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第二巻
★こいつらおちょくっとんのか?
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★樹里の視界
今日もお昼時、英数科から結衣と紗良がきていた。あにぃのメンタル不調っぽいのがあったから会計研究『部』だか『会』だかを見に行こうにも心配で見に行けなかった。一週間ぐらい家に連続直帰って何年ぶりだろ・・・・メンタル不調にしたのは私の失敗もあるしね。しばらくは丁寧に丁寧に見守りをするわ。
まあでも亜子とらんにも朝から説明して誤解が解けて二人も安堵していたからこれでよかった・・・ただしSEXうんぬんはカットしていた。また話がややこしくなるだろうから。そんなキーワード飛び出したら血の付いた肉をサメに放るようなもんや。結衣と紗良は「部活を見に行く行く言っておいて結局一学期全く来ないし、本心やいかに??」といった感じなのだろう。まあ結衣はそれ以外の目的・・・目的ではなくもう親友としての慕いを感じる。紗良はそこに引っ付いてきているだけ。勿論嫌な感じではなく、好意的である。けど自分のところの部活の面子もあるだろうから、なにかと探る質問をしてくる。
ご飯も食べ終わり、結衣が保冷剤で冷やしたオレンジのスライスを皆の分持ってきてくれていた。それをありがたく食べながら休憩していたとき、
教室の扉が開いた。
今はエアコンが効いているため、教室は扉も窓ガラスも全部閉めてあるが、、、
あれ?あにぃだ。。。
「あ、にんたま、こんにちは!」
「あ、話題の人きたわ」
亜子が二ヤつく。
「すみません、亜子さん、らんちゃん・・・・ちょっといいですか?」
神妙な面持ちだったなあ。。。
「はい・・・うん?にんたま・・・なんでしょう?」
「え?あっしも?・・・なんやろ、楽しみ~~」
二人は何やらニヤニヤしながら私にとって感じの悪い顔で、あにぃの方に歩いていった。
「あれあれ?ちょと、ちょっと・・・」
また余計なことを言うのでは?そう思い心配になり、私も行こうとすると、
「樹里はそこでおって」
あにぃが私を制した。それを見た二人が、
「そこでおって」
「ねーたまはそこで大人しーくしてなされ」
教室の扉を二人が出たあと閉めた。
「ええ?」
おかしい、おかしい、おかしいでーーーーええ?
そこに、結衣と紗良がふたり私の視界を塞ぐように立ちはだかる
「え?」
「さあ、樹里さん、簿記の話しましょうか」
性急感の帯びた結衣が『待ってました』とゆっくり詰め寄ってくる。
「いったい、いつ、いついつ来てくれるんですか?」
同じく紗良も嚙みながらだが同様に詰め寄ってきて私を先に通さない。
「え?あれ?いつからあなた方ちょっと・・・私よりあにぃの言うこと聞くようになったん?あれ?」
次の瞬間、
何かが大爆発したみたいに、女子ふたりの笑い声が廊下、教室中に響き渡った。
クラスの他の子らも『何事か』と廊下を見る。
「えーーーーーなになになに~?」
私は廊下に出ようとしたがなぜか会計研究会の二人に抱き着かれて動きが悪い。
「だから私たちの話はこちらで・・・・」
「こちらで・・・・」
そのまま引きずって、
「うううーーーーーーーん」
「す、す、凄い力ーーーー私、結構力強いのに」
紗良が顔を上げて苦しそうに踏ん張っている。体格があるから普通の女子より強いだろうけど、私の重石(おもし)にはならない。
なんとか扉のところまで
扉がざざーっとスライドして開いた。
「うん、わざわざありがとう!」
「にんたまめちゃ丁寧!超ウケる!」
「じゃあね、絶対今度お茶しようね」
「私もやで、にんたま!」
「うん、ありがとう、あ、旅行さ・・・」
「あ、はいはい」
「僕、樹里から『来い』って言われたんだけど、ホンマに行っていいんかな?」
「ああ、それはもう、ぜひぜひ!」
「ええ??ちょっと待ってよ、お兄さん行くの??私いけへんのに・・・行かんとき行かんとき!こんなのんと一緒なんて絶対おもんないって・・・」
亜子!テメーッ!何言ってくれてんねん??
