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第一巻
★人生初の『連れ出し』成功。
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そうなんだ。解散した。
僕がハマりこむ一年前に、解散していた。
僕は解散後に、蒼介のソロ活動から入り、salvageに辿りついた。
蒼介のソロ活動も目覚ましいものがあるが、やはりsalvageとは比較されてしまいがちで、
最近は、少しブームとの食い違いで翳りが見えてきている。
「解散ライブとか、行って見たかったわ~」
「東京ドームでしかしないからね」
だいたいそこで最終になる。ここ地方都市には、途中しか来ない。
なので東京ドームまで行かないといけないが、さすがにこの年でそこまでの機動力と段取り力がない。
「私、解散ライブの映像でもええから見たいわ」
「え、そんなの動画サイトでいっぱい出てるやん」
「いや、そうじゃなくて(笑)私がみたいのは、CMとか無くてしかも、フルバージョンで見たいんよ」
――――あ・・・・
「ほら、噂で出回っているとかいうやん。収録用のブイみたいなやつ、それの・・・・」
「僕、持ってる」
「え!マジ!?」
田中さんの目がキラリと見開いた。
「ええよ、貸したるわ」
「ホンマ??ホンマ??やったー」
手を胸の前で組んで、お祈りのポーズのまま、はしゃぐように喜んだ。
多分、実家のしまいこんだ棚の中に記録媒体・・・DVDがあったはず。
中二の時、ロック系バンド雑誌の中に通販があって、そこに出ていたんだ。
それを親に頼んで買ってもらった。万円超えていたと思うけど、買ってくれた。
何度も見まくって、親も、次あの曲やろ、とか言ってくれるようになってた。
でも、あの事件以来、もう見ていない。
「今日はこっちにないねん、実家のほうにあるから、取ってきとくわ」
「うん、ありがとう、めちゃ楽しみやわ!」
「おお。格好ええでホンマに」
「どの曲が格好いい?・・・・・」
てなことを話していると、意外と話って続くもんで、
あっという間に駅前までやってきてしまったのだった。
(うわ・・・・こうなると、到着はぇ・・・)
「髪型が、あの片方だけ上げているときより、私は武道館のときみたいな・・・・・」
まだ会話はsalvageと蒼介、その付近の話で続いている。
結構詳しくて、話しているときも笑顔で、声にも張りがあって、時々冗談を言えば、鈴を転がすように笑ってくれる。
この子が「オッペケペー」なもんか!
絶対違うわ。
心底そう思えてきた。
「もともとはsalvageじゃなかったって知ってる?」
「知ってますー」
田中さん、そんな愚問しないでって感じの余裕さを見せて
「もともとはsavageでしょ。ファンならみんな知ってるわ」
「そう」
「メジャー狙ったらsavage・野蛮人じゃダメってなってⅬを足したんでしょ」
「なんで『L』か知ってる?」
「なんでかは知らない」
「あれはね、蒼介の案でね、野蛮人でもラブ(LOVE)を持つことで、色んな心の『難』から救うことができるっていう意味なんだ」
「さっすが、すごい。蒼介。さらっとそれ言ってやれちゃうことが素敵ね」
ちょっと・・・・まるで僕自身が考え出したかのように優越感を感じてしまった。女子から褒められたり、『すごい』って言われるのって男は誰でもよがるよね。
「でさ、、、ああ、もう駅か」
田中さんがいう。
もう駅か。
もう・・・・・
もう・・・・・かあ
「今日はなんか、本題より、サブカルに話が脱線し続けちゃったね」
田中さんも困ったように笑う
僕は今自分がどんな顔したか、説明できない。そんな余裕がない。でも確実に僕らの歩みは、僕のマンションを超えて、駅前のショッピングモールに入ろうとしている。
ここなのか?
これがタイミングなのか?
どうなのか?
樹里?どっかにおらん?
おるわけないやんけ!
そして!
ファミレスの入り口は二か所。
まず一つはこのすぐ右横。ここが正門のようなもんだ。
ここで誘えなかったら、次はショッピングモールの中に入り、すぐ右手に小さめの入り口がある!
チャンスは二回だ!
ここは一回スルーして、ショッピングモールの中に入ったと同時に、、、
二回目のときに誘ってみよう。
二回あるし!
「田中さん?」
「うん?」
「よかったら、軽く飯食っていかない?」
なぜか静止する自分を、もう一人の自分が一回目で動かした。
どうやら僕は『意外と行動力のある奴』だったようだ。
後のことは知らんけど。
僕は照れて笑う、、、、しかない。
「う、うん・・・・いいよ」
心の中では
東京オリンピックが決定して、喚起している日本のメンバーの中に、きっと僕もいてる映像が、見えた。
嘘やん!
マジかよ!
いけた!
樹里、あにぃは行けたよ!!
