凶から始まる凶同生活!

風浦らの

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第二章【能力者狩り編】

お泊まり

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 ■■■■

 【一方その頃シルシルの家にお泊まりのサタコはというと】

「フハハハハハハッ!    なんだなんだこの貧弱な体は!    フハハハハハハッ!」

 緑の帽子をかぶった子猫の首根っこをつまみ上げ、笑いが止まらないサタコさん。
    対するシーはフーッと威嚇するも、力量差があり過ぎて文字通り手も足も出ない。

「サタコちゃん、あんまりシーちゃんを虐めないで下さいね」

 やんわりシルシルに注意され、ようやくシーを座らせる様にテーブルの上に置く。

「何だってこいつが家に居やがんだよ!   いい迷惑だぜ!!」

 当然シーはご機嫌斜めだ。サタコが来てから三十分。摘まれ、笑われ、追いかけ回され続けた。元々仲がいいとは言えない二人はことある事にぶつかった。

「あの目の覚める様な拳法は何処へ行った?    こんなに縮まりおって……プククっ」
「くっ、拳法位この体でも出来るぜ!!   シュッシュ!」

 シーのプライドに触ったのか、その場で憲法の型を披露するも、その体ではどう見ても玩具だ。その光景にサタコは堪らず笑い転げる。

「何が、シュッシュ。だ!    フハハハハハハッ!」

    存分に床を転がり回った所で、テーブルの足に頭を強打し動きが止まる。

「く…………………」

 頭を抑え声にならない声を出す。腐っても魔王。涙など見せる訳にはいかない。今度はサタコがプライドを見せる。

「にゃーっははっは!    ざまあみろ!」

 お返しとばかりに嘲笑うシー。
 こんなやり取りが何往復かしてようやくその場が落ち着いた。

「サタコちゃんは元気いっぱいですね!普段からそうなのですか?」
「お?    シルシルは私に興味があるのか?」
「そうですねー、可愛い妹にしたい・・・・・・・・って意味では興味がありますねー」

 そう言ってシルシルは物欲しそうな顔でサタコに擦り寄る。そして側まで来ると耳元で囁いた。

「今日はお姉ちゃんと一緒にお風呂に入りましょう」
「馬鹿を言うでない。私の年齢はざっとシルシルの百倍だぞ。私がお姉ちゃんだ」
「四十五倍ですね。ハイハイ、じゃあ、お風呂に行きましょうか」

    ■■■■

 お風呂に来たシルシルとサタコさん。   魔王とお風呂なんて真平ゴメンと、シーは付いては来なかった。

「背中流しますので、座って後ろ向いてくださいね」

 シルシルに促されるまま、サタコは背を向ける。
    ゴシゴシと背中を洗われるのは八百年以上生きてきて初めてだった。

「凄く気持ちがいいぞ。シルシル、もっとやってくれ」
「それは良かったですね!    それにしてもサタコちゃん、本当に細くてスタイルが良いですね!」
「そうか?    背が小さいのが欠点だけどな」

 サタコは魔界にいた時は今よりもう少し大きかった──、らしい。
    そして胸も。

「こっちの方も、もうちょっと大きかったら良かったですよねー」

 悪戯にシルシルが後ろからサタコの小振りで可愛い胸に触れると「あひっ」思わず変な声が出るサタコさん。

「おおお、お前どこを触っておるのだ!」

 鈍感だと思われた悪魔にも、羞恥心という物があるらしい。

「いいじゃないですか、女の子どうしなんですから!」
「やめろーっ」

    堪らずサタコは振り振り向きざまにシルシルの顔目掛けて拳を振るった。

「しまっ……」

 それを分かっていたようにスッと避けるシルシル。
    それを見てサタコは、当たらなくて良かったと思う反面、躱された事に対しムッとするという矛盾した感情を抱いた。

 お風呂で楽しく親睦を深めた後は、寝る支度をして仲良く一緒の布団に入る。     そして夜更かしはせず、電気を消して眠りについた。

「…………………」

 サタコは眠れなかった。修学旅行の夜の気持ちか、はたまた恭が居ない寂しさのせいなのか。
 痺れを切らし、一人起き上がり部屋から出ていく。

 外に出ると月が真ん丸で妙に明るい夜だった。
   サタコはその脚で、何かに誘われるように神社までやって来た。
    境内に腰を下ろしぼんやり辺りを眺める。

「ここは魔界と似ておる」

 細い声を漏らし、目を閉じ深く空気を吸い込む。

「恭……」

 ふと寂しさがこみ上げてきた。
    恭に出会って二ヶ月足らずだが、恭の居ない夜は初めてだった。

「寂しいのですか?」

 ふと声をかけられた。
 目を開けて見ればシルシルが居た。
    サタコの心配をし、こっそり付いてきたのだ。

「そうかもな」
「そろそろ戻りましょうか。明日起きられなくなったら困りますら」

 笑顔で差し伸べられた手を取り、サタコは立ち上がる。
    部屋に戻るとサタコはシルシルに抱きつくようにして眠りについた。

「甘えん坊さんなんですね」

 ■■■■

 次の日の朝。

「にゃぁぁぁぁぁ!!」

   翌朝はシーの叫び声で一日が始まった。
 サタコの寝相の悪さに、一番遠くに居たはずのシーが潰されたのだ。

「サタコちゃん!    起きてください!   シーちゃんが、シーちゃんが!」

 慌ててサタコを抱き起こしシーを救出するシルシル。
 サタコは薄ら目を開け「おはよう」と言いい再びシー目掛けて倒れ込む。

「にゃぁぁぁぁぁ!!」
「サタコちゃぁぁぁぁぁん!!」

   シルシルを持ってしてもサタコのお守りは大変らしい。
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