないが、かつてはブライテスト・ストーンを持っていた。そんな今でも、その頭脳はゼルプスト一と名高い。
    
    「ゼルプスト始まって以来の緊急事態です。頼りになるものは一人でも多い程いいでしょう。グリードもどうか力を貸して下さい」
    「そ、そうっすか?    ヴィーアさんにそう言われちゃ仕方ないっすねぇ!」

    『ヴィーア』は【ローズレッド】のストーン。言わずと知れた、数少ないブライテストス・トーンである光度17の持ち主。その力は凄まじく、今まで一度たりとも減光したことは無い。リーヤ村のリーダー。

    「でも会議って言っても難しいよな……今まで戦争なんて誰もやった事ねぇ訳だし…………あぁもぅ、何から話始めりゃいいんだよ」

    そう頭を抱えたのが『コチトラ』光度13の【ミストグリーン】は、かつてのブライテスト・ストーン。その特性は勇気であり、絶対に折れない剣を作り出すことが出来る。

    「まずは話し合いの場を設けてみては如何でしょう?    光、闇の違いはあれど、我々は同じカラクターです。いきなり戦争だなんて、少し考えられないですよ」

    この子は『オプティ』スーツを身に纏いクールな印象を持った女性型。【チェリーレッド】のストーンを持つ現実主義者。光度は15と高い。

    「そうだよ。煌闇の方も今頃後悔してると思うよ?    きっと引くに引けないんだよ……」

    ほんわかした口調の『ラテラテ』【ボルトグリーン】で光度は10。優しく人を咎めることは無い。ここ数年で力をかなり落とした。

    「まぁ。なんとかなるよ。うん。大丈夫、大丈夫」

   のんきな発言をするのは『プル』【プルプル】のストーンを持ち、光度は12。楽観的だが、上手くその場のバランス調整を効かせたりする、貴重な存在。

    以上がテーブルを囲んで座り、部屋の隅には光度の低い子供のカラクターが数人立っている。

    しかし話し合いの場と言ってもなんとも締まりが無い。
    リーダーのリーチアリスはお菓子に手を伸ばし、退屈そうなグリードに、危機感の無いラテラテとプル。唯一まともそうなのはオプティ位か…………

    その温度差にコチトラは我慢ならずに声を張り上げた。

    「お、前、ら、なぁ!   この状況が分かってんのか!?    こうしてる間にも、煌闇の奴らが攻めてくるかも知れねぇんだぞ?    ちっとは真面目に考えろ!」

    ───と、幾らコチトラが訴えかけても、彼等の熱は上がらない。

    ──────何故なら、彼等はこれまで平和だったから。
    過去にいざこざはあったものの、煌闇とは上手く付き合ってきたし、言っても同じカラクターだ。少なくともここにいるプラムベリーの住人は、戦争だなんて言われてもピンと来ない。ましてや攻めてくるだなんて考えは、これっぽっちも持ち合わせていなかった。

    「コチトラ。大丈夫。なんとかなるって」
    「プル、おまえなぁ!  実際に俺達のリーヤ村は───────────」

    その時、広間の扉が勢いよく開くと同時に、数人のカラクターがなだれ込んできた。
    その子達は実に慌てた様子で、バラバラで聞き取り辛いが、どのカラクターも必死の口振りで、同じ事を言っているように聞こえた。

    『凄い数の煌闇のカラクターが攻めてきた─────』

    それを聞いた一同は固まった。
    本当にそんな事が……………………

    それでも信じられない様子のリーチアリスは、念の為もう一度かけ込んできたカラクター達に聞いてみた。

    「ねえねえ、それ本当に本当?」

    愛らしい表情から出された質問に答えたのは、目の前の子達ではなく、駆け込んできた開きっぱなしの扉の向こうから、その返事は返ってきた──────

    「本当に本当だよ────」

    ───────ッ!!

 真っ黒なワンピースから、スラッと伸びた手足。端正な顔立ちに、ほんのりメイクが映える、一際大人びたその風貌。
    胸元で闇を放つのは【墨色】のストーン。そのストーンの闇度は誰が見ても17。闇のブライテスト・ストーンだ。
   このカラクターの正体は──────
    
    「──────ッココラージュ……ッ、てんめぇ…………」
    「コチトラ、久しぶりね。で、グリード、ラテラテ、プル、リーチアリス、ノイとコチトラ、そして────、ヴィーア。まさかこんなに居るなんて驚きだわ」

    ココラージュと共に広間に足を踏み入れたのは全部で五名。
    場は一触即発の事態へと変貌を遂げた──────

   「さぁ。始めるわよ。──────」



    
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