完全無欠の脳筋令嬢~脳筋思考で婚約破棄、弱い男は要りません!~

詩葉 豊庸(旧名:堅茹でパスタ)

文字の大きさ
上 下
11 / 18
婚約破棄編

11.脳筋令嬢の婚約

しおりを挟む

「お父様、フィオレンティナです」
 
 ドアをノックするとともにそう告げると、「入りなさい」という一言だけが返ってくる。
 魔物騒動から数日たったある日、私は突然クソ親父に呼び出された。

 理由はまだ知らない。

「失礼致します」

 相も変わらず、気持ちが悪いほど全てがきっちりとしている執務室である。
 クソ親父も掃除とかは自分でやるタイプだが、部屋の隅をみても埃一つ落ちていない。
 私の部屋なんて掃除をしても大量の埃が湧いて出てくるというのに。

「今回はどのような御用でしょう?」

 なにかの資料を見つめるクソ親父はこちらに目を合わせることはなく、口を開いた。

「まずは先の騒動の件、上手くやってくれたようだな。昨日、お前から引き継いだ現地視察に赴いた際にフリードリヒ会長が嬉々として語ってくれた。事後処理の件も助かったと言っていた。お前もようやくバルク家の人間としての自覚が芽生えてきたようだな」

「ありがとうございます」

 まぁ……事後処理のほとんどはバトラーがやったんだけどね。
 書いてある資料とかなにいってんのかさっぱりだったから、バトラーに見てもらったし。

 当然、そんなことは言えないけども。

 というかクソ親父が褒めるなんて珍しい。
 大学で色々な……よくわからん賞をとらされた時には何にも言わなかったのに……

「そんなお前に朗報を持ってきた」

 クソ親父は少し嬉しそうに言ったが、私には謎の悪寒が全身を駆け巡った。

「朗報とは……?」

 恐る恐る聞いてみると、クソ親父は少し厚めの冊子を取り出すと、

「お前と婚約したいと申し出てきた家があってな。一週間後に顔合わせのパーティーをすることになった。お前にはこの資料を読んでおいてもらいたいのだ」

 そう言い放った。

 ……は?

 思わずそんな言葉が出そうになるのを寸前と我慢する。
 
「お、お父様……婚約っていきなりすぎではありませんか?」

 無理無理無理!
 そんなの受け入れられないに決まっている!

「何を言うか。お前も来年には成人を迎える。むしろ貴族社会では遅い方なのだぞ」

 確かに貴族社会では私より二回りも年下の子でも婚約を結び、成人と共に結婚をする。
 または生まれた瞬間、許嫁がいるかのどちらかだ。

 一般人には少し外れた考え方だが、貴族社会ではごく当たり前のことなのである。

「それに今までそういった話を出さなかったのはお前の為でもあった。だが、このままというわけにはいかないだろう」

 そう……実を言うと私は今日こんにちに至るまで、そういった婚約とかの話はしてこなかった。
 というか避けていたのだ。

 理由は私の壊滅的な男運にある。
 私は幼い頃から、様々な男から被害を受けてきた。
 
 自分で言うのもあれだが、私には人を惹きつける何かがあるらしい。
 それは外見だけではなく、中身も含める。

 そういった事から誘拐されたり、監禁されたり……色々なことがあった。
 
 婚約についても同様だ。

 昔は何人か婚約者と呼ばれた男がいた。
 例えばそれに該当する10個上の男がいたのだが、そいつが後に生粋のロリコンだったということが判明。
 常軌を逸した行動の数々にクソ親父が怒髪冠を衝くほどのブチ切れをかまし、その家とは絶縁となった。

 当時の私は幼く純粋だったからか、優しいお兄さんくらいにしか思っていなかった。
 それが今思い返すと……うっ、吐き気を催す。

 他の男たちも同じようなもので、碌な人間が寄り付かなかったのだ。

「でもその方も万が一の可能性がありますし……」

「それなら大丈夫だ。家柄や人相を含めて私が見極めた男であるからな。安心して娘を預けられるといえよう」

 いや、なに自分で納得してんの?
 私の意見は?

