【R15】【第一作目完結】最強の妹・樹里の愛が僕に凄すぎる件【第二作目連載中】

木村 サイダー

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第一巻

★一緒に帰ろう

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 で、夕方。
 僕は席で帰らずに待っていた。

 僕が帰らずに座ったままでも、特に「どうした?」と聞いてくるやつはいない。

 今日は特にボッチが助かる。

 下手に仲間がいたら、仲間意識で「おう、帰ろうぜ」とか声かけられた時に断る理由をうまく作らないといけない。僕はその点不要。

 二つ前にはかばんを机横のフックにかけたままにして、一時的どこかに行っている田中さん。

 僕ら二人だけが残れば、それは明らかに浮いてしまって、何言われるか分かったもんじゃない。それは田中さん自身が嫌なんだろう。

 はふーどうしよ、いきなりこの教室に戻ってきて、

 妄想の田中さん「御堂くん、あなたが好きです」

 そういって首に手を回してきて……

 そんな、そんなことないわ、ハハハハ……

「ごめんなさい、お待たせ~」
「あうつ&%$#」

「え?どうしたん? 慌てて」
「い、いやいや、何にも……」

 もう、取り繕うのが必死。
 夢想状態からの、いきなり現実に戻されて、しかもその戻したのが今回のメインになる人だから溜まったもんじゃない。

 一応平然を装う自分。内心はまだ混乱しているのだが、そんなことは当然お構いなしで本題に踏み込む。

「あのね、御堂くん……」

 田中さんがさあ、これから話そうとすると、またもや、またもや、部活の子らが廊下を通りかかる。そうなると男女二人でいるのがよく分かる。

 何かしら体育系の男子二人がこっちを見て、ニヤニヤしながら通り過ぎる。

 ……ちょっとなあ
「……よかったら一緒に帰ろうか」

 田中さんの一言だった。

 祝・初、女子と一緒に帰る。

 これはなかなか……
 いやいや、どうして……

 ――これ、カップルによくあるやつちゃうん?

 この学校でもカップルは二ケツして自転車で駅まで行ったり、二人で歩いたりしているのもおるけど、ボッチの僕に確実に無縁だった現象。

 憧れの「女子と二人一緒の下校!」

 まさか高校二年生の夏前に完全攻略してしまうとは……

 いやいやいや、告白してきたわけちゃうし、攻略なんてしていないだろうがよ。

 ええ? ハードル高いかな? 大丈夫かな、小学校の集団下校とか多数対多数でしかないなあ。会話持つかなあ‥‥‥
 そんなことが一秒ぐらいの間にぐるんぐるん回ってかなり不安な気持ちであるものの、

「お、おおん」──『うん』のつもり。

 平然を装って鞄を持つ。

 シューズボックスからそれぞれの靴を取り出し、
 ツツジの校庭。石畳の庭を二人で歩く。

 僕もホント、何話していいか分からないから、

「だいぶ暑くなってきたよね~」

 こんなことしか言えなかったトホホ……

 樹里だったらどんな返ししてくるだろうか?

 『それが?』無表情の冷たいまなざしで(終了)やろうね。

「そうやね~上着着ていたら暑いよ、もう……」

 上着、上着、上着……あ、新・制服!!

 校門のところにさしかかった。
 連想ゲームを始めた僕。

「そういえば新・制服っていつからだっけ?」

「確か7月初めか、中頃だったんちゃうかな。私あれ嫌やわあ」

「え?なんで?」

 意外な反応に一瞬目を丸くした。
 今の寸胴スカートを嫌がる女子のほうが多いのに。

 左曲がり下り坂を下る下る下る。

「ええ、なんかちょっと。派手すぎへん、この辺が」

 そういって鞄の持っていない右手を足の膝あたりで左右にぶらんぶらんさせている。

「田中さん、長めにするの?」

 多分女子の大半は膝上にする。そこから『私可愛いですモテてますアピール』でどんどん上になるようだ。

「膝下にするよ、もうちょっと長くすると思う。あの生地割と薄いみたいだし」

「そうなんだ。真面目だね」
「………………」

 あれ、急に黙った。
 校門をくぐり、たんぼや畑の道で車1台がようやく行き違える幅の道を二人で歩く。

 そしてこの近辺で一軒だけある、もはや壊滅しているのではないかという、たこ焼き屋を過ぎる。

 会話が……終わった。
 え? どうしよどうしよ? どうしようかなあ。

「御堂くんさあ、勇気あるよね」

 めっちゃ平然な顔して歩いているけど内心超ヤバイモードに突入してしまっていた僕だが……なんのこと?

