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第十八話 学園訪問
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「まさかユーリ様が学園に転入されるなんて……驚きです」
「俺もまさかフィアットが学園生だったなんて思ってもいなかったよ」
偶然。
俺は登校途中に起きたちょっとした事件を通じて魔物に襲われていた少女、フィアットと遭遇した。
制服を見ての通り、彼女もフィンラードの学生で聞けば俺より一学年上とのこと。
俺が今年から一年生として学園に入学することになるから、フィアットは二年生ということになる。
制服のラインの色が違ったのもそのためだった。
ホント、偶然の出来事である。
「では、学園にいる間の三年間はフィンラードにいるということですか?」
「ああ、一応そういうことで実家には話を通してある」
俺はフィンラードまで来た経緯をフィアットにざっくりと話す。
するとフィアットもそれに乗じ、
「そうなのですね! 私も今日が久々の学園なんですごく緊張します」
「久々?」
「はい。少しの間、家の事情で学園を休学していたんです。三か月くらいですかね」
「そうだったのか。じゃあ、フィアットもまさか理事長に呼ばれてたり……?」
「え……あ、はい。呼ばれています。もしかしてユーリ様も?」
「お、おう……俺も理事長室に来るように言われてる」
見事に目的が一致。
ま、周りに他のフィンラード生がいないことを見ると大体察しはついていたが。
時間的にも登校にはまだ早いしね……。
「じゃあ、私が理事長室まで案内しますよ! ついでに学園のことも色々と教えちゃいます!」
ここぞというタイミングを掴んだかのようにフィアットは胸を張りながら、そう話してくる。
確かに学園構内は物凄く広いって話だ。
ここは迷わないためにも学園を知っている人に案内してもらうのが得策だろうけど。
「い、いいのか?」
「もちろんです! ユーリ様には色々とお世話になったのでこれくらいは」
「じゃ、じゃあ……」
……と、彼女が申しますのでお言葉に甘えて学園を案内してもらうことに。
フィアットもなぜだか知らないけど嬉しそうだし……まぁいいか。
この後、俺たちは喋りながら二人並んで、学園へと向かった。
にしても初登校にして異性の子と一緒に登校することになるとは……。
内心、戸惑いつつも少しだけ嬉しさを滲ませていたユーリであった。
♦
――帝立フィンラード魔法学園
それは大国、バスク帝国が主導してフィンラードの街中に学園を造らせた学び舎である。
身分差関係なく受け入れる学園として世間に知られ、在学者は貴族から平民まで様々。
国籍等の縛りもないため、世界中から人が集まって来る。
その上帝立というだけあって学園自体のレベルも相当高く、入学難易度もかなり高めということから別名エリート魔法学校とも言われている。
で、そんな大きく知名度もある学園を束ね、纏め上げているのが……
「おっはよう! ユーリくん! フィアットちゃん! よく来たねっ!」
「る、ルナ姉さん!?」
「お久しぶりです。アーヴェンガルド理事長」
ここはフィンラード魔法学園内にある理事長室。
俺……いや、俺たちを待っていたのはこの学園の理事長であり学園長でもあるルナ・アーヴェンガルドだった。
そして諸々挨拶を交わした後、俺はいつもの如くルナ姉さんの抱き癖の被害に遭っていた。
「ね、姉さん! 流石に今日は他の人がいるんでそのスキンシップは……」
「別にいいじゃないの! 私は全然気にしないし!」
「いや、俺が気にするんだっつの!」
まぁ、いつものルナ姉さんである。
それを見ていたフィアットもさすがにこれには驚きを隠せておらず、ポカーンとこちらを見つめたまま動くことはなかった。
「る、ルナ姉さん! それより話ってなに! 俺この後、講師室にいかなきゃいけないんだけど!」
こうなったら強行突破。
俺はルナ姉さんに用件を聞きだすと、
「あ、そうだったそうだった。こうしちゃいられないんだった!」
ようやくその過度な抱擁から解き放たれる。
(はぁ……やっと解放された)
ホント、相変わらずのバカぢから。
前とは違って数秒しか抱かれていないのに身体全体がビリビリと痺れていた。
