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第二十八話 フィアットの誘い
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フィアットがAクラスの教室に現れた後、俺は彼女に誘われて学園の屋上へと来ていた。
「突然こんなところに連れてきてしまい、申し訳ありません」
「いや、それは構わないが……」
教室を出る際、俺はすごい目でクラスメイトに見られていた。
何故かは分からない。
ジンもフィアットを見た途端にすっごく驚いた顔をしていたし……
(どういうことなのだろう?)
もしかしてフィアットって学園内では凄く有名な人だったりするのか?
「ユーリ様? どうかなされました?」
「……え? ああいや、ごめん。なんでもない」
あまり深く考えることは今は止めるか。
どうやら彼女は俺に大事な話があるみたいだし。
「……で、いきなりどうしたんだ? 何か問題でも起きた感じ?」
「いえ。今回ユーリ様をお呼びしたのはある祭典についての参加の是非を問おうと思ったからなのです」
「ある祭典?」
「はい。まだ少し先のお話になるのですが、今年の秋にここフィンラードで帝国主催の選抜魔道祭が開かれるのです」
フィアットはその祭典について詳しく話してくれた。
どうやらその祭典とは普通の祭りではなく、4年に一度行われる武の祭典と呼ぶべきものだった。
まだ明確には決まっていないようだが、帝国内に所在する各魔法学校から小数人のメンバーを選出し、トーナメント形式で覇を競い合うというもの。
ルールにはソロの部とマルチの部の二種類あり、ソロの部は各学校から一人を選出。
マルチの部は人数がまだ明確に決まっていないとのことだ。
まぁ大雑把に言えば、前にやった模擬戦を今度は国内の猛者たちを相手にしてやるということだ。
「それに、俺が出てほしいと?」
「そうです。私も参加予定なのですが、まだ全然メンバーが集まってなくて……」
「俺が参加を承認すれば二人目ってことか」
「はい。帝都から送られてきた大会規定によれば最低でも8人は集めておいてほしいらしいです」
「それって期限とかあるのか?」
「一応あとちょうど一か月後が期限となっています」
一か月か。
長いようで短いな。
しかもまだ夏すらも来ていないというのに……
「その祭りって帝国に所在する学園なら強制的に参加しなければならないのか?」
とりあえず気になったことを質問。
するとフィアットは首を横に振り、
「いいえ、参加は任意です。ですが……」
「ですが……?」
「その……理事長がどうしても出てほしいとのことで」
「理事長って……ルナ姉さんが?」
「はい……何でも学園の伝統的なものらしくて」
「大会に参加することがか?」
「いや、参加ではなくて優勝することがです」
「ゆ、優勝だって!?」
思わず声を必要以上に張り上げてしまった。
聞けばこのフィンラード学園はその選抜魔道祭の優勝候補に一角に数えられるらしく、帝国にある魔法学校では最多の優勝実績を残しているらしい。
第一回の大会から全部で15回行われており、その内14回はフィンラードがソロの部とマルチの部共に総合優勝を果たしている。
唯一、4年前に決勝でとある学校にどちらも敗れて連覇は止められてしまった。
ルナ姉さんはそれがどうしても悔しかったらしく、今年こそはという意気込みで今大会に向けて闘志を燃やしているとのことだった。
「か、勝手だなぁ……」
「でも、お祭り自体は面白いんですよ。優勝すれば宮廷魔術師へのお誘いもあるらしいので」
「宮廷魔術師ってあの宮廷魔術師か?」
「はい。入ろうと思っても中々入れないところを魔道祭で力を証明して、皇帝陛下の目に止まれば無条件で入れるらしいのです。現に8年前に行われた魔道祭では本校に在籍していた4人の生徒が宮廷魔術師団に引き抜かれました」
「へぇ……そりゃ凄いな。ってことはそれが目当てで参加する輩もいるってわけか」
「そうですね。多分大半がそうだと思います」
宮廷魔術師と言えば誰もが憧れる職の一つだ。
待遇も良いし、給与もアホみたいに高い。
少しでも魔術の才があれば誰もが目指すような人気職だが、いかんせん入るのがバカみたいに難しい。
前世にいた世界でもそれは同様だった。
(宮廷魔術師に入れば人生勝ち組なんて言われてるからな……)
だから任意といえどほぼ全ての学校の生徒が参加してくるらしい。
引き抜きの可能性があるということなら、そりゃ参加するわけだ。
「それで、どうでしょうか? 私はあくまでユーリ様の御考えを優先したいと思っているので強制は致しませんが」
「う、う~ん……」
どうしよう。確かに色々と面白そうなお祭りだけど、目立ちすぎて身バレは避けたい。
でもフィアットをルナ姉さんのリベンジの為の道具にはさせたくないしな。
あの人、ああいう社交的な感じだけど中身は超がつくほどの負けず嫌いだからなぁ……
俺は数分間、腕を組み、悩んだ。
そして決意は決まり、風靡く屋上で俺は一つの結論をフィアットに言い渡す。
「……分かった。俺も参加するよ、その祭り」
「ほ、本当ですか!」
「うん。ついでにメンバー集めも手伝うよ。ルナ姉さんの性格上、何となく察しがついたから」
長年を付き合いでルナ姉さんを知る俺だからこそ、彼女の苦悩は理解できる。
だからこそ手伝いをしたいと思った。
「あ、ありがとうございます! では、理事長には私から伝えておきますね」
そう言ってフィアットはペコっと頭を下げると、この上ない笑みを浮かべて走り去っていった。
(あの様子だとよっぽど、ルナ姉さんに強く言われてたんだな……)
心中お察しします。
……と、いうわけで俺もその選抜魔道祭とやらに出場することとなった。
そして今日から、俺とフィアットの大会に向けてのメンバーが始まったのである。
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現在多忙につき、更新が少し遅くなります。
申し訳ございません。
「突然こんなところに連れてきてしまい、申し訳ありません」
「いや、それは構わないが……」
教室を出る際、俺はすごい目でクラスメイトに見られていた。
何故かは分からない。
ジンもフィアットを見た途端にすっごく驚いた顔をしていたし……
(どういうことなのだろう?)
