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本題に戻り、作戦会議
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ああ、そうそう・・・・
話題がズレそうだった。
「せやけど、本題は何も解決せんかった」
樹里が、思い出の中から、顔を上げる。
いつの間にか、いつもの姿勢の悪い、片足を椅子の上に乗せた格好で座っている。
「おう、そうやそうや・・・・」
と樹里がパチンと手を鳴らしたが、
「本題ってなんやっけ?」
「・・・・・・・・・・」
樹里よ、おまえは僕が何のためにこのことをやっているか、分かっていないのか?
てか、この話をしたときには、既に本来の目的である「田中さんの悩みに寄り添い、解決を目指す」ということが、僕の頭と心、潜在意識下で、違う形に変化していたように思う。
「写真ある?」
あるよ。
僕はスマホを部屋から取ってきた。僕は樹里のように学校から帰ればこないだのようにメッセージアプリ待ちをする必要もないので、手元には不要である。なので部屋から持ってこないといけない。
今どきの集合写真や学校行事の写真は、全てウェブ上だ。
その中でパスワードがかかっていて、同学年の人間だけが教えられているパスワードを入力して、サイトにアクセスする。で、欲しい写真は有料で買うのだ。
ただ文化祭や卒業式のアルバムなどは未だに紙でやっていて、
僕らが一年のときの文化祭の写真なんかは、学校のリアルの掲示板に張り出されていて、
一枚〇〇円とかで売られていた。
ちなみに僕なんぞはどこにも写ってはいなかった。
写っていても、なんかもう、、、陽キャの人らが「イェーイ」の後ろで背後霊状態だ。
アクセス完了。
とりあえず二年成りたてのときのクラスの集合写真を出した。
一年は僕は普通科だから、二年と面子が違う。
「その真ん中の段の右から五番目の子」
樹里に渡して見せる。
映像が小さいので、樹里の細い指先が画面両サイドに広がる。
じっと見る。。。
「プッ・・・・」
なぜか樹里が噴き出しはじめた。
鋭かった目線から緊張感が消え、口角が上がると同時に、目が線になる
「え?何笑ってんよ」
まさか田中さんのことで笑っているのか?
だったらちょっと酷いぞ!
「なんで、あんたこん時、前歯片方だけ見えてんよ・・・・」
前歯・・・・・?
うん・・・・・?
「僕の写真じゃねぇか!」
樹里が大笑いする
「樹里、どこ見とんねん・・・・」
「奇跡的な変顔やで、それあにぃ、、、めっちゃおもろいなあ、マジうけるわ」
なぜ唇から片方の前歯だけが見えているという、不思議な筋肉の動きに、しかも目線が一人だけなぜか違うという。目線は確かカメラがどこかわからなかったので一瞬探したときに撮られたんだ!
「待ち受けにしていい?」
「すな!」
「ファンなるわあたし」
「ならんでいい!」
また笑う。
「この子やこの子」
話題元に戻したい!僕が拡大してあげた。
いじめられて、突っ込まれてしまうところを探しているのだろうか。穴が開くほど樹里は田中さんの姿を見ている。そして僕も思う。
なぜオッペケペーなんだろう。。。
「・・・・・へぇ、悪くないどこから、ええやん」
「そうやろ!」
僕の目に狂いはなかった!
