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157.逆転

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 いつもご愛読、ありがとうございます!
 本日は後書きにてお知らせがありますので、最後まで読んでいただけると嬉しいです!

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「ソフィア様は返していただきます」

 壁を破壊して。
 一人の影が煙の中から現れる。

「あ、あんた……!」

「さっきぶりですね。イリアさん」

 気品溢れるメイド服姿に聞きなれた上品な声。
 姿は見えずとも、答えはすぐに分かった。

「アリシア……さん?」

「アリシア!」

「ご無事でしたか、ソフィア様?」

 長いスカートに気品あふれる彼女からは想像もしない登場。
 しかもメイド服には汚れ一つついていなかった。

「アリシアこそ大丈夫だったの?」

「私なら大丈夫です」

「みんなは?」

「既に安全なところに避難させてありますので、ご安心ください」

 どうやらここに来たのはアリシアさんだけらしい。
 そして他の使用人たちは何とか逃がしたと。

「問題なのはお二人の方です。お怪我はございませんか?」

「わたしなら大丈夫」

「俺も大丈夫です」

 それを聞いて安心したのか、アリシアさんの表情筋が少し緩む。

「でも、どうしてここが?」

「何となくです。私のソフィア様センサーがここだと言っていたので」

「ソフィア様センサーって……」

 初めて聞く単語だな。
 俗に言う勘ってやつなんだろうが。

「それよりも、今は歓談に浸っている場合ではありません。ひとまずここから抜け出さないと」

「抜け出す? 貴女本気で言っているの?」
 
 背後にいたイリアが一声かけると、

「もちろん本気ですよ。私には主を守る使命がありますゆえ」

 答えると、イリアは静かな声で質問をする。

「……貴女、どうやってここまで? 結界がある限り、魔法は使えないはず」

 そういえばこの場所には魔法を一切封じる結界のようなものが張られていたはず。
 でもさっきのアリシアさんは魔法のようなものを使っていた。

「それなら結界を書き換えたんですよ」

「か、書き換えた?」

「ええ。実は私、だいぶ前に結界術を嗜んでいまして少し細工をさせてもらったんです。結界が暴走しないと程度に」

 書き換えるって、そんなことが出来るのか?
 大体結界ってのは発動者以外が外部から弄ることは非常に難しいはずなのに。

「ふっ、なるほどね。流石は王族の使用人、趣味のレベルが違うわね」

「お褒めに預かり、光栄でございます」

 微妙な空気が場を包む。
 今にも二人の間で一戦起こってもおかしくはない空気感だ。

「とにかく今は早くここから出ましょう。追手が来る前に」

「わ、分かったわ」

「は、はい!」

 イリアを尻目に、アリシアさんは俺たちを誘導しようとすると。

「待ちなさい」

 逃げようとする俺たちにイリアが言葉を飛ばした。

「まだ何か用がありますか? もう貴女には用はないのですが」

「来なさい」

「はい?」

「ついてきなさい」

 イリアはそう俺たちに言うと、続けて。

「そのまま行っても出口が分からなかったら意味がない。だから……」

 イリアは一呼吸置くと、再び喋り始めた。

「わたしが、脱出路を案内してあげるわ」

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本話もお読みいただき、ありがとうございます!

昨日告知しました通り、新作『追放されたE級回復術師が実は最強の賢者候補だった件~最強の相棒を持つ名ばかりのヒーラーは自重を強いられても世界最強……だが女の子には弱い~』を投稿致しました!

下記にリンクを貼っておきますので、良ければ読んでみてください!

新作リンク:https://www.alphapolis.co.jp/novel/466415534/196585668
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