36 / 208
第一巻
★優しゅうしたったら(優しくしてあげたら)それでいい?それだけ?と、樹里は親を嫌っている。
しおりを挟む
実家に帰って母親に久しぶりに挨拶。父親は接待でゴルフらしい。
僕は自分の部屋の、棚の隅においてある、非売品のあのバンドのDVDを容易に見つけ、
ダイニングで久々に母と世間話や近況報告をする。
母親は樹里がなにか悪いことをしていないか、危ないことをしていないかいつも心配している。
まあしているんだけど。
言わないでやるけど。。。
とりあえず五体満足に生きていて、プラスワン(子供のこと)ができたりもしていないので、ご安心をといったところだ。できる行為は多分昨晩から朝にかけて、複数の男子達としていたかもしれないけど。
細部まで心配すれば、あんなやつといたら精神が崩壊する。
「ところで、雅樹は最近お付き合いする女の子とかはできたの?」
年に一度か二度ぐらいこういう質問が中学校二年ぐらいからある。答えはいつも同じで、その答えに母親は満足そうにいつも同じことを言う。
「いないよ。できないんだ」
「あらそう、これからよ」
多分もういいんだと思う。キッチンで最初の言葉を聞けば既に冷蔵庫の整理をしながらの会話になった。
「もう結構付き合ったりしてる子いるぜ」
「今はそんな時期じゃないわ。やらなきゃいけないことは勉強がまず第一。まあ、今の雅樹はよく分かってくれてるから言わないわ。女の子の方はそのうちいい子が現れます」
だいたいこれ。たまに僕が嫌味を返す。
「そのうちっていつ?」
答えも決まっているから期待はしない。
「それは分からないけど、雅樹ならすぐにほいほい現れるわ。逆に今日はあの女、明日はこの女、みたいな男にはならないでね(笑)」
母親からしたら僕はそっちのほうにヤバいように見えるらしい。どこの母親でも男の子に対してはそうなのかなあ・・・まあ焦ってもできないものはできないんだから、母親の言うように、やることやってそのうちを待つしかないんだけどね。
そうしていると、父親も帰ってきてまたそれはそれで話し込む。するとたまたまなのか父親も彼女できたか?の話になった。やっぱり父親らの時代もそういうことを意識する年頃だったのかな?勿論答えはNOだ。
ちょうど母親が僕らに冷たい麦茶と家にあった和菓子を出してくれた。鮎のお菓子だ。内心『ひさしぶり!うまそー』と思いながら冷たい麦茶を口に含む。
「女はな、優しゅう(やさしゅう)したったらええねん」
「優しゅう?」優しく、と同じ意味。方言が混じっている。
「おん、とにかく優しゅう。そしたらついてくるわ」
「広樹さんそんな私に優しかったっけ?」
冷茶を飲む父親に母親からの激しい突っ込みが入り、少し口に含んでいたものを吐き出した。
―――優しゅう・・・かあ。じゃあ僕の今の行動は正解、だな。
冗談交じりに色んな話を長々としていると、もう晩御飯の準備の時間ぐらいになってくる。
「樹里もこっちに呼んで、今日はこっちで皆で外食でもしようよ」
母親が提案してくれる。ありがたい。だが・・・・どうだろうなあ。
樹里に電話する。
が、樹里の答えは猛烈にNO!
逆に、
『あにぃ!帰ってきいや!二日連続はあかんでしょーが!』
やって。おまえなんて今朝朝帰りやんか。
僕は田中さんと晩御飯(しかも軽食)をして、話して普通にゴールデンタイムの番組始まるときには、十分おったっちゅうにアホ!
このように樹里はあまり両親と居たがらない。
確かに、この道のりを飯食うだけ(泊めてといえば泊めてくれるが)で出てくるのは、前記の説明でも分かるように、面倒くさすぎる。
親に電話変わったが、やはり樹里の意見は変わらず。
むしろけんもほろろに父親も母親もやられたみたい。母親に至っては最後は若干言い争い。何を言って言われてしているか分からないけど、
「人聞きの悪いこと言わないでちょうだい。息子に『ご飯食べて帰り』っていうことの何がたぶらかしなんよ??」
とにかく僕がここに長居することは平和ではないということだ。
何もごちそうにならずに帰ることにした。
僕はこんなに早くに帰還命令が樹里から下る。
何か不公平な気がする。そう思わない?
そこまで気にする必要はないこと?
どうなんやろう・・・・
と一人思いつつ、いつの間にか忘れて電車の中にいる。
このお気楽さは、『優しさ』というのだろうか。
僕は自分の部屋の、棚の隅においてある、非売品のあのバンドのDVDを容易に見つけ、
ダイニングで久々に母と世間話や近況報告をする。
母親は樹里がなにか悪いことをしていないか、危ないことをしていないかいつも心配している。
まあしているんだけど。
言わないでやるけど。。。
とりあえず五体満足に生きていて、プラスワン(子供のこと)ができたりもしていないので、ご安心をといったところだ。できる行為は多分昨晩から朝にかけて、複数の男子達としていたかもしれないけど。
細部まで心配すれば、あんなやつといたら精神が崩壊する。
「ところで、雅樹は最近お付き合いする女の子とかはできたの?」
年に一度か二度ぐらいこういう質問が中学校二年ぐらいからある。答えはいつも同じで、その答えに母親は満足そうにいつも同じことを言う。
「いないよ。できないんだ」
「あらそう、これからよ」
多分もういいんだと思う。キッチンで最初の言葉を聞けば既に冷蔵庫の整理をしながらの会話になった。
「もう結構付き合ったりしてる子いるぜ」
「今はそんな時期じゃないわ。やらなきゃいけないことは勉強がまず第一。まあ、今の雅樹はよく分かってくれてるから言わないわ。女の子の方はそのうちいい子が現れます」
だいたいこれ。たまに僕が嫌味を返す。
「そのうちっていつ?」
答えも決まっているから期待はしない。
「それは分からないけど、雅樹ならすぐにほいほい現れるわ。逆に今日はあの女、明日はこの女、みたいな男にはならないでね(笑)」
母親からしたら僕はそっちのほうにヤバいように見えるらしい。どこの母親でも男の子に対してはそうなのかなあ・・・まあ焦ってもできないものはできないんだから、母親の言うように、やることやってそのうちを待つしかないんだけどね。
そうしていると、父親も帰ってきてまたそれはそれで話し込む。するとたまたまなのか父親も彼女できたか?の話になった。やっぱり父親らの時代もそういうことを意識する年頃だったのかな?勿論答えはNOだ。
ちょうど母親が僕らに冷たい麦茶と家にあった和菓子を出してくれた。鮎のお菓子だ。内心『ひさしぶり!うまそー』と思いながら冷たい麦茶を口に含む。
「女はな、優しゅう(やさしゅう)したったらええねん」
「優しゅう?」優しく、と同じ意味。方言が混じっている。
「おん、とにかく優しゅう。そしたらついてくるわ」
「広樹さんそんな私に優しかったっけ?」
冷茶を飲む父親に母親からの激しい突っ込みが入り、少し口に含んでいたものを吐き出した。
―――優しゅう・・・かあ。じゃあ僕の今の行動は正解、だな。
冗談交じりに色んな話を長々としていると、もう晩御飯の準備の時間ぐらいになってくる。
「樹里もこっちに呼んで、今日はこっちで皆で外食でもしようよ」
母親が提案してくれる。ありがたい。だが・・・・どうだろうなあ。
樹里に電話する。
が、樹里の答えは猛烈にNO!
逆に、
『あにぃ!帰ってきいや!二日連続はあかんでしょーが!』
やって。おまえなんて今朝朝帰りやんか。
僕は田中さんと晩御飯(しかも軽食)をして、話して普通にゴールデンタイムの番組始まるときには、十分おったっちゅうにアホ!
このように樹里はあまり両親と居たがらない。
確かに、この道のりを飯食うだけ(泊めてといえば泊めてくれるが)で出てくるのは、前記の説明でも分かるように、面倒くさすぎる。
親に電話変わったが、やはり樹里の意見は変わらず。
むしろけんもほろろに父親も母親もやられたみたい。母親に至っては最後は若干言い争い。何を言って言われてしているか分からないけど、
「人聞きの悪いこと言わないでちょうだい。息子に『ご飯食べて帰り』っていうことの何がたぶらかしなんよ??」
とにかく僕がここに長居することは平和ではないということだ。
何もごちそうにならずに帰ることにした。
僕はこんなに早くに帰還命令が樹里から下る。
何か不公平な気がする。そう思わない?
そこまで気にする必要はないこと?
どうなんやろう・・・・
と一人思いつつ、いつの間にか忘れて電車の中にいる。
このお気楽さは、『優しさ』というのだろうか。
2
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
如月さんは なびかない。~片想い中のクラスで一番の美少女から、急に何故か告白された件~
八木崎(やぎさき)
恋愛
「ねぇ……私と、付き合って」
ある日、クラスで一番可愛い女子生徒である如月心奏に唐突に告白をされ、彼女と付き合う事になった同じクラスの平凡な高校生男子、立花蓮。
蓮は初めて出来た彼女の存在に浮かれる―――なんて事は無く、心奏から思いも寄らない頼み事をされて、それを受ける事になるのであった。
これは不器用で未熟な2人が成長をしていく物語である。彼ら彼女らの歩む物語を是非ともご覧ください。
一緒にいたい、でも近づきたくない―――臆病で内向的な少年と、偏屈で変わり者な少女との恋愛模様を描く、そんな青春物語です。