「顎の形とても格好良いし、鼻筋も通っているし、目も、写真で見ても大きくてきれい・・・・」
続けて、「なんでやろなあ、髪型とかかなあ」
確かに髪は、この写真で見ても、ごわっと感がある。
それに古代人かよ?と言いたくなるような?四点くくり。
おさげとも言えない変なくくり方で、ボワボワ頭。。。
「あと、そばで見てみたらわかるけど、、、脂性っぽいねん、てか本人も脂性って言ってたし、なんとなく田中さんの場合は、顔色が良くないように見えるねん」
田中さんの顔色は、病気じゃないけど、いつもなんとなく・・・・艶の無い、浅黒いような、鈍い肌色なんだよな。
しかもプルンっていう感じではなく、樹里のようにシュッという感じでもなく、ガサガサ、という表現が正しいのかも。
「そんなとこちゃう?悪く言われるところって。だいたいはしょうもないことやで。後はそれでいてデビューして頑張ろうとした、黒歴史と」
「でもそんなんで、いじめられるかなあ?」
「あにぃが最初にいじめられたんて、デビューが原因やろ、だけどそれに対して難癖ついたんて、前言ってたやん」
「・・・・・すね毛が濃いから?」
「そう、、、ちょっとまた胃痙攣ならんといてな、大丈夫?」
「ああ、大丈夫大丈夫」
ロックなファッションで友達と会ったことがあった。
それは二年生の時に知り合った、何のこともない、普通のやつだった。
そいつに会う時、レザーパンツ履いていたけど、
靴下が短くて、靴も運動靴で、
その時にすね毛が濃いのを指摘された。
濃さというのは、今となってはそんな濃い部類には入らないけど、中学校二年生としては、僕はすね毛は濃い方だったように思う。
秋口にそんなことがあって、それがいつの間にか広がって、
それを陰で笑われていたようだ。
きっかけはそこからだったように思う。
「そういうクソしょーもないNGや、逆ギャップから、いじめって始まること、あるから」
樹里がいう。
「できると思われている人ができなかったら、通常の人の何倍も残念がられる。私何かとそう思われがちやし。そこでリアクションがマズいと、つまりハイエナみたいに人の欠点探しているようなやつからすると、『おいしいリアクションするやつ』となってしまう。あにぃみたいな純粋な人は、あかんと思う」
透き通るような目線と顔立ちが、こちらを向く。
純粋・・・・あ、ども。
中二のロックな時だったら反抗してたかな。今でもちょっと照れくさいや。
「田中さんの場合もそうやと思うで。まずは外見の突っ込みどころを取り除いたら、だいぶんと変わってくるんちゃうかな」
心配なことがある。
「でも僕みたいに、外見だけを変えて中身変えないで、さっき言ったみたいに『リアクション芸?』も身に着けないで、それでいじめ過酷になったりせぇへんかなあ?それが心配やねん」
「でも、外見が原因でいじめられがちなんは、あにぃから聞いたら一目瞭然やん。それを取り除くだけやし。あにぃは外見が激しめになったやん。あれとは違うで」
うう・・・・そういえばそうかな。
「それにあにぃら特進科やろ。休憩中も勉強普通にしている猛者らやん、そんな女の子一人が雰囲気変わったぐらいで、一部しょーもない連中らが数日騒ぐだけやって。そんな中学生の時のアホどもみたいに、ずっとウジウジ騒がないって」
そう、、、そうかなあ。
僕もそうであってほしいと思う。
仲道とその周辺あたりは悪ふざけしそうだけど、
他は皆、一瞬注目して、あとはそこそこだと思う。
そうなれば「大きな期待」はできなくても、
「今ある原因」は取り除くことで、
小さなプラスではあるが、
マイナスにはならない。
「じゃあ、決定」
僕のスマホを机においた。
田中さんの外見を変えてみよう計画やな。
まああくまで、本人が乗り気になれば、だけどね。
「一緒に遊びに行こう!」
樹里が右手をあげて席を立ちあがった。
僕は、その樹里の勢いに、ものすごーい嫌な予感を覚えた。
目がらんらんとしてきている。
「・・・・・・・だ、誰と、誰?」
ああ、どうか神様、ビンゴではありませんように。。。
昔のゴールデンに放送されていた某お笑い番組のイメージが頭に浮かぶ・・・
そして前におられるキリスト?のようなどう見てもお笑い芸人に見える架空の存在に祈りを捧げる。架空のオーディエンスたちはクスクスと笑っている。
どうか、、、、どうかどうか、、、、
「決まってんじゃん、私とあにぃと、田中さんで」
ばつーーーーーー!
水ばっしゃーーーーん!
本当に頭の上からバケツひっくり返した水が降ってきたわけではない。
だがそういう気分ということだ。
ちょっと樹里神様、待ってくださいよ、僕あんなに懺悔したじゃないですか~
きっと周囲のオーディエンスは絶賛爆笑中。
「ムリムリムリムリムリムリ!絶対ムリ!」
現実に戻った。
僕は両手を左右に振って拒否ポーズをとるが、
「なんなん?その変なポーズ??」
樹里は手を叩いて笑う
「どこにどういう自信があって、そんなこと言えるねんなあ。そもそもこの話は僕と田中さんの間の内緒な話やで」
妹にバラしていたなんて知ったらきっと田中さんは傷つく。
「そこはうまいこと入る。だから楽しい遊びがええねん」
だからって、、、えーーーー??
