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第一巻
★やってはいけない、優しさと弱さのすり替えと、先走りと、『紐付き』
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樹里には言ってない。あのあと田中さんの意味不明な肩透かしのような返信に悶絶している時「何してるん?珍しいなあリビングって」と風呂に行こうとしてる樹里が声をかけてきた。多分僕はその場凌ぎなことを言ったように思う。洗濯物そろそろかなとか、テレビがどうか、とか。なんでもいい。口から出る言葉を喋ってその場をごまかしたかった。樹里は推量るような気配はあったもののそのまま、脱衣場へと消えて行った。
その日は晴天。一日雨は降らない。当然暑いわけだが風もそこまで強くなく夏の南風が吹く。学校の高台から見える景色はたんぼは立派な稲穂になるであろう青々とした夏の稲が無数に実ってて風にそよぐ。お祭りにはベストな状態で開催されるであろうに行く相手はキャンセル。そしてあの「右なのか左なのか」分からないようなメッセージアプリ。。。
仲直りしたいのだろうか、なにか思慮があるのだろうか。。。
いい方に考えれば単純に仲直りだ。田中さんブームも学校内ではだいぶ沈静化してきた。元には戻ってこないが学校の中の別のグループの中で見かける。村岡さんのところと、後はその横のつながり。可もなく不可もなくな感じに落ち着いてきたってことだろうか。
でも僕と仲直りするメリットが、見当たらない。僕の存在はあの子には無力で役立たずだって前に宣言されている。
そこで思い浮かぶのは悪い考えの方だ。
僕じゃなくて樹里を利用したい。樹里を使うことでスクールカーストが一瞬で最強に近くなることに体感で知っているはず。もしくは何か他の使い方・・・・相談は樹里から乗っかっていったところもあるが、僕がいなかったら樹里も田中さんに関係などもたなかったはず。だからやはり僕のせいだ。とにかく樹里を出汁にされるのはこの上なく嫌だ。それなら絶交でかまわないと思っている。
あともう一つ思い当たることがある。それはお金だ。これも最悪だ。あれだけの化粧品やスキンケア用品をどの程度のペースで使っていくのか分からないが、お金がかかっていることは間違いがない。縮毛矯正も調べたが約ニ万円だとか。。。それで数か月に一度するなら学生にとってはかなりヘビーなコストになる。樹里から言われた「なんでこうなったのかは近いうちにはっきりさせとかんと・・・」という話につながる。僕は自分のやってきたことを並列に並べて考えてみた。DVDは次の休日に取りに行って、翌週レンタル。軽食はすべて奢り。釣りは樹里もいたからまああんなもんとして、お弁当のおかずは全部奢りでしかも僕が作っていた。頼んでもないのに良かれと思って。テーマパークの費用は莫大な奢りだった。母親から〇万円もらって一回のデートで使い切った。ええ格好してしまった。入場料からアトラクションから昼の食べ物まで一番良いものを食べさせて全部奢った。その時の頭の中はこうだ。僕が誘ってついてきてくれたから悪いし、準備するのにお金もかかっているだろうし、ここは男が出すのが筋やし、そうせんともう来てもらえなかったら嫌やし、お金で解決できるんやったら田中さんを繋ぎ止めたいから出そう、これで気を引けるんなら、これも手段や、出そう。でもそれは、お弁当のこともそうだけど田中さんが言ってきたことじゃない。望んだことじゃない。望んだことをしたわけでなく、弱い手段のない無能な自分を隠した偽の優しさだったかも。
以前樹里が僕に男女間のことでこういった。
私に飯食わしてくれる男もおれば、コートが欲しいなあといえば買ってと言ってなくても買いに行ってくれる男もおる、パフェ倍盛になんてしてくれって頼んでもないのにしてくる店長もおる、けどそれらは皆私が、してと頼んだことじゃない。頼んでもないことしかできへんくせに、自分に惚れてほしいなんて勘違いも甚だしいわ。だからそういう扱いになるねん。
