【R15】【第一作目完結】最強の妹・樹里の愛が僕に凄すぎる件【第二作目連載中】

木村 サイダー

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第一巻

★トークのハードルは無くなりつつある。

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メッセージアプリで予定の確認はしていた。
<今日も一緒に帰ろうか?>
田中<いいよ、ぜひ!>
お互い休み時間に、声をかけれる距離にいるのに、ちょっと手を伸ばしたら、触れれる距離にいてるのに、

アプリで会話する。

<じゃあ、また僕時間ずらすために、ブラっとしてから教室に戻ってくるわ>
田中<うん、気を遣ってくれてありがとう。よろしく(二コリマーク)>

まるで秘め事。昔で言う所の「あいびき」をしている気分だ。
ちょっと淫靡な気分になる。隠れて付き合っているカップルって、こういう楽しい「秘め事」をたくさんしているんだろうなあ。

そして僕は、今、ぶらっと校庭を一周を終えて、
教室に入る。
田中さんは、僕に気づき、自分の席に座ったままこちらに笑顔で手を振ってくれる。

この時間帯になれば昇降口ではほとんど誰とも会わない。一斉に帰るホームルーム後と、部活後に帰るクラスメイト達の、ちょうど間の時間。
靴箱で各々の革靴に履き替え、いざ共に帰らん。
外に出れば、まだちょっと早いんじゃない?というぐらいの白く輝く、まるで夏のような日差しが僕らに降り注ぐ。帰りは傾斜し出しているとはいえ、なんのその。まだまだこれからが最強西日の本番だぜと言いたそうに熱量をせっせと送ってくれる。
風は真夏のそれとは違い、癒しかな。
新緑の香りをどこからともなく含み、親切に熱を少しだけ奪って去って行ってくれる。

話題は少し違うことで始まった。

仲道が鬱陶しいということだ。まああれがウザくない人はいないだろう。
特に、田中さんや江藤さんの扱いは、ちょっと人格否定、存在否定に近い時がある。
かといって僕が注意するとなれば「ハードル」が出現する。
『なんで注意するの?』だ。
そして『おまえらできてんちゃうん?』とくる。
いくつもハードルを飛び越えて、やっと注意が効果的になるんだろうなあ。
カーストの高いものからすれば一撃で納まるものを。。。
そのあたりは田中さんも分かっているから幸い、なんとかしてよ、とは言ってこなかった。

校門を出て左カーブの坂道を下るところあたりから、
すぐに切り替わった。

「樹里さんとは、、、なんか、友達なん?」

かなり言いにくそうに質問を投げかけてきたが、僕はあっさりこう返したことで、田中さんの気持ちも軽くしたように思った。
「いや、兄妹やで」
もし彼女やでって言ったらどんな反応をしていたんだろう、とか、やらなかったイタズラに思いを馳せてみる。
馳せるまでもなく「嘘やろ?もうええって」と真顔で言われてしまいそうなので止めた。
「うわーっ、え?兄妹なん?妹さんおるって、あの人が妹さんやったん?!」
「そう、樹里は僕の妹やで」
はあーっと感嘆の声を漏らしたあとに、
「いや、あんな人が傍に居たら可愛いってもんじゃないでしょ、そこらの人らと段違いの人じゃない!その・・・・全然似てないよね」
僕は声に出して笑った。
――――うるせー!それは言うな!
「(苦笑)それはよく言われる」
認めはする。
「この学校に入ってきたときから断トツ有名やん。もう一人アイドル、もしくはスーパーモデルみたいな人いてるって。背は高いし、脚は長いし・・・・今日あれだけそばで見たのははじめてで、めちゃ脚見てしもうてん」
もう一人。そう。もう一人、樹里と同じ学年に抜群にキレイな人がいる。樹里の入学した年は男子たちから「当たり年」と言われている。多分、らんちゃんもかなり可愛い方だし、他にも多分万里崎さん・・・・その人が『亜子』と、樹里が下の名前で呼んでいる子だと思うけど、キレイなのと、ヤンキーで女子ながら暴れん坊でも有名。しかし何といってもツートップ。一人は樹里。そしてもう一人いるんだ。
空いてる右手を少し恥ずかしそうに口元に。

「きれいな長い脚が太ももの部分から見えててさ、あれは悩殺ものよ男子は」

うーむそうなのかなあ、、普通に家にあるのでなんとも言えん
まあでも、あれが他人だったなら、きっと・・・・

凍てつくほどに固まって、焼けつくほどに興奮するだろうな。

そのもう一人、有名な美人。髪の毛が金髪だが不良ではない。ハーフなんだそうで、樹里並みに背が高くてスラっとしているらしい。
正直僕はそんな高嶺の花には興味がなくて、名前も知らないんだ。多分僕らのところにあまり現れないクラス。それは隔離されたクラス『英数科』だと思う。ちょっと校舎の位置が違うし、下駄箱や昇降口もなんとなく、壁で隔離されたようなところにあるんよね。僕ら普通科や特進科との接触を避けられているようにも見えるエリート集団だ。

