114 / 188
第一巻
★「アレ」の正体と、宿題の答え合わせを樹里とする。
しおりを挟む
きっとストロボ効果でホイールが逆回転して見えていることだろう。
ある一定の回転数を超えるとそう見えるらしい。まあ乗っている僕たちからは見えないのだけど。前に走っているつもりが後ろだったり、後ろに走っているものが前だったり、恋愛というものもそれみたいで、どっちに進んでいるのかとどのつまり誰も分からないのかもしれない。
遠くに街の明かりがポツリポツリと見える。
CB400SF。それが僕の「アレ」だった。モーター音がガードレールの向こう側の木々を揺らす。黒いボディが夜の国道の灯りに照らされて金色の光を後へ後へ流していく。
僕が黒のフルフェイスで運転し、樹里が白のフルフェイスで後ろに座る。二人ともSHOEIのメット。樹里はだいたいいつも僕の腰に手を回し、メットごしに顔を背中にあてて長い髪をなびかせて二人で、闇を突っ走ってゆく。
田舎の国道は街灯が少ない。自分たちのCB400のヘッドライトだけを頼りに二人で暗がりを時には心強く、時には怯えながら、抜けていく。時に自由になれた気になり、時にはこのまま死ぬんじゃないかという恐怖があり、一寸先が見えているようで見えていない自分たちの道は、まるで心模様のようだった。今だから言えるのだろうか?それだったら僕はかなりげんきんなやつだな。本当に田中さんとこうしたかったのだろうか?恋人になったら僕ときっとこうしていた。。。でも今はそれが想像できないんだ。僕は、樹里とこうしているのが本当は一番いい。樹里はどう思っている?変態だってか(笑)そうかな・・・けどきっと、、、二人だからこのどこまで続くか分からない闇を駆け抜けていけるんだ。離れたくないんだ。
ちなみにCB400SFは親父のだ。親父が母親とデートで乗っていた昔のモデルを、たまたま中古車屋で見つけて買ってきて母親が喜ぶかと思いきや、大目玉。自転車置き場が狭いと追い出されて今はこちらに来ている。僕が免許取得費用一括支払いと引き換えに善良なる意志を持って管理しているわけだ。免許はあるから法律違反ではないが、学校では校則違反ではないものの申請書と誓約書を書かされる。「学校に乗ってこない」「バイクの貸し借りをしない」「学校で乗っていることを自慢することはあってはならない」「学校の生徒同士でバイクに乗っている話をしてはいけない」などである。禁止はしていないがほぼ禁止に近い。僕の場合父親からの車両管理受託任務責任のもと運行している、という建前で申請書を受理してもらっている。だからずっと「アレ」だった。
「大体合ってるって言ったけど、、、やっぱり六割ぐらいかな」
駐輪場でバイクを降りてメットを外す。もう遅いので僕たちぐらいしかここにはいない。
「そう?どこが違った?」
僕たちは部屋に戻る通路を歩く。
「ヤンキーだからとか、遊び人だからっていい女抱いてるとは限らないよ」
「・・・・僕は一人も抱けてないぞ」
「・・・・そりゃあにぃよりは達者でしょうよ。今までの勉強も何もしないでそればっかり懲りずにしてる奴らなんだから」
「じゃあ羨ましいじゃないか、また拗ねてごねるぞ」
「違う違う、そうじゃなくて」
自動ドアが少しタイミング遅く開くため、僕たちは一時停止。これで駐輪場から建物内に入る。
「下手にヤンキー風とか、遊び人風になったらあかんよって話」
「ええ?いいんちゃうん?ヤンキーなんかにはなれないけど遊び人なんてみんな『風』じゃないの?」
「違う、風であるがゆえのペナルティがあるってこと」
「ペナルティ?」
「そう、、、こんばんは」
「こんばんは」
エントランスでこれからこちらの地元のお祭りに行く人らとすれ違う。小さい子供が浴衣着てた。。。あれぐらいが無邪気で今はいいなあと思う。
「遊び人が手を出す女が必ず良いというわけでもないし、むしろ遊び人風になることで無理になる女の子もいる。むしろ無理になる女の子が良い子の可能性が高いの」
「そんなもんかな」
エレベーターの到着を待つ。
「そんなもんよ、今から田中さん抱かせてあげるって言ったら抱く?」
「・・・・リスキーやな」
「そう、リスキーどころか、朝にはあの顔に戻るのよ」
エレベーターが到着し、ドアが開いた。僕たち以外に他に乗るものはいなかった。
・・・あの顔って、、、樹里も言うね。『こいつは敵』とか『関係ない』と見なしたら容赦しないしいっさい繋がろうとしない。そのあたりの割り切り感は僕なんかの非じゃなくキツイ。五階のボタンを押す。
