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第一章【光と闇・そして崩壊】
パティーク
しおりを挟む薄れゆく意識の中、咄嗟に頭に浮かんだ言葉──
(シークレット・ストーリア…………)
沈みゆく意識の中、燕は頭に浮かんだその言葉を無意識に繰り返していた。
すると──────
瞬間的に、だが、爆発的な光が燕を中心にして放たれた。
風圧を感じるのではないかという程の光が駆け抜け、ありとあらゆる物を透過し進んでいく。
「うわっっ」
「うわうわっ」
双子のカラクターも思わず手で身を庇うほどの光が、その体を通り抜けた。
遮られることの無いこの光は一体どこまで進んで行ったのだろうか────
「なっなんだ今のは……」
「なんだなんだ、今のは!」
突然の出来事に双子のカラクターは自分の手足を見たり、周りを見渡し異変が起きてないかを確認したが、これと言った異常は見られなかった。
「ビックリさせやがって」
「ビックリビックリだぞ!」
「やっぱりマスターは危険だから、止めを刺しておこうか」
「このマスターは危険だから、殺しちゃうんだぞ!」
双子のカラクターは未だ体から白い光を放つ燕を危険と判断し、二人の手と手を合わせ、大きな砂利水の水球を作り出した。
「潰しちゃうよ」
「そうねそうね、潰しちゃうぞ」
そして狙いを定め、その砂利玉を燕目掛けて放とうとした、まさにその時────
「待て────ッ」
この二人の行いに、待ったをかける声が家中に響いた。
声の方向には、フードを被ってはいるが先程の声から察するに男の子。そしてその隣には、それよりひと回り小さな女の子が居た。
燕が光を放っている事で、男の子の目には、砂利水の中に薄ら人影が見えていた。
そして男の子の連れている、小さな女の子は双子の方を見ながら問いただす────
「ここで何をしていたのだ。グララ、ヴィエラ。このパールホワイトの光はなんだ? 中に居るのは誰だ?」
「パティ子か、生憎様、そちらには関係無い事だから。言う必要は無いね」
「そうねそうね、言う必要は無いぞ!」
「パティ子じゃない、パティークだ。この現場を見せられて、言い逃れが出来る訳がなかろう」
その言葉に双子のグララとヴィエラは、そうはさせまいと身構えた。
「どうやら分からせてやる必要があるみたいだね」
「そうねそうね、分からせてやる必要があるんだぞ!」
それを受けフードの男の子は急かすように、パティークに助言を求めた。
「どうしようパティ子、早く助けた方が────」
「そうだね──、私が二人を止めておく。その間に中にいる者を助け出してくれないか? まさかの「泳げない」とかはよしてくれよ?」
「よしきた、任せろ。パティ子の方こそ大丈夫か?」
「見かけによらず、根性の座った奴だ。私なら大丈夫。光度もギリギリ12を保ってる。だが、早い方がいい────。いいか、行くぞ」
パティークは双子の注意を引くように一歩前に出ると、すかさずしゃがみこみ床に向かって両手をかざした。
「【希望の発芽】」
すると、声とともに床に小さく可愛い芽が生えた。これがパティークの特殊能力。
「知ってるよ、パティ子の能力は」
「そうねそうね、能力も知ってるぞ知ってるぞ!」
「その芽が出ている間、状態強化をかけることができるんだよね? それにしても可愛い芽が出たじゃない。相当力が落ちてるみたいだね」
「そうねそうね、可愛いがすぎるぞ!」
グララとヴィエラは、以前のパティークを知っているが故、その力の落ち具合を嘲笑った。
「お前達こそ、二人の力を合わせなければ能力も使えない、半人前ではないか」
「パティ子は馬鹿だな、何年生きてるの? 未だに足し算も出来ないなんて。11+11=22になるんだよ?」
「そうねそうね、パティ子は馬鹿だぞ!」
二人が言っていることは大袈裟だが、確かに手と手を合わせた時、グララとヴィエラの闇の力は増している。察するにその闇度は14相当────
単純に考えればパティークに勝ち目はなさそうだが、実際はそうでは無い。