せっかく私が順番立てて、あの気難しそうなタイミングに話つけたのに!!
「亜子ちゃんは家で勉強でしょ、黙っててよ」
らんの指摘に舌打ちをして顔の表情にヤンキーだったときのものが出る。目つきが違うんだ。最近だいぶマシになってきているが、一瞬ムカッときたときはもろ分かりである。
「あの、樹里との約束なんで、行きますんで。。。ごめんなさい」
「はい、分かりました!ありがとうございます!一名様ご来店!」
「アンタ、、、ちょっと、、、勝手に手出したらあかんねで。あれ、樹里待ってたん?」
超笑顔から、キョトンとした顔になり、また少し今度は私に勝ち誇ったかのような笑い顔になった亜子。。。こいつさっきあにぃに『お茶しようね』とか『手を出す』とか言ってやがったなあ。。。
「なあ、何の話?」
語気に私の威勢が隠しきれない。嘘はうまい方だと思うが、ちょっとダメだった。
すっとその笑顔のまま捕まえられている私の脇をすり抜けて座席に行こうとする。私も座席に戻る
「きゃーーーーー!」
「今度そっち??」
捕まえている会計研究会の二人の引っ張る方向に体を反転させた。
「いや、、、もうお兄さん最高やね」
「にんたまは間違いなく良い人ですよ」
「樹里の恋愛教育って、、、、なかなかスパルタ辛口やったんやね(笑)」
嫌な予感しかしない。。。
二人定位置に着席する。
そして小さめの声で亜子が
「『ちょめちょめできていない女に優しくするなって樹里から言われた』って。今回のあいつの件やろ、それは私も思うところ一緒やで。あんなんに優しくする必要なんてなかったわなあ」
「でも、私や亜子ちゃんに対しても、もっとクールに接さないといけないのかなと思ってた。ごめんなさい。間違っていましたって」
相手との温度差を合わせて優しさの調整をするってやつ言ったなあ。。。その表現を私なりに相手に分かりやすくするために『SEX』って言ってんだけど・・・それを言ったら「餌」与えたようなもんやんか、あにぃ!
「でも昨日樹里から『間違っている、勘違いしている』と訂正されたって。『今までの優しさや親切が三十だったらそれは三十~三十五って言ったっけね、なんし合わせていくことが大事。でも友達や身内は普通にしたらいいんだ』って、それでホントにごめんなさいだって。丁寧やなあ、私なんかにでも。。。今朝あんたからだいたいのことは聞いたからもうそれでよかったのに・・・なんか素直な子供みたいでさ。ウケたわ。ああいうのん良いよね。最近良さが分かってきた気がする」
偉そうに言いやがって‥‥何が良さ分かってきたやねんコイツ!!
どうやらこないだから亜子の中で『基準』の改正が行われているらしい。それはそれでいいことだと思う。私もこないだの失敗を反省して考え直した。この『基準』をミスってしまうと『男を見る目』というのが狂ってしまう。狂うと眼中に入る男、というのも狂う。亜子にとってそこに気づけたのは人生の好転なんじゃないかな・・・・しかし、うちのあにぃはまたちょっと純粋過ぎるし、そこ本人には言ったらあかん!
「もうそんなこと私や亜子ちゃんに対して全く気にしなくていいのにね。あ、でもいっぱい優しくしてくれるんなら、私、彼女になっちゃおうかな~」
らん、貴様もか??
本当なら、おまえなんて許すわけないやろ!このドエロ女!と言いたいところではあるが、下手に騒いで本性バレるのが嫌すぎる!
