しぇいく!

風浦らの

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第一章【挑】

レギュラー発表

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    ■■■■

    小学校を卒業した乃百合達は、特別な児童では無かった為、そのまま地元の中学校(念珠崎ねんじゅざき中学校)に通っていた。
    この中学は、過疎化が進む地方故に五つの学区から構成されている。
    それでも全校生徒は二百人にも満たない小規模な中学校だ。

    そこで乃百合とブッケンは二人共卓球部に入り、先輩達の元で練習に励む日々を送っている。そして今日は全日本中学卓球選手権大会、地区体会前の、団体戦の練習試合に出場する選手が発表される日だった。

    念珠崎中の女子卓球部は、
    三年生が五人、
    二年生が三人、
    一年生が四人の
    全部で十二人しか居ない。

    元より全校生徒が少ない上に、女子はその半分しか居ない。そして他の部活道もある為、この人数になってしまうのは仕方が無く、男子卓球部に至っては、人が集まらず今は休部中だ。部が存続しているだけでも有難い事なのだ。
   しかし逆に言えばレギュラーになれるチャンスも大きい。確かに上級生は上手いが、乃百合には小学校の時に個人で県大会に出場した実力があった。

    体育館の一角に集められ、体育座りをして名前を呼ばれるのを待つ生徒達。
    名前を呼ばれた者から顧問の先生からゼッケンを受け取るシステムだ。つまりゼッケンを貰えたら団体戦のレギュラー、という事だ。
   因みに顧問の先生は、乃百合達と同時期にこの学校にやって来た新任教師だが、嘘か誠か全国大会に出場した事もあるという噂もあるらしい。

    「では名前を呼ばれたら返事をしてゼッケンを受け取りに来るよーに。先ずはキャプテン、築山文つきやまふみ
    「ハイッ」
   「次、二番、関翔子せきしょうこ
    「ありがとうございます!」
    「次、三番、児島南こじまみなみ
    「はい!」
     「次ー、四番。興屋こうやまひる」
     「はーい」
     「五番、原海香はらうみか
     「はいはーい」

     ここまでは三年生と二年生が中心だが、実力重視の選出と言っていい。この先生は、三年生だからと言って優先的に選ぶ、と言った訳では無さそうだ。しかし残るメンバーはあと一人。
    望みは薄いだろうと思いながらも、乃百合は選ばれる事を心の底から願っていた。

    「最後、六番──、六条舞鳥ろくじょうまどり
    「ひゃ、はいっ!    わ、私ですか!?」
    「そうだ。プレッシャーもあるだろうけど頑張れよ。本番もこのままで行こうと考えている。早く準備をして対策を練る。これが私のスタイルだ。以上」

    最後に呼ばれたのは、同じ一年でも乃百合では無くブッケンだった。
    一年生が選ばれた事により少々ざわつきが起きたが、直ぐに驚きは拍手へと変わった。
    しかしながら三年生はこれが最後の大会となる為、内心複雑な心境だろう。そしてもう一人、複雑な顔を浮かべたのが乃百合だった。

     乃百合には、ブッケンより上手いという自負がある。それなのに何故自分では無くブッケンなのか?    と納得がいかなかった。

    「それじゃあ、明日練習試合だからなー。集合に遅れるんじゃないぞ。という事で今日は解散!   気をつけて帰れよー」
   「「ありがとうございました!」」

    解散が告げられ練習が終わると、団体戦メンバーの発表に一喜一憂する部員達で賑やかになった。そんな中、一人一年生ながらに選ばれたブッケンは元々が気弱な性格の為に、少々バツが悪そうである。
    助けを求めるように親友の乃百合に駆け寄り、どうしたものかと声をかけている。

    「の、乃百合ちゃん……」
    「良かったじゃん」
    「わ、私なんかで本当にいいのかな……」
    「頑張ってね」
    
    乃百合の反応は冷たく、明らかに喜んでいる風には見えなかった。

    「ブッケーン、ミーティングするからちょっと来て~」

    そんな中、部長の文先輩に呼ばれたブッケン。
    これからレギュラーメンバーでミーティングをするらしい。こうなると乃百合は更に面白くない。

    「早く行きなよ、部長が呼んでるよ」
    「で、でも……」
    「いいから行きなって」
    「う、うん……」

    乃百合の異変を感じ取ったのか、歯切れの悪いブッケンだったが、部長に呼ばれた為乃百合と別れた。

    ■■■■

    乃百合は、ブッケンを待つこと無く一足先に家に帰っていた。
    どうにもやるせない気持ちが溢れ、家の階段を登る足音にイラつきが現れている。

    「乃百合、ご飯出来てるわよ?」
    「要らない」

    乃百合は母親の声を軽くあしらい、真っ直ぐに自分の部屋に向かうと、そのままベッドに身を投げた。

    「なんで、私じゃなくてブッケンなの?    なんで────」

    
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