もしかしてフィアットって学園内では凄く有名な人だったりするのか?
「ユーリ様? どうかなされました?」
「……え? ああいや、ごめん。なんでもない」
あまり深く考えることは今は止めるか。
どうやら彼女は俺に大事な話があるみたいだし。
「……で、いきなりどうしたんだ? 何か問題でも起きた感じ?」
「いえ。今回ユーリ様をお呼びしたのはある祭典についての参加の是非を問おうと思ったからなのです」
「ある祭典?」
「はい。まだ少し先のお話になるのですが、今年の秋にここフィンラードで帝国主催の選抜魔道祭が開かれるのです」
フィアットはその祭典について詳しく話してくれた。
どうやらその祭典とは普通の祭りではなく、4年に一度行われる武の祭典と呼ぶべきものだった。
まだ明確には決まっていないようだが、帝国内に所在する各魔法学校から小数人のメンバーを選出し、トーナメント形式で覇を競い合うというもの。
ルールにはソロの部とマルチの部の二種類あり、ソロの部は各学校から一人を選出。
マルチの部は人数がまだ明確に決まっていないとのことだ。
まぁ大雑把に言えば、前にやった模擬戦を今度は国内の猛者たちを相手にしてやるということだ。
「それに、俺が出てほしいと?」
「そうです。私も参加予定なのですが、まだ全然メンバーが集まってなくて……」
「俺が参加を承認すれば二人目ってことか」
「はい。帝都から送られてきた大会規定によれば最低でも8人は集めておいてほしいらしいです」
「それって期限とかあるのか?」
「一応あとちょうど一か月後が期限となっています」
一か月か。
長いようで短いな。
しかもまだ夏すらも来ていないというのに……
「その祭りって帝国に所在する学園なら強制的に参加しなければならないのか?」
とりあえず気になったことを質問。
するとフィアットは首を横に振り、
「いいえ、参加は任意です。ですが……」
「ですが……?」
「その……理事長がどうしても出てほしいとのことで」
「理事長って……ルナ姉さんが?」
「はい……何でも学園の伝統的なものらしくて」
「大会に参加することがか?」
「いや、参加ではなくて優勝することがです」
「ゆ、優勝だって!?」
思わず声を必要以上に張り上げてしまった。
聞けばこのフィンラード学園はその選抜魔道祭の優勝候補に一角に数えられるらしく、帝国にある魔法学校では最多の優勝実績を残しているらしい。
第一回の大会から全部で15回行われており、その内14回はフィンラードがソロの部とマルチの部共に総合優勝を果たしている。
唯一、4年前に決勝でとある学校にどちらも敗れて連覇は止められてしまった。
ルナ姉さんはそれがどうしても悔しかったらしく、今年こそはという意気込みで今大会に向けて闘志を燃やしているとのことだった。
「か、勝手だなぁ……」
「でも、お祭り自体は面白いんですよ。優勝すれば宮廷魔術師へのお誘いもあるらしいので」
「宮廷魔術師ってあの宮廷魔術師か?」
「はい。入ろうと思っても中々入れないところを魔道祭で力を証明して、皇帝陛下の目に止まれば無条件で入れるらしいのです。現に8年前に行われた魔道祭では本校に在籍していた4人の生徒が宮廷魔術師団に引き抜かれました」
「へぇ……そりゃ凄いな。ってことはそれが目当てで参加する輩もいるってわけか」
「そうですね。多分大半がそうだと思います」
宮廷魔術師と言えば誰もが憧れる職の一つだ。
待遇も良いし、給与もアホみたいに高い。
少しでも魔術の才があれば誰もが目指すような人気職だが、いかんせん入るのがバカみたいに難しい。
前世にいた世界でもそれは同様だった。
(宮廷魔術師に入れば人生勝ち組なんて言われてるからな……)
だから任意といえどほぼ全ての学校の生徒が参加してくるらしい。
引き抜きの可能性があるということなら、そりゃ参加するわけだ。
「それで、どうでしょうか? 私はあくまでユーリ様の御考えを優先したいと思っているので強制は致しませんが」
「う、う~ん……」
どうしよう。確かに色々と面白そうなお祭りだけど、目立ちすぎて身バレは避けたい。
でもフィアットをルナ姉さんのリベンジの為の道具にはさせたくないしな。
あの人、ああいう社交的な感じだけど中身は超がつくほどの負けず嫌いだからなぁ……
俺は数分間、腕を組み、悩んだ。
そして決意は決まり、風靡く屋上で俺は一つの結論をフィアットに言い渡す。
「……分かった。俺も参加するよ、その祭り」
「ほ、本当ですか!」
「うん。ついでにメンバー集めも手伝うよ。ルナ姉さんの性格上、何となく察しがついたから」
長年を付き合いでルナ姉さんを知る俺だからこそ、彼女の苦悩は理解できる。
だからこそ手伝いをしたいと思った。
「あ、ありがとうございます! では、理事長には私から伝えておきますね」
そう言ってフィアットはペコっと頭を下げると、この上ない笑みを浮かべて走り去っていった。
(あの様子だとよっぽど、ルナ姉さんに強く言われてたんだな……)
心中お察しします。
……と、いうわけで俺もその選抜魔道祭とやらに出場することとなった。
そして今日から、俺とフィアットの大会に向けてのメンバーが始まったのである。
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申し訳ございません。
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