【R15】【第一作目完結】最強の妹・樹里の愛が僕に凄すぎる件【第二作目連載中】

木村 サイダー

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第一巻

★スクールカーストが低いとこういうことが起きる。

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その感覚は正しかった。
しかも正しくて、最悪なもので、その直後に結果が出てきてしまった。
見ていたのは、寄りにもよって仲道らだった。
その場で奇襲されなかっただけでも幸いだったといえる。
僕はまっすぐに教室に戻り、
田中さんはトイレに寄ってから教室に戻ることで二人の仲良しぶりを隠していた。
けどそんなものは隠ぺい工作にもなっていなかった。
席につき、次の時間の予習を少しするべく教科書を開き、ノートを用意しているときだ。
「よう、モテ男きゅん」
(きゅん)てなんだよって。
もう近づいてきただけでも分かる。
仲道だ。他のクラスメイトの脇坂もいる。
「なによ」多分僕は笑顔。多分な。おそらく困り顔だろうけど
また仲道が僕の前の江藤さんの席に座る。内心、
二日連続で辞めてくれ。おまえとは深く関わりたくないんだ、と言いたいところだ。
「ちょ、わっきー聞いてや、この人モテすぎて目がおかしくなってきてんちゃうんかな」
「美人だらけやもんねえ」
わっきーは脇坂君のこと。脇坂君はそんな悪いやつではない。
髪型はなぜかリーゼント風な髪型なんだが、毛が多すぎて彼も天然パーマ(多分・自称)でそれを後ろに持っていけば、リーゼントまでは言わないがリーゼントチックになる。そんなヘアースタイルで、制服もだらしなく、カッターシャツもパンツから出している。だがそれでも決してやんちゃではないし体も大きくない。ついでに成績もあまりよくない。
なんとなく仲道に引っ張られて、なんとなく付いて動いているといった感じ。確か地元も一緒だったからそういうのもあるのかな、と思う。
「いや、そんなことない・・・・」ほぼ僕の話は遮られて
「1年の宗田さんやろ、まず」
「え、宗田さんて、あのショートボブの?めちゃ可愛い子やんかあ、おっぱいもこう・・・なあ」
胸の前で手でジェスチャーして、仲道に振る。
確かにらんちゃんのは、制服越しにもわかるぐらいに大きい。
けど違う。付き合っていないし、口説いてもいないし、向こうから言い寄ってきてもない。
「そして、樹里さんやろ」
「樹里は妹やって」一応分かり切った注釈を入れるが、
「妹でもあんなんが同じ屋根の下でウロウロしとったらたまらんちゅうねん」
弾き返してきやがった。
めちゃ言葉に力が籠っていたように思えた。
他人から見ればきっと『そう』なのだろう。
家族から見ても樹里の美しさ、お色気は別格に感じるのだから。ふるまいは・・・・ふるまいはちょっと問題ありかな。でもそんなことは他人は知らん。
だが、樹里はさっきも言ったように妹だ。恋人にはなり得ない。
ある意味あいつに熱い気持ちを持ったとしてもそれは、異次元クラスで、手の届かないものであり、思ってはいけないもの、なのだ。

田中さんが、戻ってきてしまった。
――――あ、
田中さんは、この状況を見て教室のドアを開けて入ったところで、止まった。
その時に、残酷にも仲道の言葉が発せられた。
「そして今日、オッペケと一緒に飯食ってるやん、ホンマ大丈夫?これ」
と自分の目を指す。僕の目が大丈夫かと言いたいようだ。
「宗田さん樹里さん分かるけど、オッペケやで、オッペケ。不細工のオッペケオッペケオッペケヤーヤーやで」
止まっていては余計におかしく思われる。クラスにいる他の子達の目線が田中さんに降り注ぐことになる。そのことを悟った田中さんは逆に歩みを早め、仲道を無視したまま自分の席に着き、寝たように顔を伏せた。
「だいぶ美人ばっかり見すぎてホンマちょっと変わったん行きたくなったんか?なあ?」
多分これでも仲道にしたら、まだそんなに悪がらみしていないつもりなんだろう。
でもこの間、田中さんは寝たふりをして耐えている。
きっと耐えている。
この無神経な暴言に耐えるしかない。
「ブス専なん?御堂君ブス専?うん?ブス専?」
僕も仲道を黙らせることなんてできない。
僕のスクールカーストは低い。低いことを隠すためにあまり皆との関わりを避けて暮らしてきた。戦うことは『負け』を意味する。
「御堂君て、汚好きなん?」
脇坂くんも加担してきた。
そんな悪い奴ではないはずなんだが、ここは仲道に合わせる形になっているのだろう。
「汚好きって!ハハハハハハーッ」
大声で仲道が笑う。
その間もずっと田中さんは耐えている。暗に『田中さんは汚い』と揶揄したようなものだ。この年代に『汚い』『臭い』はどれだけキツイか。
酷いなあ、これはちょっとあんまりだ。
「御堂くん周りの人ら美人ばかりでな、汚好きのオッペケ好きになったんやなあ!」
「やっぱ違う因子を好きになるんかもなあ!」

あんまり過ぎる・・・・
僕はこれだけは言いたい
言いたいから、言わせてもらう
「田中さんは、別にブスじゃないし、汚くもないよ」
二人は黙った。
「僕はそう思う」

少し、田中さんは、ピクッと動いた気がした。

しかし次の瞬間、
「ハハハハー!わっきー聞いたわっきー聞いた?嘘やろ、顔が油でテカテカやで!テカテカ!」
「顔に火つけたら引火しそう」
「油取り紙ねちゅーあってなるであの顔」
「頭に触手あるし」
「ハハハハハ!触手触手!」
交互に言いあう。おまえらの真後ろに本人がいるのに。
田中さんはずっと寝たふりをして耐えている。
いつまで続くんだろう、この言葉の拷問。早く授業が始まってほしい。

「おい、本人おるんやし、もうやめろ」
この状況で、その言葉を耳にした。
大きな声ではなかったし、恫喝するようでもなかった。
ただ確実に自信のある声だった。

また二人は黙った。
辻本君だった。

辻本君が僕の後ろから歩いてきていた。横には大成君もいる。
仲道も脇坂君も、カーストが上なわけではない。
いきってうるさく振舞ってカースト上位に見せているだけ。
むしろその分ウザがられて本人の目論見とは違う結果を招いているだけの自爆野郎たちだ。
それに比べて辻本君と大成君は天性のカースト上位者だ。
勝てるわけがなかった。
「ええー?もうちょっ、冗談やし。でも辻本君も思うやろ、樹里さんとオッペケやで」
「もうええって」
その言葉と同時にチャイムが学校中に鳴り響いた。

僕には辻本君のような、カースト上位者としての権力も、勇気も、なかったんだ。
僕は樹里が出したアドバイスに沿ってファミレスに連れ出したり、釣りの誘いもした。今日の二人きりランチもそれらの前提があったから、便乗できただけ。僕自身で何かできたのかって言ったら「言えた」ことだけだ。これは大きな一歩かもしれないが、まだまだ足りない。僕が考えてやったことは何もないんだ。そこは「何も変わっていない自分」なんだ。
だから僕は『僕のできること』で頑張ろうと思った。
――――優しゅうしたったら・・・かあ。
父親のアドバイスを思い出していた。
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