まあそんなことはホントどうでもいいとして、
「でもあの脚で蹴られたら痛いよ(笑)」
話題をちょっと笑い方向に振ってみた。
「え?蹴ったりするんですか?」僕を見て目が線のように細くなり、口角が上がる
「それって、御堂君がなにか悪いことしたからちゃうん?」
「いや、違うし(笑)」
続けて「空手やってるからなあ」
田中さんがハッとなる。
「あ~何かそれ、聞いたことある。学校の噂話で。樹里さんなんか格闘技してるんやってね~」
「そうそう、普通に全国レベルの強さらしいよ。他にも女子ボクシングしていたときもあったよ、中学校の時」
「ボクシング??うわ~強そう・・・・」
「それもすごく強かったみたい」
「ええ~~~~マジで。凄いなあ、憧れるわ~~~~」
続けて、
「女子からもめちゃモテはるん知ってるよね?」
掌をこちらに見せて『そうよね?』のような仕草。
「うん、知ってるよ。昔から女子からも告られたとかよく言ってる」
「そうそう。私らあんまりそんな遊んでる子らとか知らんから、そこまで詳しく情報は入ってこないんやけど、ここに樹里さんが入ってもう十人ぐらい女子からも告白されてるみたいで・・・・」
四月に入り六月中で十人、ハイペースやなあ。

「なんかいきなり樹里さんの前でブラウス脱ぎだした女子もいてるらしいよ」

ブラウスを脱ぐ
ブラウスを脱ぐ
ブラウスを脱ぐ・・・・・
「・・・・・・・・」
「凄ない?」
「・・・・・・・・激しいなあ、女子の告白」
うん、エロいなあ、確実にエロいなあ。
そのシチュエーションて、よく昼ドラとかである、
「〇〇君、私を犯してほしいの!」
「だ、だめだよ、〇〇ちゃん!」
男子の静止も聞かずに、ブラウスのボタンをどんどん外し、
スカートも暴力的に脱いでしまう、とかいうあれか。。。

「・・・・御堂君?どうしたん?」
田中さんは真顔になっていた。
「ハッ!」
あかん、妄想していた。
どうやらちょっとの間、脳みそが何秒かだけ異世界転生したみたいだ。
「あ、いやいや、なんでもない。。。どんどん夏色の空やねえって、ちょっとぼーっとしただけ」
「えーなんで樹里さんの話してるのに。なんでそうなるん?」
ちょっとだけすねた田中さん。変な喋り方をしてこちらの様子を見てくる。
私の話を一瞬聞いてなかったのは何でですか?説明しなさい、と茶目っ気たっぷりで言いたそう。
――――エロいこと考えてたからです。
とは言えないのです。
「ええっと、、、告白とかさ、女子から女子であっても、なんか凄く青い季節やなあって思ってさ」
あ~納得といった感じの田中さん、今度は指を口元にあてた。
「うん、確かに、なんかあんまり大人になったら女子から女子の告白とかはないんかも。まあ、同性同士だから、あんまりね、、、」
田中さんも少し想像したのか、言葉に詰まりだした。
可愛いので、
「田中さんあるん?女性から告白されたこと」
「私??ないないない!(笑)」
笑いあう。
「じゃあ、御堂君は?」
「ああ、僕?もう五人ぐらい(笑)」
ハハハハと声をあげて笑って
「それ妹さんやん、それか御堂君も男子にモテモテやったんかあ(笑)」
「うん、てかやめて。普通にキモくなってきた(笑)」
また二人笑いあう。
「え?なに?田中さんBLネタ好きなん?」
「やめなさい!そこはダメ!(笑)」
BLの意味知ってるんやあ(笑)
まあ今どきは常識の範疇か。

なんかこうしていたら、
普通に会話している。
こないだまでは何話していいかすら分からないで居たのに。

今はこうして、笑いあえるポイントも、少し分かりあえた気がする。
たったふたつのきっかけで。
salvageと樹里だけで。
そこから派生して、いくつも話題はパチンコ玉のように飛び、だけど全部会話として成立していく。そうなればあっと言う間に駅。
また飽き足らずに、僕はこないだのファミレスに誘ったら、すんなりついてきてくれた。
もうハードルなんて、なかった。
それどころか、
「今日は私出すから~」
とまで言ってくれる。
さすがに悪いし、僕が誘っているわけだから『僕が出す』と言ったけど、収集つかず、結局割り勘の予定となった。
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