51 / 202
第一巻
★お昼のごはんのおかずを作って持ってきてあげよう
しおりを挟む
僕は何気に講堂の方を見るが、、、特に見当たらない。
下から上へのアングルなので死角だらけだし、広場もあれば植え込みも多い。
徹底的に見回せばなにか分かるのかもしれないけど、横に田中さんがいて、そんな動きする方が変だと思うし。
「うん?なんかあった?」
「いや、、、なんでもない」
話題を変えたかった。
気のせいかもしれない。
「お世話してるなんて思ってないよ」
「ええーーめちゃしてもうてるって。私なんかに樹里さんとか紹介してもらったし」
「私なんかにーとか関係ないし(笑)。樹里はだいたい勝手にしゃしゃりすぎ!」
「あ、昨日の?結局なんぼやったん?私払っておくよ」
「いや、いいよ。そもそも払うつもりだったし」
「ええーーそんなん悪すぎるわ。教室に財布あるからそこで払う」
「いやいや、ホンマいい。ホンマいいって。それよりお昼食べよう」
樹里らの分を払わされたのは、物凄い無念だ。けど田中さんの分は元々僕が払うつもりだった。だからいいんだ。
田中さんは僕に煽られたせいか、素直にのっけ弁当を食べることを再開した。
話がありすぎて、食べるのを何度も中断したら昼休み中に食べ終わらないや。
こんなことってあるんだなって思った。
友達と話すことはあんまりないけど、それに友達ほとんどいないし。
でもそんな昼を食べ終われないような勢いになるということなんてなかった。
樹里と悪乗りしたり、おもしろい話で盛り上がりすぎてってときに何度かあった。
でもそれは兄妹で、仲が良くて波長があってついでに悪乗りで、そんな要素がいくつも化学反応したときだ。
ほら、また僕の中で会話が浮かんできた。
「田中さん、お昼っていつもこういうの?」
僕はコンビニ弁当を指さす。
箸をとめて、少し照れ笑いをする。
「う、それは私が家庭的でないなって言いたいわけ?」
「いや、そ、そんなことじゃないよ。誰にだって面倒くさいときあるよ。僕だって今日これだし」
パンを見せる。
田中さんは箸と弁当をおき、ペットボトルのお茶を飲む。
怒ってはいない。それどころか、
「ホンマはなあ、ちゃんとせなあかんと思うねん」
と反省している。
「ちゃんと?」
「うん。私んち、両親共働きで、しかもママもパパとあんまり変わらないぐらい収入あるんよ」
「『パワーカップル』ってやつか」
「世にいうところ、そうやねん。そんな高所得のパワーカップルちゃうけどなあ。で、当然バリバリ働いてきて、ママも残業してくる。料理とかはママがやるけど、あとのことはパパとママで分担してやっている。でもママもしんどいから、朝(のお弁当)してくれるときとしてくれんときがあるんよ」
「うん。してくれんときは?」
「してくれんときは、、、ホンマやったら私がしたら一番いいと思う。パパもしてあげたらきっと喜ぶし。けどあたしも夜中まで勉強しててさ、朝早く起きてお弁当作るとか、前の日から準備してとか、できるときとできんときとでてくるやん」
「それは僕もやってて思う。やっぱり色んなこと重なってきたらできんしね。勉強大変なときとかそっちが重きになるし」
「そうやねん。でもそうなるとだんだん、ダラダラしなくなるんよね~」
「あ、それも分かる(笑)」
もうなんか三日連続、おかず一品(納豆だけ)ご飯二杯とかで、樹里からクレームが入るときあるもん。それでもする気が起きなくて、さらに翌日は樹里と外食とか。そうすると樹里は一気に機嫌が直って良いんだけど。
「樹里さんとかどうしてるん?」
あ~あいつな、そこは言ってもいいよな。
「あいつ?・・・何もしない」
「え(笑)うそ??」
田中さんが口に手をあてて、笑いを堪える。
「ホンマホンマ。何もしない」
「割り切り系?」
「割り切ってはるなあ・・・・全部僕がしてるもん」
「料理だけじゃなく、他のことも?」
「うん、何もしない。そうやなあ、するとしたら・・・・食べた後の食器をシンクに持ってくることと、、、後はたまに洗濯物干したり入れたりはするなあ。けど洗濯物拾い集めて洗濯機に入れてスイッチオンするのも僕だし、掃除機も樹里は自分の部屋が汚れたり埃っぽかった時しかしないなあ。全体をするのは僕かなあ」