ルナ姉さんは自分の仕事机を前に腰を下ろすと、一枚の大きな茶封筒を渡してきた。
「ルナ姉さん、これは?」
「ユーリくんに必要な入学関連の書類と諸々の資料を渡しておこうと思ってね。いきなり学園生活を送れっていうのもさすがに無理があるでしょ?」
「ま、まぁ……」
実際、そこのところはあんまり気にしていなかったけどいざ考えてみると情報は多い方がいい。
できるだけ早くこの学園の生活に慣れるためにもね。
とりあえず俺はその書類を貰い、最後に必要な手続きをして入学に必要な作業は全て終了。
フィアットも呼ばれた理由が俺と似たような感じで長期休学についての報告等と、新学期からの書類やら色々と貰っていた。
「それにしても、まさか二人が面識あったなんて驚きだよ。えっ、もしかしてそういう関係だったりしちゃう!?」
「違う」「違いますよっ!」
「「あっ……」」
何ということかフィアットと意見が被る。
それを見たルナ姉さんはニンマリと笑いながら、
「ほら、息ぴったりじゃん! 中々いいんじゃないの~?」
「か、からかわないでくれよ姉さん。それより、もう用は済んだのか?」
「うん、もう私からは話すことはないかな。また分からないことがあったらいつでもここへ来てね。基本的にここでお仕事してるから」
フィアットも特に言いたいことはないようで、俺たちはこの場から退散することに。
「分かった。色々ありがとう、ルナ姉さん」
「いえいえ。あっ、フィアットちゃん。例のお仕事、またよろしくね!」
「は、はい! 精一杯頑張ります!」
例の仕事……? なんだそりゃ?
……と、思いながらも俺たちはひとまずルナ姉さんに別れを告げ、理事長室を去った。
さっきの抱きつき騒動から、理事長室を出るなりフィアットに「アーヴェンガルド理事長とはどういう関係なんですか!?」と興味津々な態度で聞かれたが、ただの古くからの知人ですとだけ伝え、場を収めた。
色々話すと面倒だからな。特にルナ姉さんとのことは……。
……かくして。俺は正式にフィンラード魔法学園に生徒として入学することとなった。
様々な人種や思想を持った人と混じり、より多くの友人を作るために。
一貴族家の人間として恥じないよう、より色々なことを知るために。
そして、一人の人間として成長するために。
「俺もまさかフィアットが学園生だったなんて思ってもいなかったよ」
偶然。
俺は登校途中に起きたちょっとした事件を通じて魔物に襲われていた少女、フィアットと遭遇した。
制服を見ての通り、彼女もフィンラードの学生で聞けば俺より一学年上とのこと。
俺が今年から一年生として学園に入学することになるから、フィアットは二年生ということになる。
制服のラインの色が違ったのもそのためだった。
ホント、偶然の出来事である。
「では、学園にいる間の三年間はフィンラードにいるということですか?」
「ああ、一応そういうことで実家には話を通してある」
俺はフィンラードまで来た経緯をフィアットにざっくりと話す。
するとフィアットもそれに乗じ、
「そうなのですね! 私も今日が久々の学園なんですごく緊張します」
「久々?」
「はい。少しの間、家の事情で学園を休学していたんです。三か月くらいですかね」
「そうだったのか。じゃあ、フィアットもまさか理事長に呼ばれてたり……?」
「え……あ、はい。呼ばれています。もしかしてユーリ様も?」
「お、おう……俺も理事長室に来るように言われてる」
見事に目的が一致。
ま、周りに他のフィンラード生がいないことを見ると大体察しはついていたが。
時間的にも登校にはまだ早いしね……。
「じゃあ、私が理事長室まで案内しますよ! ついでに学園のことも色々と教えちゃいます!」
ここぞというタイミングを掴んだかのようにフィアットは胸を張りながら、そう話してくる。
確かに学園構内は物凄く広いって話だ。
ここは迷わないためにも学園を知っている人に案内してもらうのが得策だろうけど。
「い、いいのか?」
「もちろんです! ユーリ様には色々とお世話になったのでこれくらいは」
「じゃ、じゃあ……」
……と、彼女が申しますのでお言葉に甘えて学園を案内してもらうことに。
フィアットもなぜだか知らないけど嬉しそうだし……まぁいいか。
この後、俺たちは喋りながら二人並んで、学園へと向かった。
