【R15】【第一作目完結】最強の妹・樹里の愛が僕に凄すぎる件【第二作目連載中】

木村 サイダー

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第一巻

★テーマパークデート

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田中さんはやはり少し離れた。
離れたというか、僕たちが置いてけぼりになったのかもしれない。
けど、そんなずっと遠くに行ったような感覚はなかった。
明るくなった。笑顔がたくさんになった。イジメられたり、悪口を言われる脅威はこのクラスにはなかった。伸び伸びとしだしたのはさっきの話の二日後ぐらいだった。村岡さんらが田中さんに話しかけるようになった。村岡さんは僕にも話しかけているように、もともとあまり誰と話して誰とは話さないといった感じの子ではないから、たまたま田中さんの表情が良くなったから寄ってきてくれてんだろう。田中さんは快く受け入れた。
初日は江藤さんと一緒に帰り女子トークがしたいということだったので遠慮した。二日目は僕と一緒に帰ってくれた。樹里のこと、勉強のこと、先生たちのこと、お化粧のこと、スキンケアのこと、salvageのこと、モールにできた新しい食べ物屋のこと、クレープ屋のこと、どんな大学に行きたいか、それに合わせてどこに下宿するか、どんな社会人になりたいか、いつぐらいに結婚したいか、、、なんでも話をすることはあったし、ボケて笑いあえることもあった。
しかし、その日以降、帰れる日は少なくなった。
新しい友達が方向も電車も同じだという。村岡さんだけではなく、「電車乗り組」「神宮方面帰る組」がどうやらあるみたいで、そことの付き合いが豊富になってきたようだった。江藤さんは反対方向の下見だから、彼女も入れなかった。

「ちょっと元気ないなあ」
樹里から指摘される
「そんなことないよ」

本当に余り気にしていなかった。付き合いたいけど今は付き合っているわけでもないし、それにお昼はまだ旧制服だったので、新天地も見当たらなかったのでギリギリまで講堂裏で食べることにした。つまりお昼は江藤さんがいるけど、田中さんを独占できたんだ。江藤さんは人がいいから何となく察してくれて、そこにはいるけど割ってくることがない子だった。むしろ応援してくれている感じがあった。ホントに良い子なんだと思う。僕はおかずを作って二人に持って行ってた。レンチンも結構あったけど、手作りも簡単なやつは増やしていった。ハニーマスタードチキンはそんなに難しいわけではなく一口サイズにカットして、胡椒の量と、はちみつとマスタードのブレンド加減。あとは火加減が最初は強火あとは弱火でじっくり中まで火を通す、というところが肝だと思った。超ウケた。どうでもいいけど樹里にもウケた。メインではなくおかずのサブで週三日少量ずつ食べたいと言った。
けどこの時間もメイク直しの時間を取るため、前よりは十分は短くなった。この十分はすごく長く多く感じた。僕としては焦りではないけど、田中さんにもっと居てほしくなっていた。前のようには独占できないし、一緒にいる時間は格段に減ってしまった。それにまだ減りつつある。僕はこれは表の時間がどれだけ減ってもいいように、プライベートで会えるようにしないといけないと思った。

僕は意を決して釣り以外のことで二人でこの週末会えるかどうか聞いてみた。
答えはOKだった。

やっぱり大丈夫だ、、、よかったあ、田中さんは田中さんであって、そんな「遠くに行ってしまっている別人」になっていなかった。ちょっとキレイになったことで僕が気持ちビビっていたんだなと思った。

「機嫌良さそうやなあ」
「ハハハ、そうかあ」
また樹里から指摘されてしまう。

子供の頃に遊園地にいった記憶がない。「行ったよ」お父さんにもお母さんにも言われるが僕には実はまったくと言ってよいほど、その記憶がない。
「〇〇ドリームランド行ってお化け屋敷のなかでお父さんにかじりついて離れんかったやんかあ」
「〇〇公園遊園地の時は、小さい子供も乗れるちょっとしたジェットコースターがあって、お父さんと一緒に乗って、お父さんが腰抜かしたやんかあ」
僕は「そうなん」としか答えてない。あえて掘り下げる気も特になかった。小さい時の記憶は無くなるもんだ。けど、実はそれ以外にも、、、樹里が四、五歳ぐらいのことや、自分が幼稚園でどういう風に過ごしていたかという記憶も、ほぼない。それもきっと忘れてしまうものなのだろうと自分で思っている。記憶がどれだけ残っているかなんて目に見えて比べることはできない。ただ、、、

