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第二章【越】
激突!月裏中
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── 一方の念珠崎チーム──
初戦に続き、二回戦をセットカウント【3-1】で勝ち抜き、勝てば県大会進出となる三回戦を目前にしていた。
次の相手は『月裏中』である。月裏中はベスト4の常連で、過酷な練習で知られる強豪校だ。
いくら念珠崎のレベルが上がったとはいえ、苦戦は免れない。全中の個人戦でも県大会に行った選手も多い、難敵である。
県大会を目指す上で、絶対に越えなければならない高い壁。
が、この時間になっても海香は来ない──
「来ませんね……海香先輩」
「あんにゃろ、県大会では馬車馬のように働かせてやる」
「海香先輩、もしかしてイップスの事──、」
「バッキャローッ! 海香はそんな理由ですっぽかす奴じゃねぇ!!」
乃百合の不用意な発言にまひるは噛み付いた。
乃百合自身、そんな事は思っていないが思わず口から零れてしまったのだ。
「その通りです! 変な事言ってすみません! 私も海香先輩の事そんな人だなんて思っていないですから!」
乃百合の平謝りに、まひるは鼻を鳴らしそっぽを向いた。
「まあまあ。今は力を合わせて月裏中を倒すことを考えようよ。海香をビックリさせてやろうよ」
間を取り持ったのは藤島桜。
熱くなりやすいまひるに対し、冷静に場を見極めることの出来る桜が居ることは、下級生にとっても心強い存在だ。
桜は乃百合とまひるの手を取り整列を促した。
今は目の前の相手に集中する。そして勝って県大会への切符を手に入れる事が最重要項目だ。
「行くよ」
向かい合って並ぶ月裏中の選手は、一回戦、二回戦の相手とは違った雰囲気を感じた。強豪校に相応しいオーラと、貫禄を十分に感じさせる佇まいに、一年生三人は少し気後れをした。
──ここを勝てば県大会──
「「宜しく御願いしますッ!!」」
ベンチに戻ると、まひるは早速第一試合の準備を始めた。相手はまひるのあまり知らない選手だった。桜に聞いても、首を傾げるばかりで情報があまり出てこない。
第一試合はエースである『鶴岡琴女』が出てくるものだと思っていた為、まひる達は裏をかかれた形になった。月裏中は間違いなく後半勝負。
因みに琴女は第五試合、最後の試合で乃百合とぶつかる。琴女は先の全中で東北大会にまで進んだ強者で、月裏中の絶対的エースである。その為、なんとか第五試合まで引っ張らず、前の四つで勝ちを決めたい所だ。
「ッよし! 行ってくる!」
「まっひー先輩! 頑張ってください!」
「冷静にね、まっひー。まっひーなら勝てるよ」
チームメイトに送り出され、まひるの第一試合が始まった。相手は聞いたことの無い名前だが、月裏中のレギュラーメンバー。気を抜くとまひるであってもヤラれる可能性はある。
「興屋さん対加藤さん、第1ゲーム、興屋さんサービス、0-0」
最初のサーブはまひるからだ。
いつもの様に高く上げられたトスからの、まひるらしい力強いサーブが相手コートに伸びていく。
その初球を加藤はやや後ろに下がりカットボールで返してきた。
──カットマンか? 正直、苦手なんだよな……──
周りの人はそう思っていないが、まひるはカットマンを苦手としていた。
早いラリーで崩し、強いスマッシュで撃ち抜くのが得意なまひるは、後ろに下がって受けるカットマンを相手にするのが嫌いだった。特に気の短いまひるは、ラリーが長引くほどミスをしてしまう傾向にある事を、自分でもよく分かっていた。
案の定、この試合も一点目から長いラリーが展開される事になる。
──ああ、もうッ! しつけぇ!!──
力任せに振り抜いた打球は、加藤の伸ばしたラケットをすり抜け、初得点をもたらした。
「よっしゃ!」
【1-0】
半ば強引に加藤を振り切ったまひるは、続くサーブでもラリーの末得点をもぎ取った。
その後もまひるの嫌いなラリー戦が続くが、相手もしつこくボールを拾い続ける。
【11-6】
結果的にこのセットを奪い、力の差を見せつけた形になったが、この後のセットは思わぬ苦戦を強いられる事になる。
──第二セット──
執拗なまでの加藤のカット。ラリーが続く程にまひるの苛立ちが募っていく。
【6-4】
──コイツ、全然攻撃して来ねぇ。前に出てくりゃ楽なのに──
【8-6】
それでもまだまだ力の差はある。
まひるの早いスマッシュを拾い続けるのはいくらカットマンとは言え、守り一辺倒では辛いものがある。
【11-8】
「きたぁ! まっひー先輩が連取! あと一つで勝ちですね」
「そうなんだけど、まっひー……ちょっと動きが悪いんじゃない?」
