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第一巻
★テトラエリア
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サビキ釣りをしていたが最初は全然ダメ。
田中さんに勧めなくてよかったわと安堵していた。サビキで釣れないのはこの上なくキツイ。僕はしないが飲ませ釣りする人らにしても、その飲ませる小魚が調達できなかったら本番の飲ませが始まらないし。今日はひょっとしたら中途半端にでかいのんがうろついてたんかもしれないなあ。そうなるとアジの小さいのとか、サバとかは逃げてしまっていなくなっている。ブラックバスなら池のどこかにはいるのだが、ここは海。どこかでは広すぎて見当ができないし人間の足ではいけないところにいたりする。つまりどうしようもないのだ。
誰もゲストがいなければすぐに「じゃあ、さいなら!」と帰れば終いだが、ゲストがいるとそれもできない。
でもここ二十分前ぐらいから戻ってきたのか、ちょっと大きめの、尺は全然ないけど(三十センチ以上の意味)、アジが釣れるようになってきた。それでもサビキの針に、たまに一匹か二匹かかるかかからないかなので、やはり魚影としては薄いなあ。釣れた八匹ほどのアジをしめて、田中さんのクーラーに入れてあげる。後の二匹はうちでもらう。
そこらへんでサビキはとりあえずいったん終わり、僕はベイトタックル「一号」にブラクリと結びつけてテトラの穴打ちを始めていた。
あまりおススメできたことではないが、僕はテトラの上に乗っている。つまり足場は一文字の上から離れている。慣れもいるし波が高くなったら一気にさらわれるかもしれない。また足を滑らせたらテトラの下に落ちてしまう。当たり所が悪ければ大変なことになる。まだここのテトラは乗りやすい形をしていたのでそこまで心配することはないけど、それでも危ないことは確かだ。
根魚を狙っている。テトラで組まれた隙間が穴になっていて、そこに波が入り込んで水たまりが形成されている。こういうのはベイトタックルの方が手返しが早いのと無駄な糸を放出しないので、有利だったりする。後は「元バスアングラーは必ずベイトロッドを使いたがる」の習性だ。絶対ベイトでないとできない釣りなんて別にないと思うのだが、ベイトロッド・ベイトリールに触れたいのはブラックバスアングラーなら必ず分かるはず。触るだけでムフフとなる。
少し視線を沖の一文字にやると、どうやら二人が釣りをしながらゆっくり戻ってきている。向こうも青イソメを使った落とし込み釣りをしているみたいだ。
あっちで落として、様子を見て、、、こっちでまた落として様子を見て。。。。
フリッピングで決めて行ってもいいんだけど、足元から高すぎるから糸めちゃ出さないといけなくなりそう。やめ。普通にクラッチワークで行く。
そうしながら徐々に戻ってくる。
さて、どんな話をしてきたのかなあ。
そこはすごく気になるが・・・・
教えてくれそうにもないしなあ。
このもどかしさを残したまま、今日が終わるのかな。
まあでも、樹里のことだからうまくやってくれてんだろう。
ベイトリールのクラッチを切って穴に落としこむ。
様子をみて、、、反応が無ければまた別の穴に落とし込む。
反応が無ければまた別の穴。
皆の荷物があるから、あまり遠くにいけないので、近場で目の届くところでやっている。
何度目かの落とし込みの時、、、
ツン、、、ツンツンツン、、、トトトトトト、、、
糸が走り出した!