「ちょっと、離してよそろそろ。暑いし。いつまでくっついてんの?」
「あ、ごめんなさい、どこまで暴れるのかなと思ったもので・・・」
心配そうに結衣が腕を離すと、紗良もおそるおそる離した
「ふぅ・・・・」
溜息をついて深く腰掛けた。
「また出たで、下ネタ女」
亜子の言葉に対抗心を燃やすみたいに、
「下ネタ言ってないよ、私こないだ脚ケガしたとき、おんぶしてもらったもんねー」
「ええーーーなにそれ?こないだのやつか・・・あんたいつの間に、セコい子やなあ。私もどっかでこけてこようかな・・・」
勝手にこけとけ!!おまえもあかんわおまえも!NGNGNGNGNG!
「もうキモイねんて、君らー」
そんな話聞きたくないわとダル気に気取って訴える。内心アタフタでカリカリ頭にきてるのに・・・・顔色を窺われたくないので机の上で伏せた。
「兄の恋愛なんてそんなもん見たくないよなあ、私は姉しかおらんから分からんけど」
亜子の反応に凄く反論したいのに、できないでいる。
まるで足枷をはめられて抵抗をあきらめた肉食動物だ・・・・
「ふ、普通のならいいですけど、複数色々していることを聞くのは、気持ち悪くなります」
紗良のところは兄だからなあ。なんていったって跡取り息子なんだし。きっと立場を利用して遊んでるんやろうね。
「ねーたまのところは仲は良いほうですよね、、、あ、私が付き合ったらねーたま小姑・・・これはガクブルものですねー」
両手で肩を抱き、震えたような仕草をする。
こいつ、マジで頭はったろか・・・・それ以前に私がおまえとの付き合いを許可するとでも思ったか??
でも顔を隠して机の上で伏せることしかできない私。。。
「こんな妹さんだったら、私は姉として心底慕いますよ」
少し顔をあげて結衣の顔を伺った。
いつの間にか座っていた結衣の顔が少し赤い。さっき私に振り回されて掴んで力んだからか。笑顔なので怒ってはいなさそうだ。でも「妹」以上の「慕い」を結衣から感じているのだが、もうそれは気のせいということで今は良いのだろうか。。。ま、とりあえず、
「・・・・はいはい、おまえら好きに言ってけれ」
そういって伏せて寝たふりをする。
▽▼▽▼
「ったく、人の気も知らないで・・・」
帰宅してから冷蔵庫から冷えたビールを取り出した。あにぃはなんとなく私の機嫌が悪いのを見測って先に洗濯物を干しに行ったようだ。そうされるとそうされたで余計に腹が立つ!
けど自分があにぃに怒っているのか、亜子に怒っているのか、らんに怒っているのか、はたまた取り乱しかけた自分に怒っているのか、それともみんなあにぃに従い出したことに怒っているのか、分からなくなってしまった。
クソッ、今日は飲んだる!
蓋を開け、一気に飲む。。。。
「プハーーーーーーーーーーーーーーッ!」
おいし・・・・けど、
は~あ、本来なら悪いことした相手にちゃんと会って謝罪なんだから、とても良いことしたので怒るのはおかしいし、『いらんこと言わないでええねん』て怒って凹ませたら微妙な時期だし。。。
あの時、らんが『彼女になろうかな』って言ったときに『うちの兄に手を出すな!!』って素直に言えたほうがよかったよ。言えないもんそんなこと。あとの突っ込みがどんなのくるか。。。フン。。。
またおもいっきり、煽る。
二口でビールの350mlを飲み干した。
「もう・・・・・・」
缶を握りつぶす。。。
亜子は亜子で・・・・好き勝手言うし、クソッ!
あにぃ、モテやがって・・・クソ!
亜子にしろ、らんにしろ、あにぃとなんか無理やって。
亜子は多分ヤンキー渡り歩いていた遊びなれた子、、、けどあのボケた彼氏ときっぱり別れたなあ。。。その次はまだ居てない感じ。
らんは同性愛者でエロいジョークが好きな子。。けど最近男の話もするようになったように思うなあ。。。
いやいや、合わない合わない・・・なにしろ私が嫌だ~~
友達としては最高にいいけど、あにぃの彼女としては不適格!不合格!不適合!
