【R15】【第一作目完結】最強の妹・樹里の愛が僕に凄すぎる件【第二作目連載中】

木村 サイダー

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第一巻

★毛が立った。

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★樹里の視界


これは事故の気配やなあ。
私は自動車道をスピード違反の原付より速く自転車をこいでいるのだが、、、
田舎の道は事故になるとすぐに混む。
道幅がないうえに近所の人たちが野次馬しに道に出てくる。そして事故の状況をネタに何分も喋りだす。そしてその環がまた邪魔になり、車が進まない。そこに私達通学の自転車が入り込む。
仕方ない、スピードを落とす。私まで事故したらアホみたいやし。
――――ちょっとしたカオスやわ。ここにきて三ヶ月の間にこれで三回。行政ホンマもうちょっと考えろよな。
自転車で喧騒をすり抜けながら進む。しかしそんなに今日はこれでもスピードを出してはいない方。出す必要もない・・・今日は優等生なんだから。
優等生とは言っても余裕で間に合う時間内に入れるだけの話である。単純に言えば、私にしては早い方かなってこと。
個人的に思うには、スクールベストがどれだけ早く洗濯が出来上がった服の山から見つけられるかが以前は遅刻するかしないかの鍵を握っていた。だから前日に服の山から引っ張り出して見えるところに置いておく。
――――どうよこれ?興奮もんでしょ?画期的じゃない?発明じゃない?賢くない?←当たり前だろと筆者は言いたそうだけど。

みんな知らないかもしれないけど、私のように胸が大きい女子は服のサイズで苦労している。そこに私の場合は背中の筋肉の大きさや肩幅の大きさもあるから、ワンサイズ大きめぐらいじゃあ追いつかない。間違いなく力んだらボタンが弾け飛ぶ。ツーサイズスリーサイズ大きいやつで胸はちょうどになるけど、今度はその他がブカブカになる。だからオーダーメイドで作るんだけど、それでも体の凹凸が大きいとボタンとボタンの間に隙間ができてそこから不意打ちで中身のお肉が「こんにちは!」することがある。
――――実は結構大変なんやで!
そして目立つ属性の人間なもんで、そういう部分が見えたら、それをネタに色々陰口を言われたり、妙に男子らがはしゃいだり、酷い輩は隠し撮りしようとしてくる。
なので暑いけど私にとってスクールベストはその辺りをオールクリアしてくれる、かなりありがたい貴重なアイテムなのだ。
でも暑がりなのよね・・・あっし。別にブラチラして見られたぐらいどうってことないんだけど。気にもしていなかったし。
けどそれを撮影してネットあげるだ、連れ同士でシェアしてどうこうするだとか、めっちゃややこしい。はっきり言って今の時代はネットであげたら、アップロードしたもん負けなぐらいに特定されて逮捕・多額の損害賠償ものになるんだからね。写真撮りたがるやつほんまアホでしかないわ。目に焼き付けとけって(笑)
似た話だが、私の場合、コンビニでフランクフルトを買って友達と店の前で食べようとしているだけで、スマホのカメラで撮影しようとしているやつがいた。そういう感知能力は私は凄腕スナイパー並みに勘が働く。とっ捕まえてボコって消去させるけどね。

で、話戻してっと。
あーこっちか、事故は。ちょうど学校の方角やんか。
雰囲気的に分かった。
死角のカーブを一箇所、二箇所超えたところで、なだらかな登り坂。
その上の方で車が隅に寄せられている。多分自転車もその前にある。そんな自転車は大破していないように見えた。丁寧にスタンドも立てられている。
だが、そばに来たら自転車のフレーム面左側の塗装が激しく捲れていて、穏やかではないことが分かった。車のバンパーもしっかりガタガタになっていたし。
なんとなーく、気になった。時間があるからなのか、日頃からスルーなんだが。
真っ青な顔したおっちゃんが、どこからともなく歩いてきて、やたらと目があった。話すこともないんだが、
「大丈夫ですか?」
「だ、大丈夫やねんけど、当ててもうてな。当てた相手が見当たらんねん。携帯で救急車と警察呼んでいる間にどっか行ってもうてな。」
「ほえー」
「警察には『おってもらって』言われてんのになー」
焦ってるなあ。。。
なんとなく周りを見渡して…ここは視界が悪いからもうちょっと見える分岐路のところまで自転車で上がると、…なにやら人だかりが前の方歩いている。
よくよく見たらなんかおんぶされてる私と同じスカート履いてる女の子おるで。
あ、あれ?とおっちゃん呼んで指さしてみる。
おっちゃんは、「あーあれかな、ちょっとわし見えんけど」
私の視力は二、〇以上ある。
見つけた!
チャリをダッシュでこぐ
「おーい、そこのふたりー!」
おんぶして歩いている人なんて一瞬で追いつく。ちょっとギャラリーが邪魔なだけ。思いっきりチリンチリンとベルを鳴らしたながらこだわりのない私のママチャリを突撃させる。


★樹里の視界 終了


なんか後ろからエグいぐらいチリンチリン鳴らしながら来るものがある。チャリだとは思うけど、こっちに意識しろと言わんばかりだ。
「おーい、そこのふたりー!」
よく聞く声…樹里やん!
「ちょ…あんたらなにしてんよ?!」
さすがに樹里が目を丸くする。
そんなに知った相手でもない、しかも足を怪我しているらんちゃんをおんぶしてる僕がいるわけだから。仕方ないだろうなあ。
「樹里ねーたま・・・・・」
後ろでらんちゃん、心がジーンとしているのが伝わる。
「らんちゃんが僕の眼の前で事故にあったんだ、左足を怪我してるが骨折とかではないみたい」
樹里が目をらんちゃんの左足にやる。
「うわ、めっちゃ擦り傷あるやん」
「それもなんだけど、ヒネってるみたいやねん」
「樹里ねーたま・・・あたし・・・あたし・・・」
あ、あの、なんか火山が後ろで爆発しそうな予感。。。
さっき僕が駆け付けた時のように、安心と恐怖の気持ちが爆発的にこみ上げてきているんだろう。そして、
「怖かったですー・・・・う、うう、うえ~~~~~ん!えん!えん!えん!うえ~~~~ん・・・・・」
号泣。
「そやなあ、そやなあ大丈夫かあ、まあでも喋れてるから大丈夫やわ」
樹里は自転車から降りて、より近くに寄ってきて、おんぶで捕まっている左手をぽんぽんとしてやってる。
「樹里ねーたまのお兄様にも、こんなに迷惑かけて…えーんえんえんえんえーん!」
後ろで号泣されて僕は苦笑い…
樹里も、らんちゃんの左手を擦ってあげている。「こんな・・・・おんぶしてもらって・・・・ホントに、ホントに・・・え~~ん!えん!え~ん・・・」
?なんか泣き声のテンポがおかしくなったぞ?
え?なに??
次の瞬間、樹里は「うわっ」って顔をして、しゃがもうとする・・・?あまりにと咄嗟なので情景がスローモーションのように見えて、その次の瞬間
「ハクショーーーン!!」
大量の唾と、なにやら生暖かーいネッチョリした感触が僕の髪の毛にある。
特にセットもしていないし、ジェルも使っていないから・・・良いんだけどね。
――――多分これ、鼻水だよね。
ゆっくり後ろを振り返ると、
全容は見えないが「フニャ~」と、目が線のようになった、らんちゃんの左側の鼻から飛び出している半液体状のアレが、頭まで伸びている。
下から立ち上がってきた樹里が、
「うわ~これきぃったねー。めちゃ鼻水飛んでるやん(笑)」
「あ、あはあはあは・・・・」
笑うしかない。
「アー!!ご、ごめんなしゃーい!!わ、わらし!・・・」
「あーもうしゃーないなあ、タオルハンカチの予備あるわ、ほらッ」
かばんから取り出して後ろの、らんちゃんに渡す。
樹里は他にウェットティッシュを取り出して拭いてくれる。
「お兄様~ホントにごめんなさい…しっかり捕まっていることに意識が行き過ぎてて…」
「あ、ああ。し、仕方ないよね」
仕方ないとするしかないよなあ・・・
「日頃ワックスとかでセットしてなくてよかったなあ、あにい」
「ほんとうやな」
「ごめんなさい…(フキフキ)ごめんなさい…(フキフキ)ごめんなさい…(フキフキ)ごめんなさい…あ、、、」

「あ、毛が立ったね」
――――どんな状況?!

「ププププ・・・・・(笑)」
笑ってはいけないと分かりつつ堪えているから体が大きく震えているのが伝わる。
「毛固まって立ってるやん、昔のビジュアル系の人やん(笑)」
「・・・おい???」
僕はどんだけ遊ばれているんだ・・・・
女子二人の大爆笑の声が周囲を和ませた。
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