14 / 188
第一巻
★一緒に帰ろう
しおりを挟む
で、夕方。
僕は席で帰らずに待っていた。
僕が帰らずに座ったままでも、特に「どうした?」と聞いてくるやつはいない。
今日は特にボッチが助かる。
下手に仲間がいたら、仲間意識で「おう、帰ろうぜ」とか声かけられた時に断る理由をうまく作らないといけない。僕はその点不要。
二つ前にはかばんを机横のフックにかけたままにして、一時的どこかに行っている田中さん。僕ら二人だけが残れば、それは明らかに浮いてしまって、何言われるか分かったもんじゃない。それは田中さん自身が嫌なんだろう。
はふーどうしよ、いきなりこの教室に戻ってきて、
妄想の田中さん「御堂くん、あなたが好きです」
そういって首に手を回してきて・・・・・
そんな・・・そんなことないわ、ハハハハ・・・・
「ごめんなさい、お待たせ~」
「あうつ&%$#」
「え?どうしたん?慌てて」
「い、いやいや、何にも・・・・」
もう、取り繕うのが必死。
夢想状態からの、いきなり現実に戻されて、しかもその戻したのが今回のメインになる人だから溜まったもんじゃない。
一応平然を装う自分。内心はまだ混乱しているのだが、そんなことは当然お構いなしで本題に踏み込む。
「あのね、御堂くん・・・・」
田中さんがさあ、これから話そうとすると、またもや、またもや、部活の子らが廊下を通りかかる。そうなると男女二人でいるのがよく分かる。
何かしら体育系の男子二人がこっちを見て、ニヤニヤしながら通り過ぎる。
・・・・ちょっとなあ
「・・・・・よかったら一緒に帰ろうか」
田中さんの一言だった。
祝・初、女子と一緒に帰る。。。
これはなかなか・・・・
いやいや、どうして・・・・
――――これ、カップルによくあるやつちゃうん?
この学校でもカップルは二ケツして自転車で駅まで行ったり、二人で歩いたりしているのもおるけど、ボッチの僕に確実に無縁だった現象。
憧れの「女子と二人一緒の下校!」
まさか高校二年生の夏前に完全攻略してしまうとは・・・・
いやいやいや、告白してきたわけちゃうし、攻略なんてしていないだろうがよ。
ええ?ハードル高いかな?大丈夫かな、小学校の集団下校とか多数対多数でしかないなあ。会話持つかなあ・・・・
そんなことが一秒ぐらいの間にぐるんぐるん回ってかなり不安な気持ちであるものの、
「お、おおん」うん、のつもり。
平然を装って鞄を持つ。
シューズボックスからそれぞれの靴を取り出し、
ツツジの校庭。石畳の庭を二人で歩く。
僕もホント特に、、、何話していいか分からないから、
「だいぶ暑くなってきたよね~」
こんなことしか言えなかったトホホ・・・・
樹里だったらどんな返ししてくるだろうか?
『それが?』無表情の冷たいまなざしで(終了)やろうね。
「そうやね~上着着ていたら暑いよ、もう・・・・」
上着、上着、上着、、、、あ、新・制服!!
校門のところにさしかかった。
連想ゲームを始めた僕。
「そういえば新・制服っていつからだっけ?
「確か7月初めか、中頃だったんちゃうかな。私あれ嫌やわあ」
「え?なんで?」
意外な反応に一瞬目を丸くした。
今の寸胴スカートを嫌がる女子のほうが多いのに。
左曲がり下り坂を下る下る下る。
「ええ、なんかちょっと。派手すぎへん、この辺が」
そういって鞄の持っていない右手を足の膝あたりで左右にぶらんぶらんさせている。
「田中さん、長めにするの?」
多分女子の大半は膝上にする。そこから『私可愛いですモテてますアピール』でどんどん上になるようだ。
「膝下にするよ、もうちょっと長くすると思う。あの生地割と薄いみたいだし」
「そうなんだ。真面目だね」
「・・・・・・・・・」
あれ、、、急に黙った。
校門をくぐり、たんぼや畑の道で車1台がようやく行き違える幅の道を二人で歩く。
そしてこの近辺で一軒だけある、もはや壊滅しているのではないかという、たこ焼き屋を過ぎる。
会話が・・・・・終わった。
――――え?どうしよどうしよ?どうしようかなあ。。。
田中「御堂くんさあ、勇気あるよね」
めっちゃ平然な顔して歩いているけど内心超ヤバイモードに突入してしまっていた僕だが・・・・なんのこと?