「何して遊ぶの?そんな遊びあるー?」
「自信はあるって。アドバンテージはこちらにあるやん。それに私らの得意なことしたら一番楽しいやんか」
アドバンテージってなに?
どこを持って優位性?
「僕らの得意で一番楽しいことってなんよ?」
僕と樹里なら、共通の趣味はたくさんあれど、
田中さんが楽しいかなんて分からへんし。
――――何を考えているんだ?この凶悪強引ラブマシーンは??
樹里は満面の笑みを浮かべて、
「釣り~」
え?嘘やろ?
竿に大物がかかったときの「合わせ」のポーズをした。
「そんなん釣りとか絶対せーへんて」
すかさず、
「行けるって~、そんなの言ってみないと分からないやんかあ」
反撃を食らう。そりゃ言ってみないとわからんけどさあ。
「だいたいなあ、ご飯食べよう言って、それが軽食であれ、晩御飯であれ、ついてきてくれて、どうしたら変われるんか話し合ったんやろ?」
「…そ、そりゃ、そうだけど」
僕の反発の威勢が少し弱くなる。
「それがいけたんやったら、いけるって」
いや、だとしてもよ?
「釣りがあかんかったら、他すぐ考えたらええやん、ビリヤードでもボーリングでもいいし、飯だけでもいい」
「う、うーん…」
そんな機転利かないって僕は。
「飯やったら、駅前ショッピングモールの三階にある個室イタリアンでも行ったらええしなあ、今度やったら」
僕は小さくなって黙る。
――――そんなぶっ飛ばしたことして壊したくないんだよなあ。
せっかく楽しいカップルライフが向こうの方に見えてきてさ。
それなのに、ハードル高いこと言って、また遠のいていく・・・・
あー僕のエル・ドラドはどこへ行く~みたいなさ。
しかも釣りに誘えってちょっとマニアックすぎやせんか?
そのあとの代替案の提供は可能にしたとしても。
釣り一択でないにしても。
「だいたい私達が楽しまないと、打ち解けられないんやから。楽しさってのは、人に伝染させていくもんよ。ホッホッホ」
なんやその高笑い。。。
そして、なにやら一人で、シャドウフィッシングをして、エアーで合わせして、またリールを巻き上げている。
――――クソ、この僕のガラスのハートも知らないで・・・・
悔しかったから、
「多分、それ根掛かりしてるで」
「え、うそ、根掛かりなん、、、抜けへんわ。あ~切らなしゃーない。針飛んできたら怖い~~~」
と言いながら、糸を体に巻きつけていく仕草をする。
どうしても根掛かりしてとれないとき、特に糸が強いとき、ちょっとやそっと引っ張ったぐらいでは取れないんだ。だけど抜けたとき、ルアーなどについている針は、一目散に、こちらに向かって飛んでくる。なので、体に巻き付けて、引きちぎろうとするのだ。
それのエアー(説明長ッ!)
「って、何やらすねんな、縁起悪い」
素に戻る。ノリが良すぎるんだ。
こんなことエアーでする女子は、樹里しかいないのでは…
「だいたい楽しい時だから、人は心開くんやん。釣りしだしてもさ、結構釣り話とともに身の上話したりするやんか。あのときの空気感て、凄い話しやすいやん」
なにかを投げて放置する釣りなら尚更だが、案外手返しの忙しいルアー釣りや、サビキ釣りでも、樹里と釣りにいけば、ウダウダ話しながらやってる。
ましてやひと段落、落ち着いたとき、
水辺で景色でも見ながらゆっくりしていたら、
ある程度心許せる相手とならば、何となく本音トークしてみたい気持ちになったりする。
だけどなー
僕は・・・度胸が・・・
ハッ!!
次の瞬間、樹里の目が光ったかのようになり、はっきりしない僕の態度を他所に、まるで餌を見つけた魚のようにもの凄いスピードで瞬間的に樹里が動こうとした!