僕はそういう奴になっていた。
少し分かった気がする。
自分の弱さを隠して、お金や尽力で優しさにすり替えていた。
樹里が良く言っていた僕が聞くたびに驚いていたことで「あにぃ、田中さんとはセックスしたんか」
最初はなにをキツイ冗談を言っているんだと思っていたが、案外それは冗談ではないのかもしれない。優しさには段階があり、その「温度のようなもの」を間違えていたのかもしれない。料理の世界でも火加減が大事じゃないか。お肉を焼く時でもずっとフライパンで強火なら焦げるばかりだし、中火なら炊いているみたいになってくる。段階で強火と中火を分ける。つまり僕はもうすでにセックスをした関係のある二人が最高にお互いを思いあって提供するレベルの愛や労りの気持ちや尽力を、まだ自分のことを何とも思っていない女子にぶつけていたのかもしれない、ということだ。だとしたら樹里の言う通りそんなものは不要でしかない。テレビドラマや漫画や小説とかではいきなりといっていいほど全力で優しくする。あれは本来おかしいのかもしれない。知り合っていって徐々に気持ちを確かめ合って、そのステージに合う優しさを提供することが大事なんだ。
あともう一つ樹里たちと決定的に違うこと。
それは「紐付き」でやってしまっていることだ。樹里は、僕と田中さんをくっつけたいとか、男女として付き合っていかせようとか、そういうのはないだろう。いわば「ちょっと手頃なあにぃと話ししてくれる女の子がおったから、それはそれはありがたいわ。社会勉強や思ってコミュニケーションしいや」が樹里の思うところだと推測する。興味本位と親切心で今回のは乗ってきただけ。それ以上背後には何もない。僕は「少し好きになりかけている」というのがある。「好きになっていて、僕のことを好きになってほしい」という代償が絡んだ奉仕というのは、そんな気がないもんにとってはウザいんだろう。さっきの話とこの話は繋がる。
だとしたら僕は良かれと思ってやったことが裏目に出てしまって、宿題のことを見ても分かるように「惚れた弱みにつけこまれている弱い男」「そしてそんな男が取る行動パターン」になってしまっているというわけか。
その日は晴天。一日雨は降らない。当然暑いわけだが風もそこまで強くなく夏の南風が吹く。学校の高台から見える景色はたんぼは立派な稲穂になるであろう青々とした夏の稲が無数に実ってて風にそよぐ。お祭りにはベストな状態で開催されるであろうに行く相手はキャンセル。そしてあの「右なのか左なのか」分からないようなメッセージアプリ。。。
仲直りしたいのだろうか、なにか思慮があるのだろうか。。。
いい方に考えれば単純に仲直りだ。田中さんブームも学校内ではだいぶ沈静化してきた。元には戻ってこないが学校の中の別のグループの中で見かける。村岡さんのところと、後はその横のつながり。可もなく不可もなくな感じに落ち着いてきたってことだろうか。
でも僕と仲直りするメリットが、見当たらない。僕の存在はあの子には無力で役立たずだって前に宣言されている。
そこで思い浮かぶのは悪い考えの方だ。
僕じゃなくて樹里を利用したい。樹里を使うことでスクールカーストが一瞬で最強に近くなることに体感で知っているはず。もしくは何か他の使い方・・・・相談は樹里から乗っかっていったところもあるが、僕がいなかったら樹里も田中さんに関係などもたなかったはず。だからやはり僕のせいだ。とにかく樹里を出汁にされるのはこの上なく嫌だ。それなら絶交でかまわないと思っている。