桜の言う通り、まひるの動きが落ちてきたように見える。体力に自信のあるまひるが、僅か二セットで目に見えて落ちるのは珍しい事。
その裏には、これまでの試合経過がある。
──第三セット──
まひるは第一試合と第二試合で、シングルスとダブルスの両方に出ていて、既に四試合を戦っていた。特にダブルスでは、立ち位置を入れ替えたり、和子のサポートをしながらの試合になる為、体力の消耗が激しい。まひる自身、知らずのうちに疲労が貯まっていたのだ。
【2-1】
【4-3】
ミスも目立ち始め中々引き離せない。
【5-5】
そればかりか、打球のスピードが目に見えて落ち、拾われる事も多くなって来ている。このままでは──、
【8-11】
その後一方的に得点を許したまひるは、このセットを落とした。
──第四セット──
まひるの動きが更におかしい。
全く攻める気配がなく、気迫も感じられない。
言葉悪く言えば、わざとネットにかけている様にすら見えてくる。
「ちょっと、桜先輩! まっひー先輩が……やる気無くなっちゃったんですか……あれ」
「まひるは気分屋だけど、勝負を捨てる様な娘じゃないよ」
【0-4】
「でも、絶対変ですよ……疲れてるのかも。タイムアウトを取りましょう!」
「タイムアウトは自分で取るって言われてるんだ。だからここはまっひーに任せるよ」
「そんな……」
【2-6】
部員達の心配と声援を他所に、まひるはいとも容易くこのセットを落とした。
【4-11】
まひるの実力からは考えられない程の大差を付けられ、遂にセットカウントは【2-2】
強豪相手に一試合目から落とすのは正直厳しい。
「タイムアウトお願いします」
最終セットが始まる前にまひるはタイムアウトをとった。
ベンチに 戻ってくるまひるに対し、部員達はどんな言葉をかけようか悩んでいた。機嫌が悪いのか、それとも調子が悪いのか──、と。
そんな部員達の気持ちも知らずに、まひるはベンチに座るとラケットを乃百合に手渡してきた。
「乃百合、ちょっと持っててくれ」
「えっ、ちょっと……え!?」
乃百合はまひるのラケットの重さに少し驚いた。乃百合の想像していた重さより、随分重かったからである。
そして短いタイムアウトが終わると、まひるは立ち上がって、乃百合からラケットを受け取った。
「一分って短けーな。んじゃま、サクッと終わらせてくるから! ブッケンも準備しておけよ」
苛立つどころか、笑顔で試合に戻る姿に一年生は驚いていたが、桜はそれを見て嬉しそうに笑った。
初戦に続き、二回戦をセットカウント【3-1】で勝ち抜き、勝てば県大会進出となる三回戦を目前にしていた。
次の相手は『月裏中』である。月裏中はベスト4の常連で、過酷な練習で知られる強豪校だ。
いくら念珠崎のレベルが上がったとはいえ、苦戦は免れない。全中の個人戦でも県大会に行った選手も多い、難敵である。
県大会を目指す上で、絶対に越えなければならない高い壁。
が、この時間になっても海香は来ない──
「来ませんね……海香先輩」
「あんにゃろ、県大会では馬車馬のように働かせてやる」
「海香先輩、もしかしてイップスの事──、」
「バッキャローッ! 海香はそんな理由ですっぽかす奴じゃねぇ!!」
乃百合の不用意な発言にまひるは噛み付いた。
乃百合自身、そんな事は思っていないが思わず口から零れてしまったのだ。
「その通りです! 変な事言ってすみません! 私も海香先輩の事そんな人だなんて思っていないですから!」
乃百合の平謝りに、まひるは鼻を鳴らしそっぽを向いた。
「まあまあ。今は力を合わせて月裏中を倒すことを考えようよ。海香をビックリさせてやろうよ」
間を取り持ったのは藤島桜。
熱くなりやすいまひるに対し、冷静に場を見極めることの出来る桜が居ることは、下級生にとっても心強い存在だ。
桜は乃百合とまひるの手を取り整列を促した。
今は目の前の相手に集中する。そして勝って県大会への切符を手に入れる事が最重要項目だ。
「行くよ」
向かい合って並ぶ月裏中の選手は、一回戦、二回戦の相手とは違った雰囲気を感じた。強豪校に相応しいオーラと、貫禄を十分に感じさせる佇まいに、一年生三人は少し気後れをした。
──ここを勝てば県大会──
「「宜しく御願いしますッ!!」」
ベンチに戻ると、まひるは早速第一試合の準備を始めた。相手はまひるのあまり知らない選手だった。桜に聞いても、首を傾げるばかりで情報があまり出てこない。
第一試合はエースである『鶴岡琴女』が出てくるものだと思っていた為、まひる達は裏をかかれた形になった。月裏中は間違いなく後半勝負。
因みに琴女は第五試合、最後の試合で乃百合とぶつかる。琴女は先の全中で東北大会にまで進んだ強者で、月裏中の絶対的エースである。その為、なんとか第五試合まで引っ張らず、前の四つで勝ちを決めたい所だ。
