【R15】【第一作目完結】最強の妹・樹里の愛が僕に凄すぎる件【第二作目連載中】

木村 サイダー

文字の大きさ
上 下
119 / 202
第一巻

★一緒に居ようね。

しおりを挟む
言うことは決めていた。
「好きだった・・・・よ」
気持ちがない分あっさり言えた。役者とは気持ちが入った演技でこそ素晴らしい演技ができる、、、という人もいるが、あえて自分の気持ちを無にして、役柄に憑依するかのようにしたほうが素晴らしい演技ができるという人もいるみたいで、どうやら僕は後者のようだった。
きょとんとした顔で僕を見る。予想だにしなかった僕の言葉に一瞬理解ができなかったようだ。でも、、、
「ごめん・・・無理」
少し伏目がちになり、俯いた。
そこまでは浸食されていなかったか。
「そっか、うん、分かった」
講堂裏にはいつもの生暖かい川から森を抜ける風が吹いていた。
よく考えればこんなところ、そんなに恋愛に向いたシチュエーションじゃないよな、蒸し暑いし・・・自分がついこないだまでうつつを抜かしていたことに自嘲気味な気分になった。
「御堂君のことは、友達か、お兄さんみたいな人としか思えないよ」
田中さんがそのまま続ける。
「うん」
「でも・・・」急にこちらに目を合わせて、例の前よりも濃くなってきている化粧顔面全開に笑顔の花を咲かせて
「宿題は見せてほしいんだ、これからも。。。それに相談したいこともあって、、今大丈夫?それしても?」
この滑稽さに吹き出しそうになった。そして、ああ、樹里の言う通り、これ確かに簡単に言えるなあ、と感心しながら、
「ごめん、僕、気持ちそんな上手に切り替えられない。好きじゃないって言われた相手にまでそこまでの優しさはないから。それじゃあ」
「・・・・はあ」再びさっきより意味の分からないキョトンとした顔になるのを見届けきることもないぐらいに身体を背けて
「じゃあ」
と手をあげて、さよならを告げた。


★樹里の視界


雅樹<うまくいったよ、また頼み事あるって来たけど、そんなこというおまえに与える優しさはないって答えたったわ>
「フフフ・・・」
思わず大声で笑いそうになる。てことは断って頼み事だけしてきたってことだな。
「何笑ってんよ?」
教室、いつもの自分の席。隣にいる亜子も少し笑顔で「急にどうしたん?」と言いたそうだ。それもそうだ、いきなりスマホを見ていて私が笑いしたんだから。
「いや、成長したなって」
「なにがよ?」
「いや・・・もうすぐ分かるって」
「ますます分からへん」困り顔の笑顔になった。
ブブブブブブブブブブーーーー

「ほいきたー」
「もう分からへんし。。覗き見するん趣味じゃないから結果だけ教えて」
呆れたといった感じで他の子と話を続ける。

田中<今日お兄さんの方から告白されました。私はそういうふうにはお兄さんのことを見ていなかったのでお断りしましたところ、何か気分を害されたみたいで大変申し訳ございません。私の断り方が悪かったんだと思っています。またどういうことを言っておられたか知りたいので教えてください。(行間)あと、最近私は〇〇ちゃん(三年生)コミュニティに所属しています。色んな他校に顔が広く、イケてる男性たちもいっぱい周りに居ててとても楽しいですよ。樹里さんもぜひ参加してください、きっとおもしろいですから。私から紹介させていただきますので、ぜひぜひお願いします>

