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第一巻
★田中の肩透かし
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結局、亜子さんは生活指導を受けることはなかった。亜子さんが蹴った机は戻ったわずかな時間でごまかしながら物入れをおもいきり裂くように引き離したら不細工だが奇跡的に元通り?なんて言わないガタガタだけど、幅だけはちょうど良くなった。それで勘弁してもらった。
田中さんとは、その日以来口を利かなくなった。目も合わせない。
鉢合わせになったことが一度あったが、お互い目をそらして少しだけ会釈してすぐに離れた。田中さんはすっかり周りの取り巻きの面子を変えていた。江藤さんとも朝と帰りの挨拶程度でそれ以上の会話はなにもしていなさそうだ。
お昼はやっぱり一人で食べている。亜子さんやらんちゃんが、「毎日うちのクラスで」って言ってくれるが、あんまりそういう気にはならない。基本一人ないし好きな人がもう一人いるぐらいのが自分は根っから好きなんだろうなあ。講堂裏ももう熱すぎるし、今のお昼時には江藤さんもおらず、田中さんもおそらく食堂にでかけている。気まずいメンバーはいない。田中さんが村岡さんとこっちに残る時だけは樹里のところでお世話になったりしている。
喪失感・・・・今まであったものがぽっかりと穴をあけて、そこに、夏に相応しくない風がスースーと吹き抜ける。ここ一か月ぐらいは田中さんのことを考えて日々動いていたからそこ中心だったが、また中心が特別ではない自分と樹里だけのものになった。中学校のイジメから解放されたあとの学校生活と似ている。
亜子さんに止めてもらっておきながらこんな言い方は悪いけど、あれがなかったらまだ話していただろうか。自分が引き下がって答えだけ見せるようにしていたら田中さんと仲良く今もできていただろうか。。。うっすら分かるけどそれも無理だったと思う。けど樹里から言われた「なんでそうなったのか時間をかけて考えて」って言われたことの答えも何も分からないままだった。それはかつて僕が宿題の答えをそのまま見せるのが良くないと信じて、田中さんにはすぐに見せずに付箋を上から貼ったのと同じようだ。樹里から付箋をはられたのか?いや樹里のは取れないテープのようだ。無理にとると答えが一緒に破れそうだ。
答え・・・田中さんに聞く、、、まさか。それはヤバすぎるやろう。きっと田中さんも分かっていない気がするし。そこは違う。それは答えを無理やり破り去るようなもんだろう。
今月がもう終わる。うちの学校は前にも言ったがまだまだ夏休みにならない。普通に毎日クラスメイトと顔を合わせている。勿論田中さんとも。
そして明日からこちらは二日間、神宮は三日間、お祭りが始まる。
スマホはブルっとも振動しない。
トラブルがあり、ほぼ可能性ゼロ。けど約束はしている。。。この状態が一番辛い。田中さん側は無視していればいい。しかし僕の立場からしたらひょっとしてこれで終わりねって感じでも、浴衣を着てこちらにくるんじゃないか?もっといけばそこでなにかしら気が変わって次につながるなにかが湧き上がることもあるんじゃないかと考えてしまう。
そうなればスマホを前のようにかばんに入れっぱなしにはできない。
連絡が来てほしい相手からの、連絡が来ないスマホを握り続けているこの時間がものすごく嫌だ。
晩飯が終わり、ひとしきり喋って樹里が部屋に戻ったあと、スマホを置いたままリビングの合皮のソファでどうしようか迷っていた。いや、迷ってはいない。やると決めていたが行動がなかなか進まないだけだった。樹里からしたら「やめとけってそんなこと」と言われることだろうから相談しなかった。
なぜかテレビをきり、おもいきってテーブルの上にあるスマホをもってメッセージを入力した。その時ブロックされていたらどうしよう・・・とかも思ったが分からないこと考えても仕方がなかった。
<夜忙しい時にごめんなさい。確認だけです。こちらのお祭りに来ると言われていましたがどうしますか?返信よろしくお願いいたします>
・・・・・・・えい!どうとでもなれ!
