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151.友情の影で
しおりを挟む「イリア。これはどういうことだ」
「どうもこうもないわ。今、貴方たちが見ているのが本当のわたしよ」
淡々とした口調でイリアはそう言った。
影から現れたイリアは軍服を纏っていた。
それを見た途端、俺はすぐに察しがついた。
「まさか、イリア。お前は……」
「ええ。わたしは元々こっち側の人間。帝国軍私営特殊魔法師団『聖十字魔法師団 第二師団団長』、名前はフラム・レイバーンズ」
「聖十字魔法師団だと……?」
前に屋敷の書庫で情報を探していた皇帝の私営魔法師団だ。
確か、魔刻印を開発したのも……
「もしかして……」
「気が付いた、という顔ね」
「ランス、どういうことですか?」
怪訝そうにこちらを見てくるソフィアに俺は説明した。
「前にイリアに魔刻印のことを調べてもらった時があるだろう?」
「リリさんから浮かび上がったあの術式のことですね?」
「そうだ。その件でイリアはやけに詳しかった。あの時は単に知識を持っていたから、その場を任せてしまったが、こうなってはあの時から彼女の手のひらの上……いや、もしかすれば彼女と都市公園で出会った時から、俺たちは目をつけられていたんだ。帝国に」
思い返してみれば、今までに何度かイリアの行動に疑問を持つことがあった。
その時は特に深く考えることはなかったが、彼女は常に色々な角度から目を向けていたんだ。
俺たちとこの国に。
「ということはイリアさんは……」
「貴方の言う通りよ、ランス。わたしはダウト皇帝閣下より、遣わされた使者。もっと分かりやすく言えば、スパイだったのよ。計画完遂を確固たるものとするために、貴方たちを監視する、ただそれだけのためのね」
イリアは曇り一つない表情でそう言った。
本心はウソだと思いたい。
だが、この状況を見る限り、真実なのだろう。
「何故だ、何故このタイミングで自身の正体を曝した?」
「閣下はある指示が下りたの。貴方たちが盛大にやってくれたおかげでね」
「指示……?」
「ええ。貴方たちとその取り巻きを拘束するようにと」
「取り巻き……そう言えばみんなは、屋敷のみんなどうなったのですか!」
「安心して、お姫様。屋敷の人間ならわたしたちのアジトでぐっすり寝てもらっているから」
「それはどこだ。みんなをどこに……!」
「それは言えないわ。当然のことだけど。だって貴方たちにはこれからわたし達の計画のトリガーになってもらうんだから」
「トリガー……? 何を言って――」
「お喋りが過ぎるぞ、フラム」
空間が捻じれ、そこから巨大なゲートが開かれる。
その中から、同じ軍服を着た一人の大柄の男が姿を現した。
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