思いっきりロッドの先端を天に抜けると、「一号」の全体に重さがかかり、ティップからベリーにかけてしなる。。。が、そこまで大物でもないようだ。
リールの糸を巻いてもう一度ロッドを上げたら案外素直に上がった。
「・・・・・ガシラやな」
釣り人に優しい魚と言われているガシラ。どこにでもいて、結構釣りやすいし、食べるとうまい魚だ。
でもこいつは小さすぎる。返そう。
針を指で持ちひねりを加えてガシラをまたテトラの穴へ落とす。
ふと見たら向こうの方で田中さんが手を振る。
見てくれていたようだ。
「釣ったねえ」と言ってくれたみたい。
自然と笑顔になり、僕も手を振り返す。
ガシラは小さいベイビーだったがしっかり青イソメは食われたようで、餌はなくなってきた。
僕はテトラから一文字に戻ってパックから青イソメを取りに戻る。
「ま、一応今日もやりましたな、『一号』」
その間に樹里たちもだいぶ戻ってきた。
今はかろうじて大きい声が聞こえる状態だ。
「釣ったん?」樹里から
「小さかったけどな」
ブラクリに青イソメを縫い刺しして、僕はまたテトラエリアに入っていく。
「あんなん、まりっぺはあんまりしたらあかんで」
風向きの加減で樹里の声が聞こえた。
確かに普通にやめといたほうがいい。
けど樹里は確実にやるやろうなあ。
また僕は穴打ちを始める。
先に小さいガシラが釣れた穴から探り、、、またさっきのやつ食いついたらどうしよ、とか思いながら。しかし反応はない。
また次の穴
また次の穴
また次の穴・・・・
そうしている間に樹里たちがそばに戻ってきた。
二人は飲むものを持っていなかったので、樹里のクーラーボックスからペットボトルを出して水分を補給している。ついでに買っていたチョコレート、箱の中でさらに12粒に小分けされているものを樹里が出して、田中さんにもあげている。
「あ、おいしいわ、雰囲気もいいから最高です」
田中さんの声がする。
ウマソー、、、後でもらおう。
あ、それと、、、
「田中さん」
「はい」
「クーラーボックス、それ田中さんにあげるわ、よかったら中身見て」
「ええっと・・・・」
発泡スチロールの薄い水色のクーラーボックス。
「え?いいの?」戸惑う田中さんに
「いいのいいの。それうちとこもいつからあったか分からないやつやから、、、もうもらって」
「中身なにか入ってるんですかね?」
「さあ、紙切れで『はずれ』って書いてあるんちゃう」
「(笑)そんなまさか」
何も釣れなかったらそれは良いアイデアだなと傍で聞いてて思い、吹き出した。
「ああ!これ、魚!」
樹里も覗きに行き、
「アジやん、、、しかもまあまあええサイズ」
「あ、ちゃんと氷も入れてくれてる」
「ここらのやったら食べれるから、帰って焼いて食ったらええよ。多分氷で締まっているだろうし」
「わあ、ホンマに!ありがとう!」
田中さんに勧めなくてよかったわと安堵していた。サビキで釣れないのはこの上なくキツイ。僕はしないが飲ませ釣りする人らにしても、その飲ませる小魚が調達できなかったら本番の飲ませが始まらないし。今日はひょっとしたら中途半端にでかいのんがうろついてたんかもしれないなあ。そうなるとアジの小さいのとか、サバとかは逃げてしまっていなくなっている。ブラックバスなら池のどこかにはいるのだが、ここは海。どこかでは広すぎて見当ができないし人間の足ではいけないところにいたりする。つまりどうしようもないのだ。
誰もゲストがいなければすぐに「じゃあ、さいなら!」と帰れば終いだが、ゲストがいるとそれもできない。
でもここ二十分前ぐらいから戻ってきたのか、ちょっと大きめの、尺は全然ないけど(三十センチ以上の意味)、アジが釣れるようになってきた。それでもサビキの針に、たまに一匹か二匹かかるかかからないかなので、やはり魚影としては薄いなあ。釣れた八匹ほどのアジをしめて、田中さんのクーラーに入れてあげる。後の二匹はうちでもらう。
そこらへんでサビキはとりあえずいったん終わり、僕はベイトタックル「一号」にブラクリと結びつけてテトラの穴打ちを始めていた。
あまりおススメできたことではないが、僕はテトラの上に乗っている。つまり足場は一文字の上から離れている。慣れもいるし波が高くなったら一気にさらわれるかもしれない。また足を滑らせたらテトラの下に落ちてしまう。当たり所が悪ければ大変なことになる。まだここのテトラは乗りやすい形をしていたのでそこまで心配することはないけど、それでも危ないことは確かだ。
根魚を狙っている。テトラで組まれた隙間が穴になっていて、そこに波が入り込んで水たまりが形成されている。こういうのはベイトタックルの方が手返しが早いのと無駄な糸を放出しないので、有利だったりする。後は「元バスアングラーは必ずベイトロッドを使いたがる」の習性だ。絶対ベイトでないとできない釣りなんて別にないと思うのだが、ベイトロッド・ベイトリールに触れたいのはブラックバスアングラーなら必ず分かるはず。触るだけでムフフとなる。
少し視線を沖の一文字にやると、どうやら二人が釣りをしながらゆっくり戻ってきている。向こうも青イソメを使った落とし込み釣りをしているみたいだ。
あっちで落として、様子を見て、、、こっちでまた落として様子を見て。。。。
フリッピングで決めて行ってもいいんだけど、足元から高すぎるから糸めちゃ出さないといけなくなりそう。やめ。普通にクラッチワークで行く。
そうしながら徐々に戻ってくる。
さて、どんな話をしてきたのかなあ。
そこはすごく気になるが・・・・
教えてくれそうにもないしなあ。
このもどかしさを残したまま、今日が終わるのかな。
まあでも、樹里のことだからうまくやってくれてんだろう。
ベイトリールのクラッチを切って穴に落としこむ。
様子をみて、、、反応が無ければまた別の穴に落とし込む。
反応が無ければまた別の穴。
皆の荷物があるから、あまり遠くにいけないので、近場で目の届くところでやっている。
何度目かの落とし込みの時、、、
ツン、、、ツンツンツン、、、トトトトトト、、、
糸が走り出した!
