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第三章【陰陽師編】

約束は約束

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 姿を現した間場  凛。その佇まいには不思議と引き込まれるオーラがある。他の三人とはまた違った、美少女でありながら妖艶、妖美。負けず劣らずの魅力の持ち主だ。例えるならば、そう。

『美少女の魔女』

 間場  凛はマイクを握り、観客に向けて言葉を発する。


「皆さんこんにちわ!特技は剣玉を披露したいと思います」


 剣玉だと!?その容姿で剣玉とは、これは……ギャップ萌え!!ここに来てとんでもねー技を出してきやがったか!!

 会場が静まり、間場  凛の剣玉の動きを見守る。間場  凛はホイ、ホイ、ホーイと次々と大技を決めていく!観客席からは「お~!!」という声でどよめきが起きている。

 と、その時!場違いな声が会場に響く!


「姉ちゃん本当可愛いなぁ、今からちょっと遊びに行こうぜ?ぐひひひ」

「ちょ、何ですか!?あなた達は!」


 声のする方向では、シルシルが数人の悪そうな男達に囲まれていた。どうやら男達は酒を飲んでいるらしく、乱暴にシルシルの腕を掴む。


「ちょ、痛いです、やめて下さい!」


 それを見たサタコが、我慢出来ずに鎌を錬成する!!しかし……


 出ない……


 鎌が出ないのだ。両手を突き出したまま硬直するサタコ。

 能力を封じられたサタコとシルシルは普通の人間、ただの女の子と変わりない。数人の男達に囲まれて手も足も出ない。サタコも腕を捕まれグイッと引き寄せられる。


「今すぐその汚い手を彼女達から離しなさい!」


 真っ先に声を上げたのは、なんと間場  凛だった!「あぁ?」と間場  凛を睨む男達。このままでは間場  凛もタダでは済まないだろう。


「私が嫌いなものは『ズル』でももっと嫌いなものは『ゲス男』よ。あなた達タダでは済まないわ」


 自信があるのか、強気な間場  凛。数人の男が舞台に上がり、あっという間に間場  凛を取り囲む!その光景に、観客席からはブーイングが巻き起こる!


「やめろゲス男共!」「彼女達から離れろ!」「そーだそーだ!」「帰れ帰れ!!」「消えろクズ共!」


 そのブーイングをかき消すように、ドスの効いた声が響く。


「黙れオラァァァ!!!テメー等のツラァ覚えたぞぉ!!!」


 その声にシーンと静まり返る会場……


「オメェか、今ふざけた事言ってやがったたのは、アァ!!?」


 次に厳つい酔っ払った男達に囲まれたのは……




 俺でしたぁぁぁぁぁ!!!



 他にもいっぱいいただろぉが!!なんで俺だけピンポイントなんだよ!!人は皆平等でしょぉがぁぁぁ!!!


 と、心の中で叫んでいたら、いきなりぶん殴られました……


「ぐはぁ」と吹っ飛びそうになったが、よろめきながらも、俺はなんとか踏ん張り、男達を睨みつける。


「そうだよ、ゲス男共!俺が言ったんだよ!!その汚ねぇ手、今すぐ退けやがれってなぁ!!!コイツらにそれ以上触れてみろ!この俺が許さねぇ!!」


 そうだ、それでいいんだ佐藤恭。こんなゲス男共許せるわけがねぇ!俺は……俺は運は無くとも、心までねぇ男じゃねーからな!!

 とは言ったものの、果たしてどこまでやれるか……運動は得意だが、喧嘩となると話は別だ。ってか周りの男子共!見てねぇで助けろよぉぉぉぉおお!!!見て!ねぇ?見てよ!

 明らかに不利でしょーが!!!


「っだ」……顔面を殴られ口から血が飛び出る。口の中が切れてダラダラと血が滴る。それでも俺の心は折れない。


「んのヤロォ!」と男の一人をぶん殴ってやろうと思ったその矢先!

「よく言ったわ、佐藤恭!」


 間場  凛が指先に光を灯し、空中に文字を描く。


『解』!!


 間場  凛が、何かの術を施し、大気が震える。そして続け様に叫ぶ!


「サタコちゃん!天神さん!お願い!!」


 その言葉と漢字から、サタコとシルシルはスグに意味を察する。

 サタコは鎌を錬成し、シルシルは打撃で男達を翻弄する!!


「ぐえっ」「ぐあっ」「んぎゃ」と、


 シルシルの攻撃が面白いように当たる!が、どれも致命傷には至らない。しかし、

 その隙を突いて、サタコが男達に鎌の斬撃を与えていく!!


「勝負ありだ」


 俺の勝利宣言と同時に、ゲス男達には不幸が訪れる。

 男達目掛けて飛んでくる物体??

『ペットボトルロケット』だ。その数、約十機!!それらが奇跡的にも次々と男達の頭に命中していく!


「すみませーん!」と白衣の男達とその観客達が駆け寄ってくる。どうやら別の場所で打ち上げたのが誤ってこちらに飛んできたらしい。


「大丈夫大丈夫、アイツら悪者だから」


 と俺が言うと、「悪者だと!?」と言葉が返ってくる。見れば先程の五色のヒーロー達だった。

 ヒーロー達は「とう!」と言い、次々とゲス男達をねじ倒していく!


「流石柔道サークル!」と声が聞こえてくる。なる程ね。

 ゲス男達は、ヒーロー達と、どっから仕入れたか、竹刀を持ったシルシルにより完全に制圧された!!


 ──。


 その後ゲス男達は警察に身柄を引渡され、落ち着きを取り戻した会場では、『最終投票』が行われていた。

 TVで見るような電光掲示板に表示されるような採点では無く、集まった観客に一枚一枚紙を渡し、手書きで名前を書いて投票するスタイルだ。ま、一般大学程度ではそんなものだろう。

 そして集計が終わり、いよいよ美少女コンテストの優勝者が決まる。


『それでは結果発表に移らせて頂きます!各自集めた票数を読み上げていきます!一番多く票を集めた方が優勝となります!』


 でわ、と続き、司会者が票数を読み上げていく。


『エントリーナンバー二番、モブ子ちゃん!四票!!』

 流石にこれは超えるだろう。後は三人の戦いになりそうだ。

『エントリーナンバー四番、サタコちゃん!十票!!』

 うっ、意外に少ねぇ!この票じゃ明らかに厳しい……シルシルに期待するしか……

『エントリーナンバー五番、天神  瑞ちゃん!』

 頼む頼む頼むぅぅ!!!


『十五票!!』


 ──!!


 え……負けた……?ここに居る観客はどう少なく見積もっても六十人以上は居る。つまり……


『エントリーナンバー十番、間場  凛ちゃん!』


 俺達の負け……!?


『十七票!!』


 負けた……俺達の負だ……サタコとシーが、奪われてしまう……最早、間場  凛が冗談でしたと言うのにかけるしか無い。

 青ざめた顔のサタコとシー、そして今にも泣きそうな顔のシルシル。

 今……今動かなければ!取り返しのつかない事になる!!サタコを、シーを渡すなんてやっぱり俺には出来ねぇ!!!


「な、なぁ……間場  凛。あの、賭けの話なんだけど……やっぱり」

「佐藤恭、約束は約束だよ」


 くっ……そんなの、そんなのってありかよ……

 俺は真っ白になった頭で考えを巡らせたが、実際はただただそこに立ち尽くすだけだった。


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