にしても初登校にして異性の子と一緒に登校することになるとは……。
内心、戸惑いつつも少しだけ嬉しさを滲ませていたユーリであった。
♦
――帝立フィンラード魔法学園
それは大国、バスク帝国が主導してフィンラードの街中に学園を造らせた学び舎である。
身分差関係なく受け入れる学園として世間に知られ、在学者は貴族から平民まで様々。
国籍等の縛りもないため、世界中から人が集まって来る。
その上帝立というだけあって学園自体のレベルも相当高く、入学難易度もかなり高めということから別名エリート魔法学校とも言われている。
で、そんな大きく知名度もある学園を束ね、纏め上げているのが……
「おっはよう! ユーリくん! フィアットちゃん! よく来たねっ!」
「る、ルナ姉さん!?」
「お久しぶりです。アーヴェンガルド理事長」
ここはフィンラード魔法学園内にある理事長室。
俺……いや、俺たちを待っていたのはこの学園の理事長であり学園長でもあるルナ・アーヴェンガルドだった。
そして諸々挨拶を交わした後、俺はいつもの如くルナ姉さんの抱き癖の被害に遭っていた。
「ね、姉さん! 流石に今日は他の人がいるんでそのスキンシップは……」
「別にいいじゃないの! 私は全然気にしないし!」
「いや、俺が気にするんだっつの!」
まぁ、いつものルナ姉さんである。
それを見ていたフィアットもさすがにこれには驚きを隠せておらず、ポカーンとこちらを見つめたまま動くことはなかった。
「る、ルナ姉さん! それより話ってなに! 俺この後、講師室にいかなきゃいけないんだけど!」
こうなったら強行突破。
俺はルナ姉さんに用件を聞きだすと、
「あ、そうだったそうだった。こうしちゃいられないんだった!」
ようやくその過度な抱擁から解き放たれる。
(はぁ……やっと解放された)
ホント、相変わらずのバカぢから。
前とは違って数秒しか抱かれていないのに身体全体がビリビリと痺れていた。
ルナ姉さんは自分の仕事机を前に腰を下ろすと、一枚の大きな茶封筒を渡してきた。
「ルナ姉さん、これは?」
「ユーリくんに必要な入学関連の書類と諸々の資料を渡しておこうと思ってね。いきなり学園生活を送れっていうのもさすがに無理があるでしょ?」
「ま、まぁ……」
実際、そこのところはあんまり気にしていなかったけどいざ考えてみると情報は多い方がいい。
できるだけ早くこの学園の生活に慣れるためにもね。
とりあえず俺はその書類を貰い、最後に必要な手続きをして入学に必要な作業は全て終了。
フィアットも呼ばれた理由が俺と似たような感じで長期休学についての報告等と、新学期からの書類やら色々と貰っていた。
「それにしても、まさか二人が面識あったなんて驚きだよ。えっ、もしかしてそういう関係だったりしちゃう!?」
「違う」「違いますよっ!」
「「あっ……」」
何ということかフィアットと意見が被る。
それを見たルナ姉さんはニンマリと笑いながら、
「ほら、息ぴったりじゃん! 中々いいんじゃないの~?」
「か、からかわないでくれよ姉さん。それより、もう用は済んだのか?」
「うん、もう私からは話すことはないかな。また分からないことがあったらいつでもここへ来てね。基本的にここでお仕事してるから」
フィアットも特に言いたいことはないようで、俺たちはこの場から退散することに。
「分かった。色々ありがとう、ルナ姉さん」
「いえいえ。あっ、フィアットちゃん。例のお仕事、またよろしくね!」
「は、はい! 精一杯頑張ります!」
例の仕事……? なんだそりゃ?
……と、思いながらも俺たちはひとまずルナ姉さんに別れを告げ、理事長室を去った。
さっきの抱きつき騒動から、理事長室を出るなりフィアットに「アーヴェンガルド理事長とはどういう関係なんですか!?」と興味津々な態度で聞かれたが、ただの古くからの知人ですとだけ伝え、場を収めた。
色々話すと面倒だからな。特にルナ姉さんとのことは……。
……かくして。俺は正式にフィンラード魔法学園に生徒として入学することとなった。
様々な人種や思想を持った人と混じり、より多くの友人を作るために。
一貴族家の人間として恥じないよう、より色々なことを知るために。
そして、一人の人間として成長するために。
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