思いっきりロッドの先端を天に抜けると、「一号」の全体に重さがかかり、ティップからベリーにかけてしなる。。。が、そこまで大物でもないようだ。
リールの糸を巻いてもう一度ロッドを上げたら案外素直に上がった。
「・・・・・ガシラやな」
釣り人に優しい魚と言われているガシラ。どこにでもいて、結構釣りやすいし、食べるとうまい魚だ。
でもこいつは小さすぎる。返そう。
針を指で持ちひねりを加えてガシラをまたテトラの穴へ落とす。
ふと見たら向こうの方で田中さんが手を振る。
見てくれていたようだ。
「釣ったねえ」と言ってくれたみたい。
自然と笑顔になり、僕も手を振り返す。
ガシラは小さいベイビーだったがしっかり青イソメは食われたようで、餌はなくなってきた。
僕はテトラから一文字に戻ってパックから青イソメを取りに戻る。
「ま、一応今日もやりましたな、『一号』」
その間に樹里たちもだいぶ戻ってきた。
今はかろうじて大きい声が聞こえる状態だ。
「釣ったん?」樹里から
「小さかったけどな」
ブラクリに青イソメを縫い刺しして、僕はまたテトラエリアに入っていく。
「あんなん、まりっぺはあんまりしたらあかんで」
風向きの加減で樹里の声が聞こえた。
確かに普通にやめといたほうがいい。
けど樹里は確実にやるやろうなあ。
また僕は穴打ちを始める。
先に小さいガシラが釣れた穴から探り、、、またさっきのやつ食いついたらどうしよ、とか思いながら。しかし反応はない。
また次の穴
また次の穴
また次の穴・・・・
そうしている間に樹里たちがそばに戻ってきた。
二人は飲むものを持っていなかったので、樹里のクーラーボックスからペットボトルを出して水分を補給している。ついでに買っていたチョコレート、箱の中でさらに12粒に小分けされているものを樹里が出して、田中さんにもあげている。
「あ、おいしいわ、雰囲気もいいから最高です」
田中さんの声がする。
ウマソー、、、後でもらおう。
あ、それと、、、
「田中さん」
「はい」
「クーラーボックス、それ田中さんにあげるわ、よかったら中身見て」
「ええっと・・・・」
発泡スチロールの薄い水色のクーラーボックス。
「え?いいの?」戸惑う田中さんに
「いいのいいの。それうちとこもいつからあったか分からないやつやから、、、もうもらって」
「中身なにか入ってるんですかね?」
「さあ、紙切れで『はずれ』って書いてあるんちゃう」
「(笑)そんなまさか」
何も釣れなかったらそれは良いアイデアだなと傍で聞いてて思い、吹き出した。
「ああ!これ、魚!」
樹里も覗きに行き、
「アジやん、、、しかもまあまあええサイズ」
「あ、ちゃんと氷も入れてくれてる」
「ここらのやったら食べれるから、帰って焼いて食ったらええよ。多分氷で締まっているだろうし」
「わあ、ホンマに!ありがとう!」
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