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★蘇る二人の想い
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「よっしゃ、私も釣ろうか。田中さんはあっちでやっとき。もうイソメ平気やろ」
「はい、慣れました。今はなんともありません」
「んじゃあ、私のここに置いておくわ」
荷物の近くに餌差箱をバックから出しておく。テトラに来る前に青イソメを新鮮なものに付け替えた。田中さんは樹里の言った通りテトラの無い方で一人始めた。
「そこらへんで釣ったん?」
「ああ、ここ」
自分の釣った穴を竿先で指す。自分の今立っている真下である。
「ふーん」
樹里はテトラに足を踏み入れた。
竿を片手で持ちながらもう片手でバランスを取り、次のテトラに飛び移る。そしてまた空いている手でテトラを持ち、体を安定させて、また次のテトラへ。
自分なりの渡りやすいところを選びながらこちらに来る。時々思うのだが、テトラで渡りにくいところを行くときは、まるで迷路を歩いて行ってるみたいに思う。どれも行けそうで急角度でいけなかったりする。自分の足なじみの良いところを探すのが大変だ。
バランスをとったり、テトラを持って支えたりして安定させてから飛び移り続け、ようやく僕のところの手前まできた。
僕のテトラに飛び移り、真横に来た次の瞬間
「あ・・・」
樹里の体が宙を舞ったように見えた。
あかん!
テトラの穴に落ちていく!!
僕は咄嗟になにもかも投げ捨てた。
音も消えた。
視界だけがスローモーションだった。
キーンという、あまり聞いたことのない金属音のようなものが聞こえた。
より樹里に近い左手が樹里の体を掴み、
次に右手で掴み上げた。
勢いなのか、火事場のバカ力なのか、樹里を引き上げた。
樹里の帽子の鍔が僕の体にあたり、帽子と偏光グラスを吹っ飛ばした。
一瞬の出来事だった。
僕には非常に珍しく、頭より、体が先に反応してしまった。
なにがあったのかよくわからないけど、体でなく、頭で考えるようになったとき僕は樹里と抱き合うような姿勢になって立っていた。
周りから潮騒の音が聞こえだした。
多分だが、左腕が落ちていく樹里の左脇から胸をつかみ、体をこちらにむけて右腕でさらに腕をつかみ、引き上げたようだ。
今は思いっきり体を引っ付けあって立っている。そのくせ僕の右手は樹里の左腕を掴んだような状態・・・・
社交ダンスでも踊るのか?というポーズか。
「あ、よかった・・・・よかった・・・落ちなくて」
僕は思わずそう漏らす。言葉を発するというよりは自然と出たんだ。とりあえず二人足場があるところに居る。どんな不格好でもそれでいい。安全で無傷であれば。
樹里がどんな顔しているか見えない。背が高い女子だから、僕と五センチぐらいしか変わりがないから胸の中でとか、肩の下あたりというわけではなく、ちょうど僕の左側で反対向きになっているから。
掴まれている左腕を樹里が離そうとする。
「あ、ごめ・・・」
僕の掴み方がきつかったなあ。そりゃ咄嗟だから仕方なかった。けど確かにもう掴んでいる必要はないはず・・・・うん?
樹里の左腕は僕の右手の中側を通り、僕の背中に達した。
だから僕の右手は戻るところがなくなり、自然と樹里の背中を抱くことになる。
あれ?・・・これって、、、抱きしめ合ってるポーズ・・・・だよな。
また僕の頭の中で、潮騒が消えて行った。。。
はっきりと豊満なふたつの胸の形がブラごしではあるが伝わる。それどころか余分な肉があまりなくおそらくうっすら割れているであろう腹筋も。背中は女性としてはおそらく広くて筋肉質な背中も。胸の奥から高鳴る鼓動も。触れ合っているところは皆センサーに変わってしまったのだろうかというように意識が集中してしまう。
どしたんだろう・・・・きっと怖かったのかな?
僕は樹里の頭を撫でる。
何年ぶりだろう、、、こうやって樹里の頭を撫でるのは。
昔添い寝していたとき、よく撫でたよな。
というか、こういう姿勢で寝てたよなあ。
昔は「お兄ちゃん」だった。
思春期のテレから「あにぃ」になってしまったようだけど。
すっと、樹里がまだ僕にかけた両手を離さず、顔だけを見せた。
「樹里、だいじょ・・・・?」
一気に僕の心臓が高鳴り始めた。
何一つ言葉はなかった。
体のすべてはお互いくっついたままで、
髪の毛は帽子で少しきつく抑えつけられたような後はあるものの、きれいに風に揺られてフローラルの香りが踊る。
目は少し潤んでいて、透き通る「瞳」が切なげにこちらを見ている。
口はわずかに震えていて、怖かったことを思わせる。
前にも述べたが、実は樹里は泣き虫だ。
数少ない人にしか見せない事実。
だけど、
(こんな顔されたら、何度だって何度だって、恋に落ちる)
「じゅ・・・・」
しかし次の瞬間、
樹里の目がカッと見開いて、ドン!