「下手に〇〇風を気取ると、自分が実はそうじゃなかったりしたときに二倍損することになる。どっちつかずが一番ダメ。だから自分は自分の持ってる良さや自分の雰囲気を良くしていく方がいいの」
「そうかあ」
「あにぃはもう十分いい雰囲気が出てる・・・嫌やけど」
「・・・・・え?マジ?」
「うん、後は優しさやお金のやりとりはそれで合ってる。本当は男なら女を強く愛したい、自分のリードでペースを掴みたい。愛するなら与えられる限り与えたいって思う気持ちは分かるけどさ、相手の温度とか感覚と合わせていかないと女からしたら『怖い』と思ったり『ははーん、この人私にメロメロなんだ』とすぐに思い上がる。女ってそういう思い上がりが強い子割と多い。やって良いことはない。だから私はセックスしたのかって聞いたの」
「うん」
そこが難しいんだよな。非モテ男子はついつい先走ってしまいがちだ。
「セックスは女にしたら最高の武器だから、『取り込んでやろう』としてるぐらいだから優しさMAXでも大丈夫。それ以外は加減みないとダメ。たまにおさせちゃんもいてるけど」
エレベーター内に誰もいてないので言いたい放題の樹里だな。苦笑してしまう。
・・・嫌やけど、、、って言わなかった?聞こえにくかった。
ある一定の回転数を超えるとそう見えるらしい。まあ乗っている僕たちからは見えないのだけど。前に走っているつもりが後ろだったり、後ろに走っているものが前だったり、恋愛というものもそれみたいで、どっちに進んでいるのかとどのつまり誰も分からないのかもしれない。
遠くに街の明かりがポツリポツリと見える。
CB400SF。それが僕の「アレ」だった。モーター音がガードレールの向こう側の木々を揺らす。黒いボディが夜の国道の灯りに照らされて金色の光を後へ後へ流していく。
僕が黒のフルフェイスで運転し、樹里が白のフルフェイスで後ろに座る。二人ともSHOEIのメット。樹里はだいたいいつも僕の腰に手を回し、メットごしに顔を背中にあてて長い髪をなびかせて二人で、闇を突っ走ってゆく。
田舎の国道は街灯が少ない。自分たちのCB400のヘッドライトだけを頼りに二人で暗がりを時には心強く、時には怯えながら、抜けていく。時に自由になれた気になり、時にはこのまま死ぬんじゃないかという恐怖があり、一寸先が見えているようで見えていない自分たちの道は、まるで心模様のようだった。今だから言えるのだろうか?それだったら僕はかなりげんきんなやつだな。本当に田中さんとこうしたかったのだろうか?恋人になったら僕ときっとこうしていた。。。でも今はそれが想像できないんだ。僕は、樹里とこうしているのが本当は一番いい。樹里はどう思っている?変態だってか(笑)そうかな・・・けどきっと、、、二人だからこのどこまで続くか分からない闇を駆け抜けていけるんだ。離れたくないんだ。
ちなみにCB400SFは親父のだ。親父が母親とデートで乗っていた昔のモデルを、たまたま中古車屋で見つけて買ってきて母親が喜ぶかと思いきや、大目玉。自転車置き場が狭いと追い出されて今はこちらに来ている。僕が免許取得費用一括支払いと引き換えに善良なる意志を持って管理しているわけだ。免許はあるから法律違反ではないが、学校では校則違反ではないものの申請書と誓約書を書かされる。「学校に乗ってこない」「バイクの貸し借りをしない」「学校で乗っていることを自慢することはあってはならない」「学校の生徒同士でバイクに乗っている話をしてはいけない」などである。禁止はしていないがほぼ禁止に近い。僕の場合父親からの車両管理受託任務責任のもと運行している、という建前で申請書を受理してもらっている。だからずっと「アレ」だった。
「大体合ってるって言ったけど、、、やっぱり六割ぐらいかな」
駐輪場でバイクを降りてメットを外す。もう遅いので僕たちぐらいしかここにはいない。
「そう?どこが違った?」
僕たちは部屋に戻る通路を歩く。
「ヤンキーだからとか、遊び人だからっていい女抱いてるとは限らないよ」
「・・・・僕は一人も抱けてないぞ」
「・・・・そりゃあにぃよりは達者でしょうよ。今までの勉強も何もしないでそればっかり懲りずにしてる奴らなんだから」
「じゃあ羨ましいじゃないか、また拗ねてごねるぞ」
「違う違う、そうじゃなくて」
自動ドアが少しタイミング遅く開くため、僕たちは一時停止。これで駐輪場から建物内に入る。
「下手にヤンキー風とか、遊び人風になったらあかんよって話」
「ええ?いいんちゃうん?ヤンキーなんかにはなれないけど遊び人なんてみんな『風』じゃないの?」
