凶から始まる凶同生活!!

風浦らの

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第三章【陰陽師編】

ひな祭り

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 三月三日。

 今日は何の日かと言うと、そう。

「恭。今日は私が主役の日だな」

「お前がって言うより、女の子が主役な」

 今日はひな祭りなのだ。そして、サタコにもひな祭りをと、シルシルの計らいで、女の子を家に集めてひな祭りパーティをする事になっていた。

 そして、シルシルの家にお邪魔すると早速豪華な雛人形達が出迎えてくれた。その雛人形は豪華絢爛、七段飾り!流石娘大好きシルパパだ。娘への愛が半端では無い。

 子供の頃は雛人形と言えば、少し怖いイメージのあった俺だが、こうして見ると実に立派で、着ている着物も手が込んでいてなかなかに見応えがある。サタコも女の子だけあって、初めて見る雛人形に興味津々だ。

「おい、サタコ。絶対に触るんじゃないぞ」

 サタコが触るとろくな事が起きない。決まって何かしらのトラブルが起きるのは目に見えている。そして、俺の注意に反応したのか、ギギギギギッと音がしそうな程にゆっくりと振り向くサタコさん。

 マジかよ!最速で注意した筈なのに!

 お内裏様の首を持ち上げてフルフル震えるサタコ。早く戻せよ。

「何してんのぉ!?頭おかしいの?触るのはまだ分かるけど、なんで首を持ち上げちゃうかなぁ!?早く戻しなさい!」

 サタコは「そーっと、そーっと」と呟きながら、なんとか外れた首を胴体に戻そうとするも、手が震えてなかなか上手くいかない。

 その心意気は良いけど、リラックスしてくれ。


 そして──


 ポロッと手から滑り落ち床をコロコロ転がるお内裏様。

 だから言わんこっちゃねぇんだよ!

 そのお内裏様目掛けて飛びかかってくる白い影。シーちゃんこと、白い子猫のシーだ。本能むき出しでじゃれついている。心無しか、お雛様がコッチを睨んでるように見えてきた……


「お願いだからやめてぇぇぇ!?」


 俺の声が部屋に響いたところで、襖を開けてシルシルが登場。

「うふふふ、楽しそうでいいですね!しきたりとか、よく分からないですけど、ひな祭りは楽しくなきゃですね!」

 なんて心が広いんだ。逆に罪悪感が湧いてくるぜ……

「シルシルもこういってる事だし、そろそろオヤツを食べよう」

 だとしても主役の首を転がす奴がいるかよ。というか、もう罪悪感から解放されたのか。すげぇメンタルだな、おい。

「サタコ~、ちょっとは反省しなさいよね~」

 と、シーがじゃれつく首をひょいっと持ち上げて、お内裏様の胴体に戻したのはサク。なんでコイツが居るんだよ。というか、

「逆!逆ぅ!!顔が後ろを向いちゃってるよ!お内裏様拗ねちゃってるよ!!日本のしきたりを舐めんな悪魔共!!」


 ──。


 お決まりのドタバタコメディを終え、テーブルを囲んで皆で『雛あられ』を始めとしたお菓子を頬張る。

「んで、なんでサクが居て涼が居ねぇんだよ。普通逆だろ」

「酷~い、ダーリンったら!私は純度百パーセントの乙女よ!」

 お、おぅ……お前には四月四日という素敵な日が来るから安心しろ。

「涼ちゃんは、俺は男だから行かないって言ってました。今日は夜から福田さんとデートするらしいです」

 シルシルがくれた情報によると、どうやら今日は爆弾が一つ少ないみたいだ。つまり今日特に気をつけるべき相手は……と、サタコに視線を送る。

 サタコは雛あられを口いっぱいに頬張り、まるでリスだ。どんなに食べても栄養にならないからって食いすぎだろ。やっぱりコイツからは目が離せん。

 じーっとサタコを観察していると、その視線に気づいたのか、

「シルシル」

「なんですか?サタコちゃん」

「さっきから恭がイヤラシイ目で見てくるのだが」

 なんて会話をしている。

「そんな目で見てねぇし、そもそもお前のどこにイヤラシイ要素があるんだよ!?」

 こんなチンチクリンの戯言に、誰も食いついてなんて来ねぇよ。

「ンマ!ダーリンったら、私という者がありながら!」

 食いついて来たぁぁ!!

「こんなポンコツ魔王にイヤラシイ目を向けるわけねぇだろ!」

「むむ。聞き捨てならないぞ恭。それが好きな女の子に向ける言葉か?」

 こいつぅ!!こんな場所でなんて事を言ってるんだ!!皆勘違いするでしょうがぁぁぁ!!



 ってあれ?皆全然驚いてない……ひょっとして聞こえて無かったのか??


「凶さん、早くサタコちゃんに謝って下さいね」

「そうよそうよ、サタコが可哀想じゃな~い」

 なんか悪者になってる……

「そうだぞ恭。なんだ?    謝り方を知らないのか?こう、両手を付いて頭をだな……」

 くっ、調子に乗りやがって。

「元はと言えばお前が……」

「謝れないのであればお仕置きだ」

 すかさず鎌を錬成したサタコさん。反論さえ出来ずに、俺は鎌で真っ二つされてしまった。

 ひな祭りにまで運を刈り取られるとは……

 受け入れるしかない。これが俺の人生なんだ!サタコと生きるとはこういう事なんだぜ!さぁ、来い!凶運よ!

 バァァァン!と襖が開かれ、マジョリん登場!!

「話は全て聞かせてもらったわ!」

 何処で聞いてたんすかぁぁぁ!?

 ズカズカと近づいてくるマジョリん。俺の目の前まで来ると、グイッと顔を近づけてきた。

「佐藤恭ぉ、マジョリんの嫌いなものは何でしょう?……ヒック」

 コイツ、酒くせー!

 ※凛ちゃんはちょっと歳上なのでお酒が飲めます。

「え、えと……嘘と……」

「嘘とぉぉ!?」

 ひえぇ……

「げ、ゲス男です」

「そうだろ佐藤恭ぉ!女の子に酷いことを言う奴はゲス男だよねぇ!?」

 コイツどんだけ酒癖悪いんだよ!

「ねぇぇ!?」

「は、はい!その通りであります!」

 正直怖いんですけど……

「そしてぇ、今日の主役はぁ?」

「お、女の子であります!」



 と、いうことでその後、女の子達に弄られ、散々働いた挙句、あらゆるお願いを聞き、クタクタになって家に帰った。


 ──。


「あー疲れたぁ!やっと家に帰ってこれたぁ!」

 俺は最後の力を振り絞り、ドカッとベッドに倒れ込む。

「恭。日付が変わるまではひな祭りだな?」

「まだやるんすかぁぁぁ!?」
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