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第一巻

★意外と知られていない~実は樹里は涙脆いんです。

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朝六時頃、もう世間は明るくなってきてしまっていて、日曜日の朝日を迎えたも迎えたも・・・もうかなり上に上がっている頃、
エンディングロールが始まり、二人の愛の軌跡を奏でる旋律が流れはじめていた。
僕は押し切られる形で、攻略本片手に、樹里にエンディングまでエロゲーをしてもらった。
恋愛シミュレーションのエロゲー、特にエロゲーは、絵をみてもらってなんぼなので、それほど難しく作られているわけではない。昔のロールプレイングとかになると、クリアするのに一週間以上かかるし、同じ敵を何度も倒してレベルアップとかしないといけなかったが、エロゲーはだいたい一つのエンディングまで二日、三日ぐらいで一人攻略できたりする。
その代わりマルチエンディングなので、全員クリアしようとしたら何日もかかる。

最初にエロシーンになったとき、僕の邪念と眠さがカフェオレ状態になったのか?
樹里が千鶴ちゃんを僕から寝取って、百合の行為を目の前で見せつけている妄想が浮かんだんだ。もうエロすぎた!

それはさておき、

やっぱこのゲームのエンディングって凝っているよなあ。
幾多のすれ違いと、千鶴ちゃんの親からの反対と条件付きつけられて、
それらをクリアして・・・・

高校の卒業式で二人結ばれていく。

千鶴ちゃんを抱き寄せたPC内の僕は、いわゆる「お姫様だっこ」を同級生たちの前でして、

(モブ男子A)「おめでとう!」
(モブ男子B)「おめでとう!雅樹、おまえは凄いやつだ!」
(モブ女子A)「千鶴!幸せになってね!」
(モブ女子B)「これからが本番なんだからね!」

皆からの拍手と喝采に包まれている。千鶴ちゃんはこの上なく幸せそうな笑顔。そして反対していた千鶴の父親や母親も、
(父親)「フン、しょうがない」
(母親)「いつまでも片意地張ってないで、認めてあげましょう」
(父親)「・・・・そうだな。彼は僕らを超えて行った」
(母親)「千鶴と二人でね。素晴らしい夫婦じゃないですか」
(父親)「・・・・そうだな」
なんか横で見ていて、胸の奥がジーンとしてきていて・・・・ええ話やなあ
と、目頭を熱くしていたら、
スッ・・・・
樹里が立ち上がり、顔を見せずに反対のベッドの方に行き、僕に背を向け、左手は腰にあて、右手は、なにやらあてなくフラフラしてたら・・・・・

「グスン・・・・・・」
「えーーーーーーーーーーー??」

泣いてた。
そう、実は昔からだけど、知っていたけど・・・・

反撃のチャーンス!!
ここは猛攻撃やで!!
「泣いてる?泣いてる?泣いてる??」
「いや!ちゃうねんてちゃうねんて!」
こっち振り返ったら、目が真っ赤。
手はパーにして左右に振り「NO」のジェスチャーをする。
「ちょっと、眠たいから、、ヒック、、、変なとこに気持ち入ったんやてホンマ・・・」
目を擦る。
泣きじゃくりも出ている。

そう、樹里って案外、涙もろいのだ。
テレビでも、動物系の悲しいシーンが出てきたら普通に泣いている。意外と皆は知らない。

僕は「それでいいよ」という感じで、
「もうええから、これはこういう感動する作りなんだから」
そういって僕はティッシュを渡す。
目と鼻をふいて、
再び樹里が映像をみる。

ティッシュの使われ方が、今日まさかこんな清いことに使われるとか、想像もできなかった。

そして映像はかわり、引き続きエンディングロールに流れる愛の旋律が二番になっている。
その映像は、よく刑事ものの友情を描く映画とかで使われた、
背景が黒抜きのところに、キャストが流れて、
一部くりぬかれた様に、セピア色で、
あ、このシーンあったよなあってシーンの数々が、回想のように流れていく。
「グスン・・・・・」
よしよよしよしよし・・・・
「あかんて、これ、くるって・・・・ホンマ・・・・ズズッ」
また涙ぐんでしまい、ベッドの横まで戻って、クールダウンしている。
「ハーーーフーーーハーーーフーーー」
呼吸を大きくしている。そして、
「雅樹とか、千鶴とか、、、、ええやつらやなあ、、、、よう頑張ったわ、、、ヒック」
チューしてからの苦難が結構あったもんね。
今や!そうそう、樹里のメンタルを揺さぶって泣かせてしまえ!恋愛エロゲーは感動ものなんだと市民権をゲットしよう!!
「あの、千鶴のお父さんに見つかって、揉めて、、、そのあと二人こっそり会ってて、また見つかって、あのあたりからの千鶴の、父親に対する意思の表れがよかったよな~」
僕の感想に「うんうん」と樹里が頷き、
「さっき、回想シーンが走馬灯のように流れていったやろ、、、あの中に、そのあと勉強が、千鶴のほうができるようになってきて。逆に、雅樹のほうが実力テストで落ち込んで、逃げ出すシーンあったやんか。それを千鶴が追いかけて行って、浜辺で、泣きながら捕まえて、、、また二人、戻るシーンがあったやんかあ・・・・グズッ」

あ、樹里がまた泣きそう・・・・
「千鶴が、、、最後はしっかりして強くなれたんやなあって・・・・・それ思い出してな、ヒック。。。ハア~もう、、、えらいことですわ」
またティッシュをとり、目と鼻を拭く。

「どう?今のエロゲーのすごさは?」
ちょっと僕は涙腺崩壊した樹里に、勝ち誇ってみた。


――――エッチシーンが長いし、多い。
――――主人公の思わせぶりな会話に対してそんな風に都合よく反応しない
――――こんなに丁寧に言葉話す女なんておらん
――――女がおしとやか過ぎ。ホンマのんはもっとうるさいぞ

と文句タラタラ。
素直じゃないね。
分からないこともないけど。
けど、
ストーリーはドラマか映画を見ているようなしっかりしたもので驚いた。で、それを自分がプレイしているなら、より主人公に近いところで感じれるので、入り込み感が半端なかった。音楽もどことなく、悲しげかつ儚げで、いつか主人公の恋が終わるんじゃないかという不安をエンディングの手前までかきたてられた。
エロさえもう少し抑えてくれれば、ちょっと個人的にやってみてもいいかなって思う。
という評価を樹里からいただきました!
これはひょっとして、ひょっとして、、、
僕は勝ったんじゃね?
勝ったんじゃね?
エロゲーは市民権を得たんじゃね?

でもエロすぎるから、ダメらしい。
なんでだよ??ったく。
結局、樹里が満足し、特に僕も樹里も早朝の予定がなかったから、それぞれの部屋で寝たいだけ寝た。
二人とも起きてきたのはお昼過ぎ。
僕が作ったベーコンエッグと、食パンに牛乳でお昼をすました時にそんな話をした。

あと、樹里はこうも言った
『(男もだけど)女もあざといで。どんな子であってもある程度は。あにぃの思うよりずっと』『なんでも教えてあげて、協力してあげるのは、あくまで『きっかけ』を作っているだけ。それを恩に着せて、自分のこと好きになる、は違う。そういうのが好きな子がハマるだけで、イコールではなく、また別物だから』
なんか最後のは、、、僕はちょっと分かんなかった。
「導く」ってことは、その子は僕についてくるわけだろ?
恩に着せるなんて、そんな気はないけど。
それって好きってことになるんじゃないのかな?
うまく表現できないけど・・・・というかできないから、そこは樹里とは話さなかった。
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