とある最弱者の貴族転生~高貴な《身分》と破格の《力》を手に入れた弱者は第二の人生で最強となり、生涯をやり直す~

詩葉 豊庸(旧名:堅茹でパスタ)

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第二十二話 体力測定

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 場所は移り、学園内にある総合体育館。
 今からここで人生初の記念すべき最初の授業が行われる。

「それがまさかの体力測定とはね……」

 いきなり身体を動かす授業とは思わなかった。
 服装も制服から実技用のトレーニングウェアに変化し、軽快になった。
 
(まぁ身体を動かすことは苦手じゃないし、いいんだけど……)

 もっとこう、学問的な授業から始まると思っていたから予想外だった。

「なぁジン。体力測定って言っても具体的には何をやるんだ?」

 隣でストレッチをするジンにさり気なく聞いてみると返答はすぐにきた。

「ああ、実技試験と同じだよ」
「実技試験? 何のことだ?」
「ん? 入学する時に実技試験を受けただろ?」
「いや、受けてないけど……」

 そういうとジンはハッと何かを思いついたようで、

「あっ、そういえばお前は特別推薦で入学したんだったな。そりゃ知らないわけだ」
「実技試験って入学する時に受けるものなのか?」
「ああ、そうさ。一対一の決闘デュエル方式で文句なしの一発勝負。トーナメント方式で使えるのは魔法と学園側が用意した武器だけで先に力尽きた方が負けっていうシンプルなルールだよ」
「へぇ。で、ジンは実技試験どうだったの?」
「もちろん勝ちまくったさ、ただ……一人を除いてな」
「一人……?」

 ……という会話がしている中、総合体育館に別クラスの人間が入って来る。

 1年Bクラス。今日の科目はAクラスとBクラス合同で行われるのだ。

「噂をすれば来たよ。その”一人が”」
「……?」

 ジンが捉えている目線の方向を辿る。
 と、そこにいたのは……

「やぁやぁ、Aクラスの諸君。さっきぶりだね」

 金髪の男。またの名をジーク・フリット。
 5大貴族家に数えられるフリット家の長男だ。

 相変わらず取り巻きの人間を連れ、俺たちAクラスの方へ歩み寄ってくる。

「ま、まさかジン。その一人って……」
「ああ、あいつだよ。ジーク・フリット、彼が実技試験をトップで合格している」
「マジか。ただ態度がデカいってだけじゃないんだな」
「俺も驚いたよ。あいつは試験当時からあんな感じだった。やけに人を見下し、自分を誇張していた。そんな奴に負けるはずがないって、そう思ってたが」
「かなわなかった……と?」
「……まぁな」

 俯き、一点を見つめるジン。
 その表情からは悔しさが滲み出ており、時折唇を尖らせていた。

「あいつは間違いなくこの学年じゃ別格の強さを誇ってる。現に実力ある先輩方にお墨付きを貰っているって話だしな」
「なるほど。口だけじゃない実力者ってわけか」

 と、そこへ担任講師のルモット先生でBクラスの担任講師であろう人物が現れる。

「みなさーん、集まってくださーい。これから体力測定を行いますよ~!」

 ルモット先生が一挙に生徒たちをかき集める。
 
「もうみんな分かっていると思うけど一応説明しておきますね」

 という前振りを置きつつ、ルモット先生が大まかなに説明を始めた。
 
 内容は先ほどジンから教えてもらった通りで一対一の決闘方式。
 今回は武器の使用は不可で魔法のみという条件とのこと。

 組分けはAクラス、Bクラス混合でワンマッチしか行わないらしい。
 
 要は一回のみの模擬試合で自分の力を見せつけろということだ。

「分かりやすいな。でもそれだけで測定できるもんなのか?」
「さぁ? それができるからこそこのやり方なんじゃないか?」
「ま、まぁ……」

 それを言われたら何も言い返せないが、人によっては不利に働いたりするんじゃ?

 実力も個人差があるだろうし、特にあのジークとかいう男に当たったら相手にすら――

「じゃ、まず最初にこの二人にやってもらうとしよう。ジーク・フリットとユーリ・フリージア、前に出てこい」

 ……はい?

 突然、Bクラスの担任講師から指名を受ける。
 しかも相手はあのジーク・フリット。

(どういうこと? 何で俺?)

 という疑問を抱くも、俺は言われるがままに生徒たちの前へ。
 するとBクラスの担任講師(名前はラルゴというらしい)が、

「この二人は初めを飾るにはもってこいだろう。入学試験実技の部をトップの成績で合格したジーク・フリット。そして50年来の特別推薦入学者であるユーリ・フリージア。実に興味深い組み合わせだ」

 周りの生徒たちも首をブンブン振り、肯定。
 大量の視線が俺とジーク・フリットに注がれる。

「やれやれ、初戦から僕の力をお披露目とはね……」

 と言っている割にジーク様はやる気のようで既にストレッチまでしている始末。
 もちろん、拒否することなんてできるはずもないので俺は渋々「はい」と頷くしかなかった。

「頑張れよ、ユーリ」
「あ、ああ……」

 バトルエリアに向かう前、ジンが俺の肩をポンと叩き、鼓舞してくれる。

「あいつは強敵だ。お前も実力はそれなりのものを持っているみたいだが、無理だと思ったらすぐにギブアップするんだぞ」
「分かった……」

 どうやらジンの中では俺が負ける確率の方が高いみたい。

 でもそれなら余計あのジークとかいう男の強さに興味が出てきた。

 ぶっちゃけトップバッターは嫌だったけど……

(やってやるか。どうせ、見せるもんは見せなきゃいけないんだし)

 心に発破をかけ、バトルエリアの中へ。
 たくさんのギャラリーが見つめる中、俺とジークは会する。

 ま、とりあえずやれるだけのことはやろう。
 怪我しない程度に……ね。
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