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★オッペケペーズの田中真理その二

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放課後もよろしくない。
昨日、うちの樹里神様に呪いをかけられたのか、担任の先生の雑用を手伝っていた。そんなひどい雑用ではないのだが、色々書類を書庫に持っていく手伝いと、その中での移動だった。十五分ぐらいかな、されど十五分。この十五分は僕にとっては重要だ。
なんといっても樹里神様を怒らせてしまったため、揚げ出し豆腐を作らないといけなくなった。・・・・てか、なんで怒られなあかんねやろう、あんまり分からないけど。
十五分あれば、豆腐を電子レンジで水切りし、片栗粉をつけてフライパンであげる、ぐらいまでのことはできるぞ。
どうせ手抜き家庭料理のやり方しか知らないし、単純なことしか僕はできないから。
さらに十分ほど担任の山花先生と雑談で経過した。
『特進科どうや?付いていけそうか?』とか、『都会のしかも市内からこっちに来るなんてちょっと珍しいなあ』とか『今住んでいるところで、無理なくちゃんと生活できているか?』とか・・・
気持ちのあるちょっとした先生なりのお近づきコミュニケーション。
帰って早く晩飯の準備がしたいとはいえ、こういう心遣いはありがたい。雑用言ってくるのもなんとなくこの先生と僕は気が合う気がしてて、向こうも多分そうなんだと思うので気にはしない。

でも、
『おまえの妹、(色んな意味で)大変なやつやなあ』
そこに来ましたか?
まあそれはね。。。
てか『やっぱりそこかい?』って感じ。

担任と別れたあとに、樹里に『ちょっと遅くなるけどちゃんと揚げ出し豆腐作るから』とメッセージアプリを送信。連絡入れとないとまた何か天罰落とされるぞ。

教室に鞄や私物などを置いていたので、戻っていた。
二十五分もたてば学校はアフターモード。だいたいは部活主体に変わっていき、帰宅部の僕には用事はない。少しだけ軽音部だけは興味あったりもするけどね。
僕たち二年生は職員室と同じフロアで二階だ。
(・・・・・・・あ)
田中さんがいる。
後ろの扉で僕は立ち止まった。
一人でいる田中さん、なにか考え事でもしているのだろうか、、、てか今日のあれと、あれだよな。
なんか、がらがらがらっと入るのはどうかな、と思ったんだ。

――――泣いてる、なあ。
小さな嗚咽と肩の震えが見受けられる。
よっぽどキツかったんかな。
授業中椅子からひっくり返るぐらいの芸当は小学生でもするが、あれは芸当じゃなかったし。顔打ったし。そういうことをしたくてしたんじゃない上におもいきり笑われて・・・
――――田中さんじゃあ、笑いに変えたり、何ともないふりをしてやり過ごすことなんてできないよな。
それになあ・・・陰から色々言われていることも本人の耳に入っているだろう。その悪口の数々を踏まえた上での今日の二限目の不運もあって辛いんだろうなあ。
(どうしよう・・・・何か僕が言って上げれることあるかな)
正直、荷物取りたいのもあるしなあ。
ううん、入るか。。。
男は愛嬌だ!

ガラガラガラ・・・・

田中さんが涙目で振り返る。
僕はニカッとしてみる。ビームは出していないけど。
「こ、こんばんは」
恥ずかしい。恥ずかしながら、何も言うことが見当たらず、これしか出てこない。
「ご、ごめんなさい」
田中さんは慌てて席を立とうとする。
「あ、待って、その・・・・」
「え?」
鞄を持とうとする手が止まる。
(ええっと・・・何言ったら良いんだろう・・・・)
「今日、、、きつかったね」
「ええ、ああ、あんなことになるって思わなくて」
田中さんが無理に笑顔を作ろうとする。
「そうだよね、分かるよ」
こういう時ってどう言えば伝わるんだろうか、そう思えば思うほど言葉が出てこない。
「自分から仕掛けて、笑かすんならいいけどさ、あんな不本意なのは、嫌やんなあ」
――――あと、あれ、、、やっぱり返すべきかな?
僕はそれの思案もあった。
返すべきか返さないで捨ててしまうべきか・・・・
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
あかん、沈黙してしまう。
「と、とりあえず気にしなや。あんなの、もう明日には皆忘れてもうてるしさ」
「・・・・・・・・・う、うん」
あの紙が無くなっているのに気づいて、あれ?どこ?どこ?誰か見て私をネタにしてしまうんじゃない??って怯えるよりもいいかな。
――――よし、とりあえず返そう!
「あと、これさ、落ちてて・・・・」
僕はポケットの中からあの紙を出す。
「あ、そ、それ」
「探してた?消しゴムひろったあとに見つけて、渡すの今になってもうた」
紙を手渡す。