会社の上司の妻との禁断の関係に溺れた男の物語
六角
恋愛
日本の大都市で働くサラリーマンが、偶然出会った上司の妻に一目惚れしてしまう。彼女に強く引き寄せられるように、彼女との禁断の関係に溺れていく。しかし、会社に知られてしまい、別れを余儀なくされる。彼女との別れに苦しみ、彼女を忘れることができずにいる。彼女との関係は、運命的なものであり、彼女との愛は一生忘れることができない。
キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。
たかなしポン太
青春
僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。
助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。
でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。
「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」
「ちょっと、確認しなくていいですから!」
「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」
「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」
天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。
異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー!
※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。
※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。


大好きな幼なじみが超イケメンの彼女になったので諦めたって話
家紋武範
青春
大好きな幼なじみの奈都(なつ)。
高校に入ったら告白してラブラブカップルになる予定だったのに、超イケメンのサッカー部の柊斗(シュート)の彼女になっちまった。
全く勝ち目がないこの恋。
潔く諦めることにした。
ヤマネ姫の幸福論
ふくろう
青春
秋の長野行き中央本線、特急あずさの座席に座る一組の男女。
一見、恋人同士に見えるが、これが最初で最後の二人の旅行になるかもしれない。
彼らは霧ヶ峰高原に、「森の妖精」と呼ばれる小動物の棲み家を訪ね、夢のように楽しい二日間を過ごす。
しかし、運命の時は、刻一刻と迫っていた。
主人公達の恋の行方、霧ヶ峰の生き物のお話に添えて、世界中で愛されてきた好編「幸福論」を交え、お読みいただける方に、少しでも清々しく、優しい気持ちになっていただけますよう、精一杯、書いてます!
どうぞ、よろしくお願いいたします!

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる