【R15】【第一作目完結】最強の妹・樹里の愛が僕に凄すぎる件【第二作目連載中】

木村 サイダー

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第一巻

★ヘドロがとまらないその二

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「オッペケペーに俺がかまってやったんだろう。なのに自分が顔面塗りたくりに成功したら何あれ?どんだけ偉そうになるんだ?スクールカーストってなんだ?陽キャは良くて陰キャはそんなにダメなのか??ああ??個性と性格だろうがそんなもんは!!」
言いたくなかった。ひょっとして最もオッペケペーの分際でって思っていたのは、
「オッペケペーは所詮オッペケペーのまま一生いたら良かったんだ。頭に触手生やしてギトギトの顔で」
この俺自身だったのかもしれない。
「・・・・そうかもしれないね」

「だいたいあれだろ、女って自分より弱いやつには一ミリの優しさも示さず、自分より強いもの見つけて媚びへつらい、そいつのステータスから発する権力を乱用するのが好きな生き物なんだろ?樹里から宿題言われたときにネットでどっかに書いてあったわ」
「・・・・・・そうね」
「俺、弱いやつ、俺弱いやつ代表!」
「・・・・・・・・・」
「で、そいつが弱くなったら、そいつに見切りつけて他のところに飛び移る。まるで寄生虫やん」
心の中で思っていた。
「で、今度自分が弱くなってきたら適当にレベルをさげて、また寄生できそうな少しレベルの低いやつに寄生していくんだってな?恥ずかしくないんかな、それ」
「・・・・・・そうね」
「プライドもなんもあったもんじゃねえよな、上等のクズだ。そのまま負け認めて尼にでもなるか老人ホームで一人で暮らせっての」
「・・・・・・・・・」
最低の自分。
「あとこうも最後に書いてあったなあ。最後弱って弱ってどうしようもなくて、つまり子供も抱えていくところもなくて、どうしようも生活もままならなくなったら、最初に切った優しいだけのような男のところに寄生するんだってさ。それもなるべく若いのんだって。つまり俺はあのチンピラ風情たちに散々使い古されて回されて、あとでっかい贈り物、ガキだな、チンピラとこさえたガキ連れてババアになった田中が『やっぱりあなたが好きです』って来るってことかな、ハハハハハハハハハハハハ!こいつはキモイぞ!寝取られもののエロ漫画顔負けシナリオだ!!マジキモイわ、ハハハハハハハ!」
酔っぱらってんのかな?ケンカしてんのかな?
そういう声が聞こえた。でももう自分を静止できない。
「・・・・・・・・・」
「そこを勝ち抜けるために化粧して武装して、大したこともない面大したように見せかけて、弱い男は金づるかカスように扱う」
「・・・・・・・・・」
「女の戦いに負けた行き場のない屍かゴミみたいな女拾うだけの男ってわけですか。そんなら一生エロゲーしてるほうがマシですわ、一生な」
「・・・・・・・・・」
自分の中のヘドロが・・・止まらない。
「女なんてどいつもこいつもクソなんだよ!キメーんだおめえら!女はよ!全員どいつもこいつも顔も心も塗りたくってキメーんだよ!!」
樹里は俯いて影を作っていた。
樹里に全ていう事ではない。しかし塊になってしまっていて、一箇所だけ切り離して出すなんて無理だった。ガボッと丸々出てしまった。
「・・・・・そうね・・・・宿題は、だいたい合ってるよ」
「・・・・・・・・・」
「すみません、大丈夫ですか?」
緑の腕章をつけた大学生ぐらいの人二人が、不安そうな顔をして僕たちの前に居た。
「え・・?」
「大丈夫です。ちょっと言い合いしてました」
樹里が顔をあげて「すみません」と付け足す。
「ああ、、、分かりました。あんまり大きな声出されると、多分また・・・」
「はい、もう行きますので」にっこり笑って頷く。
「じゃあ、気をつけて・・・・」
役割者たちだった。僕があんまり興奮してまくしたててしまったせいで、酒飲んでケンカでもして横の女に暴力でも振るうのかと思ったのだろう。
冷静であることを認識できたみたいなので、再び歩いて去っていった。
冷静ではないのだろうけど。
なにしろ溜まっていた心のヘドロがゲボッと噴き出したのだから。
樹里は正面のなにかを見つめながら、
「ただ・・・・」
「うん?」

「私以外に、田中を変えてあげようと頑張った子たちを責めるのはやめて。たとえ間接的であっても」

「・・・・・・・・・」
「そうでないとこんなことになってしまって、あの子らも自分を責めているのにその傷をえぐるようなことになるから・・・・」そう言ってまた俯いた。
「・・・・・・・・・」
自分の心の中の視界が暗転した気がした。怒りに任せて愚かしいことを口からヘドロをぶちまけるままに吐き出してきたことは、樹里は勿論、亜子さんやらんちゃん、その他色んなところで協力してきた人たちを同様に愚かだと揶揄しているのだ。それに気が付かないのなら、それはきっと、きっと田中と同じレベルだということだ。。。
「・・・・・・・・・」言葉が出ない。
樹里の樹里らしからぬ、消え入りそうな小さな、けど僕に突き刺さる他者に対する慈愛に満ちた言葉、配慮ある態度は、僕の中の残り少ない毒の種を浄化させるようだった。
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・帰ろうか」
それしか思い浮かばなかった。とにかくここにはもうあまり居たくない。
立ち上がってみた。もう、胃痙攣は納まり冷汗も出ない。ただどうも冷汗の後の体臭は凄く臭く感じられる。樹里が嫌がるかな。。。
「樹里、僕ちょっと冷汗の後の臭いがキツイかも・・・」
うん?て感じで立ち上がり、
「そんなん気にしたこともないわ」
「あと、それと・・・・・」
「うん?」今度は伏し目にならずこちらを見ている。
「さっきはごめん・・・助けてくれて、色々協力してくれていたのに、あんなこと言っちゃって・・・・」
「・・・・・うん、私は大丈夫」
言葉の最後の方には、樹里の優しい力が籠っていた。
樹里は自分のことは庇わなかった。さっきの言葉は自分以外の人を守るためだけのものだたから、、、僕が謝ってあげないと、樹里は救われない。
けど・・・猜疑心は本心である・・・それは消えない。
今日はもういいけど。樹里が抵抗なく受け入れてくれたおかげでヘドロはほとんど飛び出してしまったから。
どちらともなく二人、ぼんやりとした薄暗い街頭に照らされながら、神宮東公園を後にし、アレのところへと向かった。
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