「え?」
僕は突き離され、後ろの突起したテトラに背中を軽くぶつけた。
「痛ッ」
「あ、釣れたん?」
樹里が言う。
背中の後ろから、
「はい、一人で上げました!まあまあのサイズと思います?」と田中さんの声が聞こえる。
「ちょっと見に行くわ。もうちょっと待ってて」
樹里はタックルをさがし、たまたま下まで落ちずに引っかかっていたそれを取り、足早に一文字に戻るためにテトラを飛び越えていく、、、が、滑ったことはだいぶ怖かったのか道を変えてへっぴり腰になりながら、いつもの樹里らしからぬ移動の仕方で戻っていった。
「はい、慣れました。今はなんともありません」
「んじゃあ、私のここに置いておくわ」
荷物の近くに餌差箱をバックから出しておく。テトラに来る前に青イソメを新鮮なものに付け替えた。田中さんは樹里の言った通りテトラの無い方で一人始めた。
「そこらへんで釣ったん?」
「ああ、ここ」
自分の釣った穴を竿先で指す。自分の今立っている真下である。
「ふーん」
樹里はテトラに足を踏み入れた。
竿を片手で持ちながらもう片手でバランスを取り、次のテトラに飛び移る。そしてまた空いている手でテトラを持ち、体を安定させて、また次のテトラへ。
自分なりの渡りやすいところを選びながらこちらに来る。時々思うのだが、テトラで渡りにくいところを行くときは、まるで迷路を歩いて行ってるみたいに思う。どれも行けそうで急角度でいけなかったりする。自分の足なじみの良いところを探すのが大変だ。
バランスをとったり、テトラを持って支えたりして安定させてから飛び移り続け、ようやく僕のところの手前まできた。
僕のテトラに飛び移り、真横に来た次の瞬間
「あ・・・」
樹里の体が宙を舞ったように見えた。
あかん!
テトラの穴に落ちていく!!
僕は咄嗟になにもかも投げ捨てた。
音も消えた。
視界だけがスローモーションだった。
キーンという、あまり聞いたことのない金属音のようなものが聞こえた。
より樹里に近い左手が樹里の体を掴み、
次に右手で掴み上げた。
勢いなのか、火事場のバカ力なのか、樹里を引き上げた。
樹里の帽子の鍔が僕の体にあたり、帽子と偏光グラスを吹っ飛ばした。
一瞬の出来事だった。
僕には非常に珍しく、頭より、体が先に反応してしまった。
なにがあったのかよくわからないけど、体でなく、頭で考えるようになったとき僕は樹里と抱き合うような姿勢になって立っていた。
周りから潮騒の音が聞こえだした。
多分だが、左腕が落ちていく樹里の左脇から胸をつかみ、体をこちらにむけて右腕でさらに腕をつかみ、引き上げたようだ。
今は思いっきり体を引っ付けあって立っている。そのくせ僕の右手は樹里の左腕を掴んだような状態・・・・
社交ダンスでも踊るのか?というポーズか。
「あ、よかった・・・・よかった・・・落ちなくて」
僕は思わずそう漏らす。言葉を発するというよりは自然と出たんだ。とりあえず二人足場があるところに居る。どんな不格好でもそれでいい。安全で無傷であれば。
樹里がどんな顔しているか見えない。背が高い女子だから、僕と五センチぐらいしか変わりがないから胸の中でとか、肩の下あたりというわけではなく、ちょうど僕の左側で反対向きになっているから。
掴まれている左腕を樹里が離そうとする。
「あ、ごめ・・・」
僕の掴み方がきつかったなあ。そりゃ咄嗟だから仕方なかった。けど確かにもう掴んでいる必要はないはず・・・・うん?
樹里の左腕は僕の右手の中側を通り、僕の背中に達した。
だから僕の右手は戻るところがなくなり、自然と樹里の背中を抱くことになる。
あれ?・・・これって、、、抱きしめ合ってるポーズ・・・・だよな。
また僕の頭の中で、潮騒が消えて行った。。。
はっきりと豊満なふたつの胸の形がブラごしではあるが伝わる。それどころか余分な肉があまりなくおそらくうっすら割れているであろう腹筋も。背中は女性としてはおそらく広くて筋肉質な背中も。胸の奥から高鳴る鼓動も。触れ合っているところは皆センサーに変わってしまったのだろうかというように意識が集中してしまう。
どしたんだろう・・・・きっと怖かったのかな?
僕は樹里の頭を撫でる。
何年ぶりだろう、、、こうやって樹里の頭を撫でるのは。
昔添い寝していたとき、よく撫でたよな。
というか、こういう姿勢で寝てたよなあ。
昔は「お兄ちゃん」だった。
思春期のテレから「あにぃ」になってしまったようだけど。
すっと、樹里がまだ僕にかけた両手を離さず、顔だけを見せた。
「樹里、だいじょ・・・・?」
一気に僕の心臓が高鳴り始めた。
何一つ言葉はなかった。
体のすべてはお互いくっついたままで、
髪の毛は帽子で少しきつく抑えつけられたような後はあるものの、きれいに風に揺られてフローラルの香りが踊る。
目は少し潤んでいて、透き通る「瞳」が切なげにこちらを見ている。
口はわずかに震えていて、怖かったことを思わせる。
前にも述べたが、実は樹里は泣き虫だ。
数少ない人にしか見せない事実。
だけど、
(こんな顔されたら、何度だって何度だって、恋に落ちる)
「じゅ・・・・」
しかし次の瞬間、
樹里の目がカッと見開いて、ドン!
「え?」
僕は突き離され、後ろの突起したテトラに背中を軽くぶつけた。
「痛ッ」
「あ、釣れたん?」
樹里が言う。
背中の後ろから、
「はい、一人で上げました!まあまあのサイズと思います?」と田中さんの声が聞こえる。
「ちょっと見に行くわ。もうちょっと待ってて」
樹里はタックルをさがし、たまたま下まで落ちずに引っかかっていたそれを取り、足早に一文字に戻るためにテトラを飛び越えていく、、、が、滑ったことはだいぶ怖かったのか道を変えてへっぴり腰になりながら、いつもの樹里らしからぬ移動の仕方で戻っていった。
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