「とはいえ、パーティーをセッティングしたのはお前がそう言うと思ったからだ。向こう側も快く承諾してくれた。お前にはバルク家の人間として相応しい振る舞いをしてもらいたい」

「で、ですが……」

「なんだ? それとも他に相手でもいるのか?」

「それはいませんが……」

「なら問題なかろう。話は以上だ」

「は、はい……失礼致しました」

 私は渋々返事をすると、執務室を後にする。
 そしてそのまま自室に戻り、ふかふかのベッドにダイブすると今まで鬱憤を晴らすかのようにため息を吐いた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

婚約破棄?一体何のお話ですか?

リヴァルナ
ファンタジー
なんだかざまぁ(?)系が書きたかったので書いてみました。 エルバルド学園卒業記念パーティー。 それも終わりに近付いた頃、ある事件が起こる… ※エブリスタさんでも投稿しています

婚約破棄と言うなら「時」と「場所」と「状況」を考えましょうか

ゆうぎり
恋愛
突然場所も弁えず婚約破棄を言い渡された。 確かに不仲ではあった。 お互い相性が良くないのは分かっていた。 しかし、婚約を望んできたのはそちらの家。 国の思惑も法も不文律も無視しての発言。 「慰謝料?」 貴方達が払う立場だと思うわ。 どれだけの貴族を敵に回した事か分かっているのかしら? 隣国で流行りだからといって考えなしな行動。 それとも考えての事だったのか? とても不思議な事です。 ※※※ゆるゆる設定です。 ※※※オムニバス形式。

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

婚約破棄は良いのですが、貴方が自慢げに見せているそれは国家機密ですわよ?

はぐれメタボ
ファンタジー
突然始まった婚約破棄。 その当事者である私は呆れて物も言えなかった。 それだけならまだしも、数日後に誰の耳目げ有るかも分からない場所で元婚約者が取り出したのは国家機密。 あーあ、それは不味いですよ殿下。

【完結】婚約破棄寸前の悪役令嬢は7年前の姿をしている

五色ひわ
恋愛
 ドラード王国の第二王女、クラウディア・ドラードは正体不明の相手に襲撃されて子供の姿に変えられてしまった。何とか逃げのびたクラウディアは、年齢を偽って孤児院に隠れて暮らしている。  初めて経験する貧しい暮らしに疲れ果てた頃、目の前に現れたのは婚約破棄寸前の婚約者アルフレートだった。

「本当の自分になりたい」って婚約破棄しましたよね?今さら婚約し直すと思っているんですか?

水垣するめ
恋愛
「本当の自分を見て欲しい」と言って、ジョン王子はシャロンとの婚約を解消した。 王族としての務めを果たさずにそんなことを言い放ったジョン王子にシャロンは失望し、婚約解消を受け入れる。 しかし、ジョン王子はすぐに後悔することになる。 王妃教育を受けてきたシャロンは非の打ち所がない完璧な人物だったのだ。 ジョン王子はすぐに後悔して「婚約し直してくれ!」と頼むが、当然シャロンは受け入れるはずがなく……。

婚約破棄されたら魔法が解けました

かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」 それは学園の卒業パーティーでのこと。 ……やっぱり、ダメだったんだ。 周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間でもあった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、第一王子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表する。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放。そして、国外へと運ばれている途中に魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。 「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」 あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。 「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」 死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー! ※毎週土曜日の18時+気ままに投稿中 ※プロットなしで書いているので辻褄合わせの為に後から修正することがあります。

悪役令嬢と言われ冤罪で追放されたけど、実力でざまぁしてしまった。

三谷朱花
恋愛
レナ・フルサールは元公爵令嬢。何もしていないはずなのに、気が付けば悪役令嬢と呼ばれ、公爵家を追放されるはめに。それまで高スペックと魔力の強さから王太子妃として望まれたはずなのに、スペックも低い魔力もほとんどないマリアンヌ・ゴッセ男爵令嬢が、王太子妃になることに。 何度も断罪を回避しようとしたのに! では、こんな国など出ていきます!

処理中です...