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★兄弟の絆~ロックを気取って「今までありがとう、愛してます」~
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「・・・・・・・」
粉々に散った命の希望のあと、僕は腹の中から、まだこんなのがあったのかと思うような、マグマのようなものが上がってきた。
普通のやつは知らん。
けど、僕はそこは天秤にはかけられない。
そして、絶望とともに、中納のある「噂」を思い出していた。
クラスが一緒になった時から大嫌いな相手だから、悪い「噂」には敏感だった。
「それに、僕もなあ、子分とかおったら面倒見なあかんやろ、ほら、童貞とか、はよ捨てさせたらなあかんやろ、大変やねんて、そのあたりのことはよ」
近づいてきて、僕の右肩を左手で叩く
「こいつらにも回したらなあかんねん、しんどい立場やでホンマ」
「あざーす!」
「御堂樹里さんごちになります!」
「スパンキング樹里ちゃんイェー!」
三人が合いの手を入れてくる。
「それに…」
苦しみで小刻みに震える僕。
しかし、勝ち誇りすぎて、奢れすぎて、僕の変化は読めない中納。
ボヤける視界に、生気は戻ってきたぞ。
「散々やりまくったあとにネットで動画売ろうと思うんよ、そしたら百円も回収できるし…あ、儲かったら千円にしたあげるわ(笑)」
大声で笑った。
オーク(豚の鬼)のような面構えだ。
もはや人間じゃない…
人の皮を被った鬼だ。
こいつらとは、仲良くなんてしなくていい。
そして僕はなぜかこのとき、
あの大好きだったロックバンド「salvage」のヴォーカル・蒼介の、ライブの終わりのMCを思い出していた。
「サンキューサンキュー!…ありがとう!…サンキュー!…愛してます」
父さん、
母さん、
僕は多分この後大けがをします。
これをやったら(言ったら)許してはくれません。
死んでしまったらごめんなさい。
先に逝ってしまうことをお許しください。
そして、短かかった十五年ちょっと。
育ててくれてありがとう。
反抗してごめん。
ただ、未熟すぎて分からなかったことだけ…許してください。
樹里…樹里…
情けない兄でごめん
だけど、ちょっとは、
ほんの少しだけは、
兄らしいことできたんだろうか…
「さ、樹里ちゃん呼んで。そしたら帰したるから…」
中納の問いかけに
「携帯…持ってきてないわ」
え?
僕以外全員反応する。
一人が、僕の制服を弄る。
「こいつ、マジでないわ」
「うん?あ、これか・・・いや、これは違う」
アホが律義に服の胸ポケットに戻したもの。それは、実は樹里から渡されていたもの・・・・カムフラージュされたボイスレコーダー。
もし僕が殺されても、これが破壊されても、ある程度なら復元できるものだ。
「おまえ…」
中納の顔つきが、勝ち誇ったニヤケ顔から、怒りで再び怒気を帯びた表情になった。
だが、僕はもう怯まない。死んでもいい。樹里を守れるなら。
ヒーローならば、この瞬間にもの凄い光を放ち、生まれ変わったように変身して、立ち向かえるのだろう。
けど、僕は、ただの人だ。弱い人間だ。だけど、最後に、
ロックを気取らせてもらうぜ!
「・・・・・中納よ」
「ああん?おまえまだ舐めてんのかー?」
僕の血まみれの襟首を掴み上げる
「おまえには…樹里は抱けねーわ…」
「…はあ?」
意味が解釈できずに、中納が漏らす。
「おまえみたいな、ち◯この皮剝けてねーようなやつにはな!」
中納「…!」
中納は「実は包茎である」と、噂になっていた。
樹里、愛してます!ありがとう!
頭の中で、あのヴォーカル、蒼介が大勢のオーディエンスに手を振る。
観客が自分と家族、そして樹里とかぶる。
粉々に散った命の希望のあと、僕は腹の中から、まだこんなのがあったのかと思うような、マグマのようなものが上がってきた。
普通のやつは知らん。
けど、僕はそこは天秤にはかけられない。
そして、絶望とともに、中納のある「噂」を思い出していた。
クラスが一緒になった時から大嫌いな相手だから、悪い「噂」には敏感だった。
「それに、僕もなあ、子分とかおったら面倒見なあかんやろ、ほら、童貞とか、はよ捨てさせたらなあかんやろ、大変やねんて、そのあたりのことはよ」
近づいてきて、僕の右肩を左手で叩く
「こいつらにも回したらなあかんねん、しんどい立場やでホンマ」
「あざーす!」
「御堂樹里さんごちになります!」
「スパンキング樹里ちゃんイェー!」
三人が合いの手を入れてくる。
「それに…」
苦しみで小刻みに震える僕。
しかし、勝ち誇りすぎて、奢れすぎて、僕の変化は読めない中納。
ボヤける視界に、生気は戻ってきたぞ。
「散々やりまくったあとにネットで動画売ろうと思うんよ、そしたら百円も回収できるし…あ、儲かったら千円にしたあげるわ(笑)」
大声で笑った。
オーク(豚の鬼)のような面構えだ。
もはや人間じゃない…
人の皮を被った鬼だ。
こいつらとは、仲良くなんてしなくていい。
そして僕はなぜかこのとき、
あの大好きだったロックバンド「salvage」のヴォーカル・蒼介の、ライブの終わりのMCを思い出していた。
「サンキューサンキュー!…ありがとう!…サンキュー!…愛してます」
父さん、
母さん、
僕は多分この後大けがをします。
これをやったら(言ったら)許してはくれません。
死んでしまったらごめんなさい。
先に逝ってしまうことをお許しください。
そして、短かかった十五年ちょっと。
育ててくれてありがとう。
反抗してごめん。
ただ、未熟すぎて分からなかったことだけ…許してください。
樹里…樹里…
情けない兄でごめん
だけど、ちょっとは、
ほんの少しだけは、
兄らしいことできたんだろうか…
「さ、樹里ちゃん呼んで。そしたら帰したるから…」
中納の問いかけに
「携帯…持ってきてないわ」
え?
僕以外全員反応する。
一人が、僕の制服を弄る。
「こいつ、マジでないわ」
「うん?あ、これか・・・いや、これは違う」
アホが律義に服の胸ポケットに戻したもの。それは、実は樹里から渡されていたもの・・・・カムフラージュされたボイスレコーダー。
もし僕が殺されても、これが破壊されても、ある程度なら復元できるものだ。
「おまえ…」
中納の顔つきが、勝ち誇ったニヤケ顔から、怒りで再び怒気を帯びた表情になった。
だが、僕はもう怯まない。死んでもいい。樹里を守れるなら。
ヒーローならば、この瞬間にもの凄い光を放ち、生まれ変わったように変身して、立ち向かえるのだろう。
けど、僕は、ただの人だ。弱い人間だ。だけど、最後に、
ロックを気取らせてもらうぜ!
「・・・・・中納よ」
「ああん?おまえまだ舐めてんのかー?」
僕の血まみれの襟首を掴み上げる
「おまえには…樹里は抱けねーわ…」
「…はあ?」
意味が解釈できずに、中納が漏らす。
「おまえみたいな、ち◯この皮剝けてねーようなやつにはな!」
中納「…!」
中納は「実は包茎である」と、噂になっていた。
樹里、愛してます!ありがとう!
頭の中で、あのヴォーカル、蒼介が大勢のオーディエンスに手を振る。
観客が自分と家族、そして樹里とかぶる。
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