あともう一つ思い当たることがある。それはお金だ。これも最悪だ。あれだけの化粧品やスキンケア用品をどの程度のペースで使っていくのか分からないが、お金がかかっていることは間違いがない。縮毛矯正も調べたが約ニ万円だとか。。。それで数か月に一度するなら学生にとってはかなりヘビーなコストになる。樹里から言われた「なんでこうなったのかは近いうちにはっきりさせとかんと・・・」という話につながる。僕は自分のやってきたことを並列に並べて考えてみた。DVDは次の休日に取りに行って、翌週レンタル。軽食はすべて奢り。釣りは樹里もいたからまああんなもんとして、お弁当のおかずは全部奢りでしかも僕が作っていた。頼んでもないのに良かれと思って。テーマパークの費用は莫大な奢りだった。母親から〇万円もらって一回のデートで使い切った。ええ格好してしまった。入場料からアトラクションから昼の食べ物まで一番良いものを食べさせて全部奢った。その時の頭の中はこうだ。僕が誘ってついてきてくれたから悪いし、準備するのにお金もかかっているだろうし、ここは男が出すのが筋やし、そうせんともう来てもらえなかったら嫌やし、お金で解決できるんやったら田中さんを繋ぎ止めたいから出そう、これで気を引けるんなら、これも手段や、出そう。でもそれは、お弁当のこともそうだけど田中さんが言ってきたことじゃない。望んだことじゃない。望んだことをしたわけでなく、弱い手段のない無能な自分を隠した偽の優しさだったかも。
以前樹里が僕に男女間のことでこういった。
私に飯食わしてくれる男もおれば、コートが欲しいなあといえば買ってと言ってなくても買いに行ってくれる男もおる、パフェ倍盛になんてしてくれって頼んでもないのにしてくる店長もおる、けどそれらは皆私が、してと頼んだことじゃない。頼んでもないことしかできへんくせに、自分に惚れてほしいなんて勘違いも甚だしいわ。だからそういう扱いになるねん。
僕はそういう奴になっていた。
少し分かった気がする。
自分の弱さを隠して、お金や尽力で優しさにすり替えていた。
樹里が良く言っていた僕が聞くたびに驚いていたことで「あにぃ、田中さんとはセックスしたんか」
最初はなにをキツイ冗談を言っているんだと思っていたが、案外それは冗談ではないのかもしれない。優しさには段階があり、その「温度のようなもの」を間違えていたのかもしれない。料理の世界でも火加減が大事じゃないか。お肉を焼く時でもずっとフライパンで強火なら焦げるばかりだし、中火なら炊いているみたいになってくる。段階で強火と中火を分ける。つまり僕はもうすでにセックスをした関係のある二人が最高にお互いを思いあって提供するレベルの愛や労りの気持ちや尽力を、まだ自分のことを何とも思っていない女子にぶつけていたのかもしれない、ということだ。だとしたら樹里の言う通りそんなものは不要でしかない。テレビドラマや漫画や小説とかではいきなりといっていいほど全力で優しくする。あれは本来おかしいのかもしれない。知り合っていって徐々に気持ちを確かめ合って、そのステージに合う優しさを提供することが大事なんだ。
あともう一つ樹里たちと決定的に違うこと。
それは「紐付き」でやってしまっていることだ。樹里は、僕と田中さんをくっつけたいとか、男女として付き合っていかせようとか、そういうのはないだろう。いわば「ちょっと手頃なあにぃと話ししてくれる女の子がおったから、それはそれはありがたいわ。社会勉強や思ってコミュニケーションしいや」が樹里の思うところだと推測する。興味本位と親切心で今回のは乗ってきただけ。それ以上背後には何もない。僕は「少し好きになりかけている」というのがある。「好きになっていて、僕のことを好きになってほしい」という代償が絡んだ奉仕というのは、そんな気がないもんにとってはウザいんだろう。さっきの話とこの話は繋がる。
だとしたら僕は良かれと思ってやったことが裏目に出てしまって、宿題のことを見ても分かるように「惚れた弱みにつけこまれている弱い男」「そしてそんな男が取る行動パターン」になってしまっているというわけか。
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