「あ、でも私、あんまりお金ないから、ドリンクバーぐらいでいいよ」
そんなんもう、、、
「いや、ええし、お金は僕払うし」
「いや、でも悪いよ」
「もうあとあと。行こ行こ」
これってさ、
いわゆる・・・ちょっとシチュエーション違うけど、
『お茶しない?』って誘う、あれちゃうん?だとしたら、
人生初の、女性を誘って『一緒にお茶する?』を成功させてしまったのであった。
僕がハマりこむ一年前に、解散していた。
僕は解散後に、蒼介のソロ活動から入り、salvageに辿りついた。
蒼介のソロ活動も目覚ましいものがあるが、やはりsalvageとは比較されてしまいがちで、
最近は、少しブームとの食い違いで翳りが見えてきている。
「解散ライブとか、行って見たかったわ~」
「東京ドームでしかしないからね」
だいたいそこで最終になる。ここ地方都市には、途中しか来ない。
なので東京ドームまで行かないといけないが、さすがにこの年でそこまでの機動力と段取り力がない。
「私、解散ライブの映像でもええから見たいわ」
「え、そんなの動画サイトでいっぱい出てるやん」
「いや、そうじゃなくて(笑)私がみたいのは、CMとか無くてしかも、フルバージョンで見たいんよ」
――――あ・・・・
「ほら、噂で出回っているとかいうやん。収録用のブイみたいなやつ、それの・・・・」
「僕、持ってる」
「え!マジ!?」
田中さんの目がキラリと見開いた。
「ええよ、貸したるわ」
「ホンマ??ホンマ??やったー」
手を胸の前で組んで、お祈りのポーズのまま、はしゃぐように喜んだ。
多分、実家のしまいこんだ棚の中に記録媒体・・・DVDがあったはず。
中二の時、ロック系バンド雑誌の中に通販があって、そこに出ていたんだ。
それを親に頼んで買ってもらった。万円超えていたと思うけど、買ってくれた。
何度も見まくって、親も、次あの曲やろ、とか言ってくれるようになってた。
でも、あの事件以来、もう見ていない。
「今日はこっちにないねん、実家のほうにあるから、取ってきとくわ」
「うん、ありがとう、めちゃ楽しみやわ!」
「おお。格好ええでホンマに」
「どの曲が格好いい?・・・・・」
てなことを話していると、意外と話って続くもんで、
あっという間に駅前までやってきてしまったのだった。
(うわ・・・・こうなると、到着はぇ・・・)
「髪型が、あの片方だけ上げているときより、私は武道館のときみたいな・・・・・」
まだ会話はsalvageと蒼介、その付近の話で続いている。
結構詳しくて、話しているときも笑顔で、声にも張りがあって、時々冗談を言えば、鈴を転がすように笑ってくれる。
この子が「オッペケペー」なもんか!
絶対違うわ。
心底そう思えてきた。
「もともとはsalvageじゃなかったって知ってる?」
「知ってますー」
田中さん、そんな愚問しないでって感じの余裕さを見せて
「もともとはsavageでしょ。ファンならみんな知ってるわ」
「そう」
「メジャー狙ったらsavage・野蛮人じゃダメってなってⅬを足したんでしょ」
「なんで『L』か知ってる?」
「なんでかは知らない」
「あれはね、蒼介の案でね、野蛮人でもラブ(LOVE)を持つことで、色んな心の『難』から救うことができるっていう意味なんだ」
「さっすが、すごい。蒼介。さらっとそれ言ってやれちゃうことが素敵ね」
ちょっと・・・・まるで僕自身が考え出したかのように優越感を感じてしまった。女子から褒められたり、『すごい』って言われるのって男は誰でもよがるよね。
「でさ、、、ああ、もう駅か」
田中さんがいう。
もう駅か。
もう・・・・・
もう・・・・・かあ
「今日はなんか、本題より、サブカルに話が脱線し続けちゃったね」
田中さんも困ったように笑う
僕は今自分がどんな顔したか、説明できない。そんな余裕がない。でも確実に僕らの歩みは、僕のマンションを超えて、駅前のショッピングモールに入ろうとしている。
ここなのか?
これがタイミングなのか?
どうなのか?
樹里?どっかにおらん?
おるわけないやんけ!
そして!
ファミレスの入り口は二か所。
まず一つはこのすぐ右横。ここが正門のようなもんだ。
ここで誘えなかったら、次はショッピングモールの中に入り、すぐ右手に小さめの入り口がある!
チャンスは二回だ!
ここは一回スルーして、ショッピングモールの中に入ったと同時に、、、
二回目のときに誘ってみよう。
二回あるし!
「田中さん?」
「うん?」
「よかったら、軽く飯食っていかない?」
なぜか静止する自分を、もう一人の自分が一回目で動かした。
どうやら僕は『意外と行動力のある奴』だったようだ。
後のことは知らんけど。
僕は照れて笑う、、、、しかない。
「う、うん・・・・いいよ」
心の中では
東京オリンピックが決定して、喚起している日本のメンバーの中に、きっと僕もいてる映像が、見えた。
嘘やん!
マジかよ!
いけた!
樹里、あにぃは行けたよ!!
「あ、でも私、あんまりお金ないから、ドリンクバーぐらいでいいよ」
そんなんもう、、、
「いや、ええし、お金は僕払うし」
「いや、でも悪いよ」
「もうあとあと。行こ行こ」
これってさ、
いわゆる・・・ちょっとシチュエーション違うけど、
『お茶しない?』って誘う、あれちゃうん?だとしたら、
人生初の、女性を誘って『一緒にお茶する?』を成功させてしまったのであった。
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