送信アイコンをタップした。
・・・・今度はテレビを付けた。見たくもないバラエティ番組の司会が机を棒で叩いてはしゃいでいる。はっきり言って見ているふりをしているだけだった。内容は頭に入ってこないけど、無音でここに座って返事を待つほど時間を長く感じさせ、暗闇のどん底にいる気分にさせるものはない。
無理なら「無理」でいいって。ただはっきりさせたいんだ。
でも・・・消えろ!とか、サイテー!とかやったらだいぶ傷ついてしまう。あるいは妹のことや亜子さんのことをディスったような内容だったら・・・・それだけはやめてほしい。傷つくし見たくないしのダブルプレイだ。あともうひとつ、辻本君と神宮で一緒にお祭り行きます、とか、、、最近教室でめっぽうよく話していて距離感も近くなっている。噂では学校帰りに場所変えて、どっかで会っていちゃいちゃしていたとかそういうのまで広がっている。知っている相手でかつ近いのは心がしんどいものだ。
ブブブブブブブブブブブーーーー
意外と早く返信があった。
僕はスマホを取ったが、、、開くのを躊躇っていた。。。何か?なんだろうか?良いことはないだろう。無理!か、キモい、か?それとも「死ね」か「サイテー」かそれとも樹里や亜子さんの悪口か、それとも辻本君とラブラブで行きますか??
えい、クソ!!
ヤケクソで開いてみた。
田中さんだった。意外と長文だった。
<ご無沙汰しています。前の時は本当にすみませんでした。忙しすぎて周りが変わりすぎて私自身ついていけてなくてイライラして病んでました。本当にごめんなさい。
お祭りは家の用事が入ってしまっていけなくなりました。浴衣着れなさそうです。ごめんなさい。でもまた今後とも仲良くしてくださいね。
宿題をまた見せてください。前みたいに答え隠しやヒント形式とかでも良いので、是非よろしくお願いいたします。後それ以外でも相談したいことがありますのでまたその機会は話をきいてください。ではでは>
・・・・・・無理は無理、、、なんだけど、なんだこの・・・・肩透かし感。。。
「ええーーー??分からんわ、これ・・・・」
仲良くしてください・・・・仲良くできるん?浴衣着れなさそう?じゃあ他のお祭り時間があえば一緒にいけるん?なにこれ?なにこれーーー?宿題・・・また見せるの?あの形式でもいいからってあの形式時間めちゃかかるんやけどね・・・・「でも」付きやし。。。それ以外の相談てなに??またメイクとかの件かな?それとも人間関係?
「あかーーん、わからへん!」
田中さんとは、その日以来口を利かなくなった。目も合わせない。
鉢合わせになったことが一度あったが、お互い目をそらして少しだけ会釈してすぐに離れた。田中さんはすっかり周りの取り巻きの面子を変えていた。江藤さんとも朝と帰りの挨拶程度でそれ以上の会話はなにもしていなさそうだ。
お昼はやっぱり一人で食べている。亜子さんやらんちゃんが、「毎日うちのクラスで」って言ってくれるが、あんまりそういう気にはならない。基本一人ないし好きな人がもう一人いるぐらいのが自分は根っから好きなんだろうなあ。講堂裏ももう熱すぎるし、今のお昼時には江藤さんもおらず、田中さんもおそらく食堂にでかけている。気まずいメンバーはいない。田中さんが村岡さんとこっちに残る時だけは樹里のところでお世話になったりしている。
喪失感・・・・今まであったものがぽっかりと穴をあけて、そこに、夏に相応しくない風がスースーと吹き抜ける。ここ一か月ぐらいは田中さんのことを考えて日々動いていたからそこ中心だったが、また中心が特別ではない自分と樹里だけのものになった。中学校のイジメから解放されたあとの学校生活と似ている。
亜子さんに止めてもらっておきながらこんな言い方は悪いけど、あれがなかったらまだ話していただろうか。自分が引き下がって答えだけ見せるようにしていたら田中さんと仲良く今もできていただろうか。。。うっすら分かるけどそれも無理だったと思う。けど樹里から言われた「なんでそうなったのか時間をかけて考えて」って言われたことの答えも何も分からないままだった。それはかつて僕が宿題の答えをそのまま見せるのが良くないと信じて、田中さんにはすぐに見せずに付箋を上から貼ったのと同じようだ。樹里から付箋をはられたのか?いや樹里のは取れないテープのようだ。無理にとると答えが一緒に破れそうだ。