「え?…なに?」
キョトンとしてしまう僕。
「こないだ後輩の女子をおんぶしてあげてたでしょ。あれ」
あーそれね。
あれは僕としては何ということはない。
「眼の前でガッシャーンって車とぶつかってマジびっくりしたわ。知ってる子やねん」
「へえーそうなんやあ。実はあたし後ろから見ててんで」
――――後ろにおったんかいな。
「ササッと駆け寄って行って、あの子顔面蒼白で座り込んでたやんかあ、そこに行って体揺らしてあげてたり、撫でてあげていたり、、、」
そ、そうやったかな?瞬発的に動いたことなんで・・・・
「そうやったあ?なんし、あかん!これは!と思ったぐらいしか覚えていないわ」
「それで動けるのが凄いよ。私やったら固まってしまうし」
「僕も知らん子やったらさすがにできんと思うよ」
「あとそのあとおんぶしてあげてさ」田中さんがクスッと笑う。
「なんかホンマに青春ドラマのワンシーンかよ!ぐらいに思ったよ(笑)」
「あ、はははは」
褒められているんだか、馬鹿にされてるんだか・・・・
「あれ、なんでおんぶしたん?」
「いや、らんちゃん…あの子、らんちゃんて言うんだけど、らんちゃんが救急車乗りたくない、絶対にやりたい用事があるから学校行くって言うから」
「へー」
「だけど、足を怪我してて、あるいていくにはちょっとキツそうやってん。骨とかは折れてないけど。あとで病院で分かったのが捻挫やってんけどな。」
「うんうん」
ちゃんと聞いてくれてる。この感覚が新鮮だった。
「で、らんちゃん自転車置いて何とか行こうとしたのよ、歩きで。でも無理でさ」
「へー、で、協力してあげたんやね、凄いわあ」
「え、そ、そうかな」
照れる。僕のような非モテキャラは女子から「ウザい」と言われたことは何度かあるが、「凄い」と言われた経験はほとんどない。行ってくれる女性は母親のみ…さぶっ!
「あれは女子からのポイント高いと思うよ、きっと」
「そそそ・・・・そうかなあ」
女子から褒められてることに、慣れていないから気持ちが浮つきそうになる。
ちょっと浮足立って勘違いしそうな僕を横目に、田中さんは少しずつ影を作りだした。
「今もこうやって私と歩いて帰ってくれてるでしょ、これも勇気あるなーって私思う」
え?それはまた、なんで?
別になんも思うところはないけど。
「知ってるやろ、私との…あだ名とか」
影を作り、悲しげな笑顔。
(あ~それか、そういうことか・・・・)
いわゆるスクールカースト底辺女子(男子)となんて歩いているところを見られれば、『ちょっとでも小マシなあなたまで同じ位置になりかねないのに』というやつね。
「・・・・関係ないわ僕には」
本心だ。もともとこの学校では、僕は群れていないし。
事故後の交差点に差し掛かる。今はなにもなかったかのように平穏無事な静かな場所と化している。夕方ではあるがまだまだ青く明るい空。とはいえ、ぼちぼち日が傾きかけているのがここから分かる。やはり坂をゆっくり長く登ってきたところに立っているのだから、高さがあり、大きな川の流れが一部見える。川が決壊してもここまでは水は来ないとも言われている。
事故現場だよ、ここでね、って話すことは今は不要だな。
「私ね、相談したいこと、というか、今日話したいってそのことだったのよ」
「うん、そのことってどのこと?」
「私、どうしたらもっと人から見てもらえるのかなって」
「?」
意外なところに飛んだ気がした。
「それか、もう気にしないで自分のしたいことだけ一人でします!みたいな」
あ~僕はそっちの代表と思われているのかな?