「え? なにが?」

 キョトンとしてしまう僕。

「こないだ後輩の女子をおんぶしてあげてたでしょ。あれ」

 あーそれね。
 あれは僕としては何ということはない。

「眼の前でガッシャーンって車とぶつかってマジびっくりしたわ。知ってる子やねん」

「へえーそうなんやあ。実はあたし後ろから見ててんで」

 ――後ろにおったんかいな。

「ササッと駆け寄って行って、あの子顔面蒼白で座り込んでたやんかあ、そこに行って体揺らしてあげてたり、撫でてあげていたり……」

 そ、そうやったかな?瞬発的に動いたことなんで‥‥‥

「そうやったあ?なんし、あかん! これは!と思ったぐらいしか覚えていないわ」

「それで動けるのが凄いよ。私やったら固まってしまうし」

「僕も知らん子やったらさすがにできんと思うよ」
「あとそのあとおんぶしてあげてさ」田中さんがクスッと笑う。

「なんかホンマに青春ドラマのワンシーンかよ!ぐらいに思ったよ」

「あ、はははは」

 褒められているんだか、馬鹿にされてるんだか……

「あれ、なんでおんぶしたん?」

「いや、らんちゃん……あの子、らんちゃんて言うんだけど、らんちゃんが救急車乗りたくない、絶対にやりたい用事があるから学校行くって言うから」

「へー」

「だけど、足を怪我してて、あるいていくにはちょっとキツそうやってん。骨とかは折れてないけど。あとで病院で分かったのが捻挫やってんけどな。」

「うんうん」

 ちゃんと聞いてくれてる。この感覚が新鮮だった。

「で、らんちゃん自転車置いて何とか行こうとしたのよ、歩きで。でも無理でさ」

「へー、で、協力してあげたんやね、凄いわあ」

「え、そ、そうかな」

 照れる。僕のような非モテキャラは女子から「ウザい」と言われたことは何度かあるが、「凄い」と言われた経験はほとんどない。行ってくれる女性は母親のみ……さぶっ!

「あれは女子からのポイント高いと思うよ、きっと」

「そそそ……そうかなあ」

 女子から褒められてることに、慣れていないから気持ちが浮つきそうになる。

 ちょっと浮足立って勘違いしそうな僕を横目に、田中さんは少しずつ影を作りだした。

「今もこうやって私と歩いて帰ってくれてるでしょ、これも勇気あるなーって私思う」

 え? それはまた、なんで?
 別になんも思うところはないけど。

「知ってるやろ、私との……あだ名とか」

 影を作り、悲しげな笑顔。

(あ~それか、そういうことか……)

 いわゆるスクールカースト底辺女子(男子)となんて歩いているところを見られれば、『ちょっとでも小マシなあなたまで同じ位置になりかねないのに』というやつね。

「……関係ないわ僕には」

 本心だ。もともとこの学校では、僕は群れていないし。

 事故後の交差点に差し掛かる。今はなにもなかったかのように平穏無事な静かな場所と化している。夕方ではあるがまだまだ青く明るい空。

 とはいえ、ぼちぼち日が傾きかけているのがここから分かる。

 やはり坂をゆっくり長く登ってきたところに立っているのだから、高さがあり、大きな川の流れが一部見える。川が決壊してもここまでは水は来ないとも言われている。


 事故現場だよ、ここでね、って話すことは今は不要だな。

「私ね、相談したいこと、というか、今日話したいってそのことだったのよ」

「うん、そのことってどのこと?」

「私、どうしたらもっと人から見てもらえるのかなって」

「?」

 意外なところに飛んだ気がした。

「それか、もう気にしないで自分のしたいことだけ一人でします!みたいな」

 あ~僕はそっちの代表と思われているのかな?

「御堂君は人から良いように見られているし、それでいて一人でしたいことしているよね、私のちょうど逆だもんね」

 そんなことはないんだけどね。苦笑いするしかない。

 坂を下りきり、死角の多い学校通りへ。

 古い商店が立ち並び昔は活気があったであろう街の商店街。

 くすんだガラスのフロントサッシがある建物が続き、その前には黒い猫が寝ていたり──つまり人の出入りは無いのだろう。

 都会と比べたら低く見える電信柱。
 瓦の屋根。

 道幅は相変わらず車がぎりぎり対面走行可能な幅。

 一軒だけ割と元気に商売している、都会の大型コンビニよりずっと小さなスーパーマーケット。

 一応はっきりしておこうと思う。

「そんなことないよ」

 否定する。真向から否定できる。

「そう?周りのこと気にしてる?」

「気にしてるから……ほら、こうやって田中さんと帰っている」

「あ、そうか。ありがとう、気にしてくれて」

 うっかりミスをしたような笑顔を田中さんは醸し出す。

 ちょっと悲しげな雰囲気は消えて、晴れやかだとは言えないまでも、コミュニケーションに困るような雰囲気ではなくなってきた、ように思う、まだ分からんけど。

「じゃあ気にするところがうまいんだ、きっと」

 僕のどこかにヒントを見つけたいのだろうか。
 だとしても、僕も良くわからない。
 ただ、分かるのは……

「私は、なんかこう……周りが気になるんよね。多分私の悪口いっぱい言ってるんだと思うわ。そういうのん。けど……」

「悪口なんて気にすんなよ」

 それができたらいいんだけどね。言っている僕が実はできなかった。

「そうなんだけどね~」

 できないよなあ。

「じゃあ、ボッチ決め込んじゃえよ」

 僕がそれ。これが僕の分かることだ。

「ええ? それも怖いよ」

「そうか? もうボッチで~すってしちゃえばなんてことない」

「うーん……」

 笑顔のまま、困惑してしまう。あまりお好みな回答ではないらしい。

「それに江藤さんとかいるから、厳密にはボッチじゃないし」

「えっちゃんは良い子よね~」
「そうなん、あんまり絡まないから知らないけど」

 確かに周りから色々言われてしまう環境にありながらニコニコしているなあ。あの子はきっと性格がよいから、良い人見つけたらスッと結婚しちゃうタイプかもね。

「えっちゃん、ええ子やけど……ちょっと違うかなあ。解決にはなってないし」

 ――解決?

 田中さんなりの『解決』というのが存在するみたいだ。

「それに私ボッチも決め込めないんだな~失敗しちゃってるから」

「何の失敗?」
「サッカー部……」

 ああ、選択ミスね。

 一度仲良しパリピ族に入ろうとしたら、その後ボッチ決め込めるようになるまで長い時間がかかる。

『おまえは仲良しパリピ族でうまくやっていこうとしたけど、できんかったヘタレやろ? そんなんが格好つけて今度ボッチ気取るなや』

 そういうもんだ。とことん陰気はつきまとう。

 あと、江藤さんは解決になっていない……この意味は分からない。
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