凶から始まる凶同生活!

風浦らの

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第一章【出会い編】

俺の名前は佐藤恭

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「うわーっ可愛い!    お人形さんみたい!」
「これが恭の妹!?    マジかよ……本当に血が繋がってんのか?    人類の神秘だぜ、マジで」

 大吉とユキちゃん、あんまりジロジロ見ないで……そしてほっぺをプニプニもやめてくれ!  そいつ悪魔だから!    凶悪ですから!


「なんだ?    こやつら。無礼な、馴れ馴れしいぞ」

 で、ですよね!    すぐ止めさせますんで運を吸い取らないであげて下さいぃ!

「大吉、ユキちゃん。コイツ照れ屋さんだから、そっとしておいてやってくれないかな?」
「へーそうなんだ、じゃ名前だけ聞いてもいい?」

「私の名前は大まお……」
「コイツの名前は『サタコ』だよ!!」

 おいぃ!    余計なこと言うなよ、黙ってろやチンチクリンが!

「へぇ、サタコちゃんかぁ。俺は大吉、宜しくな!」
「サタコちゃん可愛い~!私は幸だよ!宜しくねサタコちゃん!」
「うむ。恭の友人か。まぁ覚えておいてやろう」

 朝から疲れる。早く大学行って座りたいな……と、そんな事を考えていたが、実は大学はもう目の前だ。この商店街を抜けたらすぐ大学がある。昨日はなんだかんだで休んでしまったし、入学早々悪い印象を与えたくない為、今日はなんとしても大学に行きたい。

   では行こうかと、大学に足を向けたその時、俺の服が何かに引っ張られた。

「恭。腹が減った」
「え?    このタイミングで!?      もう少し我慢しろよ、あと少しで学校に着くんだから」
「ダメだ」
「ダメってなんだよ」

 サタコは俺の言う事は何一つ聞いちゃくれない。欲望に身を任せ、構えた手に沿うように、みるみるうちに『鎌』が生成されていく!

「ちょちょちょ、タンマ!    子供じゃねぇなら我慢し──」

 そんな俺に対し無情にも鎌が振り下ろされる!    俺は鎌を防ごうと両手を上げてガードする!    しかし、鎌を素手で防ごうだなんて、鼻っから無謀な行動だった。

「ギャァァァ!!!!    斬られたぁ!!」

 ……………………。


「何やってんの?  恭??」
「恭君、だ……大丈夫??」

 二人の視線が非常に冷たい。本当にこの『鎌』が見えていないのか!?    そう言えば昨日サタコがそんな事を言っていた様な……それにしても、あのリアルな鎌で斬られる恐怖に慣れるにはまだ早かったようだ。

「あ、あぁ大丈夫だ、アレだ、サタコの遊びに付き合ってやっただけだし?」
「そうなんだ!    ちゃんとお兄ちゃんしてるなんて、恭君偉いね!」

 ユキちゃん騙してゴメン。素直に信じる純粋さがまた可愛いぜ。


 ──『緊急速報です。たった今情報が入りました。東京都A区にて誘拐事件が発生!    犯人は少女を連れて逃走中!尚、犯人の名前は『佐藤京さとうきょう』との事です!    繰り返します犯人の名前は『佐藤京』です!    近隣の住民の方はくれぐれもお気をつけ下さい。以上緊急速報でした』──


 ………………。


 電気屋のテレビから緊急速報か。お決まりっちゃお決まりだけど、名前がドンピシャ過ぎんだろ!!    サタコのラックドレインの影響だと思うが、どんだけ吸い取りやがった!!    これで二人の印象が悪くなったらどうすんだよ、せっかく出来た友達なのに……はぁ。ツイてねぇぜ。

「恭……お、お前……」
「恭君?  ち、違うよね……」

 来た!    でも大丈夫。テレビをよく見てたら気づくはずだ。俺の名前は『佐藤恭』そして犯人の名前は『佐藤京』そう、漢字が違う!    堂々と言うのだ!!

 慌てず騒がず、違うと言おうと思ったその矢先、一人の男に声をかけられ水を刺される事になった。

「ちょっと君達いいかな?」

 俺達に話しかけてきたのは、青い制服に黒い帽子。白いチャリに、右手にかざした──、手帳……?

「警察なんだけど、この辺で誘拐事件があってね。佐藤京という男を探しているんだけど、君達知らないかな?」

    知っての通り、俺達は何も知らないし、ましてや犯人などでは無い。だが──、

 え……!?

 何故俺を指さす!?    ほら、名前違うでしょ?    そんな事する奴じゃないって知ってるよね?    俺達友達だろだよね?

