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それは【本物】なんだよ!
しおりを挟む【現実世界】
携帯を見ては顔を上げる。
チャットを打ち込んでは顔を見合わせる…………
どこからどう推測しても答えが一つしか出てこなかった─────
「兄貴がカイジ……!?」
「澪がミォン!?」
「鈴美がズミさん!?」
「親父が…………レイティ…………」
家族全員、ファミレスの前で叫んだ。
まさかこんな偶然があろうとは、この中の誰に予想が出来ただろうか。
「ふざけんなッ!」
「うわぁ。キモッ……」
「なにやってんのあんた達……」
「レイティってのは、なんだ……その……」
自分の事は棚に上げ、人目もはばからず家族は互いに罵り合った。
当然である───
理想の兄のように慕ってた相手が、普段から憎まれ口を叩いていた実の兄!
家の金を使い散々貢いでチヤホヤされてきた相手が、まさかの家族…………
可愛子ぶって、幼い少女を演じてきたのがバレたオッサン…………
恋焦がれ守りたいとさえ思った相手がただのハゲ──────ッ!!
自分の身を守るより相手を口撃する方が遥かに有利に立てる。
それだけの事をこの半年間でこの家族は積み上げてきた────────
その口論は十分以上続いた。
終わらない地獄────
この地獄はきっと家に帰ってからも、いや────、この先一生終わらないだろう………………
誰もがそう思ったその時───
母、鈴美が見知らぬ男に突き飛ばされた────ッ!!
「おふくろ!?」
「大丈夫お母さん!」
「鈴美ー!」
アスファルトの上に転がった鈴美は、咄嗟にある事に気がついた。
今日のオフ会で豪快に奢ってチヤホヤされようと、大金を詰め込んでおいた財布が無いことに───!
「ひ、ひったくりーーーっ!!」
鈴美は今ぶつかった男を指差し大声で叫んだっ!!
その声にいち早く反応したのが妹・澪だった。
「世界に散らばる精霊たちよ……今こそ我に力を与えたまえ…………喰らえっウォータースプラーッシュ!!」
澪は持っていた水のペットポトルを力一杯投げつけると、それがひったくり犯に見事に命中した!!
「ナイス! ミォン!」
転んで脚に傷を負った鈴美の手当をするのは父・礼二。
「痛いの痛いの飛んでけ~~♡」
「ありがとうレイティ!」
バランスを崩した犯人に追いついたのが兄・快晴─────
「くらぇぇぇ足払い───ッ」
快晴は持っていた傘で犯人の足元を掬い、転倒させることに成功した。
「カイジやるぅ!」
そしてトドメはこの人、母・鈴美!
鈴美は走り込んで来ると同時に高くジャンプし、空中で快晴から投げられた傘をキャッチすると、力の限りそれを犯人に叩き込んだ─────ッ!!!!
「悪・滅・斬──────ッ!!!」
傘の持ち手の部分が犯人の頭に直撃すると、犯人は目を回してその場でのびた─────。
「よっしゃぁぁ! さっすがズミさん!!」
こうしてめでたく犯人を逮捕する事が出来た勝木家───
その流れるような連携プレーは、まさにファミクエでの戦闘そのものだった。
あのファミクエでの夢のような時間は確かに存在して、その時間を共有してきた勝木家は、知らぬ間に本物の絆で結ばれていたのかも知れない─────
ファミレスの前での騒動のあと、勝木家は久しぶりに家族揃って外食をする事にした。
場所はもちろん、ジョナチャン綾瀬駅前店である──────
「いやぁまさか親父にあんな趣味があるとはねぇ」
「キモ……」
「この人に浮気なんて出来る訳ないんだったわ。せいぜい女のフリしてチヤホヤされて楽しむだけ」
「……………………………………」
一つのゲームがきっかけで、崩壊寸前の家族の絆は深まった!!
たかがゲーム。されどゲーム。
みなさんもこの夏、ゲームに熱中してみてはいかがだろうか?
【ファミクエ】で待ってるよ!
おしまい。
面白かったと思う方は、同じくMMOを題材とした短編【カゲロウライフ】も宜しくお願いします!(風浦らの)
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