やばい!
スマホ!
ダッ!!
カルタ取りのように、間一髪
僕のほうが、この強引ラブマシーンより早く、スマホを抑え込み、取り上げた!
「あぶね、ホント…今僕のスマホで、なんかしようとしたやろ」
「いやだって、あにぃなかなか煮えきらんやん。私が代わりに連絡したろうかなって」
「結構です!」
絶対それやと思ったでホンマ。
「大丈夫やって言ってんのにー」
悔しかったのか、肘から上の両手を肩ぐらいでグーにして、ピコンピコン飛んでいる。
あーおっぱいが・・・・ブルンブルン揺れる揺れる。
そっちの方が気になるわ。
いざというときの男の俊敏さ、舐めるなよ…スマホとられて勝手に連絡とかヤバすぎるやろって。
「もう…僕勉強してくる。またあとで片付けるから、置いておいて」
とりあえず一旦退散せねば…
樹里は、急に落ち着きを払って椅子に腰掛け…
「てか、学校一緒やねんから、、、」
え?
僕はドアを開ける途中で手を止めた。
「週明け、あたしから田中さん誘うわ(笑)」
な、な、な、なんやて~~~~~~
「顔はもう、覚えたしなあ・・・・」
まるで不良グループのボスが、締める獲物を定めたかのような雰囲気と言い方だ。。。。
しまった、これは、、、マズすぎる~~~~!
話題がズレそうだった。
「せやけど、本題は何も解決せんかった」
樹里が、思い出の中から、顔を上げる。
いつの間にか、いつもの姿勢の悪い、片足を椅子の上に乗せた格好で座っている。
「おう、そうやそうや・・・・」
と樹里がパチンと手を鳴らしたが、
「本題ってなんやっけ?」
「・・・・・・・・・・」
樹里よ、おまえは僕が何のためにこのことをやっているか、分かっていないのか?
てか、この話をしたときには、既に本来の目的である「田中さんの悩みに寄り添い、解決を目指す」ということが、僕の頭と心、潜在意識下で、違う形に変化していたように思う。
「写真ある?」
あるよ。
僕はスマホを部屋から取ってきた。僕は樹里のように学校から帰ればこないだのようにメッセージアプリ待ちをする必要もないので、手元には不要である。なので部屋から持ってこないといけない。
今どきの集合写真や学校行事の写真は、全てウェブ上だ。
その中でパスワードがかかっていて、同学年の人間だけが教えられているパスワードを入力して、サイトにアクセスする。で、欲しい写真は有料で買うのだ。
ただ文化祭や卒業式のアルバムなどは未だに紙でやっていて、
僕らが一年のときの文化祭の写真なんかは、学校のリアルの掲示板に張り出されていて、
一枚〇〇円とかで売られていた。
ちなみに僕なんぞはどこにも写ってはいなかった。
写っていても、なんかもう、、、陽キャの人らが「イェーイ」の後ろで背後霊状態だ。
アクセス完了。
とりあえず二年成りたてのときのクラスの集合写真を出した。
一年は僕は普通科だから、二年と面子が違う。
「その真ん中の段の右から五番目の子」
樹里に渡して見せる。
映像が小さいので、樹里の細い指先が画面両サイドに広がる。
じっと見る。。。
「プッ・・・・」
なぜか樹里が噴き出しはじめた。
鋭かった目線から緊張感が消え、口角が上がると同時に、目が線になる
「え?何笑ってんよ」
まさか田中さんのことで笑っているのか?
だったらちょっと酷いぞ!
「なんで、あんたこん時、前歯片方だけ見えてんよ・・・・」
前歯・・・・・?
うん・・・・・?
「僕の写真じゃねぇか!」
樹里が大笑いする
「樹里、どこ見とんねん・・・・」
「奇跡的な変顔やで、それあにぃ、、、めっちゃおもろいなあ、マジうけるわ」
なぜ唇から片方の前歯だけが見えているという、不思議な筋肉の動きに、しかも目線が一人だけなぜか違うという。目線は確かカメラがどこかわからなかったので一瞬探したときに撮られたんだ!