「二人に言っておく、戦闘は算数じゃない。ましてや煌度で戦うものでもない。戦闘は─────」
急ぐ理由がある為、パティークは話も途中に双子に飛びかかった。状態強化の能力のおかげで、そのスピードが予想よりも遥かに速い。
双子の手と手を合わせないように、間に割って入り、まずはグララを抑えにかかった。
だが二人もそう易々とやられはしない。一人は妨害、一人は回避と息の合ったコンビプレーをみせてくる。
「やっぱりね、この程度なら楽勝だね!」
「やっぱりねやっぱりね、この程度なら大したことないぞ!」
グララとヴィエラはパティークを撹乱し、絶妙な間合いに逃げ込むと、すかさずお互いの手と手を合わせにかかった。
「吹っ飛んじゃえ!」
「そうねそうね、吹っ飛べ!」
「「大胆な主張!!」」
──────ッ
二人の息を合わせた、完璧な合体技だった筈なのに、この時何故か能力が発動されなかった。
そしてその瞬間をパティークは見逃さなかった。
戸惑うグララの背後に瞬時に回り込むと、強化した力で二人を引き剥がした。
そしてグララの喉元にナイフを突き立て勝負あり。
「動くな────」
この一連の流れが終わる頃に、男の子が燕の救出に成功し、パティークの作戦が完全にハマった形となった。
「なんで……」
「なんでなんで……」
負けたショックと力が発揮されなかった事のダブルショックで、二人はトーンを落としていた。
「相手が君達だったから勝てたのだ。実は私が強化していたのは、自分だけでは無い」
「「え────っ」」
「私の今の能力は確かに弱い。オマケに一人にしかかけられない。だが、強化する相手は選ぶ事はできる。だから、私は敢えてヴィエラ、君を瞬間的に強化した」
「その瞬間ってのが……」
「そうねそうね、きっと能力を使う瞬間だったんだぞ……」
「なかなか賢いんだな。その通りだ。君達の煌度やパワー、スキルが等しいからこそ成り立った合体技、そのバランスを少しだけ崩させて貰ったのだ」
だがその種明かしがヒントとなり、ヴィエラは瞬間的に閃いた。
パティークの能力の源である、あの小さな芽。あれさえ潰していまえば、まだ逆転できるのではないだろうか──────と。
そうとなれば、勝ちを確信して油断している今こそチャンス。
気づかれぬように、足先を僅かに芽のある方に向けた────
「動くな、と言った筈だが? 君もカラクターなら、これが何か分かるよな?」
ヴィエラの動きを悟り、それを制したパティークが手に取って見せつけた物は、グララのカラクター・ストーンである。
それを見たヴィエラは青ざめた。
「これが壊れたらどうなるかは知っての通り。君達は負けたのだ」
「「うぅ…………」」
「さすがに私も鬼では無い、だがこれ以上絡まれるのも、私達も御免だからな。悪く思わないでくれ──────」
そう言ってパティークは、自らを強化したその腕で、グララのストーンを空いた入口から外に投げ出飛ばした。
投げ飛ばされたストーンは物凄い速さで飛んでいき、あっという間に闇夜の彼方に消え去っていった……
「あーーっひどい!」
「ああぁっひどいぞひどいぞ!」
「早く探しに行かないと、動物達に拾われてしまうかもしれんな」
パティークがそう言うと、グララとヴィエラはストーンを探す為に、大慌てで
外に飛び出して行った。
「強化した腕で投げた闇を放つストーンだ。この暗闇では当分は戻っては来れないだろうな」
────という形で決着がつくと、パティークは助けたカラクターがどの様な者だったのかが気になり、男の子の元へと足を運んだ。
このパティークでさえもパールホワイトの光を放つカラクターなど、会ったことも無ければ聞いた事すら無く、興味は尽きない───
近づいた先では、男の子が寝そべる女の子を見つめているが、なんだか様子がおかしい。
「どうした、何かあったのか? 徳」
「居たんだ……やっと会えた………燕が……」
「なに!?」
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