・・・・・・ちょっとあにぃにも釘さしとこか
おもっきりガスの抜ける音をさせてさっき見つけた冷蔵庫の中の2本目を開けた。
★樹里の視界 終了
今日もお昼時、英数科から結衣と紗良がきていた。あにぃのメンタル不調っぽいのがあったから会計研究『部』だか『会』だかを見に行こうにも心配で見に行けなかった。一週間ぐらい家に連続直帰って何年ぶりだろ・・・・メンタル不調にしたのは私の失敗もあるしね。しばらくは丁寧に丁寧に見守りをするわ。
まあでも亜子とらんにも朝から説明して誤解が解けて二人も安堵していたからこれでよかった・・・ただしSEXうんぬんはカットしていた。また話がややこしくなるだろうから。そんなキーワード飛び出したら血の付いた肉をサメに放るようなもんや。結衣と紗良は「部活を見に行く行く言っておいて結局一学期全く来ないし、本心やいかに??」といった感じなのだろう。まあ結衣はそれ以外の目的・・・目的ではなくもう親友としての慕いを感じる。紗良はそこに引っ付いてきているだけ。勿論嫌な感じではなく、好意的である。けど自分のところの部活の面子もあるだろうから、なにかと探る質問をしてくる。
ご飯も食べ終わり、結衣が保冷剤で冷やしたオレンジのスライスを皆の分持ってきてくれていた。それをありがたく食べながら休憩していたとき、
教室の扉が開いた。
今はエアコンが効いているため、教室は扉も窓ガラスも全部閉めてあるが、、、
あれ?あにぃだ。。。
「あ、にんたま、こんにちは!」
「あ、話題の人きたわ」
亜子が二ヤつく。
「すみません、亜子さん、らんちゃん・・・・ちょっといいですか?」
神妙な面持ちだったなあ。。。
「はい・・・うん?にんたま・・・なんでしょう?」
「え?あっしも?・・・なんやろ、楽しみ~~」
二人は何やらニヤニヤしながら私にとって感じの悪い顔で、あにぃの方に歩いていった。
「あれあれ?ちょと、ちょっと・・・」
また余計なことを言うのでは?そう思い心配になり、私も行こうとすると、
「樹里はそこでおって」
あにぃが私を制した。それを見た二人が、
「そこでおって」
「ねーたまはそこで大人しーくしてなされ」
教室の扉を二人が出たあと閉めた。
「ええ?」
おかしい、おかしい、おかしいでーーーーええ?
そこに、結衣と紗良がふたり私の視界を塞ぐように立ちはだかる
「え?」
「さあ、樹里さん、簿記の話しましょうか」
性急感の帯びた結衣が『待ってました』とゆっくり詰め寄ってくる。
「いったい、いつ、いついつ来てくれるんですか?」
同じく紗良も嚙みながらだが同様に詰め寄ってきて私を先に通さない。
「え?あれ?いつからあなた方ちょっと・・・私よりあにぃの言うこと聞くようになったん?あれ?」
次の瞬間、
何かが大爆発したみたいに、女子ふたりの笑い声が廊下、教室中に響き渡った。
クラスの他の子らも『何事か』と廊下を見る。
「えーーーーーなになになに~?」
私は廊下に出ようとしたがなぜか会計研究会の二人に抱き着かれて動きが悪い。
「だから私たちの話はこちらで・・・・」
「こちらで・・・・」
そのまま引きずって、
「うううーーーーーーーん」
「す、す、凄い力ーーーー私、結構力強いのに」
紗良が顔を上げて苦しそうに踏ん張っている。体格があるから普通の女子より強いだろうけど、私の重石(おもし)にはならない。
なんとか扉のところまで
扉がざざーっとスライドして開いた。
「うん、わざわざありがとう!」
「にんたまめちゃ丁寧!超ウケる!」
「じゃあね、絶対今度お茶しようね」
「私もやで、にんたま!」
「うん、ありがとう、あ、旅行さ・・・」
「あ、はいはい」
「僕、樹里から『来い』って言われたんだけど、ホンマに行っていいんかな?」
「ああ、それはもう、ぜひぜひ!」
「ええ??ちょっと待ってよ、お兄さん行くの??私いけへんのに・・・行かんとき行かんとき!こんなのんと一緒なんて絶対おもんないって・・・」
亜子!テメーッ!何言ってくれてんねん??