「御堂君は人から良いように見られているし、それでいて一人でしたいことしているよね、私のちょうど逆だもんね」
そんなことはないんだけどね。苦笑いするしかない。
坂を下りきり、死角の多い学校通りへ。
古い商店が立ち並び昔は活気があったであろう街の商店街。
くすんだガラスのフロントサッシがある建物が続き、
その前には黒い猫が寝ていたり。。。つまり人の出入りは無いのだろう。
都会と比べたら低く見える電信柱。
瓦の屋根。
道幅は相変わらず車がぎりぎり対面走行可能な幅。
一軒だけ割と元気に商売している、都会の大型コンビニよりずっと小さなスーパーマーケット。
一応はっきりしておこうと思う。
「そんなことないよ」
否定する。真向から否定できる。
「そう?周りのこと気にしてる?」
「気にしてるから・・・・ほら、こうやって田中さんと帰っている」
「あ、そうか(笑)ありがとう、気にしてくれて」
うっかりミスをしたような笑顔を田中さんは醸し出す。
ちょっと悲しげな雰囲気は消えて、晴れやかだとは言えないまでも、コミュニケーションに困るような雰囲気ではなくなってきた。・・・ように思う、まだ分からんけど。
「じゃあ気にするところがうまいんだ、きっと」
僕のどこかにヒントを見つけたいのだろうか。
だとしても、僕も良くわからない。
ただ、分かるのは・・・・
「私は、なんかこう・・・・周りが気になるんよね。多分私の悪口いっぱい言ってるんだと思うわ。そういうのん。けど・・・・」
「悪口なんて気にすんなよ」
それができたらいいんだけどね。言っている僕が実はできなかった。
「そうなんだけどね~」
できないよなあ。
「じゃあ、ボッチ決め込んじゃえよ」
僕がそれ。これが僕の分かることだ。
「ええ?それも怖いよ」
「そうか?もうボッチで~すってしちゃえばなんてことない」
「うーん・・・」」
笑顔のまま、困惑してしまう。あまりお好みな回答ではないらしい。
「それに江藤さんとかいるから、厳密にはボッチじゃないし」
「えっちゃんは良い子よね~」
「そうなん、あんまり絡まないから知らないけど」
確かに周りから色々言われてしまう環境にありながらニコニコしているなあ。あの子はきっと性格がよいから、良い人見つけたらスッと結婚しちゃうタイプかもね。
「えっちゃん、ええ子やけど・・・ちょっと違うかなあ。解決にはなってないし」
――――解決?
田中さんなりの『解決』というのが存在するみたいだ。
「それに私ボッチも決め込めないんだな~失敗しちゃってるから」
「何の失敗?」
「サッカー部・・・・」
ああ、選択ミスね。
一度仲良しパリピ族に入ろうとしたら、その後ボッチ決め込めるようになるまで長い時間がかかる。
『おまえは仲良しパリピ族でうまくやっていこうとしたけど、できんかったヘタレやろ?そんなんが格好つけて今度ボッチ気取るなや』
そういうもんだ。とことん陰気はつきまとう。あと、江藤さんは解決になっていない・・・この意味は分からない。
僕は席で帰らずに待っていた。
僕が帰らずに座ったままでも、特に「どうした?」と聞いてくるやつはいない。
今日は特にボッチが助かる。
下手に仲間がいたら、仲間意識で「おう、帰ろうぜ」とか声かけられた時に断る理由をうまく作らないといけない。僕はその点不要。
二つ前にはかばんを机横のフックにかけたままにして、一時的どこかに行っている田中さん。僕ら二人だけが残れば、それは明らかに浮いてしまって、何言われるか分かったもんじゃない。それは田中さん自身が嫌なんだろう。
はふーどうしよ、いきなりこの教室に戻ってきて、
妄想の田中さん「御堂くん、あなたが好きです」
そういって首に手を回してきて・・・・・
そんな・・・そんなことないわ、ハハハハ・・・・
「ごめんなさい、お待たせ~」
「あうつ&%$#」
「え?どうしたん?慌てて」
「い、いやいや、何にも・・・・」
もう、取り繕うのが必死。
夢想状態からの、いきなり現実に戻されて、しかもその戻したのが今回のメインになる人だから溜まったもんじゃない。
一応平然を装う自分。内心はまだ混乱しているのだが、そんなことは当然お構いなしで本題に踏み込む。
「あのね、御堂くん・・・・」
田中さんがさあ、これから話そうとすると、またもや、またもや、部活の子らが廊下を通りかかる。そうなると男女二人でいるのがよく分かる。
何かしら体育系の男子二人がこっちを見て、ニヤニヤしながら通り過ぎる。
・・・・ちょっとなあ
「・・・・・よかったら一緒に帰ろうか」
田中さんの一言だった。
祝・初、女子と一緒に帰る。。。
これはなかなか・・・・
いやいや、どうして・・・・
――――これ、カップルによくあるやつちゃうん?