「え?樹里さんの衣類も洗ってるんですか?」
「うん、あいつ普通に部屋入って脱ぎ臭し持ってけって言うで」
「マジですか!兄が部屋に勝手に入ってくるとかありえへんし」
う・・・キモがられた。
「うちはそれしないと、脱ぎ臭し置いておかれる方が、後で『これも洗って~や』クレームが入るで」
文化の違いははっきりと伝える。
「うわーすごいカルチャーショック!」
「うちがオープンすぎるのかな(笑)」
「ああ、でもなんかいいねえ、そうやって頼りきれる兄がいてくれて。きっと樹里さんそれに甘えちゃってるんよきっと」
「あ、でも僕もめっちゃ手抜きやで。時間確保していかなあかんから、多分そこらの主婦よりももっと手抜きなことしてると思う」
「それは多分そこらの主婦も一緒のこと思っているでしょ(笑)」
「そうかなあ、お弁当とかホンマ前日のやつ、「えい、そりゃ、とう!」って感じで入れて、足りないスペースはレンジでチンしまくりやで」
「それで樹里さんのお弁当作ってあげてるんやろ、羨ましすぎ。うち兄は何もしないもん。そっかあ樹里さん甘えたさんの妹さんやったんやなあ」
ふと思いついたことがあった。
・・・・これをしたら喜ぶの、かな。よし。
樹里は僕の弁当は、あまりにいわゆる、むき出しすぎて、持っていかない。
つまり可愛らしさがないからだ。
じゃあおかずカップで分けて入れればいいんだろ。しかもちょっと可愛らしい目のおかずカップ買ってきて。キャラ弁とか絶対にできない。けど前日の残り物や、ちょっとしたものを作っておかずだけ入れてあげたらいいやん。
「田中さん、朝ってご飯は用意できる?」
「え?ご飯??」
「そうそう、ライスライス」
朝ごはんと間違われたらあかんので。
「ああ、ご飯は多分毎日家の冷蔵庫にあると思うけど、、、なんで?」
「僕、おかず作って持ってきてあげるよ」
僕はこの提案をしたときに、確実に僕は、田中さんが好きだ、と自覚した。
――――でも、樹里のことは??まさか二人ともを好きになっている??
もう一人の自分が語り掛ける。
そこは・・・・まだ分からない。過渡期なのかもしれない。
それよりやっぱり、さっきから・・・・誰か見ていなかったか?
下から上へのアングルなので死角だらけだし、広場もあれば植え込みも多い。
徹底的に見回せばなにか分かるのかもしれないけど、横に田中さんがいて、そんな動きする方が変だと思うし。
「うん?なんかあった?」
「いや、、、なんでもない」
話題を変えたかった。
気のせいかもしれない。
「お世話してるなんて思ってないよ」
「ええーーめちゃしてもうてるって。私なんかに樹里さんとか紹介してもらったし」
「私なんかにーとか関係ないし(笑)。樹里はだいたい勝手にしゃしゃりすぎ!」
「あ、昨日の?結局なんぼやったん?私払っておくよ」
「いや、いいよ。そもそも払うつもりだったし」
「ええーーそんなん悪すぎるわ。教室に財布あるからそこで払う」
「いやいや、ホンマいい。ホンマいいって。それよりお昼食べよう」
樹里らの分を払わされたのは、物凄い無念だ。けど田中さんの分は元々僕が払うつもりだった。だからいいんだ。
田中さんは僕に煽られたせいか、素直にのっけ弁当を食べることを再開した。
話がありすぎて、食べるのを何度も中断したら昼休み中に食べ終わらないや。
こんなことってあるんだなって思った。
友達と話すことはあんまりないけど、それに友達ほとんどいないし。
でもそんな昼を食べ終われないような勢いになるということなんてなかった。
樹里と悪乗りしたり、おもしろい話で盛り上がりすぎてってときに何度かあった。
でもそれは兄妹で、仲が良くて波長があってついでに悪乗りで、そんな要素がいくつも化学反応したときだ。
ほら、また僕の中で会話が浮かんできた。
「田中さん、お昼っていつもこういうの?」
僕はコンビニ弁当を指さす。
箸をとめて、少し照れ笑いをする。
「う、それは私が家庭的でないなって言いたいわけ?」
「いや、そ、そんなことじゃないよ。誰にだって面倒くさいときあるよ。僕だって今日これだし」
パンを見せる。
