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第一巻
★「アレ」の正体と、宿題の答え合わせを樹里とする。
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きっとストロボ効果でホイールが逆回転して見えていることだろう。
ある一定の回転数を超えるとそう見えるらしい。まあ乗っている僕たちからは見えないのだけど。前に走っているつもりが後ろだったり、後ろに走っているものが前だったり、恋愛というものもそれみたいで、どっちに進んでいるのかとどのつまり誰も分からないのかもしれない。
遠くに街の明かりがポツリポツリと見える。
CB400SF。それが僕の「アレ」だった。モーター音がガードレールの向こう側の木々を揺らす。黒いボディが夜の国道の灯りに照らされて金色の光を後へ後へ流していく。
僕が黒のフルフェイスで運転し、樹里が白のフルフェイスで後ろに座る。二人ともSHOEIのメット。樹里はだいたいいつも僕の腰に手を回し、メットごしに顔を背中にあてて長い髪をなびかせて二人で、闇を突っ走ってゆく。
田舎の国道は街灯が少ない。自分たちのCB400のヘッドライトだけを頼りに二人で暗がりを時には心強く、時には怯えながら、抜けていく。時に自由になれた気になり、時にはこのまま死ぬんじゃないかという恐怖があり、一寸先が見えているようで見えていない自分たちの道は、まるで心模様のようだった。今だから言えるのだろうか?それだったら僕はかなりげんきんなやつだな。本当に田中さんとこうしたかったのだろうか?恋人になったら僕ときっとこうしていた。。。でも今はそれが想像できないんだ。僕は、樹里とこうしているのが本当は一番いい。樹里はどう思っている?変態だってか(笑)そうかな・・・けどきっと、、、二人だからこのどこまで続くか分からない闇を駆け抜けていけるんだ。離れたくないんだ。
ちなみにCB400SFは親父のだ。親父が母親とデートで乗っていた昔のモデルを、たまたま中古車屋で見つけて買ってきて母親が喜ぶかと思いきや、大目玉。自転車置き場が狭いと追い出されて今はこちらに来ている。僕が免許取得費用一括支払いと引き換えに善良なる意志を持って管理しているわけだ。免許はあるから法律違反ではないが、学校では校則違反ではないものの申請書と誓約書を書かされる。「学校に乗ってこない」「バイクの貸し借りをしない」「学校で乗っていることを自慢することはあってはならない」「学校の生徒同士でバイクに乗っている話をしてはいけない」などである。禁止はしていないがほぼ禁止に近い。僕の場合父親からの車両管理受託任務責任のもと運行している、という建前で申請書を受理してもらっている。だからずっと「アレ」だった。
「大体合ってるって言ったけど、、、やっぱり六割ぐらいかな」
駐輪場でバイクを降りてメットを外す。もう遅いので僕たちぐらいしかここにはいない。
「そう?どこが違った?」
僕たちは部屋に戻る通路を歩く。
「ヤンキーだからとか、遊び人だからっていい女抱いてるとは限らないよ」
「・・・・僕は一人も抱けてないぞ」
「・・・・そりゃあにぃよりは達者でしょうよ。今までの勉強も何もしないでそればっかり懲りずにしてる奴らなんだから」
「じゃあ羨ましいじゃないか、また拗ねてごねるぞ」
「違う違う、そうじゃなくて」
自動ドアが少しタイミング遅く開くため、僕たちは一時停止。これで駐輪場から建物内に入る。
「下手にヤンキー風とか、遊び人風になったらあかんよって話」
「ええ?いいんちゃうん?ヤンキーなんかにはなれないけど遊び人なんてみんな『風』じゃないの?」
「違う、風であるがゆえのペナルティがあるってこと」
「ペナルティ?」
「そう、、、こんばんは」
「こんばんは」