この学校でもカップルは二ケツして自転車で駅まで行ったり、二人で歩いたりしているのもおるけど、ボッチの僕に確実に無縁だった現象。
憧れの「女子と二人一緒の下校!」
まさか高校二年生の夏前に完全攻略してしまうとは・・・・
いやいやいや、告白してきたわけちゃうし、攻略なんてしていないだろうがよ。
ええ?ハードル高いかな?大丈夫かな、小学校の集団下校とか多数対多数でしかないなあ。会話持つかなあ・・・・
そんなことが一秒ぐらいの間にぐるんぐるん回ってかなり不安な気持ちであるものの、
「お、おおん」うん、のつもり。
平然を装って鞄を持つ。
シューズボックスからそれぞれの靴を取り出し、
ツツジの校庭。石畳の庭を二人で歩く。
僕もホント特に、、、何話していいか分からないから、
「だいぶ暑くなってきたよね~」
こんなことしか言えなかったトホホ・・・・
樹里だったらどんな返ししてくるだろうか?
『それが?』無表情の冷たいまなざしで(終了)やろうね。
「そうやね~上着着ていたら暑いよ、もう・・・・」
上着、上着、上着、、、、あ、新・制服!!
校門のところにさしかかった。
連想ゲームを始めた僕。
「そういえば新・制服っていつからだっけ?
「確か7月初めか、中頃だったんちゃうかな。私あれ嫌やわあ」
「え?なんで?」
意外な反応に一瞬目を丸くした。
今の寸胴スカートを嫌がる女子のほうが多いのに。
左曲がり下り坂を下る下る下る。
「ええ、なんかちょっと。派手すぎへん、この辺が」
そういって鞄の持っていない右手を足の膝あたりで左右にぶらんぶらんさせている。
「田中さん、長めにするの?」
多分女子の大半は膝上にする。そこから『私可愛いですモテてますアピール』でどんどん上になるようだ。
「膝下にするよ、もうちょっと長くすると思う。あの生地割と薄いみたいだし」
「そうなんだ。真面目だね」
「・・・・・・・・・」
あれ、、、急に黙った。
校門をくぐり、たんぼや畑の道で車1台がようやく行き違える幅の道を二人で歩く。
そしてこの近辺で一軒だけある、もはや壊滅しているのではないかという、たこ焼き屋を過ぎる。
会話が・・・・・終わった。
――――え?どうしよどうしよ?どうしようかなあ。。。
田中「御堂くんさあ、勇気あるよね」
めっちゃ平然な顔して歩いているけど内心超ヤバイモードに突入してしまっていた僕だが・・・・なんのこと?
「え?…なに?」
キョトンとしてしまう僕。
「こないだ後輩の女子をおんぶしてあげてたでしょ。あれ」
あーそれね。
あれは僕としては何ということはない。
「眼の前でガッシャーンって車とぶつかってマジびっくりしたわ。知ってる子やねん」
「へえーそうなんやあ。実はあたし後ろから見ててんで」
――――後ろにおったんかいな。
「ササッと駆け寄って行って、あの子顔面蒼白で座り込んでたやんかあ、そこに行って体揺らしてあげてたり、撫でてあげていたり、、、」
そ、そうやったかな?瞬発的に動いたことなんで・・・・
「そうやったあ?なんし、あかん!これは!と思ったぐらいしか覚えていないわ」
「それで動けるのが凄いよ。私やったら固まってしまうし」
「僕も知らん子やったらさすがにできんと思うよ」
「あとそのあとおんぶしてあげてさ」田中さんがクスッと笑う。
「なんかホンマに青春ドラマのワンシーンかよ!ぐらいに思ったよ(笑)」
「あ、はははは」
褒められているんだか、馬鹿にされてるんだか・・・・
「あれ、なんでおんぶしたん?」
「いや、らんちゃん…あの子、らんちゃんて言うんだけど、らんちゃんが救急車乗りたくない、絶対にやりたい用事があるから学校行くって言うから」
「へー」
「だけど、足を怪我してて、あるいていくにはちょっとキツそうやってん。骨とかは折れてないけど。あとで病院で分かったのが捻挫やってんけどな。」
「うんうん」
ちゃんと聞いてくれてる。この感覚が新鮮だった。
「で、らんちゃん自転車置いて何とか行こうとしたのよ、歩きで。でも無理でさ」
「へー、で、協力してあげたんやね、凄いわあ」
「え、そ、そうかな」
照れる。僕のような非モテキャラは女子から「ウザい」と言われたことは何度かあるが、「凄い」と言われた経験はほとんどない。行ってくれる女性は母親のみ…さぶっ!
「あれは女子からのポイント高いと思うよ、きっと」
「そそそ・・・・そうかなあ」
女子から褒められてることに、慣れていないから気持ちが浮つきそうになる。
ちょっと浮足立って勘違いしそうな僕を横目に、田中さんは少しずつ影を作りだした。
「今もこうやって私と歩いて帰ってくれてるでしょ、これも勇気あるなーって私思う」
え?それはまた、なんで?
別になんも思うところはないけど。
「知ってるやろ、私との…あだ名とか」
影を作り、悲しげな笑顔。
(あ~それか、そういうことか・・・・)
いわゆるスクールカースト底辺女子(男子)となんて歩いているところを見られれば、『ちょっとでも小マシなあなたまで同じ位置になりかねないのに』というやつね。
「・・・・関係ないわ僕には」
本心だ。もともとこの学校では、僕は群れていないし。
事故後の交差点に差し掛かる。今はなにもなかったかのように平穏無事な静かな場所と化している。夕方ではあるがまだまだ青く明るい空。とはいえ、ぼちぼち日が傾きかけているのがここから分かる。やはり坂をゆっくり長く登ってきたところに立っているのだから、高さがあり、大きな川の流れが一部見える。川が決壊してもここまでは水は来ないとも言われている。
事故現場だよ、ここでね、って話すことは今は不要だな。
「私ね、相談したいこと、というか、今日話したいってそのことだったのよ」
「うん、そのことってどのこと?」
「私、どうしたらもっと人から見てもらえるのかなって」
「?」
意外なところに飛んだ気がした。
「それか、もう気にしないで自分のしたいことだけ一人でします!みたいな」
あ~僕はそっちの代表と思われているのかな?