田中さんは箸と弁当をおき、ペットボトルのお茶を飲む。
怒ってはいない。それどころか、
「ホンマはなあ、ちゃんとせなあかんと思うねん」
と反省している。
「ちゃんと?」
「うん。私んち、両親共働きで、しかもママもパパとあんまり変わらないぐらい収入あるんよ」
「『パワーカップル』ってやつか」
「世にいうところ、そうやねん。そんな高所得のパワーカップルちゃうけどなあ。で、当然バリバリ働いてきて、ママも残業してくる。料理とかはママがやるけど、あとのことはパパとママで分担してやっている。でもママもしんどいから、朝(のお弁当)してくれるときとしてくれんときがあるんよ」
「うん。してくれんときは?」
「してくれんときは、、、ホンマやったら私がしたら一番いいと思う。パパもしてあげたらきっと喜ぶし。けどあたしも夜中まで勉強しててさ、朝早く起きてお弁当作るとか、前の日から準備してとか、できるときとできんときとでてくるやん」
「それは僕もやってて思う。やっぱり色んなこと重なってきたらできんしね。勉強大変なときとかそっちが重きになるし」
「そうやねん。でもそうなるとだんだん、ダラダラしなくなるんよね~」
「あ、それも分かる(笑)」
もうなんか三日連続、おかず一品(納豆だけ)ご飯二杯とかで、樹里からクレームが入るときあるもん。それでもする気が起きなくて、さらに翌日は樹里と外食とか。そうすると樹里は一気に機嫌が直って良いんだけど。
「樹里さんとかどうしてるん?」
あ~あいつな、そこは言ってもいいよな。
「あいつ?・・・何もしない」
「え(笑)うそ??」
田中さんが口に手をあてて、笑いを堪える。
「ホンマホンマ。何もしない」
「割り切り系?」
「割り切ってはるなあ・・・・全部僕がしてるもん」
「料理だけじゃなく、他のことも?」
「うん、何もしない。そうやなあ、するとしたら・・・・食べた後の食器をシンクに持ってくることと、、、後はたまに洗濯物干したり入れたりはするなあ。けど洗濯物拾い集めて洗濯機に入れてスイッチオンするのも僕だし、掃除機も樹里は自分の部屋が汚れたり埃っぽかった時しかしないなあ。全体をするのは僕かなあ」
「え?樹里さんの衣類も洗ってるんですか?」
「うん、あいつ普通に部屋入って脱ぎ臭し持ってけって言うで」
「マジですか!兄が部屋に勝手に入ってくるとかありえへんし」
う・・・キモがられた。
「うちはそれしないと、脱ぎ臭し置いておかれる方が、後で『これも洗って~や』クレームが入るで」
文化の違いははっきりと伝える。
「うわーすごいカルチャーショック!」
「うちがオープンすぎるのかな(笑)」
「ああ、でもなんかいいねえ、そうやって頼りきれる兄がいてくれて。きっと樹里さんそれに甘えちゃってるんよきっと」
「あ、でも僕もめっちゃ手抜きやで。時間確保していかなあかんから、多分そこらの主婦よりももっと手抜きなことしてると思う」
「それは多分そこらの主婦も一緒のこと思っているでしょ(笑)」
「そうかなあ、お弁当とかホンマ前日のやつ、「えい、そりゃ、とう!」って感じで入れて、足りないスペースはレンジでチンしまくりやで」
「それで樹里さんのお弁当作ってあげてるんやろ、羨ましすぎ。うち兄は何もしないもん。そっかあ樹里さん甘えたさんの妹さんやったんやなあ」
ふと思いついたことがあった。
・・・・これをしたら喜ぶの、かな。よし。
樹里は僕の弁当は、あまりにいわゆる、むき出しすぎて、持っていかない。
つまり可愛らしさがないからだ。
じゃあおかずカップで分けて入れればいいんだろ。しかもちょっと可愛らしい目のおかずカップ買ってきて。キャラ弁とか絶対にできない。けど前日の残り物や、ちょっとしたものを作っておかずだけ入れてあげたらいいやん。
「田中さん、朝ってご飯は用意できる?」
「え?ご飯??」
「そうそう、ライスライス」
朝ごはんと間違われたらあかんので。
「ああ、ご飯は多分毎日家の冷蔵庫にあると思うけど、、、なんで?」
「僕、おかず作って持ってきてあげるよ」
僕はこの提案をしたときに、確実に僕は、田中さんが好きだ、と自覚した。
――――でも、樹里のことは??まさか二人ともを好きになっている??