「違う、風であるがゆえのペナルティがあるってこと」
「ペナルティ?」
「そう、、、こんばんは」
「こんばんは」
エントランスでこれからこちらの地元のお祭りに行く人らとすれ違う。小さい子供が浴衣着てた。。。あれぐらいが無邪気で今はいいなあと思う。
「遊び人が手を出す女が必ず良いというわけでもないし、むしろ遊び人風になることで無理になる女の子もいる。むしろ無理になる女の子が良い子の可能性が高いの」
「そんなもんかな」
エレベーターの到着を待つ。
「そんなもんよ、今から田中さん抱かせてあげるって言ったら抱く?」
「・・・・リスキーやな」
「そう、リスキーどころか、朝にはあの顔に戻るのよ」
エレベーターが到着し、ドアが開いた。僕たち以外に他に乗るものはいなかった。
・・・あの顔って、、、樹里も言うね。『こいつは敵』とか『関係ない』と見なしたら容赦しないしいっさい繋がろうとしない。そのあたりの割り切り感は僕なんかの非じゃなくキツイ。五階のボタンを押す。
「下手に〇〇風を気取ると、自分が実はそうじゃなかったりしたときに二倍損することになる。どっちつかずが一番ダメ。だから自分は自分の持ってる良さや自分の雰囲気を良くしていく方がいいの」
「そうかあ」
「あにぃはもう十分いい雰囲気が出てる・・・嫌やけど」
「・・・・・え?マジ?」
「うん、後は優しさやお金のやりとりはそれで合ってる。本当は男なら女を強く愛したい、自分のリードでペースを掴みたい。愛するなら与えられる限り与えたいって思う気持ちは分かるけどさ、相手の温度とか感覚と合わせていかないと女からしたら『怖い』と思ったり『ははーん、この人私にメロメロなんだ』とすぐに思い上がる。女ってそういう思い上がりが強い子割と多い。やって良いことはない。だから私はセックスしたのかって聞いたの」
「うん」
そこが難しいんだよな。非モテ男子はついつい先走ってしまいがちだ。
「セックスは女にしたら最高の武器だから、『取り込んでやろう』としてるぐらいだから優しさMAXでも大丈夫。それ以外は加減みないとダメ。たまにおさせちゃんもいてるけど」
エレベーター内に誰もいてないので言いたい放題の樹里だな。苦笑してしまう。
・・・嫌やけど、、、って言わなかった?聞こえにくかった。
3
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/youth.png?id=ad9871afe441980cc37c)
大好きな幼なじみが超イケメンの彼女になったので諦めたって話
家紋武範
青春
大好きな幼なじみの奈都(なつ)。
高校に入ったら告白してラブラブカップルになる予定だったのに、超イケメンのサッカー部の柊斗(シュート)の彼女になっちまった。
全く勝ち目がないこの恋。
潔く諦めることにした。
脅され彼女~可愛い女子の弱みを握ったので脅して彼女にしてみたが、健気すぎて幸せにしたいと思った~
みずがめ
青春
陰キャ男子が後輩の女子の弱みを握ってしまった。彼女いない歴=年齢の彼は後輩少女に彼女になってくれとお願いする。脅迫から生まれた恋人関係ではあったが、彼女はとても健気な女の子だった。
ゲス男子×健気女子のコンプレックスにまみれた、もしかしたら純愛になるかもしれないお話。
※この作品は別サイトにも掲載しています。
※表紙イラストは、あっきコタロウさんに描いていただきました。
おてんばプロレスの女神たち ~男子で、女子大生で、女子プロレスラーのジュリーという生き方~
ちひろ
青春
おてんば女子大学初の“男子の女子大生”ジュリー。憧れの大学生活では想定外のジレンマを抱えながらも、涼子先輩が立ち上げた女子プロレスごっこ団体・おてんばプロレスで開花し、地元のプロレスファン(特にオッさん連中!)をとりこに。青春派プロレスノベル「おてんばプロレスの女神たち」のアナザーストーリー。
放課後はネットで待ち合わせ
星名柚花(恋愛小説大賞参加中)
青春
【カクヨム×魔法のiらんどコンテスト特別賞受賞作】
高校入学を控えた前日、山科萌はいつものメンバーとオンラインゲームで遊んでいた。
何気なく「明日入学式だ」と言ったことから、ゲーム友達「ルビー」も同じ高校に通うことが判明。
翌日、萌はルビーと出会う。
女性アバターを使っていたルビーの正体は、ゲーム好きな美少年だった。
彼から女子避けのために「彼女のふりをしてほしい」と頼まれた萌。
初めはただのフリだったけれど、だんだん彼のことが気になるようになり…?