「御堂君は人から良いように見られているし、それでいて一人でしたいことしているよね、私のちょうど逆だもんね」
そんなことはないんだけどね。苦笑いするしかない。
坂を下りきり、死角の多い学校通りへ。
古い商店が立ち並び昔は活気があったであろう街の商店街。
くすんだガラスのフロントサッシがある建物が続き、
その前には黒い猫が寝ていたり。。。つまり人の出入りは無いのだろう。
都会と比べたら低く見える電信柱。
瓦の屋根。
道幅は相変わらず車がぎりぎり対面走行可能な幅。
一軒だけ割と元気に商売している、都会の大型コンビニよりずっと小さなスーパーマーケット。
一応はっきりしておこうと思う。
「そんなことないよ」
否定する。真向から否定できる。
「そう?周りのこと気にしてる?」
「気にしてるから・・・・ほら、こうやって田中さんと帰っている」
「あ、そうか(笑)ありがとう、気にしてくれて」
うっかりミスをしたような笑顔を田中さんは醸し出す。
ちょっと悲しげな雰囲気は消えて、晴れやかだとは言えないまでも、コミュニケーションに困るような雰囲気ではなくなってきた。・・・ように思う、まだ分からんけど。
「じゃあ気にするところがうまいんだ、きっと」
僕のどこかにヒントを見つけたいのだろうか。
だとしても、僕も良くわからない。
ただ、分かるのは・・・・
「私は、なんかこう・・・・周りが気になるんよね。多分私の悪口いっぱい言ってるんだと思うわ。そういうのん。けど・・・・」
「悪口なんて気にすんなよ」
それができたらいいんだけどね。言っている僕が実はできなかった。
「そうなんだけどね~」
できないよなあ。
「じゃあ、ボッチ決め込んじゃえよ」
僕がそれ。これが僕の分かることだ。
「ええ?それも怖いよ」
「そうか?もうボッチで~すってしちゃえばなんてことない」
「うーん・・・」」
笑顔のまま、困惑してしまう。あまりお好みな回答ではないらしい。
「それに江藤さんとかいるから、厳密にはボッチじゃないし」
「えっちゃんは良い子よね~」
「そうなん、あんまり絡まないから知らないけど」
確かに周りから色々言われてしまう環境にありながらニコニコしているなあ。あの子はきっと性格がよいから、良い人見つけたらスッと結婚しちゃうタイプかもね。
「えっちゃん、ええ子やけど・・・ちょっと違うかなあ。解決にはなってないし」
――――解決?
田中さんなりの『解決』というのが存在するみたいだ。
「それに私ボッチも決め込めないんだな~失敗しちゃってるから」
「何の失敗?」
「サッカー部・・・・」
ああ、選択ミスね。
一度仲良しパリピ族に入ろうとしたら、その後ボッチ決め込めるようになるまで長い時間がかかる。
『おまえは仲良しパリピ族でうまくやっていこうとしたけど、できんかったヘタレやろ?そんなんが格好つけて今度ボッチ気取るなや』
そういうもんだ。とことん陰気はつきまとう。あと、江藤さんは解決になっていない・・・この意味は分からない。
3
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/youth.png?id=ad9871afe441980cc37c)
大好きな幼なじみが超イケメンの彼女になったので諦めたって話
家紋武範
青春
大好きな幼なじみの奈都(なつ)。
高校に入ったら告白してラブラブカップルになる予定だったのに、超イケメンのサッカー部の柊斗(シュート)の彼女になっちまった。
全く勝ち目がないこの恋。
潔く諦めることにした。
脅され彼女~可愛い女子の弱みを握ったので脅して彼女にしてみたが、健気すぎて幸せにしたいと思った~
みずがめ
青春
陰キャ男子が後輩の女子の弱みを握ってしまった。彼女いない歴=年齢の彼は後輩少女に彼女になってくれとお願いする。脅迫から生まれた恋人関係ではあったが、彼女はとても健気な女の子だった。
ゲス男子×健気女子のコンプレックスにまみれた、もしかしたら純愛になるかもしれないお話。
※この作品は別サイトにも掲載しています。
※表紙イラストは、あっきコタロウさんに描いていただきました。
おてんばプロレスの女神たち ~男子で、女子大生で、女子プロレスラーのジュリーという生き方~
ちひろ
青春
おてんば女子大学初の“男子の女子大生”ジュリー。憧れの大学生活では想定外のジレンマを抱えながらも、涼子先輩が立ち上げた女子プロレスごっこ団体・おてんばプロレスで開花し、地元のプロレスファン(特にオッさん連中!)をとりこに。青春派プロレスノベル「おてんばプロレスの女神たち」のアナザーストーリー。
放課後はネットで待ち合わせ
星名柚花(恋愛小説大賞参加中)
青春
【カクヨム×魔法のiらんどコンテスト特別賞受賞作】
高校入学を控えた前日、山科萌はいつものメンバーとオンラインゲームで遊んでいた。
何気なく「明日入学式だ」と言ったことから、ゲーム友達「ルビー」も同じ高校に通うことが判明。
翌日、萌はルビーと出会う。
女性アバターを使っていたルビーの正体は、ゲーム好きな美少年だった。
彼から女子避けのために「彼女のふりをしてほしい」と頼まれた萌。
初めはただのフリだったけれど、だんだん彼のことが気になるようになり…?