エントランスでこれからこちらの地元のお祭りに行く人らとすれ違う。小さい子供が浴衣着てた。。。あれぐらいが無邪気で今はいいなあと思う。
「遊び人が手を出す女が必ず良いというわけでもないし、むしろ遊び人風になることで無理になる女の子もいる。むしろ無理になる女の子が良い子の可能性が高いの」
「そんなもんかな」
エレベーターの到着を待つ。
「そんなもんよ、今から田中さん抱かせてあげるって言ったら抱く?」
「・・・・リスキーやな」
「そう、リスキーどころか、朝にはあの顔に戻るのよ」
エレベーターが到着し、ドアが開いた。僕たち以外に他に乗るものはいなかった。
・・・あの顔って、、、樹里も言うね。『こいつは敵』とか『関係ない』と見なしたら容赦しないしいっさい繋がろうとしない。そのあたりの割り切り感は僕なんかの非じゃなくキツイ。五階のボタンを押す。
「下手に〇〇風を気取ると、自分が実はそうじゃなかったりしたときに二倍損することになる。どっちつかずが一番ダメ。だから自分は自分の持ってる良さや自分の雰囲気を良くしていく方がいいの」
「そうかあ」
「あにぃはもう十分いい雰囲気が出てる・・・嫌やけど」
「・・・・・え?マジ?」
「うん、後は優しさやお金のやりとりはそれで合ってる。本当は男なら女を強く愛したい、自分のリードでペースを掴みたい。愛するなら与えられる限り与えたいって思う気持ちは分かるけどさ、相手の温度とか感覚と合わせていかないと女からしたら『怖い』と思ったり『ははーん、この人私にメロメロなんだ』とすぐに思い上がる。女ってそういう思い上がりが強い子割と多い。やって良いことはない。だから私はセックスしたのかって聞いたの」
「うん」
そこが難しいんだよな。非モテ男子はついつい先走ってしまいがちだ。
「セックスは女にしたら最高の武器だから、『取り込んでやろう』としてるぐらいだから優しさMAXでも大丈夫。それ以外は加減みないとダメ。たまにおさせちゃんもいてるけど」
エレベーター内に誰もいてないので言いたい放題の樹里だな。苦笑してしまう。
・・・嫌やけど、、、って言わなかった?聞こえにくかった。
ある一定の回転数を超えるとそう見えるらしい。まあ乗っている僕たちからは見えないのだけど。前に走っているつもりが後ろだったり、後ろに走っているものが前だったり、恋愛というものもそれみたいで、どっちに進んでいるのかとどのつまり誰も分からないのかもしれない。
遠くに街の明かりがポツリポツリと見える。
CB400SF。それが僕の「アレ」だった。モーター音がガードレールの向こう側の木々を揺らす。黒いボディが夜の国道の灯りに照らされて金色の光を後へ後へ流していく。
僕が黒のフルフェイスで運転し、樹里が白のフルフェイスで後ろに座る。二人ともSHOEIのメット。樹里はだいたいいつも僕の腰に手を回し、メットごしに顔を背中にあてて長い髪をなびかせて二人で、闇を突っ走ってゆく。
田舎の国道は街灯が少ない。自分たちのCB400のヘッドライトだけを頼りに二人で暗がりを時には心強く、時には怯えながら、抜けていく。時に自由になれた気になり、時にはこのまま死ぬんじゃないかという恐怖があり、一寸先が見えているようで見えていない自分たちの道は、まるで心模様のようだった。今だから言えるのだろうか?それだったら僕はかなりげんきんなやつだな。本当に田中さんとこうしたかったのだろうか?恋人になったら僕ときっとこうしていた。。。でも今はそれが想像できないんだ。僕は、樹里とこうしているのが本当は一番いい。樹里はどう思っている?変態だってか(笑)そうかな・・・けどきっと、、、二人だからこのどこまで続くか分からない闇を駆け抜けていけるんだ。離れたくないんだ。
