【R15】【第一作目完結】最強の妹・樹里の愛が僕に凄すぎる件【第二作目連載中】

木村 サイダー

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第一巻

★兄弟の絆~僕の反抗期とロックの世界観~

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今でもあの
怖くて、
悲しくて、
痛くて、
惨めな思いを・・・・

思い出しては、体のどこかがおかしくなったときのように、素早い動きをしてしまったり、わけもない言葉を叫んだりしてしまう。きっとPTSD状態という状態なんだろう。
そうなってもいいように、僕はベッドに体を横たえる。右腕を瞼にあてて、何も見えないようにする。胃の痛みをなんとか抑えようとする。酷い時は、胃も痛くなる。胃の上の方だ。
今日みたいに樹里がそばにいた時、前にも同じような症状が発症して、その時の様子を色々観察したり体温計で見てくれたりしたら「顔面蒼白、体温が三十五度以下に低下していた」といったなあ。確かに冷や汗をかきまくる。これになると、一時間ぐらいはその場から動けないんだ。

僕は中学校二年のときに、勉強が付いていけなくなってきて、少し挫折気味だった。そんなときに一人、当時の友人宅に遊びに行ったときにおススメしてくれたバンドの曲に、感動したのを覚えている。
その歌は、社会の矛盾や、大人のずる賢さ、そこに飲まれてまるでプログラムのように動かされている人間たちの悲哀を歌っていて、僕はそうならない、今こそ立ち上がるんだ!と自分を鼓舞してくれるように思えた。他にもそのバンドは、金や勉強・学歴ではなくて、愛し合うことが大事だろ、とも歌っていた。はたまた、笑う自由すら与えられないこの待ちで、愛する人とひっそり隠れるように眠ろう、と囁くバラードもあった。

とてつもなく格好良かった。

まだ幼い自分には本当の意味が分かっているようで分かっていなかった。十四歳だから分かっていなくて当たり前かもしれないけど、僕はそのバンドに夢中になり、限定版を除きほとんどの曲はお小遣いから配信ストアでダウンロードして聞きまくり、有料のライブ収録動画も親に頼んで見まくった。

ほどなく学力はさらに低下していった。

そのバンドのステージ衣装はロックのため革製が多く、またシルバーのアクセサリにも凝っていた。基調とするカラーは黒だ。僕も真似して、真夏に黒のTシャツに、親にねだって買ってもらったレザーパンツ履いて、シルバーのアクセサリをまとった、
出来上がっていない貧そな体つきの中学生。暑いんだか寒いんだか良く分からないファッション。
今から考えたら、だいぶ痛い中学生だった。
髪型もそのバンドのボーカルの真似をした。今で言えば無造作ヘアの爆発バージョンとでも言おうか。。。自分の右目の上の髪の毛を左に巻き上げていき、左側を下に落とすイメージ。
学校のときもそれに近い髪型で言って、しょっちゅう先生から注意を受けた。
でも、注意されることが、
「大人は分かっていないんだよ、僕たちの自由を」
そんな気持ちになっていた。
人前での発言もだいぶと変わった。
「金がすべての世の中なんてクソくらえだ!」「勉強ばっかして、エリート社会に入って挫折したら自殺するんだぜ。そんなのまっぴらごめんだ!」
話す内容も、話し方もMCを真似ていた。だいたいそんな感じだった。
そんなことを親に向かって真剣に訴えていた。丁度その頃、樹里は練習用の電子ドラムを親に買ってもらい、叩きだした。僕の影響なのか樹里もそのバンドの曲を聞くようになり、よく一緒に歌ったり、あるいは机や缶を打楽器に見立てたハンドパーカッションでプチセッションしてくれた。あいつだけは形を変えて、いつでも僕の味方だった気がする。樹里はグレるのでは「先輩」で、強烈な反抗期が始まったのはあいつが十二歳ぐらいの頃。腕っぷしがとにかく強くて、当時から二、三歳上の男子三人ぐらいがかかってきても一人で片付けるという噂だった。たったひとりでこの男子ヘタレばかりの中学を午前中二時間あれば締めてしまえる、とか、スポーツで鍛え上げられた体育教師が二人がかりで抑え込みに行っても勝てないとまで。今から考えたら親が可哀想だったが、当時はそこに考えが及ばなかった。

だが、
そんな大事なあいつを、僕に「売れ」という豚野郎が現れたんだ。
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