もう一人の自分が語り掛ける。
そこは・・・・まだ分からない。過渡期なのかもしれない。
それよりやっぱり、さっきから・・・・誰か見ていなかったか?
1
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説

学園のマドンナの渡辺さんが、なぜか毎週予定を聞いてくる
まるせい
青春
高校に入学して暫く経った頃、ナンパされている少女を助けた相川。相手は入学早々に学園のマドンナと呼ばれている渡辺美沙だった。
それ以来、彼女は学校内でも声を掛けてくるようになり、なぜか毎週「週末の御予定は?」と聞いてくるようになる。
ある趣味を持つ相川は週末の度に出掛けるのだが……。
焦れ焦れと距離を詰めようとするヒロインとの青春ラブコメディ。ここに開幕
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

隣人の女性がDVされてたから助けてみたら、なぜかその人(年下の女子大生)と同棲することになった(なんで?)
チドリ正明@不労所得発売中!!
青春
マンションの隣の部屋から女性の悲鳴と男性の怒鳴り声が聞こえた。
主人公 時田宗利(ときたむねとし)の判断は早かった。迷わず訪問し時間を稼ぎ、確証が取れた段階で警察に通報。DV男を現行犯でとっちめることに成功した。
ちっぽけな勇気と小心者が持つ単なる親切心でやった宗利は日常に戻る。
しかし、しばらくして宗時は見覚えのある女性が部屋の前にしゃがみ込んでいる姿を発見した。
その女性はDVを受けていたあの時の隣人だった。
「頼れる人がいないんです……私と一緒に暮らしてくれませんか?」
これはDVから女性を守ったことで始まる新たな恋物語。

大好きな幼なじみが超イケメンの彼女になったので諦めたって話
家紋武範
青春
大好きな幼なじみの奈都(なつ)。
高校に入ったら告白してラブラブカップルになる予定だったのに、超イケメンのサッカー部の柊斗(シュート)の彼女になっちまった。
全く勝ち目がないこの恋。
潔く諦めることにした。
学園のアイドルに、俺の部屋のギャル地縛霊がちょっかいを出すから話がややこしくなる。
たかなしポン太
青春
【第1回ノベルピアWEB小説コンテスト中間選考通過作品】
『み、見えるの?』
「見えるかと言われると……ギリ見えない……」
『ふぇっ? ちょっ、ちょっと! どこ見てんのよ!』
◆◆◆
仏教系学園の高校に通う霊能者、尚也。
劣悪な環境での寮生活を1年間終えたあと、2年生から念願のアパート暮らしを始めることになった。
ところが入居予定のアパートの部屋に行ってみると……そこにはセーラー服を着たギャル地縛霊、りんが住み着いていた。
後悔の念が強すぎて、この世に魂が残ってしまったりん。
尚也はそんなりんを無事に成仏させるため、りんと共同生活をすることを決意する。
また新学期の学校では、尚也は学園のアイドルこと花宮琴葉と同じクラスで席も近くなった。
尚也は1年生の時、たまたま琴葉が困っていた時に助けてあげたことがあるのだが……
霊能者の尚也、ギャル地縛霊のりん、学園のアイドル琴葉。
3人とその仲間たちが繰り広げる、ちょっと不思議な日常。
愉快で甘くて、ちょっと切ない、ライトファンタジーなラブコメディー!
※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。


切り札の男
古野ジョン
青春
野球への未練から、毎日のようにバッティングセンターに通う高校一年生の久保雄大。
ある日、野球部のマネージャーだという滝川まなに野球部に入るよう頼まれる。
理由を聞くと、「三年の兄をプロ野球選手にするため、少しでも大会で勝ち上がりたい」のだという。
そんな簡単にプロ野球に入れるわけがない。そう思った久保は、つい彼女と口論してしまう。
その結果、「兄の球を打ってみろ」とけしかけられてしまった。
彼はその挑発に乗ってしまうが……
小説家になろう・カクヨム・ハーメルンにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる