とある最弱者の貴族転生~高貴な《身分》と破格の《力》を手に入れた弱者は第二の人生で最強となり、生涯をやり直す~

詩葉 豊庸(旧名:堅茹でパスタ)

文字の大きさ
上 下
33 / 35

第三十三話 地獄の生徒会

しおりを挟む
 
「はぁ……はぁ……はぁ……あぁ~~~」
「ふふっ、ユーリ様ったら。そんな週末明けにお酒をたっぷりと浴び、二日酔いと共に休日の朝を迎えるおじさまのような声を出して」
「情報量が多いんだが……というか」

 そんなジョークを言っている場合ではない。
 俺は今、死にかけているのだ。

「まさかここまでとは……恐るべし生徒会」
「今回はまだ少なかった方ですよ。本番はこれからです」
「はぁ? これでいつもと比べて少ない……だと?」

 ふかふかのソファに頭ごと沈ませ、静かに目を瞑る。
 時刻は午後21時過ぎ。

 ようやく作業はひと段落した。
 
 作業を手伝い始めてから五時間を超え、今まで通しでひたすら書類確認と押印作業。
 終われば別の書類、それも終わればまた別の書類と無限連鎖に続き、便所に行く暇すらなかった。

 目はチカチカするし、腰は痛いし、肩はガクガクするし……
 まさに地獄の五時間だった。

 それに反して……

「フィアットは疲れてないのか?」
「私ですか? 私なら大丈夫ですよ。日常なので」

 ニコッと変わらぬ笑みを見せる。
 本当に疲れていないのか……?

「すごいな……」

 慣れって怖い。
 いや、でも待てよ。

「フィアット、一応聞きたいんだが生徒会に入ると毎日こんな作業をすることになるのか?」
「閑散期は書類仕事はほとんどありませんが、今の時期みたいに学園行事が近い月や行事月は忙しくなります。特に行事が催される一週間前はやりがいが――」
「お断りさせていただきますっ!」
「あ、ちょっと!」

 俺の身体はフィアットが話し終わる前に動いていた。
 このままじゃ俺の身が持たない。

 こんな調子が毎日続けば、三週間後くらいには俺の身は屍と化しているだろう。

 だが俺は少々フィアットを侮っていたのかもしれない。

「お、お待ちになってくださいっっ!」
「なっ……!」

 まさに刹那の出来事。
 俺が扉から出る数秒前に、既に彼女は我が眼前に立っていた。

「ちょっ、とまれな……」

 だが勢いに身を任せていた俺の身体は制御が効かず……

 ぽよん。

 何か柔らかなものに思いっきりダイブし、扉ごと彼女を押し倒してしまった

「う、うぅ……ごめんフィアット。大丈夫……」

 顔を上げ、言いかけた時だ。
 俺はとんでもない場所に手を据えていたことに気づく。

「あ……」
「ゆ、ユーリ様……その、お手が……」

 顔を真っ赤に染め、少し潤った目で俺を見てくるフィアット。
 
「す、すまない!」

 俺はすぐ手を引き、その場から立ち上がろうとする。
 
 が、その時だ。

「おい、貴様。そんなところで何をしている」

 通りの良い凛々しい声。
 そして俺たちは今、扉を突き破って廊下のど真ん中にいる。

 時間も時間帯だし、まさか……とは思ったが。

「……や、ば……」

 俺の予感は的中した。
 その声の主はあられもない姿を晒す俺たちのすぐ横で、冷めきった顔をしていた。
しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

異世界召喚されました……断る!

K1-M
ファンタジー
【第3巻 令和3年12月31日】 【第2巻 令和3年 8月25日】 【書籍化 令和3年 3月25日】 会社を辞めて絶賛無職中のおっさん。気が付いたら知らない空間に。空間の主、女神の説明によると、とある異世界の国の召喚魔法によりおっさんが喚ばれてしまったとの事。お約束通りチートをもらって若返ったおっさんの冒険が今始ま『断るっ!』 ※ステータスの毎回表記は序盤のみです。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

転生者はチートな悪役令嬢になりました〜私を死なせた貴方を許しません〜

みおな
恋愛
 私が転生したのは、乙女ゲームの世界でした。何ですか?このライトノベル的な展開は。  しかも、転生先の悪役令嬢は公爵家の婚約者に冤罪をかけられて、処刑されてるじゃないですか。  冗談は顔だけにして下さい。元々、好きでもなかった婚約者に、何で殺されなきゃならないんですか!  わかりました。私が転生したのは、この悪役令嬢を「救う」ためなんですね?  それなら、ついでに公爵家との婚約も回避しましょう。おまけで貴方にも仕返しさせていただきますね?

断罪イベント返しなんぞされてたまるか。私は普通に生きたいんだ邪魔するな!!

ファンタジー
「ミレイユ・ギルマン!」 ミレヴン国立宮廷学校卒業記念の夜会にて、突如叫んだのは第一王子であるセルジオ・ライナルディ。 「お前のような性悪な女を王妃には出来ない! よって今日ここで私は公爵令嬢ミレイユ・ギルマンとの婚約を破棄し、男爵令嬢アンナ・ラブレと婚姻する!!」 そう宣言されたミレイユ・ギルマンは冷静に「さようでございますか。ですが、『性悪な』というのはどういうことでしょうか?」と返す。それに反論するセルジオ。彼に肩を抱かれている渦中の男爵令嬢アンナ・ラブレは思った。 (やっべえ。これ前世の投稿サイトで何万回も見た展開だ!)と。 ※pixiv、カクヨム、小説家になろうにも同じものを投稿しています。

悪役令嬢でも素材はいいんだから楽しく生きなきゃ損だよね!

ペトラ
恋愛
   ぼんやりとした意識を覚醒させながら、自分の置かれた状況を考えます。ここは、この世界は、途中まで攻略した乙女ゲームの世界だと思います。たぶん。  戦乙女≪ヴァルキュリア≫を育成する学園での、勉強あり、恋あり、戦いありの恋愛シミュレーションゲーム「ヴァルキュリア デスティニー~恋の最前線~」通称バル恋。戦乙女を育成しているのに、なぜか共学で、男子生徒が目指すのは・・・なんでしたっけ。忘れてしまいました。とにかく、前世の自分が死ぬ直前まではまっていたゲームの世界のようです。  前世は彼氏いない歴イコール年齢の、ややぽっちゃり(自己診断)享年28歳歯科衛生士でした。  悪役令嬢でもナイスバディの美少女に生まれ変わったのだから、人生楽しもう!というお話。  他サイトに連載中の話の改訂版になります。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

攫われた転生王子は下町でスローライフを満喫中!?

伽羅
ファンタジー
 転生したのに、どうやら捨てられたらしい。しかも気がついたら籠に入れられ川に流されている。  このままじゃ死んじゃう!っと思ったら運良く拾われて下町でスローライフを満喫中。  自分が王子と知らないまま、色々ともの作りをしながら新しい人生を楽しく生きている…。 そんな主人公や王宮を取り巻く不穏な空気とは…。 このまま下町でスローライフを送れるのか?

大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。 だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。 勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し! そんなお話です。

処理中です...