水の中・・・水草がユラユラ、、、ユラユラ、、、自分も足を取られてユラユラ、、、ユラユラ。。。気持ちよくなって、意識が遠のいていく、ユラユラ、、、ユラユラ。。。

これは多分樹里と二人で釣りしていて、池に落ちたときの記憶だ。僕はあの時水草に足を絡まれ浮上できなくなり死にかけた。てか、一時的に死んでた。池の汚い水をいっぱい飲んで一時期腎臓に障害が出た。二か月ほど入院し、一年ほど体育ができなかった。僕が運動神経がもう一つよくない理由はこういうのもあるのかもしれない。多分だが、、、六歳の時だったと思う。樹里はさっさと助かっていた。でもそのあたりから掘り返すと少し見えてくるものもあって・・・
昔は樹里はとても怖かった。今も怖いけどもっと別の意味で怖かったように思う。どんな意味?それは分からない。なんでそうだったかも覚えていない。
・・・・・というか、記憶がないのだけど、、、

樹里は最初から居たのかな?

と自分でアホなこと考えてるなって思うことがたまにある。妹がいたのはいた。。。あいつしかいないと思うのだけど、、、あいつだったのだろうか。。。

そりゃ当たり前だろうって自分で自分に突っ込みを入れる。でも、、、いやだっておかしなぐらいあいつを意識したりドキドキしてしまったりすることがある。本来妹なんて空気みたいなもんだろう。むしろどこの兄妹も、ちょっと鬱陶しいぐらいの存在だろう。でも僕は樹里のことになると鼓動が高鳴り、男女として意識してしまう。そして無断外泊・男の影で、冷水を浴びせられて引き戻されるんだ。
でもでも、それはうちのはきっとあいつがちょっとえぐみのある下ネタを僕にけしかけてきたり、物凄く頼りになる良い奴だったりするからだろうと思っている。ある種の憧れのようなもの。『そりゃ好きになるって。あんなのが傍に居たら』ってやつ。そう思って僕も僕自身を引き戻す。

それより今は・・・・
「これどうなるのかなあ、足ぷらーんとなってるねんけど」
「・・・・・南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏」
「み、御堂君?」
大丈夫だよベイビー昼間の青空でも眺めておいて・・・・そんなロックな余裕あるわけない!
何やらスタッフどもは各個人の座席についてる固定ベルトのチェックを行い、人間が固定されているか念入りなチェックを行い、格好つけてんのかサインなのか、親指を立ててチェック完了の仕草をしている。
「い、いよいよやで・・・・」
「う、う、うん・・・・」
多分僕、チワワなみに震えている。
スタッフが全員、周りからいなくなり、しばしの静止時間がある。この一分ぐらいがまるで永遠のような恐怖感を感じるのだ。
ガッ!グググー
「ぎゃーーーーっ!!」
周囲の悲鳴に混じって横にいる田中さんの腹から上がる悲鳴が聞こえた。
僕もきっと上げたと思う。
椅子が、椅子が宙に浮いたぞ。
正式に言えば体制が腹這いのような状態にさせられている。
かろうじて足は余裕があり曲げているが、恐怖をかき消すことには何も役立っていない。そのまま連行されていくかのように一列五人ずつのジェットコースターは高みへと上っていく。ジェットコースターの骨格、宮殿のような夢のある建物、サメに襲われるアトラクションを行える海水の運河、夏の日差しが容赦なく照りつけて、遠くには億超えの噂のあるタワーマンションが何棟も見えてくる。
「ひ、ひとが、ひとがゴミのようだ~~~」
「なんでそのセリフ??」
田中さんが某超有名アニメ映画の悪役が放つ伝説の名台詞に気づいてくれて、鋭くこんな状況でも突っ込みを入れてくれた。
やがて頂点に達し、そこから物凄いスピードで空気を切る音を上げながら下っていく
「ぎゃーーーーーーーー!!」
「ふぉおーーーーーーー!!」
二人とも某通販サイトのパンダのスタンプにある白目向きの状態よりも変顔になっていることだろう。
それだけではない、ただ下るだけなら「あー怖い!!」でいい。ねじりが入るのだ。空が真ん前に見えるんだ。太陽と真正面向きで眩しい!空は青い!青い夏空!!でもそこから下るところに限って地面向き!建物、鉄骨!海!そして駆け上がりはまた空!!それを一回二回三回と入れられたら、もうどちらが上なのか下なのかが分からなくなる。これはラーメンでも食ってたらそしてビールでも引っかけていたら(内緒)、確実に逆流アンド後部座席の見知らぬ他人様にゲロぶっかけているぞ!!分かってのんかコルァアアア!!

