【R15】【第一作目完結】最強の妹・樹里の愛が僕に凄すぎる件【第二作目連載中】

木村 サイダー

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第二巻

★僕たちの父親の仕事と結衣さんの機転

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「で、さっきの・・・パラドックスに対しての答えはどこ行きましたか?」余所に目を泳がせさせないために、少し大袈裟に、よりハキハキした声で出してみた。

「ふう・・・ふう・・・フフフフ、あーええっと、お医者さんになりたいけど、医者の世界が嫌いって話ですよね、、、ふ、、ふぅ」

まだ笑いの残滓は残っている様子だ。「もう、、、ここ数年で一番笑ったわ~」とまた涙を拭いながら呟く。もうさっきの女子たちも先に自転車で行ってしまった。


「ええ。医療そのものは好きです。人を助けて的確な指示で治癒に向かわせることはとても尊敬できることだし、憧れています。その最先端に立つのがお医者さん。私のなりたい職業ですが、同時に大手の病院だと学閥が残っていますし、全体的に物凄い体育系縦社会なんですよ。私が感じたのは、未だに昔からの悪い傾向を引きづった縦社会ですね。そこで後輩が先輩を抜いていくと、みたいなことを気にしてけん制しあってて、先に居るものが後から来たものに追い越された瞬間に居場所がなくなるとか、居心地がとても悪くなるだとか。。。そういう一つのことで『人格全否定』的なところが、私には合わないかなあと。。。」

「なんとなくちょっとだけそういう話、僕分かりますよ」
「ええ?そうなんですか?」
「ええ、うちは父親が医療関係の会社で勤めているので。。。時々親父がそういう話してて、ビール片手・・・・あ、」

――――マズい、もうすでに飲んでると思われたらヤバい!

「僕はジュース片手に晩御飯後とかにそういう話聞いたりしてました。結構好きでしたよ。本物のドキュメント番組、みたいな感じでドキドキして」


「ええ?なんの?何の仕事してるんですか?」
詳しく知りたいらしく身体全体をこちらに向けて目を見開いて聞いてくる。
「製薬会社でMR・・・・」

「ああ、製薬会社の営業の方々ですね、うちの父・・・が」

明らかに不自然な間合いがあり、僕と合っていた視点が遠くなる。もうさっきのことがツボっているとも思えないし、噛んだとも思えなかった。

「よく一緒にゴルフとか行ってましたよ、、、あと勉強会とか医療業界はたくさんあって、そこでも父が講演する際は色々情報提供や、会場内での父のアシスト活動されていました。ゴルフ帰りに家まで父を送ってくれたり、父もそこから家にあげてまた話し込んだりしていました。とは言っても全部父の自己満足な独演会なんですけどね。よく見るなあこの人って人、二人ぐらいいましたねー」

「そうです、そうです。うちの親父もそれです。けど、今は管理職になってしまったので、もうほとんど医療の現場にはなにか季節的なご挨拶か、部下のフォローでしか出向いていない様子です。ただ営業活動でゴルフはしょっちゅうですね。ということは、、、お父さまはお医者様ということですか」
「まあ・・・・そうですね」
「うちの父がお世話になっております」
再び深々と頭を下げた。「アハハハ、いえいえ、こちらこそ。どこかで会っていたかもしれませんね」と笑顔で頭を下げ返してくる。


本当にできの良い子だなあと思うけど、なぜか父親のことを言うとどうも話のキレが悪い。そこを掘り下げてもきっとあまり良くないことしか出て来ないんだろう。。。もし話したいなら、自分から言ってくるのを待つとしよう。


「それより、母方の実家なんですけど、堀之内製作所・・・分かります?」
堀之内製作所・・・いや、聞いたことあるようなないような。なんだっけなあ・・・この流れで聞いてくるなら確実に製薬会社かそのサイド、医療機器メーカーとかだろうけど。。。うーーん。。。学園に入っていくパンチラ坂の前まできた時だった。



うん?あの車・・・あの感じの男女・・・
僕は見た瞬間にピンときた。
黒い高級車がパンチラ坂と反対方向に駐車して、そこに見慣れぬ男女が立っている。


本来なら車は学園内の3か所に止めるスペースがある。一つは一番分かりやすいパンチラ坂の下。ここは職員専用の駐車場。たまにアホな生徒が自転車で上から降ってくるから。ここは関係者以外立ち入り禁止の看板が設けられていて、監視カメラもあるし、実際に職員の車両でない車両が入るとカメラを見張っている職員から指示が入り、別の職員が飛んでくる。

もう一つはパンチラ坂を上りエントランスにつき、そこを左折して第三グラウンドに下る。そこの脇に100台ほど止めれる駐車場がある。いわゆる保護者用だ。ただしここに行こうと思えば、学校の生活指導の当番の先生が上がったところのエントランス入口で門番のように、複数人立っている。そこを何かの間違いで抜けれたとしても、そこの駐車場、この時間帯はしょっちゅう学園関係者が見回りをする。保護者車両の登録カードもあって、それの車内掲示が義務付けられている。してない車両は運転手に対して職員が質問をしてくる。