「待ち受けにしていい?」
「すな!」
「ファンなるわあたし」
「ならんでいい!」
また笑う。
「この子やこの子」
話題元に戻したい!僕が拡大してあげた。
いじめられて、突っ込まれてしまうところを探しているのだろうか。穴が開くほど樹里は田中さんの姿を見ている。そして僕も思う。
なぜオッペケペーなんだろう。。。
「・・・・・へぇ、悪くないどこから、ええやん」
「そうやろ!」
僕の目に狂いはなかった!
「顎の形とても格好良いし、鼻筋も通っているし、目も、写真で見ても大きくてきれい・・・・」
続けて、「なんでやろなあ、髪型とかかなあ」
確かに髪は、この写真で見ても、ごわっと感がある。
それに古代人かよ?と言いたくなるような?四点くくり。
おさげとも言えない変なくくり方で、ボワボワ頭。。。
「あと、そばで見てみたらわかるけど、、、脂性っぽいねん、てか本人も脂性って言ってたし、なんとなく田中さんの場合は、顔色が良くないように見えるねん」
田中さんの顔色は、病気じゃないけど、いつもなんとなく・・・・艶の無い、浅黒いような、鈍い肌色なんだよな。
しかもプルンっていう感じではなく、樹里のようにシュッという感じでもなく、ガサガサ、という表現が正しいのかも。
「そんなとこちゃう?悪く言われるところって。だいたいはしょうもないことやで。後はそれでいてデビューして頑張ろうとした、黒歴史と」
「でもそんなんで、いじめられるかなあ?」
「あにぃが最初にいじめられたんて、デビューが原因やろ、だけどそれに対して難癖ついたんて、前言ってたやん」
「・・・・・すね毛が濃いから?」
「そう、、、ちょっとまた胃痙攣ならんといてな、大丈夫?」
「ああ、大丈夫大丈夫」
ロックなファッションで友達と会ったことがあった。
それは二年生の時に知り合った、何のこともない、普通のやつだった。
そいつに会う時、レザーパンツ履いていたけど、
靴下が短くて、靴も運動靴で、
その時にすね毛が濃いのを指摘された。
濃さというのは、今となってはそんな濃い部類には入らないけど、中学校二年生としては、僕はすね毛は濃い方だったように思う。
秋口にそんなことがあって、それがいつの間にか広がって、
それを陰で笑われていたようだ。
きっかけはそこからだったように思う。
「そういうクソしょーもないNGや、逆ギャップから、いじめって始まること、あるから」
樹里がいう。
「できると思われている人ができなかったら、通常の人の何倍も残念がられる。私何かとそう思われがちやし。そこでリアクションがマズいと、つまりハイエナみたいに人の欠点探しているようなやつからすると、『おいしいリアクションするやつ』となってしまう。あにぃみたいな純粋な人は、あかんと思う」
透き通るような目線と顔立ちが、こちらを向く。
純粋・・・・あ、ども。
中二のロックな時だったら反抗してたかな。今でもちょっと照れくさいや。
「田中さんの場合もそうやと思うで。まずは外見の突っ込みどころを取り除いたら、だいぶんと変わってくるんちゃうかな」
心配なことがある。
「でも僕みたいに、外見だけを変えて中身変えないで、さっき言ったみたいに『リアクション芸?』も身に着けないで、それでいじめ過酷になったりせぇへんかなあ?それが心配やねん」
「でも、外見が原因でいじめられがちなんは、あにぃから聞いたら一目瞭然やん。それを取り除くだけやし。あにぃは外見が激しめになったやん。あれとは違うで」
うう・・・・そういえばそうかな。
「それにあにぃら特進科やろ。休憩中も勉強普通にしている猛者らやん、そんな女の子一人が雰囲気変わったぐらいで、一部しょーもない連中らが数日騒ぐだけやって。そんな中学生の時のアホどもみたいに、ずっとウジウジ騒がないって」
そう、、、そうかなあ。
僕もそうであってほしいと思う。
仲道とその周辺あたりは悪ふざけしそうだけど、
他は皆、一瞬注目して、あとはそこそこだと思う。
そうなれば「大きな期待」はできなくても、
「今ある原因」は取り除くことで、
小さなプラスではあるが、
マイナスにはならない。
「じゃあ、決定」
僕のスマホを机においた。
田中さんの外見を変えてみよう計画やな。
まああくまで、本人が乗り気になれば、だけどね。
「一緒に遊びに行こう!」
樹里が右手をあげて席を立ちあがった。
僕は、その樹里の勢いに、ものすごーい嫌な予感を覚えた。
目がらんらんとしてきている。
「・・・・・・・だ、誰と、誰?」
ああ、どうか神様、ビンゴではありませんように。。。
昔のゴールデンに放送されていた某お笑い番組のイメージが頭に浮かぶ・・・
そして前におられるキリスト?のようなどう見てもお笑い芸人に見える架空の存在に祈りを捧げる。架空のオーディエンスたちはクスクスと笑っている。
どうか、、、、どうかどうか、、、、
「決まってんじゃん、私とあにぃと、田中さんで」
ばつーーーーーー!