優秀賞受賞作【スプリンターズ】少女達の駆ける理由
棚丘えりん
青春
(2022/8/31)アルファポリス・第13回ドリーム小説大賞で優秀賞受賞、読者投票2位。
(2022/7/28)エブリスタ新作セレクション(編集部からオススメ作品をご紹介!)に掲載。
女子短距離界に突如として現れた、孤独な天才スプリンター瑠那。
彼女への大敗を切っ掛けに陸上競技を捨てた陽子。
高校入学により偶然再会した二人を中心に、物語は動き出す。
「一人で走るのは寂しいな」
「本気で走るから。本気で追いかけるからさ。勝負しよう」
孤独な中学時代を過ごし、仲間とリレーを知らない瑠那のため。
そして儚くも美しい瑠那の走りを間近で感じるため。
陽子は挫折を乗り越え、再び心を燃やして走り出す。
待ち受けるのは個性豊かなスプリンターズ(短距離選手達)。
彼女達にもまた『駆ける理由』がある。
想いと想いをスピードの世界でぶつけ合う、女子高生達のリレーを中心とした陸上競技の物語。
陸上部って結構メジャーな部活だし(プロスポーツとしてはマイナーだけど)昔やってたよ~って人も多そうですよね。
それなのに何故! どうして!
陸上部、特に短距離を舞台にした小説はこんなにも少ないんでしょうか!
というか少ないどころじゃなく有名作は『一瞬の風になれ』しかないような状況。
嘘だろ~全国の陸上ファンは何を読めばいいんだ。うわーん。
ということで、書き始めました。
陸上競技って、なかなか結構、面白いんですよ。ということが伝われば嬉しいですね。
表紙は荒野羊仔先生(https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/520209117)が描いてくれました。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/youth.png?id=ad9871afe441980cc37c)
隣人の女性がDVされてたから助けてみたら、なぜかその人(年下の女子大生)と同棲することになった(なんで?)
チドリ正明@不労所得発売中!!
青春
マンションの隣の部屋から女性の悲鳴と男性の怒鳴り声が聞こえた。
主人公 時田宗利(ときたむねとし)の判断は早かった。迷わず訪問し時間を稼ぎ、確証が取れた段階で警察に通報。DV男を現行犯でとっちめることに成功した。
ちっぽけな勇気と小心者が持つ単なる親切心でやった宗利は日常に戻る。
しかし、しばらくして宗時は見覚えのある女性が部屋の前にしゃがみ込んでいる姿を発見した。
その女性はDVを受けていたあの時の隣人だった。
「頼れる人がいないんです……私と一緒に暮らしてくれませんか?」
これはDVから女性を守ったことで始まる新たな恋物語。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/youth.png?id=ad9871afe441980cc37c)
学園のマドンナの渡辺さんが、なぜか毎週予定を聞いてくる
まるせい
青春
高校に入学して暫く経った頃、ナンパされている少女を助けた相川。相手は入学早々に学園のマドンナと呼ばれている渡辺美沙だった。
それ以来、彼女は学校内でも声を掛けてくるようになり、なぜか毎週「週末の御予定は?」と聞いてくるようになる。
ある趣味を持つ相川は週末の度に出掛けるのだが……。
焦れ焦れと距離を詰めようとするヒロインとの青春ラブコメディ。ここに開幕
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる