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★エロゲーとホラーな樹里

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そんなこんなで、今日も終わり。
帰ってきたときにスーパーに寄って、今日はお惣菜のコロッケとメンチカツと千切り用のキャベツ四分の一の小さめのやつを選んだ。多分だが格闘技してきたあいつは割といつも濃いものを欲しがるんだな・・・これは長いこと一緒にいるし、ここ半年ぐらいは同棲状態の僕だから分かること。
あとは梅干し2個分の味噌を使って、なんとなーく出汁の素を入れて作る。具は今日はしんどいし、ネギを小口切りして、豆腐はさいの目。それらを入れてほんの少しだけごま油を落として他とは違う風味付けをする。
少し味濃いめの味噌汁が出来上がり。
樹里はこれが大好きなのだ。
予感は的中で、空手から帰ってきた樹里、「今日なにー?」という問いかけに、本日の献立を告げると、
「よっしゃあ、ウフフ…♪」
自然な笑みがこぼれた。僕もヨッシャーって内心思った。
こういう時に見る樹里は、普通の十五歳そこそこの女子に見える。
今日はちょっとやりたいことがあったから樹里の承諾を得て、僕だけ先飯させてもらった。食後、樹里の晩御飯の準備をし、味噌汁はセルフサービスで温めてもらう。
あと他の家庭では変なのかもしれないが、うちは樹里がお風呂に入っている間に、自分の脱いだ衣類と樹里のを洗濯機に入れて回す。あいつは時々部屋で脱ぎくさすところがあるから、部屋にそれらがないか見に入る。樹里がいないときに樹里の部屋に入っても彼女はまったく怒らない。そんなことはまったく気にしない。逆に洗ってなくて置き去りだったら「ガーン!なんで洗っといてくれへんねん?」とか言ってくる。
ところで、今日のちょっとやりたい事。それは・・・
――――フッフッフッ…エロゲーだ。
しかも今日はいよいよ美沙ちゃんとのエンディングロールが見れるんだ。これは是非是非体感したい達成感なんだ。





ゲーム内のヒロイン美沙との濃厚エロシーンが二回ほど残っていて、それらのイベントをクリアした。
すぐ近くの部屋からは樹里が叩く電子ドラムのパカポコ音が聞こえる。端で聞いていたら間抜けな音だが、実際にスピーカーにつないで叩くと凄い迫力なのも知っている。メタル系有名アーティストみたいに鬼の形相で暴れまくって連打しまくるような、そんなに派手なプレイスタイルではなく、割と単調にリズム体としての基本通りのビートを刻むけど、おそらく実際の楽器のドラムで叩けば重たい音が出せるのが分かる。
パカポコでは何を叩いているのかが分からない。たまにスネアドラムのオープンロールや、タムやトップシンバルも含めた連打は、聞いていて心地よさそうだ。
エロゲーの方はエンディングを迎え、二人は永久の愛を誓い、学園を卒業していく。ハッピーエンドの後日談になる。
ちゃんとゲームの主人公は僕の下の名前と同じにしてあるさ、フッフッフッ。

~ゲーム内~

美沙「雅樹、私、もうあなたしか見えない」
卒業式が終わった後、二人で夕方の浜辺を歩いているとき、会話の中で二人のこれまでの軌跡を辿ったあとだった。
「俺もだよ、美沙」
美沙「あなたに会えたこと、こうしてあなたととも時を過ごせること、こんなにも愛おしく感じるの、初めて」
――――ええ子やあ
最初は色々あって、お互いすれ違うこともあったけど、ようやくここで二人永遠に結ばれるんだ。
「美沙、でも本当に俺でいいのか?」
美沙「え?」
「僕は学園中の奴らから変わり者扱いされているようなやつだぞ」
美沙「かまわないわ」
美沙の絵の瞳は潤む。最近のエロゲーはこういうとこまで細かい設定ができているのが素晴らしいよね。
――――僕の瞳も潤みそう
美沙「あなたと幸せになりたいの。あなたしか無理なの。あなたが周囲から変人と呼ばれているのも知っているけど、あなたはそんな人じゃない。優しい、誰よりも優しい人よ」
「美沙」
――――美沙ちゃん・・・・
思わず近くにあるタオルを口に持っていき、噛んでしまう。
美沙「私は、あなたと共に生きて行きます。私から卒業はしないでね」
「美沙‼」
雅樹は美沙を抱きしめた。夕日と海が背景になっていて波の音が聞こえている。
ええ話や、ええ話やなあ・・・・ちょっと泣けてきたわ、ここまでくるのに色々あったしなあ。最近のエロゲーのストーリー性、背景、心理描写のクオリティはホンマに高いわ。なんかすぅーっと風が入ってきたけどなにやろ・・・まあ海やし3月やから仕方ないか、冷たい風も吹くわなあ
「あ、あにぃ・・・・?」
――――そんなセリフ言うやつはおらんやろ。
シーンはかわり、二人のその後日談になる。両親の反対もあり、アパートに住んでいる。貧しそうだが明るい二人。幸せそうな顔して美沙は、雅樹と腕を組みながら夜、銭湯に向かう絵が出てきて。バスグッズを持って並んで歩く二人・・・・ええなあ、ええなあ・・・

~ゲーム外~

「あにぃ~おまえは兄でない。。。」
ドスの聞いた、地の底からの黒いエネルギーを帯びたような声。
――――いやだからそんな悪魔系のセリフ入ることないやんて・・・・
え?めっちゃ恐る恐る振り返る。
扉が人一人の顔の分だけ開いていて、その隙間から、まるであの超有名ホラー映画の表紙のような笑顔をした樹里が扉の間にはさかっている。
「ギャ――――――――!!」
――――ホラーや!!ホラー!!
悲鳴をあげてジタバタしていたら、
「何してんよほんま~??」
ドカドカっと入ってきた。
「てか、おまえが何してんよ?!」
めっちゃ血圧は急上昇。心臓がバクバクする。
あ、下半身大丈夫か??今日は自家発電していなかったからちゃんと履いてる、セーフ!いや?!それ以外が全部アウトやろ!!
「宿題しとこう思ったらいきなり分からんところで、それを聞こうと思ってきたんやがな」
「あ、あ~そ、そうなん??」
「そしたらなに~?これ、あにぃタオルはむはむしながら何悶絶してるんよ??あ、これエロゲーってやつ?」
すかさず机の上のゲームの攻略本いわゆる「ビジュアルファンブック」を手に取られて見られる。
「こら、かか、返しなさい」
瞬時に取り上げられ、パラパラとめくられれば当然色々大変でえらいこっちゃなシーンがいっぱい出てくる。
「・・・う~わ、ヤラシッ!なにこれ~??」
ビジュアルファンブックにその美しく鋭い目線が、一瞬で穴あくほど送られる。
「返しなさいとちゃうねん、なにこのおっぱい??」
性行為中の女の子をページを開いてこちらに見せてくる。エロゲーヒロインたちはだいたいにして巨乳。現実世界でなら爆乳レベルなのだよ。特にそのメインヒロインの子(美沙ではない)は爆乳娘なんだ。しかもその画は、本作中一番エッチなことをしながら主人公にうっとり微笑みかけているシーンだった。
「ちょっ、しかも・・・・え、なに?名前あにぃの名前に変えてんの?キンモ!」
今度はPCのエンディングの画面を樹里が見だした。
「あ、いや、これはより臨場感を楽しむというか・・・・」
「おいおい、しかも何で結婚しとんね!!コラッ!勝手に!!おまえら??おい!おまえら?おまえ??」
「あ、愛し合っていたら結婚もしますやん」
エロゲの結婚を樹里の許可取らなあかんかったんか?
――――んなアホな!
結婚式の画で、しかもなんでゲームで僕が怒られてるんやろう?そこ怒るとこなん??もう誰か助けて!!
そしてエンドロールになり、製作スタッフの方々の名前が出てきて、愛の歌的なエンディングの音楽がかかる。二人の甘いベッドライフシーンの回想映像が流れる。
「ホンマに、朝は朝で、なんかええ男なことしてるかと思ったら、夜はこれかいな!ほんでこいつ誰や!美沙とかいう女やなあ、どれやどれや」
ペラペラとめくり、
「こいつか・・・・」
多分キャラ設定のページにいったな。
「どれどれ?スリーサイズは・・・・」
な、な、何調べとるねんこいつ?
「バスト八十七、うっしゃー!楽勝!」
何戦ってんの・・・・?
――――勝たんでよろしいわホンマ・・・
「ウエスト五十八って、こいつ中学生かっつうの、ありえへんて」
負けたみたいやね。
「ヒップが八十八、オルァ!また勝ったで!」
――――悪夢だ。
「私の方がエロゲーのキャラよりスタイルいい~」
そういいながら樹里は、体を僕から向かって横にして、腰を落として臀部を少し突き出し、右手を髪の毛に左手を自分の左胸を軽く押し上げるポーズをとり、ウインクする。
――――その勝負いる??
「ケケケケケケッ!」
すぐさま仁王立ちになり、次はどんな手で僕を虐めようかと模索してる。
今晩感動の青春映画のようなシチュエーションから、いっきにホラー映画で悪魔に嬲りあげられている僕がいる。
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