水ばっしゃーーーーん!
本当に頭の上からバケツひっくり返した水が降ってきたわけではない。
だがそういう気分ということだ。
ちょっと樹里神様、待ってくださいよ、僕あんなに懺悔したじゃないですか~
きっと周囲のオーディエンスは絶賛爆笑中。
「ムリムリムリムリムリムリ!絶対ムリ!」
現実に戻った。
僕は両手を左右に振って拒否ポーズをとるが、
「なんなん?その変なポーズ??」
樹里は手を叩いて笑う
「どこにどういう自信があって、そんなこと言えるねんなあ。そもそもこの話は僕と田中さんの間の内緒な話やで」
妹にバラしていたなんて知ったらきっと田中さんは傷つく。
「そこはうまいこと入る。だから楽しい遊びがええねん」
だからって、、、えーーーー??
「何して遊ぶの?そんな遊びあるー?」
「自信はあるって。アドバンテージはこちらにあるやん。それに私らの得意なことしたら一番楽しいやんか」
アドバンテージってなに?
どこを持って優位性?
「僕らの得意で一番楽しいことってなんよ?」
僕と樹里なら、共通の趣味はたくさんあれど、
田中さんが楽しいかなんて分からへんし。
――――何を考えているんだ?この凶悪強引ラブマシーンは??
樹里は満面の笑みを浮かべて、
「釣り~」
え?嘘やろ?
竿に大物がかかったときの「合わせ」のポーズをした。
「そんなん釣りとか絶対せーへんて」
すかさず、
「行けるって~、そんなの言ってみないと分からないやんかあ」
反撃を食らう。そりゃ言ってみないとわからんけどさあ。
「だいたいなあ、ご飯食べよう言って、それが軽食であれ、晩御飯であれ、ついてきてくれて、どうしたら変われるんか話し合ったんやろ?」
「…そ、そりゃ、そうだけど」
僕の反発の威勢が少し弱くなる。
「それがいけたんやったら、いけるって」
いや、だとしてもよ?
「釣りがあかんかったら、他すぐ考えたらええやん、ビリヤードでもボーリングでもいいし、飯だけでもいい」
「う、うーん…」
そんな機転利かないって僕は。
「飯やったら、駅前ショッピングモールの三階にある個室イタリアンでも行ったらええしなあ、今度やったら」
僕は小さくなって黙る。
――――そんなぶっ飛ばしたことして壊したくないんだよなあ。
せっかく楽しいカップルライフが向こうの方に見えてきてさ。
それなのに、ハードル高いこと言って、また遠のいていく・・・・
あー僕のエル・ドラドはどこへ行く~みたいなさ。
しかも釣りに誘えってちょっとマニアックすぎやせんか?
そのあとの代替案の提供は可能にしたとしても。
釣り一択でないにしても。
「だいたい私達が楽しまないと、打ち解けられないんやから。楽しさってのは、人に伝染させていくもんよ。ホッホッホ」
なんやその高笑い。。。
そして、なにやら一人で、シャドウフィッシングをして、エアーで合わせして、またリールを巻き上げている。
――――クソ、この僕のガラスのハートも知らないで・・・・
悔しかったから、
「多分、それ根掛かりしてるで」
「え、うそ、根掛かりなん、、、抜けへんわ。あ~切らなしゃーない。針飛んできたら怖い~~~」
と言いながら、糸を体に巻きつけていく仕草をする。
どうしても根掛かりしてとれないとき、特に糸が強いとき、ちょっとやそっと引っ張ったぐらいでは取れないんだ。だけど抜けたとき、ルアーなどについている針は、一目散に、こちらに向かって飛んでくる。なので、体に巻き付けて、引きちぎろうとするのだ。
それのエアー(説明長ッ!)
