【R15】【第一作目完結】最強の妹・樹里の愛が僕に凄すぎる件【第二作目連載中】

木村 サイダー

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第一巻

★お昼のごはんのおかずを作って持ってきてあげよう

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僕は何気に講堂の方を見るが、、、特に見当たらない。
下から上へのアングルなので死角だらけだし、広場もあれば植え込みも多い。
徹底的に見回せばなにか分かるのかもしれないけど、横に田中さんがいて、そんな動きする方が変だと思うし。
「うん?なんかあった?」
「いや、、、なんでもない」
話題を変えたかった。
気のせいかもしれない。
「お世話してるなんて思ってないよ」
「ええーーめちゃしてもうてるって。私なんかに樹里さんとか紹介してもらったし」
「私なんかにーとか関係ないし(笑)。樹里はだいたい勝手にしゃしゃりすぎ!」
「あ、昨日の?結局なんぼやったん?私払っておくよ」
「いや、いいよ。そもそも払うつもりだったし」
「ええーーそんなん悪すぎるわ。教室に財布あるからそこで払う」
「いやいや、ホンマいい。ホンマいいって。それよりお昼食べよう」
樹里らの分を払わされたのは、物凄い無念だ。けど田中さんの分は元々僕が払うつもりだった。だからいいんだ。
田中さんは僕に煽られたせいか、素直にのっけ弁当を食べることを再開した。

話がありすぎて、食べるのを何度も中断したら昼休み中に食べ終わらないや。

こんなことってあるんだなって思った。
友達と話すことはあんまりないけど、それに友達ほとんどいないし。
でもそんな昼を食べ終われないような勢いになるということなんてなかった。
樹里と悪乗りしたり、おもしろい話で盛り上がりすぎてってときに何度かあった。
でもそれは兄妹で、仲が良くて波長があってついでに悪乗りで、そんな要素がいくつも化学反応したときだ。
ほら、また僕の中で会話が浮かんできた。
「田中さん、お昼っていつもこういうの?」
僕はコンビニ弁当を指さす。
箸をとめて、少し照れ笑いをする。
「う、それは私が家庭的でないなって言いたいわけ?」
「いや、そ、そんなことじゃないよ。誰にだって面倒くさいときあるよ。僕だって今日これだし」
パンを見せる。
田中さんは箸と弁当をおき、ペットボトルのお茶を飲む。
怒ってはいない。それどころか、
「ホンマはなあ、ちゃんとせなあかんと思うねん」
と反省している。
「ちゃんと?」
「うん。私んち、両親共働きで、しかもママもパパとあんまり変わらないぐらい収入あるんよ」
「『パワーカップル』ってやつか」
「世にいうところ、そうやねん。そんな高所得のパワーカップルちゃうけどなあ。で、当然バリバリ働いてきて、ママも残業してくる。料理とかはママがやるけど、あとのことはパパとママで分担してやっている。でもママもしんどいから、朝(のお弁当)してくれるときとしてくれんときがあるんよ」
「うん。してくれんときは?」
「してくれんときは、、、ホンマやったら私がしたら一番いいと思う。パパもしてあげたらきっと喜ぶし。けどあたしも夜中まで勉強しててさ、朝早く起きてお弁当作るとか、前の日から準備してとか、できるときとできんときとでてくるやん」
「それは僕もやってて思う。やっぱり色んなこと重なってきたらできんしね。勉強大変なときとかそっちが重きになるし」
「そうやねん。でもそうなるとだんだん、ダラダラしなくなるんよね~」
「あ、それも分かる(笑)」
もうなんか三日連続、おかず一品(納豆だけ)ご飯二杯とかで、樹里からクレームが入るときあるもん。それでもする気が起きなくて、さらに翌日は樹里と外食とか。そうすると樹里は一気に機嫌が直って良いんだけど。

「樹里さんとかどうしてるん?」
あ~あいつな、そこは言ってもいいよな。
「あいつ?・・・何もしない」
「え(笑)うそ??」
田中さんが口に手をあてて、笑いを堪える。
「ホンマホンマ。何もしない」
「割り切り系?」
「割り切ってはるなあ・・・・全部僕がしてるもん」
「料理だけじゃなく、他のことも?」
「うん、何もしない。そうやなあ、するとしたら・・・・食べた後の食器をシンクに持ってくることと、、、後はたまに洗濯物干したり入れたりはするなあ。けど洗濯物拾い集めて洗濯機に入れてスイッチオンするのも僕だし、掃除機も樹里は自分の部屋が汚れたり埃っぽかった時しかしないなあ。全体をするのは僕かなあ」
「え?樹里さんの衣類も洗ってるんですか?」
「うん、あいつ普通に部屋入って脱ぎ臭し持ってけって言うで」
「マジですか!兄が部屋に勝手に入ってくるとかありえへんし」
う・・・キモがられた。
「うちはそれしないと、脱ぎ臭し置いておかれる方が、後で『これも洗って~や』クレームが入るで」
文化の違いははっきりと伝える。
「うわーすごいカルチャーショック!」
「うちがオープンすぎるのかな(笑)」
「ああ、でもなんかいいねえ、そうやって頼りきれる兄がいてくれて。きっと樹里さんそれに甘えちゃってるんよきっと」
「あ、でも僕もめっちゃ手抜きやで。時間確保していかなあかんから、多分そこらの主婦よりももっと手抜きなことしてると思う」
「それは多分そこらの主婦も一緒のこと思っているでしょ(笑)」
「そうかなあ、お弁当とかホンマ前日のやつ、「えい、そりゃ、とう!」って感じで入れて、足りないスペースはレンジでチンしまくりやで」
「それで樹里さんのお弁当作ってあげてるんやろ、羨ましすぎ。うち兄は何もしないもん。そっかあ樹里さん甘えたさんの妹さんやったんやなあ」

ふと思いついたことがあった。
・・・・これをしたら喜ぶの、かな。よし。

樹里は僕の弁当は、あまりにいわゆる、むき出しすぎて、持っていかない。
つまり可愛らしさがないからだ。
じゃあおかずカップで分けて入れればいいんだろ。しかもちょっと可愛らしい目のおかずカップ買ってきて。キャラ弁とか絶対にできない。けど前日の残り物や、ちょっとしたものを作っておかずだけ入れてあげたらいいやん。
「田中さん、朝ってご飯は用意できる?」
「え?ご飯??」
「そうそう、ライスライス」
朝ごはんと間違われたらあかんので。
「ああ、ご飯は多分毎日家の冷蔵庫にあると思うけど、、、なんで?」
「僕、おかず作って持ってきてあげるよ」
僕はこの提案をしたときに、確実に僕は、田中さんが好きだ、と自覚した。
――――でも、樹里のことは??まさか二人ともを好きになっている??
もう一人の自分が語り掛ける。
そこは・・・・まだ分からない。過渡期なのかもしれない。
それよりやっぱり、さっきから・・・・誰か見ていなかったか?
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