せっかく私が順番立てて、あの気難しそうなタイミングに話つけたのに!!
「亜子ちゃんは家で勉強でしょ、黙っててよ」
らんの指摘に舌打ちをして顔の表情にヤンキーだったときのものが出る。目つきが違うんだ。最近だいぶマシになってきているが、一瞬ムカッときたときはもろ分かりである。
「あの、樹里との約束なんで、行きますんで。。。ごめんなさい」
「はい、分かりました!ありがとうございます!一名様ご来店!」
「アンタ、、、ちょっと、、、勝手に手出したらあかんねで。あれ、樹里待ってたん?」
超笑顔から、キョトンとした顔になり、また少し今度は私に勝ち誇ったかのような笑い顔になった亜子。。。こいつさっきあにぃに『お茶しようね』とか『手を出す』とか言ってやがったなあ。。。
「なあ、何の話?」
語気に私の威勢が隠しきれない。嘘はうまい方だと思うが、ちょっとダメだった。
すっとその笑顔のまま捕まえられている私の脇をすり抜けて座席に行こうとする。私も座席に戻る
「きゃーーーーー!」
「今度そっち??」
捕まえている会計研究会の二人の引っ張る方向に体を反転させた。
「いや、、、もうお兄さん最高やね」
「にんたまは間違いなく良い人ですよ」
「樹里の恋愛教育って、、、、なかなかスパルタ辛口やったんやね(笑)」
嫌な予感しかしない。。。
二人定位置に着席する。
そして小さめの声で亜子が
「『ちょめちょめできていない女に優しくするなって樹里から言われた』って。今回のあいつの件やろ、それは私も思うところ一緒やで。あんなんに優しくする必要なんてなかったわなあ」
「でも、私や亜子ちゃんに対しても、もっとクールに接さないといけないのかなと思ってた。ごめんなさい。間違っていましたって」
相手との温度差を合わせて優しさの調整をするってやつ言ったなあ。。。その表現を私なりに相手に分かりやすくするために『SEX』って言ってんだけど・・・それを言ったら「餌」与えたようなもんやんか、あにぃ!
「でも昨日樹里から『間違っている、勘違いしている』と訂正されたって。『今までの優しさや親切が三十だったらそれは三十~三十五って言ったっけね、なんし合わせていくことが大事。でも友達や身内は普通にしたらいいんだ』って、それでホントにごめんなさいだって。丁寧やなあ、私なんかにでも。。。今朝あんたからだいたいのことは聞いたからもうそれでよかったのに・・・なんか素直な子供みたいでさ。ウケたわ。ああいうのん良いよね。最近良さが分かってきた気がする」
偉そうに言いやがって‥‥何が良さ分かってきたやねんコイツ!!
どうやらこないだから亜子の中で『基準』の改正が行われているらしい。それはそれでいいことだと思う。私もこないだの失敗を反省して考え直した。この『基準』をミスってしまうと『男を見る目』というのが狂ってしまう。狂うと眼中に入る男、というのも狂う。亜子にとってそこに気づけたのは人生の好転なんじゃないかな・・・・しかし、うちのあにぃはまたちょっと純粋過ぎるし、そこ本人には言ったらあかん!
「もうそんなこと私や亜子ちゃんに対して全く気にしなくていいのにね。あ、でもいっぱい優しくしてくれるんなら、私、彼女になっちゃおうかな~」
らん、貴様もか??
本当なら、おまえなんて許すわけないやろ!このドエロ女!と言いたいところではあるが、下手に騒いで本性バレるのが嫌すぎる!
「ちょっと、離してよそろそろ。暑いし。いつまでくっついてんの?」
「あ、ごめんなさい、どこまで暴れるのかなと思ったもので・・・」
心配そうに結衣が腕を離すと、紗良もおそるおそる離した
「ふぅ・・・・」
溜息をついて深く腰掛けた。
「また出たで、下ネタ女」
亜子の言葉に対抗心を燃やすみたいに、
「下ネタ言ってないよ、私こないだ脚ケガしたとき、おんぶしてもらったもんねー」
「ええーーーなにそれ?こないだのやつか・・・あんたいつの間に、セコい子やなあ。私もどっかでこけてこようかな・・・」
勝手にこけとけ!!おまえもあかんわおまえも!NGNGNGNGNG!