「って、何やらすねんな、縁起悪い」
素に戻る。ノリが良すぎるんだ。
こんなことエアーでする女子は、樹里しかいないのでは…
「だいたい楽しい時だから、人は心開くんやん。釣りしだしてもさ、結構釣り話とともに身の上話したりするやんか。あのときの空気感て、凄い話しやすいやん」
なにかを投げて放置する釣りなら尚更だが、案外手返しの忙しいルアー釣りや、サビキ釣りでも、樹里と釣りにいけば、ウダウダ話しながらやってる。
ましてやひと段落、落ち着いたとき、
水辺で景色でも見ながらゆっくりしていたら、
ある程度心許せる相手とならば、何となく本音トークしてみたい気持ちになったりする。
だけどなー
僕は・・・度胸が・・・
ハッ!!
次の瞬間、樹里の目が光ったかのようになり、はっきりしない僕の態度を他所に、まるで餌を見つけた魚のようにもの凄いスピードで瞬間的に樹里が動こうとした!
やばい!
スマホ!
ダッ!!
カルタ取りのように、間一髪
僕のほうが、この強引ラブマシーンより早く、スマホを抑え込み、取り上げた!
「あぶね、ホント…今僕のスマホで、なんかしようとしたやろ」
「いやだって、あにぃなかなか煮えきらんやん。私が代わりに連絡したろうかなって」
「結構です!」
絶対それやと思ったでホンマ。
「大丈夫やって言ってんのにー」
悔しかったのか、肘から上の両手を肩ぐらいでグーにして、ピコンピコン飛んでいる。
あーおっぱいが・・・・ブルンブルン揺れる揺れる。
そっちの方が気になるわ。
いざというときの男の俊敏さ、舐めるなよ…スマホとられて勝手に連絡とかヤバすぎるやろって。
「もう…僕勉強してくる。またあとで片付けるから、置いておいて」
とりあえず一旦退散せねば…
樹里は、急に落ち着きを払って椅子に腰掛け…
「てか、学校一緒やねんから、、、」
え?
僕はドアを開ける途中で手を止めた。
「週明け、あたしから田中さん誘うわ(笑)」
な、な、な、なんやて~~~~~~
「顔はもう、覚えたしなあ・・・・」
まるで不良グループのボスが、締める獲物を定めたかのような雰囲気と言い方だ。。。。
しまった、これは、、、マズすぎる~~~~!
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幼馴染である百合(ゆり)と仲が良すぎるせいで付き合ってるか気になるらしい。
堀川百合(ほりかわゆり)。美人で成績優秀、運動完璧だけど朝が弱くてゲーム好きな天才肌の女の子。
猫みたいに気まぐれだけど優しい一面もあるそんな女の子。
百合とはゲームや面白いことが好きなところが馬が合って仲の良い関係を続けている。
そんな百合は今年は隣のクラス。俺と付き合ってるのかよく勘ぐられるらしい。
男女が仲良くしてるからすぐ付き合ってるだの何だの勘ぐってくるのは困る。
とはいえ。百合は異性としても魅力的なわけで付き合ってみたいという気持ちもある。
そんなことを悩んでいたある日の下校途中。百合から
「修二は私と恋人になりたい?」
なんて聞かれた。考えた末の言葉らしい。
百合としても満更じゃないのなら恋人になるのを躊躇する理由もない。
「なれたらいいと思ってる」
少し曖昧な返事とともに恋人になった俺たち。
食べさせあいをしたり、キスやその先もしてみたり。
恋人になった後は今までよりもっと楽しい毎日。
そんな俺達は大学に入る時に籍を入れて学生夫婦としての生活も開始。
夜一緒に寝たり、一緒に大学の講義を受けたり、新婚旅行に行ったりと
新婚生活も満喫中。
これは俺と百合が恋人としてイチャイチャしたり、
新婚生活を楽しんだりする、甘くてほのぼのとする日常のお話。
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