実はあの紙には、
「私、田中真理は、注目される人気者になって皆から愛されキャラになることを誓います!!ガンバロー!一年前の三月の日付」
と書かれてあった。

自分への手紙とエールをお守りのようにして持っていたんだ。
「見たの?、うう、ううう・・・・」
恥ずかしさのあまり顔がみるみる赤くなってしまっている。
「あ、あのごめん、ゴミかなにかかなと思って捨てようと思ったんだけど、一応中身は確認しないとと思って見たら、、、それにこうなってきちゃうときっとこれ大事なもんだったのかなと思って直接渡すほうがと・・・」
「あ、ありがとう、か!帰りまーす!」
恥ずかしさのあまり顔を伏せてスーパーダッシュで教室から出て行ってしまった。
――――失敗だったかな。
まあそりゃ、ただの色紙に書いてある一女子の誓いみたいなもんだけどさ。
捨てるのもな、ちょっとなあと。
他の人には見られたくないだろうから、江藤さん経由というのもさ。違う気がした。

ちなみに田中さんは、僕は全然不細工とは思わない。なぜオッペケペーと言われてしまうかもよくわからない。
あえてそれを周囲にも聞いてはいないが、理由があるとしたら、二つないし三つ。
一つは髪型。前に誰かが「触手生えてる」と言ったやつがいた。
天然パーマでボワッと膨れた頭で、肩よりもう少し長い髪を二つにわけてくくっているのだが、そのくくり方が田中さんは後頭部で左右二か所ずつ、計四か所くくってとめている。昔の校則・旧制服時代はポニーテールや、巻き髪は勿論NG、女子は肩にかかれば二つくくりか三つ編みか、多分学校から注意されて、くくり方を変えさせられていないところを思えば、この田中さんのくくり方もOKなんだろう。旧制服の2年生だけは未だに校則が厳しい時代のままで、それに準じた髪型・服装でなければならない。不条理だ!っつうの。
二つ目は顔の脂。すごい脂性肌なのか、顔に膜がはっているかのように見えるときがあって、テカテカしている。テカテカしている割には、肌の色合いがあまり良くない。きれいな肌色をしているようには見えないのだ。
三つ目は、これが本当としたら僕と同じことを、頑張る方角の失敗をしている。デビューしようとして、サッカー部のマネージャーをしようとしたが、すぐに辞めているらしい。前に普通科にいたときちょっとだけ聞いたことがある。サッカー部は一番スクールカースト高めを目指すチャラい奴らの集まりで、サッカーの実力は大した事ないが、先輩連中らにしろ、格好つけの、いきりたがりが多いように思えた。僕は危険信号を感じて即効距離をとったよ。
あ、ちなみにあいつらは〇勝八敗らしいわ。。。樹里に(笑)
告白したりお誘いして、ことごとく断られたりフラれている(笑)しかも三年生の一人が告白して断ったら「態度が悪い」「俺の顔に泥を塗った」と言って逆切れして、樹里に襲い掛かるというバカなことがあったらしい。樹里は一人で、三人の高三男子相手にボコボコにしたらしいけど。
あんな連中らに巻き込まれたら承認欲求の底なし沼に引き込まれるか、弾かれたらスクールカーストは最下位にのしつけられて定着させられる。

それ以外はそんなになにかダメって子じゃない。
むしろ鼻筋も通っていて、あごのラインとかはキレイだし、
おそらくスタイルもそんなに悪くない。
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