【R15】【第一作目完結】最強の妹・樹里の愛が僕に凄すぎる件【第二作目連載中】

木村 サイダー

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第二巻

★イメージとギャップ

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「田中さんなあ・・・最初は優しくて意外と明るい普通の子かと思ったけどなあ。環境が性格を変えてしまったんかなあ・・・」

となると僕きっかけで起こしたあのチェンジアクションは最悪の結末だったということなんだが・・・樹里はその答えは、ノーだった。

「環境の変化で変わる性格や個性の変化と言ったけど、それはああなる前の田中が環境的に抑えつけられていて、変化前の性格になっていただけ、つまり大人しい誰にでも受けがいいような性格を演じていただけで、元々は内在的に強引で好戦的で弱いものを人扱いしない田中の影の性格は隠れていただけ。ようするに元々その性格は潜んでいたんだと思う。それが環境の変化で起き上がってきた」

つまり周囲のイメージ外の自分はすでに居てて、それが環境や周囲の人間関係、人の見る目、期待されている自分てやつに、修正して期待通りの自分を演じている、というわけか。

「そんなんは、誰も分からへん」
樹里が言いきる。確かにそうだ。内在している性格など分かるには一緒に暮らしているレベルにならないと理解できることなどない。



「えらい、賢そうな話してますなあ」
前のおじいさんがにっこり微笑んで僕たちに振り返った。

「あはは、いやいや、そんなことは・・・」
「僕らの時もそういう人の特性や個性の違いが認められる時代やったら、もっと色々自由に生きれたんやろうけど、戦後はまだなかなかでしてな・・・」

僕の肩よりまだ低い身長で、さらに腰が曲がっていてさらに低くなっている。白い髪はふさふさで健康そうであるが、顔はしわとシミがいっぱいで、年季を感じさせる。

「戦後は食べるのがやっとでしょ。だから個性とか言われてもピンと来んかった。けどやっぱりやってて、これ嫌やわってことがいっぱいあってね」


そうだろうと思う。市内の方は焼け野原になったらしい。その中で人々は明日食うものもなく、彷徨って、食べ物に帰れるものを探して、安全に寝れるところを確保しようとしていた。それをするため自国民同士で戦い、時には協力しあった混沌とした時代だ。

「僕は直接戦争を体験していないんだけど、、、きっと僕の前に勤めていた会社の上司もそうで・・・環境が酷かったから、そういう悪い性格の部分が表に出たのかなあって思って話を聞いてたんですよ、日頃は凄く良い人なんですけどね」

「あ、タクシーきた・・・こーちゃん」
「はい」
こーちゃんとらんは、おじいさんの一つ前に居た。「ちょっとこのおじいさんに譲ったって」

樹里がした提案に、おじいさんは「いいのかい?」と確認してくるが、樹里は僕の顔を「いいよね?」という意味で見てきたので「急いでませんので、どうぞ」と僕が手を「お先に」の合図にする。こーちゃんは半分意識の飛んでるらんちゃんを後ろに寄せて、道を開ける。

「じゃあ・・・ありがとう」

樹里は笑顔で手を振る。確かにこの後も僕らが乗った後も待ち続けるとなったら、あれぐらいの老人になれば厳しそうだろう。樹里の機転は正しかったと思う。


ふとさっきの話を思い出し、苦笑する。
「なにー?」
樹里がまた私の悪口かと先に口先を尖らせる。

「いや、イメージのギャップやなって」
「なにが?」
「樹里が老人に気を使ってタクシー譲るって、ギャップでしかないから」
「・・・・・ああ」表情が緩くなる。

美しく、賢く、時にひょうきんでおもしろくて、修羅のように強いが、人を労われるのかといえばクエスチョンがつきそうな樹里のイメージ。兄の自分からしてもあまりそういう感覚はない。親に対しても凄く荒々しい。しかし・・・しっかりそういうところもあったんだね。

「逆ギャップじゃないやろ?」
「逆じゃない。正しい方。ギャップ萌えーや、惚れ直すわ」
「な、なによ、惚れ直すってー」

自分は僕に際どいギャグや冗談をしてくるくせに、僕からされると不意打ちを食らったみたいにリアクションする。今も樹里の顔が少し赤くなり、目を逸らした。

――――これもギャップなのかな。
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