ふーん。。。

<兄の件は気にしないでください。紹介の件は今後も一切不要です。私は私で頑張りますので、あなたはあなたで頑張って学生生活楽しんでください。では失礼いたします>

「亜子、らん・・・」
「うん?」
「はい!」
そのままスマホを二人に見せた
「え?!告白??」
らんが絶叫に近い声を出し、周囲の訪問者やクラスメイトから注目を浴びるが、
「ちょちょちょ・・・声でかい。。。これは告白の演技やねん」
「え、どういうことですか?」
「あのな・・・・・・・・・」
私は一連の流れとあにぃに指示したこと、それをあにぃがうまくやったこと。それと同時に田中の誠意のない対応と、誰のコミュニティかということ、今後の私なりの対応の所見を話し、亜子とらんに同意してもらい、「私たちもそのようにする」と了解をもらって、田中のアカウントをブロックリストに移動した。
それと同時に、私は少しだけ性的な刺激による興奮を覚えていた。
(あにぃ‥‥私と違う女に告白した時、どんな感じやったん?けどその後キレイに切ったなあ‥‥やっぱり私の方が良かったんやなあ。そうかそうか‥‥ウフフ)


★樹里の視界 終了


今日も二人でご飯を食べた。今日はカレーだ。さすがにいちから作るのは面倒だからスーパーにてちょっと高級な焼き肉屋さんのレトルトカレーを三つ買って、二人で一.五人前ずつ分けて食べるんだ。樹里には二杯目おかわりの際はカレーを分ける時にちょっとお肉を多めにしてあげる。あとは付け合わせにシーチキンを混ぜた野菜サラダ。

「もうホンマ、あにぃは私の食べたいもん分かってる人他にはおらんわ~」
「俺が樹里の胃を掴んでるんか?」
その言葉に俺は笑みがこぼれる。
「うん、もう掴まれまくり!」
感嘆の声を上げながら十歳ぐらいの子供みたいな、食べ盛りの勢いで樹里は食べまくった。
樹里の黒のTシャツも、黒のジャージも少々カレーのはねが飛んでも気にならない仕様だ。

食後は今日も二人きりコーラでまったり。夜遊びには本当に行かない様子だ。
樹里がスマホを取り出し、動画サイトにアクセスした。

「まあまあお疲れ」
「うん、樹里ありがとなあ」
向かい合って座っていてお互いコーラ片手に乾杯しあって笑いあう。
「今日はまあいいけど、多分まだちょっと、、ホンマはメンタルしんどいんちゃうか?」
笑顔ではあるが、俺の心配をしてくれている、優しいやつだ。
その言葉と同時にスマホをタップして、お目当ての動画を見つける。こないだかけた、世界的に大ヒットした、僕と一緒にいて欲しい、とリフするカバーソングだ。
「まあね、そうかもな。格好つけるなんて僕には性に合わないね。でも今はなんとなく爽快な気分だ」
「うん、よかった。まあしばらくしんどいやろうけど、日にち薬と思う。くれぐれも戻ることないように」
「うん、もう二度とない!」
その言葉に樹里がコーラをほぼ一気に飲み、顔が決まりまくって
「アアッ!いい返事!男になった!」
また笑いあう。
少し間合いがあき、今度は声のトーンが小さく、動画の方を見ながら
「けど、、、また思い出してしんどくなったら、言ってな」
「・・・うん」
「あっしじゃ特になんの足しにもならんかもやけど、、、そばに居てあげることならできるから」
伏目がちに呟いた。照れを隠しているようで、とても可愛かった。。。

「・・・うん」
その返事とともに曲がかかり始め、今は亡きロックアーティストとその日本人の奥さんが、全身白いスーツに身を包み、少し戯けたようにガラス扉から出てきて、真っ白のロールスロイスに乗り込む。古い映像だが今見てもとても洒落ていて、そして愛し合っているのがよく分かる二人だ。
どこからともなく「歌って」と聞こえた。

僕は心の限り歌い、サビでは感情に任せて片手にコーラ、片手にガッツポーズで声を裏返した。樹里は画面に出てくる歌詞を見ないでも覚えているようで、コーラスを奏でてくれた。そしてずっと優しい笑顔で僕のことを見てくれていた。


★第一作 完 第二作へ続く。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

乙男女じぇねれーしょん

ムラハチ
青春
 見知らぬ街でセーラー服を着るはめになったほぼニートのおじさんが、『乙男女《おつとめ》じぇねれーしょん』というアイドルグループに加入し、神戸を舞台に事件に巻き込まれながらトップアイドルを目指す青春群像劇! 怪しいおじさん達の周りで巻き起こる少女誘拐事件、そして消えた3億円の行方は……。 小説家になろうは現在休止中。