ちなみにCB400SFは親父のだ。親父が母親とデートで乗っていた昔のモデルを、たまたま中古車屋で見つけて買ってきて母親が喜ぶかと思いきや、大目玉。自転車置き場が狭いと追い出されて今はこちらに来ている。僕が免許取得費用一括支払いと引き換えに善良なる意志を持って管理しているわけだ。免許はあるから法律違反ではないが、学校では校則違反ではないものの申請書と誓約書を書かされる。「学校に乗ってこない」「バイクの貸し借りをしない」「学校で乗っていることを自慢することはあってはならない」「学校の生徒同士でバイクに乗っている話をしてはいけない」などである。禁止はしていないがほぼ禁止に近い。僕の場合父親からの車両管理受託任務責任のもと運行している、という建前で申請書を受理してもらっている。だからずっと「アレ」だった。
「大体合ってるって言ったけど、、、やっぱり六割ぐらいかな」
駐輪場でバイクを降りてメットを外す。もう遅いので僕たちぐらいしかここにはいない。
「そう?どこが違った?」
僕たちは部屋に戻る通路を歩く。
「ヤンキーだからとか、遊び人だからっていい女抱いてるとは限らないよ」
「・・・・僕は一人も抱けてないぞ」
「・・・・そりゃあにぃよりは達者でしょうよ。今までの勉強も何もしないでそればっかり懲りずにしてる奴らなんだから」
「じゃあ羨ましいじゃないか、また拗ねてごねるぞ」
「違う違う、そうじゃなくて」
自動ドアが少しタイミング遅く開くため、僕たちは一時停止。これで駐輪場から建物内に入る。
「下手にヤンキー風とか、遊び人風になったらあかんよって話」
「ええ?いいんちゃうん?ヤンキーなんかにはなれないけど遊び人なんてみんな『風』じゃないの?」
「違う、風であるがゆえのペナルティがあるってこと」
「ペナルティ?」
「そう、、、こんばんは」
「こんばんは」
エントランスでこれからこちらの地元のお祭りに行く人らとすれ違う。小さい子供が浴衣着てた。。。あれぐらいが無邪気で今はいいなあと思う。
「遊び人が手を出す女が必ず良いというわけでもないし、むしろ遊び人風になることで無理になる女の子もいる。むしろ無理になる女の子が良い子の可能性が高いの」
「そんなもんかな」
エレベーターの到着を待つ。
「そんなもんよ、今から田中さん抱かせてあげるって言ったら抱く?」
「・・・・リスキーやな」
「そう、リスキーどころか、朝にはあの顔に戻るのよ」
エレベーターが到着し、ドアが開いた。僕たち以外に他に乗るものはいなかった。
・・・あの顔って、、、樹里も言うね。『こいつは敵』とか『関係ない』と見なしたら容赦しないしいっさい繋がろうとしない。そのあたりの割り切り感は僕なんかの非じゃなくキツイ。五階のボタンを押す。
「下手に〇〇風を気取ると、自分が実はそうじゃなかったりしたときに二倍損することになる。どっちつかずが一番ダメ。だから自分は自分の持ってる良さや自分の雰囲気を良くしていく方がいいの」
「そうかあ」
「あにぃはもう十分いい雰囲気が出てる・・・嫌やけど」
「・・・・・え?マジ?」
「うん、後は優しさやお金のやりとりはそれで合ってる。本当は男なら女を強く愛したい、自分のリードでペースを掴みたい。愛するなら与えられる限り与えたいって思う気持ちは分かるけどさ、相手の温度とか感覚と合わせていかないと女からしたら『怖い』と思ったり『ははーん、この人私にメロメロなんだ』とすぐに思い上がる。女ってそういう思い上がりが強い子割と多い。やって良いことはない。だから私はセックスしたのかって聞いたの」
「うん」
そこが難しいんだよな。非モテ男子はついつい先走ってしまいがちだ。
「セックスは女にしたら最高の武器だから、『取り込んでやろう』としてるぐらいだから優しさMAXでも大丈夫。それ以外は加減みないとダメ。たまにおさせちゃんもいてるけど」
エレベーター内に誰もいてないので言いたい放題の樹里だな。苦笑してしまう。
・・・嫌やけど、、、って言わなかった?聞こえにくかった。
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