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★兄弟の絆~ただならぬ危険を察知するが、ロックの世界では大人や先生は敵だから~
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その時、僕はなんとなく「これでもう二度と家に帰ってこれなくなる」気配を悟った。
その日の朝に、樹里に
「お前は今日学校にくるな」
「どうしても行かないとあかんのなら、おまえの友達(この時から樹里の周りは中納らでも寄せ付けないスクールカースト最強に近い友達らが集まっていた)らに一日中囲まれておけ」
それと
「今日の夕方六時までに帰らなかったら、警察に電話してくれ」
そう伝えて、僕の当時の携帯を、
樹里に渡して、手を握った。
昔はよく、何処に行くのも手を握り合っていた。それよりもっと前は、あんまり仲が良くなかったような記憶がある。
けどいつからか、樹里は僕の手を握りたがってくれた。
こんな愚かな兄でも、慕ってくれる可愛い女の子がいたんだ。
それと、携帯を渡したのには理由がある。
僕をいじめていたグループが僕の携帯を執拗に見たがったからだ。
ひょっとしてと僕は感じていた。
――――樹里が危なくなるのでは?
それだけは死んでも回避しないといけなかった。それならば、僕は救いのアイテムである、電話を手放すことで、樹里にすぐに危機が及ぶことはなくなる。
僕のことをネタに、樹里を呼び出す作戦は、完全に消滅させられる。
周囲の大人たちも僕へのいじめが激化していることに気づいていて、悩んでいたように思う。けど、大人を呼んで助けてもらうという選択肢はなかった。
大人や先生は、ロックでは敵だから・・・・
そこに頼るのは、ロックを生きたい人間としてはタブーだから。
僕達の敵だと歌っていたから。
だから先生や親にお願いするのは、とても情けなく恥ずかしくヘタレのやること、ロックじゃないことだと思いこんでいた。
しかし、後から考えれば、中納のやっていることが、もはや子どもレベルの要求ではないと考えて、大人に対応を任せるということを判断できなかった自分は稚拙だった。
予感は的中だった。
その日はのっけから激しく殴られた。
いつもなら、言葉やデコピン、ローキックなどで僕を嬲るように追い込んでくる。僕は笑いながら「ちょ、きついツッコミやめてーや」と、これはいじめという名の現実ではなく、スキンシップなんだと、逃げていた。しかし、この日は違った。
僕は日頃使われていない三階の空き教室に呼ばれた。鍵は南京錠がかけられていたのだが、そんなの誰がとっくに壊していて、生徒らの出入り自由だった。ただ、その教室はエアコンもなかった。しかも先にも述べたように三階。本来なら誰も寄り付かない。先生たちもそこの廊下すら歩きたがらない場所だった。
そこに僕は中納らから呼び出された。
いきなり中納の歪んだ笑みを見た次の瞬間、
衝撃と暗転と火花が散った。
僕の目あたりにあいつの拳が炸裂した。
そこから片付けられることの早かったこと…
僕は、これはもう限界だ。
こいつらとはやり合わないといけないと判断した。
その判断はとうの昔の地点であって、ここに来てからでは遅すぎた。
何とかこらえて中納に、距離の近い左でパンチを出す。
口元を捉えるが、ケンカの強いやつというのはこの辺りが違う。
おそらく下唇あたりをこれの拳がヒットしたことで切ったことは分かっているだろうが、お構い無し。その痛みは切り捨てて、ますますアドレナリンが噴き出したように興奮し、僕に拳を叩きつけてくる。
当たるたびに骨が歪むような感覚に襲われて、それが脳に伝わる。
ボクシングのガードを上げるようなポーズを取るが、
何処から何が入ってくるかがまったく分からないようになる。
まるで津波に飲まれてその中に無数の拳や足があるようだった。
ガードを抜けるように膝が顔面を打ち抜く。
勢いは僕の後頭部から飛び抜けて、直立になってしまう。
そのガードが下がった状態を中納は見逃さない。
ここぞとばかりに獲物を噛み殺す肉食動物のようだ。
顔面
顔面
腹に蹴り
また顔面…
口の中には血液がたまり、息苦しくなって吐き出す。
視界も左側の霞が取れなくなった。
それでもまだ執拗に、
胸、腹、太ももの外側広筋に容赦なく拳と蹴りを打ち込んでくる。
もう駄目だ…
僕は間もなく倒れ込んだ。
痛みと麻痺の感覚で、呼吸がまともにできないようなってしまい、頭に酸素が行き渡らない状態に陥った。
その日の朝に、樹里に
「お前は今日学校にくるな」
「どうしても行かないとあかんのなら、おまえの友達(この時から樹里の周りは中納らでも寄せ付けないスクールカースト最強に近い友達らが集まっていた)らに一日中囲まれておけ」
それと
「今日の夕方六時までに帰らなかったら、警察に電話してくれ」
そう伝えて、僕の当時の携帯を、
樹里に渡して、手を握った。
昔はよく、何処に行くのも手を握り合っていた。それよりもっと前は、あんまり仲が良くなかったような記憶がある。
けどいつからか、樹里は僕の手を握りたがってくれた。
こんな愚かな兄でも、慕ってくれる可愛い女の子がいたんだ。
それと、携帯を渡したのには理由がある。
僕をいじめていたグループが僕の携帯を執拗に見たがったからだ。
ひょっとしてと僕は感じていた。
――――樹里が危なくなるのでは?