もしくは第2グラウンドのサイドか。しかし第2グラウンドだと、登校してくる生徒は見えない。


そのどちらにも止めずに、この竹藪と田畑広がる地域に黒塗りのレクサスのSUVが止まり、同じく黒っぽいスーツに頭はウエットジェルで無造作にキメ、顎髭を生やした男と、白いタイトミニのスーツを身にまとい、髪も早朝からばっちり緩巻きで、そんなモデルあったの?と言いたくなるようなルイヴィトンのバックにペンキが跳ねたような絵柄が入った鞄を持った中年女性が、まるで生活指導の先生か?いやそれ以上かと言う眼力で、通学してくる生徒たちを校門に行く坂道の反対側の坂道から見下ろしている。

よくよく見ればその女性には小さな双眼鏡まで握られている。明らかにサラリーマンカップル二人には見えない。


「あれ、芸能関係者ですね」
大笑い後、割と近かった僕たちの距離は小声のせいで、実際に肩が触れ合うほど近くなった。どうやら結衣さんは分かるみたいだ。どうして分かるのか・・・経緯は分からないけど、今は追求している場合じゃない。

「うん、樹里に連絡しとかなくちゃ」
一学期最後だからタイミングで来てるのだろう。こういうのは正直僕も危ない。樹里を事務所に入れるために僕を捕まえてどっかで話して言うこと聞かせようとしてくる事務所も過去に数回あった。
口先ではものすごく調子が良く気持ち悪いぐらいに饒舌で喋りまくる。あいつら格好は決まっているがやることはかなりエグさがあって、その数回もはっきり言って嫌がる僕を無理やり足止めさせて連れて行こうとする。強引な客引きとなんら変わらない。アウトロー気味になってしまうことも恐れないような輩もいるようだ。

「ちょっと速足で切り抜けてくれる?」
「ええ、勿論です」
笑顔は消え失せ、凛とした顔になっていた。
「走ったら逆に気づかれるかもしれないから、そっとね」
「はい」
楽しい時間は緊張の時間へと変わり、足早でかつ見つからないように。
「お兄さんは内側歩いてください。私、外側に立ちますので」
「ありがとう」
なるべく端を歩き、パンチラ坂の方へ存在感を消してふたり寄り添って歩いていく。難所は越えた。
僕は鞄の中からスマホを取り出し、樹里にメッセージアプリを入れる。
結衣さんも結衣さんで、スマホを取り出し、電話をかけはじめた。


「あ、もしもし、英数科1年の堀之内です。おはようございます。・・・はい、あの、校門坂の下に不審者2名居てます。男女です。学生とかではありません。大人です。一人は双眼鏡を持って女子生徒を物色している気配がありますので、対応お願いします。はい、はい。。よろしくお願いいたします」

「ありがとう、協力してくれて・・・」学校の緊急連絡先に通報してくれた。
「いえいえ、例には及びません。何度も見てきましたから」


・・・・何度も?


「あと、今日は私の、これ使ってください」

結衣さんは鞄の中から自分のハンカチを出し、僕に手渡してくれた。
ハンカチって結構体に密着して、時には口元や胸元、バストの大きな女性ならバージスラインとその下の皮膚の間や、うなじを拭いたりするもので、それを洗濯はしてあるとはいえ、交換するのは、どこか性的倒錯を感じてしまうのであった。

結局、堀之内製作所の話はどこかへ?
せっかくよく人の話を聞いてくれる人だと誉めてもらっていたのに、これじゃあダメじゃないか。そう思ったので父親の広樹っさん(下の名前が広樹)にメッセージアプリを入れておく『堀之内製作所って知ってる?』そのうち返信が返ってくるやろう。


▽▼▽▼


学校のパンチラ坂下に立っていたのはやはり芸能事務所のスカウトと経営者だったみたい。なかなか引き下がらなかったようで、敷地外で誰をどう観察してようが勝手だろうが、と開き直ったそうだ。

学校側も学校側で警察に連絡して、谷本教頭も出て行って鍔迫り合いの睨み合いになったみたい。谷本教頭は暴走族だろうがヤクザだろうが引き下がらないらしい。学校が一番荒れていた時代から苦労された先生だから。

終業式HR前のちょっとした合間に山原先生から聞いた。結局職員が車で樹里を家まで迎えに行ったみたい。しかもその職員の車が黒塗りのアルファードで、遠回りしてきて第二グラウンドから入ってきたらしい。

その時に女子生徒らが体育の授業前で、アルファードの後部座席から出てくる樹里を見てキャーキャーなっていたらしい。


<今日自転車違うから、一緒に帰ろうや>
樹里からのメッセージだった。
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