【R15】【第一作目完結】最強の妹・樹里の愛が僕に凄すぎる件【第二作目連載中】

木村 サイダー

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第一巻

★優しゅうしたったら(優しくしてあげたら)それでいい?それだけ?と、樹里は親を嫌っている。

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実家に帰って母親に久しぶりに挨拶。父親は接待でゴルフらしい。
僕は自分の部屋の、棚の隅においてある、非売品のあのバンドのDVDを容易に見つけ、
ダイニングで久々に母と世間話や近況報告をする。
母親は樹里がなにか悪いことをしていないか、危ないことをしていないかいつも心配している。

まあしているんだけど。
言わないでやるけど。。。

とりあえず五体満足に生きていて、プラスワン(子供のこと)ができたりもしていないので、ご安心をといったところだ。できる行為は多分昨晩から朝にかけて、複数の男子達としていたかもしれないけど。
細部まで心配すれば、あんなやつといたら精神が崩壊する。

「ところで、雅樹は最近お付き合いする女の子とかはできたの?」
年に一度か二度ぐらいこういう質問が中学校二年ぐらいからある。答えはいつも同じで、その答えに母親は満足そうにいつも同じことを言う。
「いないよ。できないんだ」
「あらそう、これからよ」
多分もういいんだと思う。キッチンで最初の言葉を聞けば既に冷蔵庫の整理をしながらの会話になった。
「もう結構付き合ったりしてる子いるぜ」
「今はそんな時期じゃないわ。やらなきゃいけないことは勉強がまず第一。まあ、今の雅樹はよく分かってくれてるから言わないわ。女の子の方はそのうちいい子が現れます」
だいたいこれ。たまに僕が嫌味を返す。
「そのうちっていつ?」
答えも決まっているから期待はしない。
「それは分からないけど、雅樹ならすぐにほいほい現れるわ。逆に今日はあの女、明日はこの女、みたいな男にはならないでね(笑)」
母親からしたら僕はそっちのほうにヤバいように見えるらしい。どこの母親でも男の子に対してはそうなのかなあ・・・まあ焦ってもできないものはできないんだから、母親の言うように、やることやってそのうちを待つしかないんだけどね。

そうしていると、父親も帰ってきてまたそれはそれで話し込む。するとたまたまなのか父親も彼女できたか?の話になった。やっぱり父親らの時代もそういうことを意識する年頃だったのかな?勿論答えはNOだ。
ちょうど母親が僕らに冷たい麦茶と家にあった和菓子を出してくれた。鮎のお菓子だ。内心『ひさしぶり!うまそー』と思いながら冷たい麦茶を口に含む。
「女はな、優しゅう(やさしゅう)したったらええねん」
「優しゅう?」優しく、と同じ意味。方言が混じっている。
「おん、とにかく優しゅう。そしたらついてくるわ」
「広樹さんそんな私に優しかったっけ?」
冷茶を飲む父親に母親からの激しい突っ込みが入り、少し口に含んでいたものを吐き出した。
―――優しゅう・・・かあ。じゃあ僕の今の行動は正解、だな。

冗談交じりに色んな話を長々としていると、もう晩御飯の準備の時間ぐらいになってくる。
「樹里もこっちに呼んで、今日はこっちで皆で外食でもしようよ」
母親が提案してくれる。ありがたい。だが・・・・どうだろうなあ。
樹里に電話する。
が、樹里の答えは猛烈にNO!
逆に、
『あにぃ!帰ってきいや!二日連続はあかんでしょーが!』
やって。おまえなんて今朝朝帰りやんか。
僕は田中さんと晩御飯(しかも軽食)をして、話して普通にゴールデンタイムの番組始まるときには、十分おったっちゅうにアホ!

このように樹里はあまり両親と居たがらない。

確かに、この道のりを飯食うだけ(泊めてといえば泊めてくれるが)で出てくるのは、前記の説明でも分かるように、面倒くさすぎる。
親に電話変わったが、やはり樹里の意見は変わらず。
むしろけんもほろろに父親も母親もやられたみたい。母親に至っては最後は若干言い争い。何を言って言われてしているか分からないけど、
「人聞きの悪いこと言わないでちょうだい。息子に『ご飯食べて帰り』っていうことの何がたぶらかしなんよ??」
とにかく僕がここに長居することは平和ではないということだ。
何もごちそうにならずに帰ることにした。

僕はこんなに早くに帰還命令が樹里から下る。
何か不公平な気がする。そう思わない?
そこまで気にする必要はないこと?
どうなんやろう・・・・
と一人思いつつ、いつの間にか忘れて電車の中にいる。

このお気楽さは、『優しさ』というのだろうか。
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