それだけは死んでも回避しないといけなかった。それならば、僕は救いのアイテムである、電話を手放すことで、樹里にすぐに危機が及ぶことはなくなる。
僕のことをネタに、樹里を呼び出す作戦は、完全に消滅させられる。
周囲の大人たちも僕へのいじめが激化していることに気づいていて、悩んでいたように思う。けど、大人を呼んで助けてもらうという選択肢はなかった。
大人や先生は、ロックでは敵だから・・・・
そこに頼るのは、ロックを生きたい人間としてはタブーだから。
僕達の敵だと歌っていたから。
だから先生や親にお願いするのは、とても情けなく恥ずかしくヘタレのやること、ロックじゃないことだと思いこんでいた。
しかし、後から考えれば、中納のやっていることが、もはや子どもレベルの要求ではないと考えて、大人に対応を任せるということを判断できなかった自分は稚拙だった。
予感は的中だった。
その日はのっけから激しく殴られた。
いつもなら、言葉やデコピン、ローキックなどで僕を嬲るように追い込んでくる。僕は笑いながら「ちょ、きついツッコミやめてーや」と、これはいじめという名の現実ではなく、スキンシップなんだと、逃げていた。しかし、この日は違った。
僕は日頃使われていない三階の空き教室に呼ばれた。鍵は南京錠がかけられていたのだが、そんなの誰がとっくに壊していて、生徒らの出入り自由だった。ただ、その教室はエアコンもなかった。しかも先にも述べたように三階。本来なら誰も寄り付かない。先生たちもそこの廊下すら歩きたがらない場所だった。
そこに僕は中納らから呼び出された。
いきなり中納の歪んだ笑みを見た次の瞬間、
衝撃と暗転と火花が散った。
僕の目あたりにあいつの拳が炸裂した。
そこから片付けられることの早かったこと…
僕は、これはもう限界だ。
こいつらとはやり合わないといけないと判断した。
その判断はとうの昔の地点であって、ここに来てからでは遅すぎた。
何とかこらえて中納に、距離の近い左でパンチを出す。
口元を捉えるが、ケンカの強いやつというのはこの辺りが違う。
おそらく下唇あたりをこれの拳がヒットしたことで切ったことは分かっているだろうが、お構い無し。その痛みは切り捨てて、ますますアドレナリンが噴き出したように興奮し、僕に拳を叩きつけてくる。
当たるたびに骨が歪むような感覚に襲われて、それが脳に伝わる。
ボクシングのガードを上げるようなポーズを取るが、
何処から何が入ってくるかがまったく分からないようになる。
まるで津波に飲まれてその中に無数の拳や足があるようだった。
ガードを抜けるように膝が顔面を打ち抜く。
勢いは僕の後頭部から飛び抜けて、直立になってしまう。
そのガードが下がった状態を中納は見逃さない。
ここぞとばかりに獲物を噛み殺す肉食動物のようだ。
顔面
顔面
腹に蹴り
また顔面…
口の中には血液がたまり、息苦しくなって吐き出す。
視界も左側の霞が取れなくなった。
それでもまだ執拗に、
胸、腹、太ももの外側広筋に容赦なく拳と蹴りを打ち込んでくる。
もう駄目だ…
僕は間もなく倒れ込んだ。
痛みと麻痺の感覚で、呼吸がまともにできないようなってしまい、頭に酸素が行き渡らない状態に陥った。
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