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147.封印

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 巨大な扉の先に行くと見覚えのある一本道が見えてくる。
 その一本道を進んでいくと、これまた見覚えのある黒い歪みが。

「あそこが出口のようだな。ソフィア、俺の左手を握っていてくれ」

「あ、はい!」

 歪みに近づき、俺は右手をそっと突っ込むと。
 身体はみるみるうちに吸い込まれていき――

「おぉ、戻ってこれた!」

 いつの間にか俺たちはポータルの前に戻っていた。
 だが俺たちが本当にすべきことはここからだ。

「さて、やるか」

 俺は懐に潜めていた例の球体に魔力を注ぎ、ドロイドさんたちを呼ぶ。
 球体は光り輝くと、亀裂のようなものが宙に現れ――

「おっと、どうやら戻ってこれたみたいですね」

 ドロイドさんたちが中から出てきた。

「ドロイドさん、無事で良かったです!」

「ランスくん、ソフィア様。お二人もご無事なようで何よりです」

 無事に全員脱出できたところで、俺たちは再びポータルの方へと振り返る。

「結局、ここは地獄の門の入り口でしたね」

「ええ。なので跡形もなく消しておいた方が良さそうですね。ここは私にお任せください」

 ドロイドさんはポータルの前に立つと、

「≪アブ・エリミネート≫」

 魔法を詠唱。
 瞬間、空間に現れた巨大な紫色の魔法陣がポータルごと飲み込んでいく。

 まるでブラックホールのように、ものの数秒でポータルは跡形もなく消えてなくなった。

「これで、あの怪物がこの世界に来ることはありません」

「何をしたんですか?」

「無限回廊にポータルを封印したのです。この世界とは完全に隔離した、時間の概念すらも存在しない無の世界に。失敗すれば自分が飛ばされますが」

「ま、マジすか……」

 封印魔法の一種だな。
 俺も一応は使えるが、試したことはない。

 ドロイドさんが言った通り、失敗する可能性があるから……

「これでひとまずは一件落着ですね。一時はどうなるかと思いましたけど」

「だな。でもこれがあと9か所もあるんだよな……」

 本当に考えるべきはこの先のこと。
 色々と真実を知ってしまった俺たちは早急に次の手を打たないといけない。

 奴らは本気でこの国を亡きものにしようとしている。
 それだけは絶対にさせるわけにはいかない。

「ドロイドさん、これからどうしますか?」

「とりあえず、私は本部に戻ります。今回は予想以上の収穫を得ることが出来たので、方々に報告しないといけませんから」

 ギルドマスターとしてやるべきことが多いドロイドさんは今すぐにでも行動を起こしたいという感じだった。
 
「俺たちに何か出来ることはないですか?」

「色々と手伝ってほしいことはありますが、今はあまり動かない方がいいかもしれません。こんな騒ぎを起こしたのですから、向こうももう気づいているはずですし」

 今回のことで帝国側は予想もしない情報をこっち側に垂れ流す結果になってしまった。
 秘密の場所が襲われた時から、それは危惧していたことだろうから、今向こうはとんでもないことになっているはずだ。

 恐らく顔は知られてしまったから(ソフィアはフードを被っていたから、大丈夫だろうけど)、ドロイドさんの言う通り、街を歩いているだけで何が起こるか分からない。

 下手にマークされて襲われでもしたら、面倒だしな。

「それなら、俺たちは一回帰った方が良さそうだな。屋敷にいるみんなも心配だし」

「そうですね。わたしもその方が良いと思います」

 屋敷に帰ることにした。

「何かあればお二人にはまたご連絡します。それまでどうか、ご無理はなさらないように。あと、この度のお礼は必ずどこかでさせていただきます」

「お、お礼だなんて……大丈夫ですよ」

「そうですよ。わたしたちは当然のことをしたまでで……」

 あたふたする俺たちはドロイドさんは真剣な眼を向けてくると。

「いえ、そうはいきません。今回こうして上手く事を運べたのは、ランスくんとソフィア様の助力があってこそのもの。ギルドマスターとしてお二人には大きな借りが出来てしまいました。それを返さぬようでは、ギルマスの名に恥じます。なので全てが終わった時に是非ともその借りを返させてください」

 ドロイドさんはそう言うと、時間を伺いつつ。

「では、そろそろ私は行きますね。道中、お気をつけて」

 俺たちに一礼すると、スタスタとその場を去って行った。
 
「まさか、ギルマスにあそこまでお礼を言われる日がくるなんてな……」

 何度も言うが、ほんのひと昔前までなら考えられなかったことだ。

「ふふっ、これもランスの頑張りがあってこそですよ。わたしの方からもお礼をさせてください」

「ソフィアは一緒に命を張って戦ってくれたじゃないか。むしろ俺からもお礼をしないと」

「じゃあ、今度頑張りました会をしましょう。お互いにお礼をし合うんです」

 ソフィアはニッコリと笑うと、そう言った。
 俺も相変わらずのぎこちない笑顔で返すと。

「そうだな。絶対にしよう。全てが終わった後に」

「はいっ!」

 その愛らしい笑顔で、疲れた身体が癒されていくのが分かる。
 
 絶対にこの笑顔だけは守らないといけない。
 もう何度目か分からないが、俺は強くそう思った。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
これにて本年度最後の投稿になります。

本年度も当作品をご愛読いただき、ありがとうございましたm(_ _)m

来年度も変わらず頑張ってまいりますので、何卒応援のほど宜しくお願い致します!
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