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第一巻
カミングアウト2~釣りをしていると色々話したくなるもの~
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凄く言いにくそうに話す。
きっと私が見つめて正面に立てば、喋らなくなるだろう
あえて潤滑させるようなことを振ってみる
「いじめられているってこと?」
「いや、そこまではっきりとターゲットにされて、いじめられているわけでもないんですけど」
スローにウォブリングを繰り返し、巻き取られているルアーは戻ってくる。
「なんかでもそういう・・・いじめっ子には折々に嫌な言葉を投げかけられています。あとは空気みたいな存在・・・いや、むしろちょっと汚らしいぐらいの存在で・・・スクールカーストって分かります?」
「うん、だいたい分かる」
本当はすごく分かる。あにぃから良く聞くし、あにぃが中学校のときにその「スクールカーストの階段」を転げ落ちた。
「それでいけばいじめられているのが最下層なら、そこに落ちそうで落ちないぐらいの存在。そこからいっつも脱却したくって。。。」
巻き上げたのでまたロッドを振りぬく。釣りをしているふりしながら神経は田中さんの言葉に集中している。
「けど、なぜかいつも脱出しようとしたら、失敗して前よりドンドン悪くなってしまうんです。私サッカー部のマネージャーを一時期していたの知ってます?」
「いや、知らない」
サッカー部という地点で私は「おかしいんじゃない?」と言いたかった。たいして強くもないのに群れていきがって、悪ふざけで「ウケ」を狙いにいく、とぼけた集団。あと、誰が私を口説けるかゲームのように私をターゲット扱いしたクソみたいな奴ら。中身は臆病な一人では何もできない根性無しばっかり。
「私からしたら最初楽しそうな集まりだなって思ったんですよ。それにそういうおもしろいことする明るい方々といたら私も変われるかなって思っていたんですけど」
私は短気なのだろうか?うちの学園のサッカー部が出てきたところで、内心イラッとした。
サッカー部にイラッとしたのではない。
(アンタ、頭大丈夫?ホンマ上辺のことしか見てへんことないか?)
あの集団は、上辺だけの、ひょうきんさ、おもしろさ、お笑い芸人的の真似事を周囲を楽しませたいふりをしながら、実は自分の学校内での地位のことしか考えていない、自己中集団。それに憧れるは、よっぽど上辺のことしか考えられないアホか、自分もそういう人間か、だと思う。田中は前者かととりあえず見立てを立てておく。
「ふーん、全然合わなかったんじゃない?」
「正解です。皆から気持ち悪がられてしまって・・・・」
一人がギャグ感覚で悪口をいえばそれに便乗してもっと悪く、もっと悪く言いあう。そのうち行動するものも出てきて「ウケ」を狙う。おもしろいんじゃない。「おもしろそう」な雰囲気だけでまったくにくだらない連中ら。
「一年の四月に入って、五月のGWにはもうサッカー部には出れませんでした。学校も辞めようかなと思うぐらいでした。幸い、私は特進科だったので、部活さえ辞めてしまえばそんな一日の間で会うこともないこともありませんでした」
「うん、そうね」
またルアーをキャストする。
少し風が出てきた。
とはいえ、初夏の南風。
魚が釣れない以外は凄く釣りがしやすい日だと思う。曇天で初夏の微風。雨は降らない。
「樹里さんはそういうスクールカースト的なこと、考えたことないですよねきっと」
「・・・・・・・・・・・」
自分のために考えたことはない。あにぃのためだけ。
「だからひょっとしたら、何も答えは出ないのかもしれませんけど、、、私とは全く視点も、きっと考え方も、立場も違うでしょうから、何かしらヒントになるものでも、聞けたらと思いまして・・・」
表情は見えないぐらいに下を向いてしまった。
ルアーを巻くのを止めた。
海に漂うルアー、フローティングタイプだから浮いてくる。
そして凪いでるとは言え、波間を漂う。
ひとたび流れが変わればひとたまりもなくそちらの方向へ行く。
私たちも、この根無し草のような状態に変わりはない。
そしてその波がどのように変わるかなんて予測はできない。
答えをずっと待っているようだ。
ないよ、答えなんて。というのが本来の正解なんだと思う
でもそれは彼女が可哀想だし、期待外れすぎるし、なにより頼ってくれてるあにぃに悪い。