答え・・・田中さんに聞く、、、まさか。それはヤバすぎるやろう。きっと田中さんも分かっていない気がするし。そこは違う。それは答えを無理やり破り去るようなもんだろう。
今月がもう終わる。うちの学校は前にも言ったがまだまだ夏休みにならない。普通に毎日クラスメイトと顔を合わせている。勿論田中さんとも。
そして明日からこちらは二日間、神宮は三日間、お祭りが始まる。
スマホはブルっとも振動しない。
トラブルがあり、ほぼ可能性ゼロ。けど約束はしている。。。この状態が一番辛い。田中さん側は無視していればいい。しかし僕の立場からしたらひょっとしてこれで終わりねって感じでも、浴衣を着てこちらにくるんじゃないか?もっといけばそこでなにかしら気が変わって次につながるなにかが湧き上がることもあるんじゃないかと考えてしまう。
そうなればスマホを前のようにかばんに入れっぱなしにはできない。
連絡が来てほしい相手からの、連絡が来ないスマホを握り続けているこの時間がものすごく嫌だ。
晩飯が終わり、ひとしきり喋って樹里が部屋に戻ったあと、スマホを置いたままリビングの合皮のソファでどうしようか迷っていた。いや、迷ってはいない。やると決めていたが行動がなかなか進まないだけだった。樹里からしたら「やめとけってそんなこと」と言われることだろうから相談しなかった。
なぜかテレビをきり、おもいきってテーブルの上にあるスマホをもってメッセージを入力した。その時ブロックされていたらどうしよう・・・とかも思ったが分からないこと考えても仕方がなかった。
<夜忙しい時にごめんなさい。確認だけです。こちらのお祭りに来ると言われていましたがどうしますか?返信よろしくお願いいたします>
・・・・・・・えい!どうとでもなれ!
送信アイコンをタップした。
・・・・今度はテレビを付けた。見たくもないバラエティ番組の司会が机を棒で叩いてはしゃいでいる。はっきり言って見ているふりをしているだけだった。内容は頭に入ってこないけど、無音でここに座って返事を待つほど時間を長く感じさせ、暗闇のどん底にいる気分にさせるものはない。
無理なら「無理」でいいって。ただはっきりさせたいんだ。
でも・・・消えろ!とか、サイテー!とかやったらだいぶ傷ついてしまう。あるいは妹のことや亜子さんのことをディスったような内容だったら・・・・それだけはやめてほしい。傷つくし見たくないしのダブルプレイだ。あともうひとつ、辻本君と神宮で一緒にお祭り行きます、とか、、、最近教室でめっぽうよく話していて距離感も近くなっている。噂では学校帰りに場所変えて、どっかで会っていちゃいちゃしていたとかそういうのまで広がっている。知っている相手でかつ近いのは心がしんどいものだ。
ブブブブブブブブブブブーーーー
意外と早く返信があった。
僕はスマホを取ったが、、、開くのを躊躇っていた。。。何か?なんだろうか?良いことはないだろう。無理!か、キモい、か?それとも「死ね」か「サイテー」かそれとも樹里や亜子さんの悪口か、それとも辻本君とラブラブで行きますか??
えい、クソ!!
ヤケクソで開いてみた。
田中さんだった。意外と長文だった。
<ご無沙汰しています。前の時は本当にすみませんでした。忙しすぎて周りが変わりすぎて私自身ついていけてなくてイライラして病んでました。本当にごめんなさい。
お祭りは家の用事が入ってしまっていけなくなりました。浴衣着れなさそうです。ごめんなさい。でもまた今後とも仲良くしてくださいね。
宿題をまた見せてください。前みたいに答え隠しやヒント形式とかでも良いので、是非よろしくお願いいたします。後それ以外でも相談したいことがありますのでまたその機会は話をきいてください。ではでは>
・・・・・・無理は無理、、、なんだけど、なんだこの・・・・肩透かし感。。。
「ええーーー??分からんわ、これ・・・・」
仲良くしてください・・・・仲良くできるん?浴衣着れなさそう?じゃあ他のお祭り時間があえば一緒にいけるん?なにこれ?なにこれーーー?宿題・・・また見せるの?あの形式でもいいからってあの形式時間めちゃかかるんやけどね・・・・「でも」付きやし。。。それ以外の相談てなに??またメイクとかの件かな?それとも人間関係?
「あかーーん、わからへん!」
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