「もうキモイねんて、君らー」
そんな話聞きたくないわとダル気に気取って訴える。内心アタフタでカリカリ頭にきてるのに・・・・顔色を窺われたくないので机の上で伏せた。
「兄の恋愛なんてそんなもん見たくないよなあ、私は姉しかおらんから分からんけど」
亜子の反応に凄く反論したいのに、できないでいる。
まるで足枷をはめられて抵抗をあきらめた肉食動物だ・・・・
「ふ、普通のならいいですけど、複数色々していることを聞くのは、気持ち悪くなります」
紗良のところは兄だからなあ。なんていったって跡取り息子なんだし。きっと立場を利用して遊んでるんやろうね。
「ねーたまのところは仲は良いほうですよね、、、あ、私が付き合ったらねーたま小姑・・・これはガクブルものですねー」
両手で肩を抱き、震えたような仕草をする。
こいつ、マジで頭はったろか・・・・それ以前に私がおまえとの付き合いを許可するとでも思ったか??
でも顔を隠して机の上で伏せることしかできない私。。。
「こんな妹さんだったら、私は姉として心底慕いますよ」
少し顔をあげて結衣の顔を伺った。
いつの間にか座っていた結衣の顔が少し赤い。さっき私に振り回されて掴んで力んだからか。笑顔なので怒ってはいなさそうだ。でも「妹」以上の「慕い」を結衣から感じているのだが、もうそれは気のせいということで今は良いのだろうか。。。ま、とりあえず、
「・・・・はいはい、おまえら好きに言ってけれ」
そういって伏せて寝たふりをする。
▽▼▽▼
「ったく、人の気も知らないで・・・」
帰宅してから冷蔵庫から冷えたビールを取り出した。あにぃはなんとなく私の機嫌が悪いのを見測って先に洗濯物を干しに行ったようだ。そうされるとそうされたで余計に腹が立つ!
けど自分があにぃに怒っているのか、亜子に怒っているのか、らんに怒っているのか、はたまた取り乱しかけた自分に怒っているのか、それともみんなあにぃに従い出したことに怒っているのか、分からなくなってしまった。
クソッ、今日は飲んだる!
蓋を開け、一気に飲む。。。。
「プハーーーーーーーーーーーーーーッ!」
おいし・・・・けど、
は~あ、本来なら悪いことした相手にちゃんと会って謝罪なんだから、とても良いことしたので怒るのはおかしいし、『いらんこと言わないでええねん』て怒って凹ませたら微妙な時期だし。。。
あの時、らんが『彼女になろうかな』って言ったときに『うちの兄に手を出すな!!』って素直に言えたほうがよかったよ。言えないもんそんなこと。あとの突っ込みがどんなのくるか。。。フン。。。
またおもいっきり、煽る。
二口でビールの350mlを飲み干した。
「もう・・・・・・」
缶を握りつぶす。。。
亜子は亜子で・・・・好き勝手言うし、クソッ!
あにぃ、モテやがって・・・クソ!
亜子にしろ、らんにしろ、あにぃとなんか無理やって。
亜子は多分ヤンキー渡り歩いていた遊びなれた子、、、けどあのボケた彼氏ときっぱり別れたなあ。。。その次はまだ居てない感じ。
らんは同性愛者でエロいジョークが好きな子。。けど最近男の話もするようになったように思うなあ。。。
いやいや、合わない合わない・・・なにしろ私が嫌だ~~
友達としては最高にいいけど、あにぃの彼女としては不適格!不合格!不適合!
・・・・・・ちょっとあにぃにも釘さしとこか
おもっきりガスの抜ける音をさせてさっき見つけた冷蔵庫の中の2本目を開けた。
★樹里の視界 終了
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