「・・・・大丈夫?」
言ってる僕が全然大丈夫ではない。
「・・・もうあかん(笑)」
終わってからも力が入らないのか、腰が抜け気味なのか、宙づりで乗るジェットコースターからちょっと歩いたところのベンチで再度休憩。
「アトラクション予約したからって聞いたけど、、、まさかのまさかやったわ(笑)」
「うん、僕も、、、あれはやりすぎた。一発目にこれは、、キツイなあ」
日曜日になると、ここのテーマパークはとても混雑する。映画の聖地ハリウッドの映画の世界を具現化してあったり、日本のアニメやゲームの世界を体感できる施設があったりなので、当然人気は凄く、アトラクションを体験しようと思ったら一時間半待ちとかもザラに出てくる。
でもせっかく二人できたのだから、何かしらアトラクションがしたいやん。やるなら最強のやつ!と、あともう一つは僕の下心・・・・・ドキドキすると吊り橋効果というのがあって、吊り橋を渡るドキドキと恋愛のドキドキが分からなくなってしまうらしく、そのドキドキを利用して、、、キスとかに発展させたいなあと、、、そんな下心があった。
けどこれは、キスどころかドキドキどころか、心臓のお薬が必要なレベルだぞ。青春時代すっ飛ばしてシルバー川柳みたく、ドキドキではなく動悸を起こしそうだった。

少しお喋りをその場でして、気持ちを落ち着けて、お昼はブルックリンにあるというアイリッシュパブ風なお店でご飯を食べた。
二人でポークステーキ、フィッシュアンドチップス、シェーズパイ、ポテトのスープなどを楽しんだ。写真で見るオニオンブロッサムは追加しても大丈夫そうなんだけど、実物が来ると、こりゃかなりヤバい級の量に驚くことになる。案の定量を間違えてもったいないから二人ともかなり食べすぎになってしまった。
でも園内がとても広いし、その気になればアトラクションに参加せずとも見物できるものはいくらでもある。慣れたカップルや女子高生たちが年間パスを買って、暇つぶしに来るというのもよく聞く話だ。

そこからは緩めのアトラクションに行ったり、落ち着いて散策したりしていた。

スタジオ内を歩いているとマリリンモンローのそっくりさんがいることがある。本当に自然にフラッと現れる。その後はパレードが始まる。お兄さんお姉さんがキレのある華麗なダンスを披露してくれて、後からお花が装飾されていてピンク色の階段が動くかのような乗り物に乗ったサンリオ社のキャラクターが扇を持って踊っていたり、アメリカの人気アニメキャラたちがやってきて、水鉄砲であちらこちらで噴射させてぶちかましてくれたり、降り注ぐ水の中、ダンサーのお兄さんお姉さんたちはひたすら左手を上げて飛びながらリズミカルに飛び跳ねたりで、ホント、はちゃめちゃなパーティーアンドパレードを楽しんだ。

夜六時頃にはテーマパークを後にした。まだ全然明るかったし、田中さんも
「もうちょっと居たかったけど仕方ないねーまた来よう」
名残惜しいけど身分上仕方ない。そうしないとここまで来るのに僕たち電車で一時間半以上はかかるんだし、明日は学校なんだし。きっと田中さんも明日の予習とかもしないといけないだろうし、、、そのあたりの諸々を考えるとこのぐらいであがるのが一番だと思った。

本当は夜に行われるロマンチックなショー。宮殿の壁を使ったプロジェクションマッピングと天使に扮した外人さんたちがワイヤーを使って空高くから舞い降りてくるショーを見たかった。手も握れそうだし、キスもできるかも…でも悲しいかな僕達は学生で時間に限りがある。
樹里みたいに夜もぶっ通しで遊ぶ女と田中さんは違う。
こちらがある程度で帰してあげないといけないと思う。
帰る前、お土産売り場で田中さんは家族への土産を買った。お土産屋さんはここの映画配給会社が作り上げたヒーローヒロインキャラ、コミカルキャラでどこも埋め尽くされていて、見に来る人たちからしたらある意味博物館のようだった。一般の売り場では出していないレアものなどもたくさん置いているから、通の人からすれば何度でも足を運んでしまいたくなるんだろう。
一通り店内を見て回って田中さんはキャラクターアソートスイーツと、同じくキャラクターのシャープペン四本セットをお土産に買っていた。
僕は少し前に樹里に下着を弁償させられているので(しかも上下セット、なんで下もやねん)ので何も買わなかった。
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