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★一緒に居ようね。

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言うことは決めていた。
「好きだった・・・・よ」
気持ちがない分あっさり言えた。役者とは気持ちが入った演技でこそ素晴らしい演技ができる、、、という人もいるが、あえて自分の気持ちを無にして、役柄に憑依するかのようにしたほうが素晴らしい演技ができるという人もいるみたいで、どうやら僕は後者のようだった。
きょとんとした顔で僕を見る。予想だにしなかった僕の言葉に一瞬理解ができなかったようだ。でも、、、
「ごめん・・・無理」
少し伏目がちになり、俯いた。
そこまでは浸食されていなかったか。
「そっか、うん、分かった」
講堂裏にはいつもの生暖かい川から森を抜ける風が吹いていた。
よく考えればこんなところ、そんなに恋愛に向いたシチュエーションじゃないよな、蒸し暑いし・・・自分がついこないだまでうつつを抜かしていたことに自嘲気味な気分になった。
「御堂君のことは、友達か、お兄さんみたいな人としか思えないよ」
田中さんがそのまま続ける。
「うん」
「でも・・・」急にこちらに目を合わせて、例の前よりも濃くなってきている化粧顔面全開に笑顔の花を咲かせて
「宿題は見せてほしいんだ、これからも。。。それに相談したいこともあって、、今大丈夫?それしても?」
この滑稽さに吹き出しそうになった。そして、ああ、樹里の言う通り、これ確かに簡単に言えるなあ、と感心しながら、
「ごめん、僕、気持ちそんな上手に切り替えられない。好きじゃないって言われた相手にまでそこまでの優しさはないから。それじゃあ」
「・・・・はあ」再びさっきより意味の分からないキョトンとした顔になるのを見届けきることもないぐらいに身体を背けて
「じゃあ」
と手をあげて、さよならを告げた。


★樹里の視界


雅樹<うまくいったよ、また頼み事あるって来たけど、そんなこというおまえに与える優しさはないって答えたったわ>
「フフフ・・・」
思わず大声で笑いそうになる。てことは断って頼み事だけしてきたってことだな。
「何笑ってんよ?」
教室、いつもの自分の席。隣にいる亜子も少し笑顔で「急にどうしたん?」と言いたそうだ。それもそうだ、いきなりスマホを見ていて私が笑いしたんだから。
「いや、成長したなって」
「なにがよ?」
「いや・・・もうすぐ分かるって」
「ますます分からへん」困り顔の笑顔になった。
ブブブブブブブブブブーーーー

「ほいきたー」
「もう分からへんし。。覗き見するん趣味じゃないから結果だけ教えて」
呆れたといった感じで他の子と話を続ける。

田中<今日お兄さんの方から告白されました。私はそういうふうにはお兄さんのことを見ていなかったのでお断りしましたところ、何か気分を害されたみたいで大変申し訳ございません。私の断り方が悪かったんだと思っています。またどういうことを言っておられたか知りたいので教えてください。(行間)あと、最近私は〇〇ちゃん(三年生)コミュニティに所属しています。色んな他校に顔が広く、イケてる男性たちもいっぱい周りに居ててとても楽しいですよ。樹里さんもぜひ参加してください、きっとおもしろいですから。私から紹介させていただきますので、ぜひぜひお願いします>

ふーん。。。

<兄の件は気にしないでください。紹介の件は今後も一切不要です。私は私で頑張りますので、あなたはあなたで頑張って学生生活楽しんでください。では失礼いたします>

「亜子、らん・・・」
「うん?」
「はい!」
そのままスマホを二人に見せた
「え?!告白??」
らんが絶叫に近い声を出し、周囲の訪問者やクラスメイトから注目を浴びるが、
「ちょちょちょ・・・声でかい。。。これは告白の演技やねん」
「え、どういうことですか?」
「あのな・・・・・・・・・」
私は一連の流れとあにぃに指示したこと、それをあにぃがうまくやったこと。それと同時に田中の誠意のない対応と、誰のコミュニティかということ、今後の私なりの対応の所見を話し、亜子とらんに同意してもらい、「私たちもそのようにする」と了解をもらって、田中のアカウントをブロックリストに移動した。
それと同時に、私は少しだけ性的な刺激による興奮を覚えていた。
(あにぃ‥‥私と違う女に告白した時、どんな感じやったん?けどその後キレイに切ったなあ‥‥やっぱり私の方が良かったんやなあ。そうかそうか‥‥ウフフ)


★樹里の視界 終了


今日も二人でご飯を食べた。今日はカレーだ。さすがにいちから作るのは面倒だからスーパーにてちょっと高級な焼き肉屋さんのレトルトカレーを三つ買って、二人で一.五人前ずつ分けて食べるんだ。樹里には二杯目おかわりの際はカレーを分ける時にちょっとお肉を多めにしてあげる。あとは付け合わせにシーチキンを混ぜた野菜サラダ。

「もうホンマ、あにぃは私の食べたいもん分かってる人他にはおらんわ~」
「俺が樹里の胃を掴んでるんか?」
その言葉に俺は笑みがこぼれる。
「うん、もう掴まれまくり!」
感嘆の声を上げながら十歳ぐらいの子供みたいな、食べ盛りの勢いで樹里は食べまくった。
樹里の黒のTシャツも、黒のジャージも少々カレーのはねが飛んでも気にならない仕様だ。

食後は今日も二人きりコーラでまったり。夜遊びには本当に行かない様子だ。
樹里がスマホを取り出し、動画サイトにアクセスした。

「まあまあお疲れ」
「うん、樹里ありがとなあ」
向かい合って座っていてお互いコーラ片手に乾杯しあって笑いあう。
「今日はまあいいけど、多分まだちょっと、、ホンマはメンタルしんどいんちゃうか?」
笑顔ではあるが、俺の心配をしてくれている、優しいやつだ。
その言葉と同時にスマホをタップして、お目当ての動画を見つける。こないだかけた、世界的に大ヒットした、僕と一緒にいて欲しい、とリフするカバーソングだ。
「まあね、そうかもな。格好つけるなんて僕には性に合わないね。でも今はなんとなく爽快な気分だ」
「うん、よかった。まあしばらくしんどいやろうけど、日にち薬と思う。くれぐれも戻ることないように」
「うん、もう二度とない!」
その言葉に樹里がコーラをほぼ一気に飲み、顔が決まりまくって
「アアッ!いい返事!男になった!」
また笑いあう。
少し間合いがあき、今度は声のトーンが小さく、動画の方を見ながら
「けど、、、また思い出してしんどくなったら、言ってな」
「・・・うん」
「あっしじゃ特になんの足しにもならんかもやけど、、、そばに居てあげることならできるから」
伏目がちに呟いた。照れを隠しているようで、とても可愛かった。。。

「・・・うん」
その返事とともに曲がかかり始め、今は亡きロックアーティストとその日本人の奥さんが、全身白いスーツに身を包み、少し戯けたようにガラス扉から出てきて、真っ白のロールスロイスに乗り込む。古い映像だが今見てもとても洒落ていて、そして愛し合っているのがよく分かる二人だ。
どこからともなく「歌って」と聞こえた。

僕は心の限り歌い、サビでは感情に任せて片手にコーラ、片手にガッツポーズで声を裏返した。樹里は画面に出てくる歌詞を見ないでも覚えているようで、コーラスを奏でてくれた。そしてずっと優しい笑顔で僕のことを見てくれていた。


★第一作 完 第二作へ続く。
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