「・・・・・・・ふう」
溜息を一つ、ついた。
答えにならない答えだが、ここは持論を展開させてもらおう。
きっと私が見つめて正面に立てば、喋らなくなるだろう
あえて潤滑させるようなことを振ってみる
「いじめられているってこと?」
「いや、そこまではっきりとターゲットにされて、いじめられているわけでもないんですけど」
スローにウォブリングを繰り返し、巻き取られているルアーは戻ってくる。
「なんかでもそういう・・・いじめっ子には折々に嫌な言葉を投げかけられています。あとは空気みたいな存在・・・いや、むしろちょっと汚らしいぐらいの存在で・・・スクールカーストって分かります?」
「うん、だいたい分かる」
本当はすごく分かる。あにぃから良く聞くし、あにぃが中学校のときにその「スクールカーストの階段」を転げ落ちた。
「それでいけばいじめられているのが最下層なら、そこに落ちそうで落ちないぐらいの存在。そこからいっつも脱却したくって。。。」
巻き上げたのでまたロッドを振りぬく。釣りをしているふりしながら神経は田中さんの言葉に集中している。
「けど、なぜかいつも脱出しようとしたら、失敗して前よりドンドン悪くなってしまうんです。私サッカー部のマネージャーを一時期していたの知ってます?」
「いや、知らない」
サッカー部という地点で私は「おかしいんじゃない?」と言いたかった。たいして強くもないのに群れていきがって、悪ふざけで「ウケ」を狙いにいく、とぼけた集団。あと、誰が私を口説けるかゲームのように私をターゲット扱いしたクソみたいな奴ら。中身は臆病な一人では何もできない根性無しばっかり。
「私からしたら最初楽しそうな集まりだなって思ったんですよ。それにそういうおもしろいことする明るい方々といたら私も変われるかなって思っていたんですけど」
私は短気なのだろうか?うちの学園のサッカー部が出てきたところで、内心イラッとした。
サッカー部にイラッとしたのではない。
(アンタ、頭大丈夫?ホンマ上辺のことしか見てへんことないか?)
あの集団は、上辺だけの、ひょうきんさ、おもしろさ、お笑い芸人的の真似事を周囲を楽しませたいふりをしながら、実は自分の学校内での地位のことしか考えていない、自己中集団。それに憧れるは、よっぽど上辺のことしか考えられないアホか、自分もそういう人間か、だと思う。田中は前者かととりあえず見立てを立てておく。
「ふーん、全然合わなかったんじゃない?」
「正解です。皆から気持ち悪がられてしまって・・・・」
一人がギャグ感覚で悪口をいえばそれに便乗してもっと悪く、もっと悪く言いあう。そのうち行動するものも出てきて「ウケ」を狙う。おもしろいんじゃない。「おもしろそう」な雰囲気だけでまったくにくだらない連中ら。
「一年の四月に入って、五月のGWにはもうサッカー部には出れませんでした。学校も辞めようかなと思うぐらいでした。幸い、私は特進科だったので、部活さえ辞めてしまえばそんな一日の間で会うこともないこともありませんでした」
「うん、そうね」
またルアーをキャストする。
少し風が出てきた。
とはいえ、初夏の南風。
魚が釣れない以外は凄く釣りがしやすい日だと思う。曇天で初夏の微風。雨は降らない。
「樹里さんはそういうスクールカースト的なこと、考えたことないですよねきっと」
「・・・・・・・・・・・」
自分のために考えたことはない。あにぃのためだけ。
「だからひょっとしたら、何も答えは出ないのかもしれませんけど、、、私とは全く視点も、きっと考え方も、立場も違うでしょうから、何かしらヒントになるものでも、聞けたらと思いまして・・・」
表情は見えないぐらいに下を向いてしまった。
ルアーを巻くのを止めた。
海に漂うルアー、フローティングタイプだから浮いてくる。
そして凪いでるとは言え、波間を漂う。
ひとたび流れが変わればひとたまりもなくそちらの方向へ行く。
私たちも、この根無し草のような状態に変わりはない。
そしてその波がどのように変わるかなんて予測はできない。
答えをずっと待っているようだ。
ないよ、答えなんて。というのが本来の正解なんだと思う
でもそれは彼女が可哀想だし、期待外れすぎるし、なにより頼ってくれてるあにぃに悪い。
「・・・・・・・ふう」
溜息を一つ、ついた。
答えにならない答えだが、ここは持論を展開させてもらおう。
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