学園のマドンナの渡辺さんが、なぜか毎週予定を聞いてくる

まるせい
青春
高校に入学して暫く経った頃、ナンパされている少女を助けた相川。相手は入学早々に学園のマドンナと呼ばれている渡辺美沙だった。 それ以来、彼女は学校内でも声を掛けてくるようになり、なぜか毎週「週末の御予定は?」と聞いてくるようになる。 ある趣味を持つ相川は週末の度に出掛けるのだが……。 焦れ焦れと距離を詰めようとするヒロインとの青春ラブコメディ。ここに開幕

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

隣人の女性がDVされてたから助けてみたら、なぜかその人(年下の女子大生)と同棲することになった(なんで?)

チドリ正明@不労所得発売中!!
青春
マンションの隣の部屋から女性の悲鳴と男性の怒鳴り声が聞こえた。 主人公 時田宗利(ときたむねとし)の判断は早かった。迷わず訪問し時間を稼ぎ、確証が取れた段階で警察に通報。DV男を現行犯でとっちめることに成功した。 ちっぽけな勇気と小心者が持つ単なる親切心でやった宗利は日常に戻る。 しかし、しばらくして宗時は見覚えのある女性が部屋の前にしゃがみ込んでいる姿を発見した。 その女性はDVを受けていたあの時の隣人だった。 「頼れる人がいないんです……私と一緒に暮らしてくれませんか?」 これはDVから女性を守ったことで始まる新たな恋物語。

切り札の男

古野ジョン
青春
野球への未練から、毎日のようにバッティングセンターに通う高校一年生の久保雄大。 ある日、野球部のマネージャーだという滝川まなに野球部に入るよう頼まれる。 理由を聞くと、「三年の兄をプロ野球選手にするため、少しでも大会で勝ち上がりたい」のだという。 そんな簡単にプロ野球に入れるわけがない。そう思った久保は、つい彼女と口論してしまう。 その結果、「兄の球を打ってみろ」とけしかけられてしまった。 彼はその挑発に乗ってしまうが…… 小説家になろう・カクヨム・ハーメルンにも掲載しています。

かつて僕を振った幼馴染に、お月見をしながら「月が綺麗ですね」と言われた件。それって告白?

久野真一
青春
 2021年5月26日。「スーパームーン」と呼ばれる、満月としては1年で最も地球に近づく日。  同時に皆既月食が重なった稀有な日でもある。  社会人一年目の僕、荒木遊真(あらきゆうま)は、  実家のマンションの屋上で物思いにふけっていた。  それもそのはず。かつて、僕を振った、一生の親友を、お月見に誘ってみたのだ。  「せっかくの夜だし、マンションの屋上で、思い出話でもしない?」って。  僕を振った一生の親友の名前は、矢崎久遠(やざきくおん)。  亡くなった彼女のお母さんが、つけた大切な名前。  あの時の告白は応えてもらえなかったけど、今なら、あるいは。  そんな思いを抱えつつ、久遠と共に、かつての僕らについて語りあうことに。  そして、皆既月食の中で、僕は彼女から言われた。「月が綺麗だね」と。  夏目漱石が、I love youの和訳として「月が綺麗ですね」と言ったという逸話は有名だ。  とにかく、月が見えないその中で彼女は僕にそう言ったのだった。  これは、家族愛が強すぎて、恋愛を諦めざるを得なかった、「一生の親友」な久遠。  そして、彼女と一緒に生きてきた僕の一夜の物語。

大好きな幼なじみが超イケメンの彼女になったので諦めたって話

家紋武範
青春
大好きな幼なじみの奈都(なつ)。 高校に入ったら告白してラブラブカップルになる予定だったのに、超イケメンのサッカー部の柊斗(シュート)の彼女になっちまった。 全く勝ち目がないこの恋。 潔く諦めることにした。

処理中です...