優秀賞受賞作【スプリンターズ】少女達の駆ける理由
棚丘えりん
青春
(2022/8/31)アルファポリス・第13回ドリーム小説大賞で優秀賞受賞、読者投票2位。
(2022/7/28)エブリスタ新作セレクション(編集部からオススメ作品をご紹介!)に掲載。
女子短距離界に突如として現れた、孤独な天才スプリンター瑠那。
彼女への大敗を切っ掛けに陸上競技を捨てた陽子。
高校入学により偶然再会した二人を中心に、物語は動き出す。
「一人で走るのは寂しいな」
「本気で走るから。本気で追いかけるからさ。勝負しよう」
孤独な中学時代を過ごし、仲間とリレーを知らない瑠那のため。
そして儚くも美しい瑠那の走りを間近で感じるため。
陽子は挫折を乗り越え、再び心を燃やして走り出す。
待ち受けるのは個性豊かなスプリンターズ(短距離選手達)。
彼女達にもまた『駆ける理由』がある。
想いと想いをスピードの世界でぶつけ合う、女子高生達のリレーを中心とした陸上競技の物語。
陸上部って結構メジャーな部活だし(プロスポーツとしてはマイナーだけど)昔やってたよ~って人も多そうですよね。
それなのに何故! どうして!
陸上部、特に短距離を舞台にした小説はこんなにも少ないんでしょうか!
というか少ないどころじゃなく有名作は『一瞬の風になれ』しかないような状況。
嘘だろ~全国の陸上ファンは何を読めばいいんだ。うわーん。
ということで、書き始めました。
陸上競技って、なかなか結構、面白いんですよ。ということが伝われば嬉しいですね。
表紙は荒野羊仔先生(https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/520209117)が描いてくれました。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/youth.png?id=ad9871afe441980cc37c)
隣人の女性がDVされてたから助けてみたら、なぜかその人(年下の女子大生)と同棲することになった(なんで?)
チドリ正明@不労所得発売中!!
青春
マンションの隣の部屋から女性の悲鳴と男性の怒鳴り声が聞こえた。
主人公 時田宗利(ときたむねとし)の判断は早かった。迷わず訪問し時間を稼ぎ、確証が取れた段階で警察に通報。DV男を現行犯でとっちめることに成功した。
ちっぽけな勇気と小心者が持つ単なる親切心でやった宗利は日常に戻る。
しかし、しばらくして宗時は見覚えのある女性が部屋の前にしゃがみ込んでいる姿を発見した。
その女性はDVを受けていたあの時の隣人だった。
「頼れる人がいないんです……私と一緒に暮らしてくれませんか?」
これはDVから女性を守ったことで始まる新たな恋物語。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/youth.png?id=ad9871afe441980cc37c)
学園のマドンナの渡辺さんが、なぜか毎週予定を聞いてくる
まるせい
青春
高校に入学して暫く経った頃、ナンパされている少女を助けた相川。相手は入学早々に学園のマドンナと呼ばれている渡辺美沙だった。
それ以来、彼女は学校内でも声を掛けてくるようになり、なぜか毎週「週末の御予定は?」と聞いてくるようになる。
ある趣味を持つ相川は週末の度に出掛けるのだが……。
焦れ焦れと距離を詰めようとするヒロインとの青春ラブコメディ。ここに開幕
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる