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144.勝機の光
しおりを挟む「ランス、そっちに行きました!」
「おう!」
――ガシンッ!!
刃の擦れる音が盛大にこだまする。
刃は十分に入った……と思ったのだが、手応えがない。
「くっ、やっぱり物理だけでこいつを倒すのは無理なのか……?」
さっきから何度か隙を見つけては二人で上手い具合に連携攻撃を仕掛けているのだが、相手はビクともしていない様子。
それどころか……
「こいつ、さっきよりもパワーアップしていないか?」
「確かに、先ほどよりも一撃一撃が重くなった気がします」
「さてはこいつ……俺たちの攻撃を受ける度に自身のエネルギーに変えているのか?」
明らかに攻撃も素早さもアップしているし。
「パワーアップですか?」
「多分な」
「じゃあ、わたしたちが攻撃すればした分だけ……」
「あいつは強くなるってことだ」
「そ、そんな……」
ホント、溜息が出てしまう。
少しでも魔法が使えれば、どうにかなるかもしれないのに。
(どうしたものか……)
このまま不毛な戦いを続ければ、俺たちは間違いなく体力負けする。
物理防御壁とかはないっぽいから、攻撃はそれなりに通っているはずなんだが……
多分、攻撃を受けてパワーアップすることに念頭を置いている、ある程度攻撃を受け続けても問題ないくらいの改良が施されているのだろう。
「困ったな……」
「です……ね……」
攻撃を避けながら、対策を練っているためか、ソフィアの息が段々と切れてきていた。
「大丈夫か?」
一声かけると、ソフィアは軽く頷いた。
「だ、大丈夫です。少し息があがってきただけです」
何とか笑顔で返そうとしているのが痛いほど伝わってくる。
魔法による強化なしに怒涛の攻撃を避けつつも、連続して反撃までしているのだ。
身体に来るのは当たり前だ。
「無理はするなよ。俺はまだ動けるから、本当にきつくなったら後ろで休んでいてくれ」
「ご心配ありがとうございます。でもわたしも最後まで戦います。ランス一人だけに重荷は背負わせません!」
額の汗を拭いながら、彼女はニッコリと笑った。
やっぱりソフィアはその辺のボンボン連中とは違う。
逞しい……いや、逞しすぎる王女様だ。
「じゃあ、もうひと踏ん張りいくか。向こうも攻撃自体は結構受けているんだ。絶対に勝機はある」
「はい!」
再び背中合わせになり、視界を広く確保しながら、敵に刃を向ける。
そして再び敵の懐へと入り込もうとした、次の瞬間だった。
「……ん、なんだ?」
突然身体全体が黄色く光り始める。
それは俺だけではなく、ソフィアも……そして更にゴーレムまでも同様に光りだしていた。
「この光、もしかして……」
試しに手の平に魔力を集めてみる。
と、即座に光の魔法弾を生成することが出来た。
「やっぱり……」
どうやら、魔法が使えるようになっているらしい。
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