「ッよし! 行ってくる!」
「まっひー先輩! 頑張ってください!」
「冷静にね、まっひー。まっひーなら勝てるよ」
チームメイトに送り出され、まひるの第一試合が始まった。相手は聞いたことの無い名前だが、月裏中のレギュラーメンバー。気を抜くとまひるであってもヤラれる可能性はある。
「興屋さん対加藤さん、第1ゲーム、興屋さんサービス、0-0」
最初のサーブはまひるからだ。
いつもの様に高く上げられたトスからの、まひるらしい力強いサーブが相手コートに伸びていく。
その初球を加藤はやや後ろに下がりカットボールで返してきた。
──カットマンか? 正直、苦手なんだよな……──
周りの人はそう思っていないが、まひるはカットマンを苦手としていた。
早いラリーで崩し、強いスマッシュで撃ち抜くのが得意なまひるは、後ろに下がって受けるカットマンを相手にするのが嫌いだった。特に気の短いまひるは、ラリーが長引くほどミスをしてしまう傾向にある事を、自分でもよく分かっていた。
案の定、この試合も一点目から長いラリーが展開される事になる。
──ああ、もうッ! しつけぇ!!──
力任せに振り抜いた打球は、加藤の伸ばしたラケットをすり抜け、初得点をもたらした。
「よっしゃ!」
【1-0】
半ば強引に加藤を振り切ったまひるは、続くサーブでもラリーの末得点をもぎ取った。
その後もまひるの嫌いなラリー戦が続くが、相手もしつこくボールを拾い続ける。
【11-6】
結果的にこのセットを奪い、力の差を見せつけた形になったが、この後のセットは思わぬ苦戦を強いられる事になる。
──第二セット──
執拗なまでの加藤のカット。ラリーが続く程にまひるの苛立ちが募っていく。
【6-4】
──コイツ、全然攻撃して来ねぇ。前に出てくりゃ楽なのに──
【8-6】
それでもまだまだ力の差はある。
まひるの早いスマッシュを拾い続けるのはいくらカットマンとは言え、守り一辺倒では辛いものがある。
【11-8】
「きたぁ! まっひー先輩が連取! あと一つで勝ちですね」
「そうなんだけど、まっひー……ちょっと動きが悪いんじゃない?」
桜の言う通り、まひるの動きが落ちてきたように見える。体力に自信のあるまひるが、僅か二セットで目に見えて落ちるのは珍しい事。
その裏には、これまでの試合経過がある。
──第三セット──
まひるは第一試合と第二試合で、シングルスとダブルスの両方に出ていて、既に四試合を戦っていた。特にダブルスでは、立ち位置を入れ替えたり、和子のサポートをしながらの試合になる為、体力の消耗が激しい。まひる自身、知らずのうちに疲労が貯まっていたのだ。
【2-1】
【4-3】
ミスも目立ち始め中々引き離せない。
【5-5】
そればかりか、打球のスピードが目に見えて落ち、拾われる事も多くなって来ている。このままでは──、
【8-11】
その後一方的に得点を許したまひるは、このセットを落とした。
──第四セット──
まひるの動きが更におかしい。
全く攻める気配がなく、気迫も感じられない。
言葉悪く言えば、わざとネットにかけている様にすら見えてくる。
「ちょっと、桜先輩! まっひー先輩が……やる気無くなっちゃったんですか……あれ」
「まひるは気分屋だけど、勝負を捨てる様な娘じゃないよ」
【0-4】
「でも、絶対変ですよ……疲れてるのかも。タイムアウトを取りましょう!」
「タイムアウトは自分で取るって言われてるんだ。だからここはまっひーに任せるよ」
「そんな……」
【2-6】
部員達の心配と声援を他所に、まひるはいとも容易くこのセットを落とした。
【4-11】
まひるの実力からは考えられない程の大差を付けられ、遂にセットカウントは【2-2】
強豪相手に一試合目から落とすのは正直厳しい。
「タイムアウトお願いします」
最終セットが始まる前にまひるはタイムアウトをとった。
ベンチに 戻ってくるまひるに対し、部員達はどんな言葉をかけようか悩んでいた。機嫌が悪いのか、それとも調子が悪いのか──、と。
そんな部員達の気持ちも知らずに、まひるはベンチに座るとラケットを乃百合に手渡してきた。
「乃百合、ちょっと持っててくれ」
「えっ、ちょっと……え!?」
乃百合はまひるのラケットの重さに少し驚いた。乃百合の想像していた重さより、随分重かったからである。
そして短いタイムアウトが終わると、まひるは立ち上がって、乃百合からラケットを受け取った。
「一分って短けーな。んじゃま、サクッと終わらせてくるから! ブッケンも準備しておけよ」
苛立つどころか、笑顔で試合に戻る姿に一年生は驚いていたが、桜はそれを見て嬉しそうに笑った。
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