 “違うんだ”そう思いつつも俺は気づけば走り出していた。

「コ、コラッ君!    待ちなさい!!」

 間髪入れず警察官が追い掛かけて来る!    とにかく俺は逃げた!    逃げて逃げて逃げた!    

     捕まりたくない!    俺は無実だ!    運悪く名前が同じだっただけなんだぁぁぁぁ!!



 ■■■■



 俺はなんとか警察官を振り切り、廃ビルに飛び込み、積まれた廃材の影に身を潜めていた。
    薄暗く、カビ臭いその場所で、できるだけ身を小さくして屈んでいる。窓から差し込まれた光によって、埃がまっているのがよく分かる。これではまるで、本当に逃走犯だ。

「おい恭。ここが学校って所か?」

 真似する様に、隣で一緒になって屈んでいるサタコが興味津々で聞いてくる。一体誰のせいでこんな状況になっているのか分かっていないのか?    そもそもお前が付いて来たら余計に怪しまれるというのに。

「ここは学校じゃねぇ。学校はもっと明るくて楽しい所だ!    そして学校は隠れたりする所じゃねぇんだよ!」
「そうなのか?    では早く学校に行こう」

    と、その時俺の目がある物を捉えていた。

「しっ!」

 サタコが立ち上がろうとした所を、頭を抑え、再び廃材の影に押し込む。入口付近に人影を発見した為だ。

「確かにこっちに来たと思ったんだけどな……」

 アレはさっきの警察官だ。俺を追いかけ、ここまでやって来たようで、辺りを見渡し独り言をつぶやいている。

「ではこの辺を手分けして探そう」

 他にも居る!?    独り言じゃなかった!    増えてるザマス!!

 見た所警察官は四人、か。警察官って人数固まると超怖いんだな。と言うか、なんで俺は逃げてるんだ?    無実なのだ。事が大きくなる前に無実を証明すればいいだけの話。さっきは条件反射で逃げてしまったが、理由を話せばきっと分かってくれるはず。そもそも、分かってくれない訳がねぇんだ。よし──、

「抵抗するなら発砲しても良いと指示が出ている。奴には前科があり、大変狂暴な奴との事だ」

 ひえぇぇ……出にくくなった、更に出にくくなった……どうする佐藤恭。早い方がいいに決まっているが……


「恭。いつまでしゃがんでいればいいんだ?足が痺れてきたぞ」
「もうちょい我慢しろ!」
「ダメだ」


 我慢出来なくなったサタコは、スクっと立ち上がるも、足が痺れていたのか体がグラつくと、勢いよく前のめりに廃材に手を着いて体を支える。

 そして案の定廃材が、大きな音を建てて崩れる……


 ──ガランカランカラン……


「誰だ!    誰かそこにいるのか!?」

 物音に反応した警察官が達が一斉にコチラを見てる。そして一歩一歩こちらに近づいてくるでは無いか。
    これ以上隠れるのは無理だと悟り、俺は観念し両手を挙げて身を現せた。

「貴様はさっきの!    佐藤京だな!?」
「そうだけどそうじゃないんです!    信じてください!!」
「ええい、何を理由のわこらないことを!    取り抑えろ!!」

 警察官達が一斉に取り押さえに来ると、俺は成すすべもなく取り押さえられてしまう。ここで抵抗してもなんの意味もないからだ。こうなったからには、これ以上やらかす事はせず、事情を話して解放して貰らう──、

 筈だったのに……

 突然大きな蝿が目の前を飛び回り、驚いた俺は咄嗟に虫を払おうと手を振り回す。すると運悪く、その手が一人の警察官の顔に当たってしまった。

 全身の血の気が一気に引いていくのがわかる……やってしまった……

「キッサマァァァァァァ!!」

 えっ?    ちょっと待って!?    何を向けているんですか!?    その手に握られた黒い鉄の塊は……

 ──拳銃!?

 終わった……俺の人生ここで終わったわ……あぁ、せめて彼女の一人でも作ってみたかったな……走馬灯が巡っているが、いい思い出が一つも浮かんでこない自分が笑える……

「おい。待て。恭を離せ」

 暗がりから姿を現したのはサタコだった。

「君は……誘拐された女の子だね!    無事だったのか、良かったぁ!」
「恭を離せと言っているのが聞こえないのか?」
「いや、しかしこの男は君を……」

 警察官がそこまで言ったと同時にサタコが構えると同時に、みるみるうちに『鎌』が錬成されていく。そして有無を言わさず鎌を振り抜くサタコ!!

「や、やめろぉ!」

 俺の静止も虚しく振り抜かれた鎌は、当然警察官達には見えていない為、なすがままに斬られていく。

 そして次の瞬間──、

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