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第三章 【誓】
圧倒的
しおりを挟む──第四試合──
原海香VS川端未来。
問題児を纏めるキャプテン、川端未来。その実力はというと──、
「まっひー先輩、なんか川端選手って、もしかしてそんなに強くない……んですか?」
「まぁ、正直風北がここまで上がってくるのは予想外だったな。風北は俺達同様、弱小チームだった。特に目立った成績をあげた選手も居ないし、キャプテンの川端未来も例外じゃねぇ。ま、それを差し引いてもこの試合展開は、なぁ……」
【6ー0】
圧倒的実力差。
海香の力は紛れもなく全国クラスにある。
今までも飛び抜けた強さだったが、何か、更に吹っ切れたような。また一つ上の強さを手に入れたかのような、衝撃的なまでの卓球。
強烈なドライブに遊び心が加わり、プレイの幅が格段に広がっている。そして何より、側から見ても楽しそうである。
「海香先輩のカットボール! 珍しい……」
「強えぇ……これラブゲームやっちまうんじゃねぇか!?」
「本当、味方で良かったよね……あはは」
【8ー0】
──原海香。強い……強すぎる……
どんな大勢からでも打てるドライブ。
その種類も豊富で、中には見たこともない様なドライブもある。
回転量も半端じゃない。これをドライブで返すのは無理だ。絶対に打ち負ける。
回転が分かっても、ストップやブロックも、大袈裟にやらないとどこに飛んでいくか。
かといってドライブ一辺倒でも無い。
ドライブを餌に、スマッシュやチキータ。カットボールも使ってくる。
プロだよ……
こんなの……
勝てっこないよ……
なんで私達の前に……立ちはだかるんだ……──
【11ー1】
圧倒的だった。
川端未来が1点を取っているが、これはラブゲームを避けた海香にもらった様なもの。
大人と子供。
その位の力差が二人にはあった。
──第二セット──
セットが変わっても海香の圧倒的優位は変わらない。
【3ー0】
──私の心、どうしちゃったのかなー。心って本当に重さがあるのかな? 私の体重3キロくらい軽くなった? なんちゃって──
【5ー1】
バックドライブ──
【6ー1】
シュートドライブ──
【7ー2】
ループドライブ──
【8ー2】
川端未来が可哀想になる程の試合展開。それでも海香は手を緩めたりはしない。ここで手を緩めたならば、相手のプライドは更に傷つくだろう。全力で立ちはだかる事こそ礼儀というものだ。
──川端さんはまるで私だ。何か、物凄く重いおもりを背負って卓球してるみたいだ。苦しそう。全然楽しんでない。勝ちたい気持ちは伝わってくるけど、それって何か。もったいない──
【10ー2】
追い詰められた川端未来のサーブ。
一矢報いる為の──
流れを変える為の──
ルール違反だということは知っている。
ボールをトスする前、隠れて指でピンポン球を僅かに潰した川端未来。
そうして打ち込まれた打球は不規則な変化と、海香の手元で有り得ないバウンドとなって襲いかかった。
海香はその変化に驚き、思わずボールを大きく台から逸らしてしまう。
【10ー3】
すぐにそれが意図的に行われた不正だと分かったが、海香は審判に抗議する事をしなかった。
──原海香。私とあなたは違う。置かれた状況、経験してきた事。価値観。
全然違う──、
私は……私達は、どんな事をしてでも勝たなきゃいけないの。負けられないの。
悪く思わないでね。──
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