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★メタモルフォーゼ~新制服~

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僕は着なれないブレザーに身を通した。別に野郎の制服なんてどうでもいいと思うけど、当然男子もブレザーに変わった。紺地に白のラインが襟元を飾る。パンツは黒のチェックで差し色に黄土色?光沢のない黄色のような色ともう一色よく見たら黒に近い黄色が入っていた。女子もこれと色合いは同じ。
「お、似合ってねーなあ(笑)」
「うるせー(笑)」
「半ズボンと違ったん(笑)?」
「そんなんやったらビビるわ(笑)!」
樹里が珍しく早い。きっと僕を冷やかしたかったんだろう。
「今日はあっしもはよ行くわ」
「へ~珍しいなあ八時四十分の女なのに」
「野球のリリーフピッチャーやないんやから」
大昔野球でそんな人がいたみたい。
「今日は見たいもんがあるねん」
「なになに?」
「行ったら分かるわ」
なんとなく分かる気はしていた。田中さんだ。
今日から新制服だから、先に着ている樹里らがなにか新制服の可愛い着方でも指導したのか。だとしたら校則違反な着方だけは勘弁したって。せっかくメイクも学校からOKもらっているのに。でもそれだけだろうか。。。
一年に何回あるかなと思うこと、それは樹里と僕が同じ時間に部屋を出ること。今日はそれになった。僕がちょっと出遅れた。それがちょうど良かったみたいだ。新制服をおっかなびっくりで着ていたからだろうか。後は便意の問題。それと今日は時間がヤバそうだったから、お弁当もほぼオールレンチン。ごめんよ田中さん、江藤さん。
エレベーターで下まで降りて、マンション特有の着飾ったエントランスを抜けて自動ドアが開く。僕は歩いていくが、樹里はチャリを取りに。僕はぼちぼち歩き出すと、外には同じ制服の女子たちや、男子たちも。あとこの近所の高校だったと思う制服の女子たちや、男子たちも、、、五,六,七,、、おそらく十人弱は居てて、おのおのスマホを触っていた。前の道は対面通行、一車線ずつの道路幅。皆何を習ったかマンションの反対側の植え込みに座っていたり、立っていたりしている。
「・・・・・・・・」
これ樹里が僕に追いつこうとしてゆっくり自転車をこいででたら面倒ちゃうかな。。。そう思って僕はもう一度敷地内に入り、自転車置き場のほうへ向かった。樹里は自転車を出してこちらに歩いてきていた。
「あ、待っててくれたん?優し~」
「なんか外に十人ぐらいおるで」
「・・・・・あ、そうやった。。。この時間帯居てるんやった」
「何あれ?」
「分からん・・・・追っかけ?」
「追っかけ??」
おまえ、そんなんおるんかいな。
「最近増えてきてな・・・早いとおるねん。ギリギリやったらあいつらも諦めて行きはるねんけど」
そうぼやきつつ、、、
「だから私はいっつもギリギリしかいかへんねん!」
自信満々で言いやがった。
「絶対それは嘘やわ」
言い切れるわマジで。
「あ、バレた?何で分かるん?」
目を丸くして僕に問いかける。
分かるって。それで分からんとでも思っていたのか?

「あにぃ、ここから後ろ乗るか?」
「え?なにすんの?」
「いっつもめんどいからダッシュかまして振り切っている。多分こんな時間にホンマに出てくる思ってないから、あにぃ積んでても振り切れるやろう」
僕が樹里の自転車の後ろに乗る、いや暗黙で「逆らうな」と聞こえた気がしたので、ほぼ強引に乗せられた。
「よっしゃいくで」
「どこつかまったらいいん?」
「どこでもいいけど?」
「ここは?」
両方のお胸の山あたりに触らないように手を回す。
「アハハ!こがれへんわ(笑)」
下ネタに下ネタ受容で返してきた。やりよるなあ、さすが強者。
「え?感触あるん?鋼鉄ちゃうのこれ?」
「ええ加減にしいや~」
はい、すみません、ちゃんとします。
「じゃあ女の子しがみつきでいいか?どうせ凄い運転やろ?」
「ええよ~」
樹里のお腹に手を回して抱きしめるようにしがみついた。
「いくで~」
チャリのペダルの一こぎ二こぎ・・・・そのあたりから一気に加速しだした。余りの加速に焦り倒す僕。こないだの宙ぶらりんジェットコースターを思い出した。しかも今度はベルトなどの固定装置はないよ!!
「ぬああああああ!ぶつかるぶつかる!」
一気にマンションの入口玄関を通り抜け、正面門へ。そこで身体を自転車こかすんか??という大勢で右に倒す!後輪ブレーキだけをかけて足を地面につけることなくスピンターン!!物凄い地面との接触音を鳴らしながら車二台分車幅がある道路のほぼ八割を使用しての直角ターン!後輪から焦げくさい臭いが立ち上がり、おっかけ?ギャラリーが「なにあれ?なにあれ?」「危ねぇ!」「危ねぇ!」と言ってスマホの世界から我に返りだす。しかしその戻ってくる意識より早く樹里が次のペダルを脚筋爆裂フルスロットルで猛ダッシュ。
「樹里さん?」
「あれ?今日は誰か乗ってる?」
「え?男?」
「あ、ひょっとして噂のお兄さん?」
「振り落とされかかってる?」
「抱っこちゃん人形みたい」
そのまま再開発地帯のテナントエリアと新興住宅地の車道をいっきに駆け下りていく途中、原付は二台ほど抜かした。で、いつも僕が歩く国道の交差点で赤信号。けど、このあたりになると徐々にゆっくりになってきて、でも確実に普通の男子が漕いでるスピードよりも早いけど、それなりに急ブレーキで止まる。こっちは止まるタイミングが読めないからおもっきり顔が樹里の広い背中、髪とくっつく
「ぐぅーーー」
重力で顔がさらに髪の毛と背中にねじ込まれる。
・・・・ちょっとシャンプーのいい匂いがした。
「は~ここまではけぇへんやろ。あ、でも信号であんまりゆっくりしていたら歩きで追いつかれるなあ」
樹里にしてみればあまりなにも気にしていない様子。
信号は変わった。追っかけにも追いつかれることなく、ここからはノーマルなスピード(男子の)で漕いでいく。僕はいつまたあの恐怖のターボダッシュがかかるか分からないから背中に抱き着いたまま情けない顔して離れられない。
「今日はあそこのコンビニで待ち合わせしてるねん」
その声にちょっとだけ抱く力を緩めた。
「誰と?」
「まりっぺ」
「え?そうなん?」僕は先週のデート?のことがあるから少し慌てる。樹里には言ってたし、樹里も遊んできてたし、特に咎められることとかもない。田中さんがくれたメモを渡したら、「こんなんええのに」と正直マジで「ええのに、要らんのに」の苦笑いだった。無いよりはマシだったかな。。。
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