121 / 160
121.突破作戦
しおりを挟む「迷彩魔法で?」
「そうだ。一時的だけど、俺にはカモフラージュできる魔法を使うことができる。それを上手く使えば向こうまでいける」
俺が考えた方法。
それは迷彩魔法を使ってフロアに潜入し、奥の部屋まで行き、マッピングを済ませたらまた戻って来るというシンプルなものだ。
これなら見つからずにみんなで向こう側まで行けるが、ソフィアはあまり乗り気じゃないと言わんばかりの顔を向けてきた。
「でも……危険です! もし見つかったら、ハチの巣ですよ!?」
「そうならないようにするから大丈夫だって。とにかく、見つからないように向こうまで行くにはこの方法しかない」
「それはそうかもしれないけど……」
ソフィアの言う通り、見つかったら終わりだ。
あの人数なら逃げる暇も与えてはくれないだろう。
正直、賭けにはなる。
でもそれはここに入る前から、覚悟の上だ。
ここで引き返しては意味がない。
「俺を信用できないか?」
「い、いえ! もちろん信用しています! でも心配なんです。危険であることを承知の上で送りだすのが……」
「ソフィア……」
ま、普通はそうだろうな。
相手が危険を知った上でわざわざそれをやろうとしている。
笑顔で「頑張って」と送り出せるはずがない。
仮に逆の立場だったとしたら、俺は止めるだろうな。
確実に。
でも……
「ら、ランスっ!? いきなり何を……」
ソフィアの右手を両手でギュッと包み込む。
突然の行動に赤面しながらキョどるソフィア。
そんな彼女に俺は真剣な眼差しを向け、
「ごめん、ソフィア。必ず帰ってくる。だからここで俺の帰りを待っていてくれないか?」
一言。
するとソフィアはすぐに紅潮させた頬を振袖で隠した。
「ほ、本当にランスはずるいです……」
「すまん……」
「でも、そういう勇気があって堂々と言えるところ……わたしは好きですよ」
「す、好き……っ!?」
まさかの不意打ち。
その一言は俺の心にぶっ刺さる強烈なものだった。
「え、えっと……好きっていうのはその、えっと……」
「へ? あ、いや……! 好きと言ったのは――」
「わ、分かってる! 性格的な面で好きって意味だよな? そういうことだよな?」
「そ、そう……です……よ」
あれ、なんか反応に違和感が……
でもそうって言ってるんだから、そうだよな!
ソフィアだけでなく、俺まで謎の焦りが。
だが正直に言おう。
さっきのは嬉しかった。
勇気を貰うためにあと二回は言ってほしいくらい。
もちろん、叶わぬ願いだが……
「と、とにかく! ソフィアはここで待っていてくれ。すぐに戻る」
「分かりました。無事に戻ってきてくださいね、絶対に」
「ああ、もちろんだ! ブライアンさん、ソフィアを頼みます」
「承知しました。ランス殿こそ、どうかお気をつけて」
俺はソフィア護衛を一時ブライアンさんに委ね、フロアの入り口前まで近づいていく。
そして。
俺単独による突破作戦が幕を開けたのだった。
0
お気に入りに追加
1,516
あなたにおすすめの小説

少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

【完結】え、別れましょう?
須木 水夏
恋愛
「実は他に好きな人が出来て」
「は?え?別れましょう?」
何言ってんだこいつ、とアリエットは目を瞬かせながらも。まあこちらも好きな訳では無いし都合がいいわ、と長年の婚約者(腐れ縁)だったディオルにお別れを申し出た。
ところがその出来事の裏側にはある双子が絡んでいて…?
だる絡みをしてくる美しい双子の兄妹(?)と、のんびりかつ冷静なアリエットのお話。
※毎度ですが空想であり、架空のお話です。史実に全く関係ありません。
ヨーロッパの雰囲気出してますが、別物です。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?
はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、
強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。
母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、
その少年に、突然の困難が立ちはだかる。
理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。
一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。
それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。
そんな少年の物語。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
どうも、死んだはずの悪役令嬢です。
西藤島 みや
ファンタジー
ある夏の夜。公爵令嬢のアシュレイは王宮殿の舞踏会で、婚約者のルディ皇子にいつも通り罵声を浴びせられていた。
皇子の罵声のせいで、男にだらしなく浪費家と思われて王宮殿の使用人どころか通っている学園でも遠巻きにされているアシュレイ。
アシュレイの誕生日だというのに、エスコートすら放棄して、皇子づきのメイドのミュシャに気を遣うよう求めてくる皇子と取り巻き達に、呆れるばかり。
「幼馴染みだかなんだかしらないけれど、もう限界だわ。あの人達に罰があたればいいのに」
こっそり呟いた瞬間、
《願いを聞き届けてあげるよ!》
何故か全くの別人になってしまっていたアシュレイ。目の前で、アシュレイが倒れて意識不明になるのを見ることになる。
「よくも、義妹にこんなことを!皇子、婚約はなかったことにしてもらいます!」
義父と義兄はアシュレイが状況を理解する前に、アシュレイの体を持ち去ってしまう。
今までミュシャを崇めてアシュレイを冷遇してきた取り巻き達は、次々と不幸に巻き込まれてゆき…ついには、ミュシャや皇子まで…
ひたすら一人づつざまあされていくのを、呆然と見守ることになってしまった公爵令嬢と、怒り心頭の義父と義兄の物語。
はたしてアシュレイは元に戻れるのか?
剣と魔法と妖精の住む世界の、まあまあよくあるざまあメインの物語です。
ざまあが書きたかった。それだけです。

今さら言われても・・・私は趣味に生きてますので
sherry
ファンタジー
ある日森に置き去りにされた少女はひょんな事から自分が前世の記憶を持ち、この世界に生まれ変わったことを思い出す。
早々に今世の家族に見切りをつけた少女は色んな出会いもあり、周りに呆れられながらも成長していく。
なのに・・・今更そんなこと言われても・・・出来ればそのまま放置しといてくれません?私は私で気楽にやってますので。
※魔法と剣の世界です。
※所々ご都合設定かもしれません。初ジャンルなので、暖かく見守っていただけたら幸いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる