凶から始まる凶同生活!

風浦らの

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第三章【陰陽師編】

お布団戦争

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 十二月中旬。

 某日夜にて。

「うぅ~寒い寒い」

 流石に東京と言えども、十二月ともなると寒い。布団に潜り込み目をつぶるも、寒さに負けて一向に眠れない。

 負けるな佐藤恭!俺は雪国育ちだぞ?この位の寒さがなんだ!

 再び目を閉じなんとか寝ようと試みる。

 ──。

 あぁ、ようやく布団が温まってきた。これならなんとか……

 寝れそうだと言おうと思ったんだが、何やら足元の布団がモゾモゾと動いている。

 まさか……


 そのまさかだ。足元から忍び込んできたのはサタコさんでした。

「おいぃ!なんで入ってくるんだよ!」

「恭の布団が暖かそうでズルいぞ」

「ズルくねぇよ!俺が俺の為に苦労して温めたんだ、出てけよぉ!眠れねぇだろ」

 侵入を防ごうと、足でグイグイ頭を押し込む!それでも尚、下からの侵入を試みるサタコさん、いい加減に鬱陶しい!

「一緒に寝よぉ?ねぇ一緒に寝よぉ?」

 何キャラだよ!ホラーかよ、怖いんですけど!!

「ねぇ一緒に寝……ぶはっ!」

 グイグイ頭を押し込んでた筈の足が、サタコの顔面にヒットしたらしい……

「お、おーい……大丈夫か?」

「…………ねぇ、一緒に寝よぉ?」

 尚もしつこく忍び込んでくるサタコさん。

「わかった、わかったよ!ホラ、隣に来いよ、もぉ!」

 仕方なく一つの布団で仲良く寝る事に。サタコと一緒に寝るのなんて、いつぶりだろうか。そうあれは確か、ラブホに泊まった時以来か……

 ふとそんな事を思い出しながら、隣で丸まって眠るサタコを見つめる。

 ──ドキンッ──


 俺の心臓が一つ大きく鳴った。


 ──ドキンッ──


 そしてもう一つ。


 ダメだダメだダメだ!俺は何も成長してねぇ。何をドキドキしてるんだ!?サタコは悪魔で子供で同居人だぞ!落ち着け……落ち着くのだ佐藤恭。

 それにしてもコイツはどう思ってるのか?男と女が一つの布団だぞ?いくら二人の方が暖かいからって……

 そんなヤキモキした俺の思いとは裏腹に、サタコが暖かさを求め、俺の腕にしがみついてくる。

 お、おい……

 更には素足を俺の脚に巻きつけ、ガッチリロック。寝巻き越しにだが、確かに伝わる太ももの感触!

 やばっ、俺も男だ、流石にこの状況だと……うっ!

 いやいや、いかんぞコレは。耐えろ俺!んもぉぉ!何考えてるんだよコイツは!!!!

 俺の理性が限界に達しようとしたその瞬間、サタコは絡みついた腕と脚を解き、布団を掴んで寝返りを打った。

 その勢いで、俺に掛かっていた布団はサタコ剥ぎ取られ、代わりにサタコは、みの虫状態。

 コイツ何も考えてねぇぇぇえ!!!


 布団を剥ぎ取られた事により、俺の体は一気に極寒に晒される。

 うおぉぉ寒い寒い寒い!!

 この野郎、返しやがれ!っと布団を掴み、グイッと自分の方へと引き寄せる。

 しかし布団は、サタコに巻きついたままこちらに転がってきた!完全にサタコと一体化してしまっている。これでは布団を掛けることが出来ないではないか!!

 このやろぉ!それは俺の布団だぞ!!

 頭にきた俺は、布団を力任せに思い切り引っ張った!

「き、恭!やめろぉ、今ビリッと音がしたぞ」

 やろう、流石に起きたか。

「おい、サタコ!俺の布団を返せ!」

「ダメだ。今から外に出るなど考えられん」

「常に外に出ている俺はどうなるんだよ!?」

「震えながら眠るがいい」

 なんかカッコイイ台詞言ってるぅぅ!!この悪魔め、そんなこと出来るかよ!

 これが無いと眠れないんだ!と、俺は更に布団を引っ張った!



 それがいけなかった。



 ビリ、ビリビリビリビリッ……という音と共に、中の綿を撒き散らしながら裂けていく布団……もうね、とても掛けられる様な状態では無い。


 破れた反動で布団から投げ出され「あ~ん」と悲しげな声を出すサタコ。しかし次に奪い合う物も既に見えているようだ。それは、サタコが初めに使っていた布団だ。これを奪われたらオシマイ。もう今夜は眠れないだろう。

 二人同時に布団へと飛びかかる!!


 そして、布団を制したのは…………


「やったぜ!悪いなサタコ、震えなが寝てくれ」

 俺は布団を失い、小鹿の様に震えるサタコさんを見て、勝ち誇った口調で勝利を告げた。

「き、き、き、恭ぉ……」

 両腕を自らの体に巻き付け震える姿は、流石に可愛そうだ。しかし自分が悪いのだ。たまには反省してもらわなければ、俺だって困る。

「い、い、一緒に、寝、よぉ?」

 震え声でお願いしてくるサタコさん。しかし俺は、一晩反省してろ。とプイっと顔を背ける。

「そうか、そうか。わかった。恭の気持ちはよく分かった。ならば仕方あるまい」

 そう言うと何を血迷ったか、サタコは部屋の窓をガラガラッと全開にし、更には玄関までも開けっ放しにしたのだ。当然冷たい風が部屋中に流れ込んでくる。

「ちょっと何してんのぉぉぉお!?」

「こんな時に助け合えないなら死んだ方がマシだ」

 えぇ……ナニソレ……

 窓を閉めるには立ち上がらなければならない。しかし立ち上がれば隙間からサタコが潜り込んでくるだろう。下手したらまた奪われてしまう。くそ……


「わかったよ、半分貸してやるよ!」

 流石に我慢の限界だったのか、サタコはすぐさまサササッと布団に入り込んで来た。

 結局こうなるのか。仕方ねぇから、今日は仲良く二人で寝るとしよう。幸いにも怒りで変な気も起きそうに無いしな。

「なぁ、恭」

「ん?どうしたよ、まだ何かあるのか?」

「窓を閉めてきてくれ」

「それは自分でやってくれませんかねぇぇぇぇ!?」



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